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是枝裕和×井浦新×伊勢谷友介 まだ大人になれなかった日々の話

是枝裕和×井浦新×伊勢谷友介 まだ大人になれなかった日々の話

『是枝裕和 Blu-rayコレクション』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:森山将人 編集:山元翔一

是枝さんの実験的な姿勢って、いまも変わってないですよね。(井浦)

—今回改めて『ワンダフルライフ』と『DISTANCE』を見直したのですが、この2本には、2000年前後の日本を覆っていた時代感みたいなものが、すごくよく表れていると思って……それはある程度、意識していたことなのですか?

是枝:うーん……時代が映っているかどうかは、意識してないものだと思うんだよね。逆に、時代を映そうと思ったものほど、あとで見ると恥ずかしかったりするじゃない? ただ、やっぱり無意識のうちに……この2本に関しては、やっぱり神戸の震災(1995年に発生した阪神淡路大震災)があって、オウム真理教の一連の事件があって……あの時代に自分が感じていたこと、考えていたことは、意識せずともやっぱり出ているんじゃないですかね。

『ワンダフルライフ』より
『ワンダフルライフ』より

—「出そう」ではなく、結果的に「出てしまっている」というか。

是枝:うん。まあ、いま作っている映画も、自分がいちばんいま切実だと思うものを劇映画という形で出すことを自分に課しているんだけど……でもたしかに、『DISTANCE』という映画はそれだけで作っているところがあったかもしれないよね。

—当時の日本社会を覆っていた、ある種の「怖さ」みたいなものが、ものすごくよく表れていると思いました。

是枝:そうなんですよね。だから、それがそのまま出ているんじゃないですかね。まあ、あの映画に関しては、成功しているところもあれば、上手くいってないところもあって。いま改めて見直すと、自分でも反省点がいろいろあるんだけど……こんなに実験的なものをよくぞ劇場公開してたなって、改めて思うよね。

『DISTANCE』より
『DISTANCE』より

『DISTANCE』(Blu-ray)ジャケット
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是枝:いまは、こういう映画ってかからなくなってきてるじゃないですか。劇場でかかるものの質が、かなり均質化してきているような気がするので。そういう意味では、自分のキャリアのなかでも貴重な作品だったなって思いますよね。

井浦:あの映画、どうやって撮ったんですかって聞いてくる人、ホントに多いんですよ。あの映画は一体何なんですかって。

伊勢谷:でも、あれで『カンヌ(国際映画祭)』に行ってるわけですもんね。

是枝:そうだね。映画として成立してるかどうかはともかくとして、こういう作り方でも映画ができるんだって思えたのは、自分にとってもすごく大きかった。ここまでいけるっていう自分のキャパが広がったというか。だからあのあと、結構怖いものがなくなった(笑)。

左から:伊勢谷友介、井浦新、是枝裕和
左から:伊勢谷友介、井浦新、是枝裕和

井浦:そういう是枝さんの実験的な姿勢って、いまも変わってないですよね。

是枝:うん。違う形のトライは、いまも続けてるつもりだね。ただ、切り取りたいお芝居……お芝居と言っていいかわからないけど、切り取りたいもの自体は『ワンダフルライフ』の頃から変わってないと思う。当時この2人から抽出しようと思っていたものを、プロの役者さんから引き出そうと思ったときに、どうしたらいいのか。じゃあ、そこで子どもを使ってみようとか、アプローチの仕方は変わってきているけど。

是枝さんは大人になりましたか? 話し方のトーンとかは、昔と全然変わってないですけど(笑)。(伊勢谷)

—初顔合わせとなった『ワンダフルライフ』から20年になりますが、当時と比べたら、やはりみなさん大人になりましたか?

