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小山田圭吾と中村勇吾が谷川俊太郎を想う。長い人生どう生きる?

小山田圭吾と中村勇吾が谷川俊太郎を想う。長い人生どう生きる?

『谷川俊太郎展』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:萩原楽太郎 編集: 川浦慧、宮原朋之

僕の解釈で作ったらどうとでもできてしまう。そうじゃなくて、言葉そのものを音楽にしたかったんです。(小山田)

—『POINT』のころの制作環境の変化をお聞きしましたが、当時の歌詞の変化には、何かそれ以外の影響もあったのでしょうか?

小山田:まあ、いろいろありましたよ。1990年代から2000年代に変わるところだったので、世の中が変わっていったし。CDが急に売れなくなったりとかね。あと、個人的にも子どもが生まれたこととか、そういうすべてのことが重なっていたと思います。

—まだ言葉を発しない子どもという存在との出会いも重要だったんですね。言葉の「意味」に固執しないお二人だからこそ、『デザインあ』のような番組もできた気がします。

中村:そうですね。『デザインあ』は最初からそうした狙いでした。小山田さんが、「あ」という言葉だけで曲を作ったりね。

小山田:「あ」は番組のタイトルでもあるし、一番シンプルで、人間が生まれて最初に発するかもしれない言葉ですよね。発声もしやすいし、アルファベットでも「A」は一番目の文字。そんな要素をところどころに入れると、子どもにも響くものになるんじゃないかという思いはありました。

—『デザインあ』は2013年に21_21 DESIGN SIGHTで展覧会も行われ、お二人も参加されました。音楽と四方に映像が流れる空間は今回の作品とも共通しますね。

小山田:今回は、『デザインあ』展の作品の新しいバージョンという感じもあるよね。

中村:小山田さんの音楽って、何となく空間的に配置されていくサラウンドのイメージがすごくあって。今回は24チャンネルのサラウンドで、立体音響みたいなものができたらと思ったんです。そこから谷川さんの言葉の流れや動きが見えたら面白いなと。

中村勇吾

—制作するうえで、とくにこだわった点は?

小山田:『デザインあ』展で作ったのは、いわゆる「曲」だったんですよ。でも、今回は音楽じゃなくて言葉が中心にある展示だから、朗読する谷川さんの声をそのまま音楽にはしたくないなと思って、音楽と音の中間を狙いたかった。音もすべて、谷川さんが言っている言葉に対して音が反応している、谷川さんに寄り添っているというか。

—谷川さんの声に合わせて、不思議なメロディの音が鳴っていましたね。

左から小山田圭吾、中村勇吾

谷川らによる朗読の声、『かっぱ』、『いるか』、『ここ』が大音量のサウンドと共に展示室を駆け巡るように響く
谷川らによる朗読の声、『かっぱ』、『いるか』、『ここ』が大音量のサウンドと共に展示室を駆け巡るように響く

二人が制作した音楽と映像による詩の空間
二人が制作した音楽と映像による詩の空間

小山田:あれは、谷川さんの声を音符化しているんです。いま、僕らがこうして喋っている声にも音程があるじゃないですか。それを解析して、一番近い音を鳴らしているんです。

中村:小山田さんって絶対音感があるんですか?

小山田:全然ない(笑)。レコーディングで使われるピッチの修正ソフトで解析できるんですよ。もともとが谷川さんの言葉だから、それを自分で解釈してメロディに落としたくなくて。そうすると、意味が生まれてしまうでしょう。僕の解釈で作ったら悲しくもできるし、どうとでもできてしまう。そうじゃなくて、言葉そのものを音楽にしたかったんです。

小山田圭吾

—映像も、モニターごとにひとつずつ割り振られた文字と色面、言葉を発する口元だけが映る切り詰められたものでした。

中村:最初はいろいろ作ったんですけど、なにぶん画面数が多いので、それぞれの映像を細かく作っても伝わらないと思って。文字と色面と口元の3つの要素に減らしていきました。

—谷川さんの声に寄り添った小山田さんによる音と同じように、映像でも、ギザギザのかたちをしたフォントが使われていたりと、実際の声がかたちを結んだような印象がありました。声のゆらめいている感じや不安定さがそのまま視覚化されていて、面白いなと。

中村:フォントは明朝体とだけ決めていて、あまり変な性格づけがなくて味わいがあるものということで探していたんです。

小山田:たしかに、勇吾さんのデザインのフォントやタイポグラフィって、すごく複雑な動きをしているよね。つねにどこかが揺れていたり、微妙に動いていたり。それが、摩擦から実態としての音が出る、言葉が生まれる瞬間ともシンクロしていると思う。

Crowd action game “HUMANITY” is coming in 2018.
Designed & developped by tha ltd.
Crowd action game "HUMANITY" is coming in 2018. Designed & developped by tha ltd.(サイトで見る

—発声したときの谷川さんの言葉の魅力が引き出されていて、展覧会の入り口としてすごくいい空間だと感じました。ちなみに、中村さんは以前ブログで、完成したあとの自分の展示を見るのが苦手とおっしゃっていましたが、今回はどうですか?

中村:今回も嫌ですよ(笑)。嫌というか、人が見ているところを見るのが苦手で。

小山田:そうなんだ(笑)。

中村:僕の仕事は基本的に、映像なりウェブなり、顔の見えない人に届けられるものだから。でも、今回は実空間だからこそ、広い部屋をどう使いこなすのか、いかにダイナミックに言葉を空間に展開するのかを考えました。だから、ぜひ実際に体験してもらいたいですね。

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イベント情報

『谷川俊太郎展』

2018年1月13日(土)~3月25日(日)
会場:東京オペラシティアートギャラリー
開館時間:11:00~19:00(金、土曜は20:00まで)
休館日:月曜(2月12日は開館)、2月11日、2月13日
料金:一般1,200円 高大生800円
※中学生以下無料

プロフィール

小山田圭吾(おやまだ けいご)

1969年東京都生まれ。1989年、フリッパーズギターのメンバーとしてデビュー。バンド解散後、1993年、Cornelius(コーネリアス)として活動開始。現在まで6枚のオリジナルアルバムをリリース。自身の活動以外にも、国内外多数のアーティストとのコラボレーションやリミックス、プロデュースなど幅広く活動中。

中村勇吾(なかむら ゆうご)

1970年奈良県生まれ。ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクター。東京大学大学院工学部卒業。多摩美術大学教授。1998年よりインタラクティブデザインの分野に携わる。2004年にデザインスタジオ「tha ltd.」を設立。以後、数多くのウェブサイトや映像のアートディレクション・デザイン・プログラミングの分野で横断/縦断的に活動を続けている。主な受賞に、カンヌ国際広告賞グランプリ、東京インタラクティブアワードグランプリ、TDC賞グランプリ、毎日デザイン賞など。

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