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チェン・ティエンジュオに訊く、中国新世代は自由を獲得した?

チェン・ティエンジュオに訊く、中国新世代は自由を獲得した?

『フェスティバル/トーキョー17』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 通訳:池田リリィ茜藍 編集:川浦慧、宮原朋之

留学で学んだことを一つあげるなら、それは「いかに他とは違うアーティストになるか?」ってこと。

—チェンさんにとっては社会的・政治的な抑圧よりも親からの抑圧のほうが厄介だった?

チェン:それは全部がひとつながりのことだと思うな。社会的な圧力を親が受けて、今度は親が子にそれを与える。

—日本もまったく同じです。

チェン:アジア全体に共通する家族的な慣習ってことなんだろうね。だから、なおさらロンドンでの経験は新鮮で、驚きだったんだ。それぞれの人が独立したインディビジュアルな存在で、誰かが誰かに対して教えられる絶対のものなんてない。

むしろ価値基準は相対的なものであって、ある点では先生よりも学生が優秀な場合だって普通にあるわけ。あえて僕がセントラルマーチンで学んだことを一つあげるなら、それは「いかに他とは違うアーティストになるか?」ってこと。

チェン・ティエンジュオ

宗教に関わるアート・表現って、じつはめちゃくちゃサービス性が高いと思うんだ。

—そのあたりからチェンさんの作家活動に話を移していきましょう。チェンさんは現代美術だけでなく、演劇、音楽、映像、ファッションなど多彩な活動をしていますね。そしてそのどれにも共通しているのは、神秘主義的でオカルティックなイメージ。さまざまな神話のイメージが雑多に混淆したようなダークなファンタジーです。

『19:53』 Trailer, work by Tianzhuo Chen feat. Yico, Beio
『19:53』 Trailer, work by Tianzhuo Chen feat. Yico, Beio(vimeoで見る

『Tianzhuo Video Mixtape』
『Tianzhuo Video Mixtape』(vimeoで見る

チェン:そういった雰囲気を自分のカラーとして作り上げていったのは大学の頃からですね。ヒップホップや電子音楽、アヴァンギャルドなファッションがとても好きで、自分が愛してやまないものをすべて融合していくなかで生まれたのが、今のスタイル。

でももっと重大な転換点があって、それは仏教への信仰に目覚めたこと。アートの起源の一つも宗教や信仰なのだから、それとアーティスティックなクリエイションが合流するのはとても自然な流れだった。僕の作品をすごく倒錯的なイメージとして受け取る人は多くいると思うけれど、自分のなかでは信仰の深化とパラレルで、その実践なんだよ。

チェン・ティエンジュオ

—それはけっこう意外な答えです。多くの日本人は無宗教者で、だからこそキリスト教やヒンドゥー教などの宗教的イメージを、イデオロギー抜きで摂取して、あえて言えば節操なくミックスしてポップカルチャーに転用してきた。それに似た雰囲気をチェンさんの作品から感じました。

チェン:宗教に関わるアート・表現って、じつはめちゃくちゃサービス性が高いと思うんだ。だからエンターテイメントやコマーシャリズムとも通底する部分がある。そういうことじゃないかな?

でも、ここで一つ断っておきたいのは、僕は宣教師のように、ある解答や道標を人に信じさせたくて作品を作っているのではないってこと。僕の作品に接触することで、疑問やクエスチョンを抱けるかってことを重視している。一種の問いかけなんだ。

チェン・ティエンジュオ

—だとすると、今回『F/T』で上演する『忉利天』はどんな問いかけになるんでしょう? 「天」は、神や仏が住まう世界を指す仏教用語のことですよね?

『忉利天』メインビジュアル
『忉利天』メインビジュアル

チェン:天は全部で三十三あって、『忉利天』はその中の六欲天に含まれる世界のこと。素晴らしい場所ではあるけれど、欲望に捉われてもいる完全ではない世界。そこにたどり着いたとしても、人間界や地獄に落とされるかもしれない不安定な場所で、僕の解釈だと迷ったり悩んだりする人間のありように似た世界なんだ。

この他にも『自在天』だとか、天を表現するシリーズはけっこうやっている。

—つまり、仏教説話や宗教的世界観をチェンさんなりに翻訳したもの?

