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電波少女が提言、オタクやネットラップをバカにしてきた人たちへ

電波少女が提言、オタクやネットラップをバカにしてきた人たちへ

電波少女『HEALTH』
インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:田中一人 編集:矢島由佳子、久野剛士
2017/09/27

僕はダンスをやっていて、肉体的にも賞味期限が長くないと思う。(nicecream)

―30歳でメジャーデビューって最近では珍しいことではないですけど、ハシシさん自身にとってはどういう感覚なんですか?

ハシシ:逆にどう思われてるのかな? って思いますね。ライブに行っても年下ばかりという状況になってはきているんですけど、時代的には受け入れてもらえているのかなと思います。「30代がモテる」みたいな記事とかも見たりするので、まだ夢があるかなと思ったり(笑)。

でも、長い尺度で見たときに、レコード会社にとっても、賞味期限は当然10代の子たちよりは短いわけじゃないですか。だから、短期間でちゃんと集中して早めに結果を出したいとも思っています。

―nicecreamさんはどうですか?

nicecream:ハシシの言った通りだと思うんですけど、僕はダンスをやっていて、肉体的にもより賞味期限が長くないと思うので。そのなかで効率よく練習しないといけないなって。

左から:nicecream、ハシシ

―10年後に電波少女のステージで踊ってるイメージは浮かべられますか?

nicecream:40歳のブレイクダンスか(笑)。踊ってるかもしれないですけど、スキルフルにというよりは、そのとき出せるフレーバーで魅せられるように方向転換する時期が来るのかなと思いますね。実際、周りにも40代でブレイクダンスをやってる人はいるので。

ハシシ:歌には、歳を重ねて出る深みや説得力があると思うんです。でもこいつは、アクロバットやブレイクダンスがどうしてもできなくなる日が来ると思う。なので、別のジャンルの要素を覚えるとか、そういう選択肢が必要になると思うんですよね。

日本のネットラップって、マッチョな人たちから見たら「雑魚がラップしてるから気に食わない」という意識があると思っていて。(ハシシ)

―さっきハシシさんはネットラップ界隈の先輩は活動してる人がほとんどいないと言ってましたけど、それはどうしてだと思いますか?

ハシシ:う~ん……同世代が多いというのもあると思うんですよ。ネットラップは俺らの世代がすごく多くて、歳上の人はそこまでいないんです。あと、10年くらい前、まだ今よりインターネットがちょっとアンダーグラウンドな時代にネットラップを始めた人たちってほとんど特殊な人だったんですよね。メンタルの病気になる人も多くて。普通に会社員になって家族を持って引退してる人もいるし。でも、病気になる人が多いなというイメージがありますね。

―社会からドロップアウトしてるような?

ハシシ:そう、ドロップアウトしてる人が多いですね。

―でも、ものすごい可能性を秘めたままドロップアウトしてしまった人もいるわけですよね?

ハシシ:そうかもしれない。それが上手く開花できたのか、できなかったのかという違いはあると思います。そもそも音楽をやってる人って社会に上手く適合できる人のほうが少ないと思ってるので。でも、逆にそういう人のほうがおもしろい作品を作れると思うんですよね。だからこそ、おもしろいと認知されなかったときが悲惨だなとも思うんですけど。

―その話に自分自身を照らし合せたときにどんなことを思いますか?

ハシシ:僕も、音楽を続けられなかった可能性がたくさんあったと思うんですよ。結局、勘違いで続けている結果というだけで。でも、チャンスを与えていただいたから、全力でできる限りやりたいなと思ってます。

―ただ、なんらかの能力や魅力がないと周りも自分を勘違いさせてくれないですよね? だから、ネットラップのシーンだけで終わらなかったとも言えませんか?

ハシシ:「根拠のない自信をどこまで減らさないか」みたいなゲームになってきてるというか。今も僕はネットラッパーって言われるし、一時期はバカにされてる感じがして嫌な思いをしてたんですけど、今はなんとも思わなくなって。むしろ、ネット出身でメジャーに上がってきた人たちにかっこいい人が多いという自負がある。

最初から、インターネットを使いこなして音楽を表現するのって、ハイテクで超かっこいいなと思ってたんですよね。でも、オタクだから嫌われてるんだなとも思っていて。これが、たとえば生意気そうな白人がやってたらかっこいいと思われていたと思うんですよ。ヴェイパー的なとか。

―ヴェイパーウェイヴ(2010年代初頭にネットコミュニティーから生まれた音楽ジャンル)ですか?

ハシシ:そうです。日本のネットラップって、マッチョな人たちから見たら「雑魚がラップしてるから気に食わない」という意識があると思っていて。でも、ストリートヒップホップの活動ってなにかと言われたら、別にないじゃないですか。

左から:ハシシ、nicecream

―たとえばサイファーとかはどうなんですかね?

ハシシ:サイファーもネットでできるじゃないですか。人との出会いもインターネットでできるし、トラックをもらったり、ラッパーの友達を作ることもできる。それってクラブで遊んで人間関係が生まれることと一緒だと思うんです。

でも、ネットのほうが効率がいい。ネットのメリットはそこだと思うんです。ただ、生の現場を否定するつもりはなくて。クラブでの活動からしか見えない景色や感じられない熱もあると思います。人としての魅力的なバックボーンや説得は当然生の現場のほうが特化してるなとも思いますし。

―ハシシさんの場合は生の現場もネットの世界も両方知ってるじゃないですか。それは電波少女にとってポイントだと思います。

ハシシ:そうですね。俺は生の現場の活動は余剰が多すぎるなと思うんです。クラブで朝まで拘束されて、出番が15分とか。「その15分で一体何人に聴かせられるんだろう?」って思うし。それよりもネットで何百人、何千人がいるコミュニティーで発信するほうが効率がいい。でも、最初の話に戻るんですけど、インターネットを使う人種が「オタク」と呼ばれるから、そうでない人たちから嫌われたんだろうなってすごく思うんですよ。

ただ、そういう流れも変わったと思います。マッチョな人たちもミュージックビデオにしろ、YouTubeにしろ、SoundCloudにしろ、ネットを使ってるし。告知だってSNSを活用してる。その垣根はほぼなくなっているなって。だから、むしろネットラッパーのほうが勝手に疎外感を感じてるところがあるのかもしれないです。

―漢がYouTuberとビーフする時代になってるし(笑)。

ハシシ:たとえば漢さんがああいうアクションを起こすと、それが皮肉めいていて、ギャグでやってるんだろうなというのが伝わるからおもしろいというのもあると思うんですよね。でも、10年前くらいはオタクの人たちが集まって、ネットを使って自分たちの曲をアップしてみたら、「こんなことができるんだ」と思われた一方で、「でも、オタクがやってるんでしょ? 気持ち悪いな」みたいなムードがあったと思うんですよね。

―でも、オタクの人たちも強いプライドがあったわけですよね?

ハシシ:あったと思います。だから、一時期はよく「ネットラッパーはスキルがヤバい」って言われていたし。今は生の現場にいる人たちも自宅で手軽に音源が録れる時代なので、みんな本当にラップが上手いし、クオリティーが高い曲を作ってますよね。

当時から、音源のクオリティーはネットラップのほうが高かったかもしれないですね。これはJinmenusagiくんが言っていたんですけど、オタクの人たちは追求する執念がすごくある。なにかにのめり込む人たちのことをオタクって呼ぶのは本当にその通りで。あと、自分は違いますけど、ネットラップ上がりの人は縦社会を経験していない人が多いので、横着だなと思う瞬間もあるんです。でも、逆に堂々としてる生意気さがいいのかもしれない。

語弊を生むかもしれないですけど、俺はフリースタイルバトルが好きでよく動画を見ていて、今だと高校生の子が大御所の怖いラッパーにバトル上で「殺す」みたいなことを言うじゃないですか。それって全然リアルじゃないですよね。でも、競技として成立している。つまり、ヒップホップが体育会系じゃなくなっているんですよ。否定ではなく、新しい文化になったんだなって思います。それこそ10何年前にバトルでそんなことを言ったら、普通に裏に連れて行かれてたと思うし。

―ハシシさんはそういう文化になってよかったと思いますか?

ハシシ:う~ん……俺はわりと老害っぽくて、縦社会は必要だと思ってるタイプですね(笑)。ぼくりりとかも、体育会系ではないけどちゃんと礼儀が正しいし、そういう子のほうがかわいいなって思います。

でも、今のいろんな人が入り乱れてる感じはすげぇおもしろいなと思います。なんでもできる時代だなって。やっちゃダメなことが少なくなってきてるので。だから、フリースタイルやバトルが流行ってるのはすごくいいことだと思う。

そういう時代になっても日本にヒップホップが根付かないのであれば、それはアーティストのせいだと思います。これだけチャンスがあるからこそ、みんなちゃんといい曲を作らないといけないと思いますし。今はその言葉を自分にも言い聞かせてる感じですね。

左から:nicecream、ハシシ

―電波少女がメジャーデビューしたのも時代の潮流の影響があると思いますか?