チェン:そう。もちろんそこには僕の経験や、今考えることも強く反映している。僕は、仏教が言っている輪廻転生といった死生観をかなりディープに信じているけれど、一方で現実の世界は資本主義によって成り立ち、世俗的な欲望で溢れている。

この2つは絶え間なく衝突して、矛盾したり、ある局面では一致したりする。その揺らぎの中に僕らはいる、っていうのが一応の僕の理解。

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イベント情報

『フェスティバル/トーキョー17』

2017年9月30日(土)~11月12日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場、あうるすぽっと、千葉県 松戸 PARADISE AIR、ほか

アジアシリーズ vol.4 中国特集「チャイナ・ニューパワー ―中国ミレニアル世代―」
『忉利天(とうりてん)』

2017年11月10日(金)、11月11日(土)全2公演
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
構成・演出・美術:チェン・ティエンジュオ
料金:一般前売3,500円 一般当日4,000円 学生2,300円

『パレスチナ、イヤーゼロ』
2017年10月27日(金)~10月29日(日)全3公演
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと
作・演出:イナト・ヴァイツマン
料金:一般前売4,000円 一般当日4,500円 学生2,600円

アジアシリーズ vol.4 中国特集「チャイナ・ニューパワー ―中国ミレニアル世代―」
『恋 の 骨 折 り 損 ―空愛①場―』

2017年10月28日(土)、10月29日(日)全2公演
会場:東京都 六本木 SuperDeluxe
作・演出:スン・シャオシン
料金:一般前売2,500円 一般当日3,000円 学生1,600円(全てドリンク別)

アジアシリーズ vol.4 中国特集「チャイナ・ニューパワー ―中国ミレニアル世代―」
『秋音之夜』

2017年11月3日(金・祝)、11月4日(土)
会場:東京都 六本木 スーパー・デラックス
出演:
リー・ダイグオ
シャオ・イエンペン
ワン・モン
Nova Heart
料金:一般前売2,500円 一般当日3,000円 学生1,600円(全てドリンク別)

まちなかパフォーマンスシリーズ

まちなかパフォーマンスシリーズ
『アドベンチャーBINGO!!』

2017年10月27日(金)~11月11日(土)
会場:東京都 池袋あうるすぽっと ホワイエ
作・演出・出演:福田毅
料金:一般前売1,500円 一般当日2,000円 学生1,000円
※おみやげ付

まちなかパフォーマンスシリーズ
『アイ・アム・ノット・フェミニスト!』

2017年10月26日(木)~10月29日(日)全8公演
会場:東京都 赤坂 ゲーテ・インスティトゥート 東京ドイツ文化センター
作・演出・出演:遠藤麻衣
料金:一般前売2,000円 一般当日2,500円 学生1,300円

まちなかパフォーマンスシリーズ
『Family Regained: The Picnic(ファミリー・リゲインド:ザ・ピクニック)』

2017年11月3日(金・祝)~11月12日(日)
構成・演出・出演:森栄喜

映像上映
2017年11月4日(土)~11月12日(日)
会場:東京都 池袋西口公園
料金:無料

トーク
2017年11月3日(金・祝)
会場:東京都 池袋 あうるすぽっと 会議室B
料金:500円

まちなかパフォーマンスシリーズ
快快
『GORILLA ~人間とはなにか~』

2017年11月12日(日)全1公演
会場:東京都 池袋西口公園
作・演出:北川陽子
料金:無料

プロフィール

チェン・ティエンジュオ

1985年北京生まれ。2009年セントラル・セント・マーチンズを卒業。10年チェルシー・カレッジ・オブ・アート修士課程終了。現在は北京を拠点に、ダンサーやミュージシャン、フランスのアートグループなどとのジャンルを超えた協働作業を続ける。17年にはウィーン芸術週間やドイツの世界演劇祭へも招聘されているなど、世界的なアーティストとして注目されている。

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