ハシシ:いや、関係ないですね。フリースタイルバトルブームの恩恵は1ミリも受けてないですし。

―それは間違いないですよね。日本語ラップシーンの動きとは一線を画してるわけで。

ハシシ:フリースタイルバトルが流行ってなくてもメジャーデビューはこのタイミングだったのかなって思います。逆に言えば、そのシーンとの見えない壁はあると思うんです。

でも、バトルに出てるような子が電波少女を聴いてくれているみたいなツイートをたまに見かけたりするし、みんなに聴いてほしいなと思っています。音の作り方はヒップホップが好きな人に届くようにも作ってるつもりなので。電波少女はいい感じにブレているところがブレてないと思うんですよ。それをちゃんとこの先も貫きたいですね。

左から:nicecream、ハシシ

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リリース情報

電波少女『HEALTH』初回限定盤
電波少女
『HEALTH』初回限定盤(CD+DVD)

2017年9月27日(水)発売
価格:3,799円(税込)
BVCL-823/4

[CD]
1. INTRO
2. ME
3. FOOTPRINTZ
4. 21世紀難民 feat. れをる(from REOL)
5. 先天性ハートブレイク
6. 花火 feat. NIHA-C
7. MONE\CLIP feat. Jinmenusagi
8. SKIT1
9. 未来は誰かの手の中
10. クビナワ feat. ぼくのりりっくのぼうよみ&ササノマリイ
11. SKIT2
12. NO NAME.
13. A BONE feat. Jinmenusagi & NIHA-C
14. OUTRO
[DVD]
『電波少女 ワンマンライブ“EST.”at Shibuya WWW X(2017.06.18)』
1. INTRO
2. FOOTPRINTZ
3. オルタネートエラー feat. トップハムハット狂
4. Mis(ter)Understand
5. Earphone feat. Jinmenusagi
6. RY feat. Jinmenusagi
7. オーバードーズ feat. NIHA-C
8. MO feat. NIHA-C
9. ME
10. 笑えるように
11. COMPLEX feat. Jinmenusagi, NIHA-C
『MV & Short Movie』
12. ME MV
13. FOOTPRINTZ MV
14. NO NAME. -Short Movie-『デイドリーマーA』

電波少女『HEALTH』通常盤
電波少女
『HEALTH』通常盤(CD)

2017年9月27日(水)発売
価格:2,800円(税込)
BVCL-825

1. INTRO
2. ME
3. FOOTPRINTZ
4. 21世紀難民 feat. れをる(from REOL)
5. 先天性ハートブレイク
6. 花火 feat. NIHA-C
7. MONE\CLIP feat. Jinmenusagi
8. SKIT1
9. 未来は誰かの手の中
10. クビナワ feat. ぼくのりりっくのぼうよみ&ササノマリイ
11. SKIT2
12. NO NAME.
13. A BONE feat. Jinmenusagi & NIHA-C
14. OUTRO

イベント情報

電波少女
『メジャーデビューアルバム「HEALTH」リリースパーティー』

2017年10月7日(土)
会場:東京都 高円寺HIGH
※スペシャアプリ、LINE LIVEで生配信

プロフィール

電波少女
電波少女(でんぱがーる)

2009年、インターネット動画投稿サイトに突如姿を現した数名の個性派MC・TMで電波少女結成。幾度のメンバー加入、脱退を経て、現在はMC担当ハシシとパフォーマンス&ボタンを押す係担当nicecreamの2名で活動。ハシシの等身大でリアルなリリックと、キャッチーなメロディーは一度聞いたら耳から離れない中毒性を持ち、ライブにおけるnicecreamのダンスパフォーマンスは、ほかでは味わえない華やかさがありライブならではの一体感を生み出している。各動画サイトにアップロードされたMVなどの映像は累計で300万再生を突破しており、今、最も注目と期待を集めているHIPHOPCREWである。2017年9月27日メジャーデビューアルバム『HEALTH』発売。

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