伊勢谷:大人になりましたよ。『ワンダフルライフ』みたいに撮っていいんだと思ったら、次の現場ですぐにそれではダメだっていうことも感じたし、業界の常識みたいなものも改めて感じたし。やっぱり、髪の毛ツンツンの頃の俺とは違いますよね。このときはパンクですもん、気持ちが(笑)。

井浦:是枝さんの映画に出演して以降に知ったことや学んだことの積み重ねが、20年分ありますからね。ただ、表現というところでは変わってないなって思うんですよね。

若い頃は、変わることを拒否したり、そこで苦しんだりした時期もあったけど、いまはそれさえも楽しいと思える。どこに行っても、変わらないものがあるってこともわかったし。だから、いまは映画もドラマも、どっちも楽しめている。そういう意味では、大人になったのかな。この20年で、ちゃんと自分のなかで育っていったものはあると思います。

井浦新
井浦新

伊勢谷:是枝さんはどうですか? 大人になりましたか? 話し方のトーンとかは、昔と全然変わってないですけど(笑)。

是枝:うーん、自分ではそんなに大きく変わったっていう認識はないんだよね。ただ、このへんの映画を撮ってた頃は、「すねかじり」だったからさ。

今回Blu-ray化される初期7作品と、そのあとの作品のあいだに何の境目があるかって考えたら、それは企画プロデューサーでクレジットされている安田(匡裕)さんが亡くなったことで。安田さんは『空気人形』の完成直前に亡くなったから、ちょうどそこが境目なんだよね。安田さんが亡くなる前は、完全に安田さんに頼っていたし、『DISTANCE』にあれだけお金をかけられたのも安田さんがいたからだし……。

伊勢谷:ああ、そっかあ……。

是枝:最後は安田さんが何とかしてくれると思いながらやってるところがあったから、当時は「すねかじりの息子」として撮っているところがあったんだよね。だけど、安田さんが亡くなったあとは、他人のお金で作ったものの責任を、全部自分ひとりで取るようになって……。

—安田さんの存在が、かなり大きかったんですね。

是枝:大きかったね。「映画企画室」というのを安田さんが作って……作り手が企画を立てて、ちゃんと監督がイニシアチブを持ってやらないと、これからの映画作りはどんどんマーケット重視になって、映画が映画でなくなる。だから、とにかく企画開発を監督サイドでするんだって言っていて。

是枝裕和
是枝裕和

伊勢谷:いまはまさに、是枝さんが中心になって、安田さんの代わりをやっているわけで。

—是枝さんが設立された「分福」でやっているのは、そういうことですよね。

是枝:まあ僕は、安田さんほどお金を持ってこられないんだけど(笑)。でも、精神的には、安田さんを引き継いでいるつもりではいるんだよね。いまはもう、自分より若い子たちが、自分のまわりに集まってくるようになったしさ。それも含めて、どういうふうに船を航海させていくか、監督発の企画で、どう映画を生み、動かしていくのかを考えるようになりました。そういう意味では、大人になったのかもしれないよね。

それでいうと、やっぱり『ワンダフルライフ』と『DISTANCE』は青春期特有の純度の高さがある。僕のほうがちょっと歳は上だけど……そういう青春というか、もの作りを通した青春を共有している感じが、この2人にはあるんですよね。

左から:是枝裕和、井浦新、伊勢谷友介
左から:是枝裕和、井浦新、伊勢谷友介 / (特設サイトを見る

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リリース情報

『是枝裕和監督 Blu-ray7タイトルセット』(7Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:28,728円(税込)

『幻の光』
『幻の光』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『ワンダフルライフ』
『ワンダフルライフ』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『DISTANCE』
『DISTANCE』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『誰も知らない』
『誰も知らない』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『花よりもなほ』
『花よりもなほ』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『歩いても 歩いても』
『歩いても 歩いても』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

『空気人形』
『空気人形』(Blu-ray)

2018年5月25日(金)発売
価格:4,104円(税込)

プロフィール

是枝裕和(これえだ ひろかず)

1962年、東京生まれ。87年に早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出、14年に独立し、制作者集団「分福」を立ち上げる。1995年、初監督した『幻の光』が、第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。2作目の『ワンダフルライフ』(1998)は、各国で高い評価を受け、世界30ヶ国、全米200館での公開と、日本のインディペンデント映画としては異例のヒットとなった。2004年、監督4作目の『誰も知らない』がカンヌ国際映画祭にて映画祭史上最年少の最優秀男優賞(柳楽優弥)を受賞。2009年、『空気人形』が、第62回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、官能的なラブ・ファンタジーを描いた新境地として絶賛される。2013年、『そして父になる』で第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞ほか、国内外で多数受賞。17年、『三度目の殺人』が第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に正式出品、日本アカデミー賞最優秀作品賞ほか6冠。18年、最新作『万引き家族』が第71回カンヌ映画祭コンペティション部門に正式出品決定、国内では2018年6月8日公開予定。

井浦新(いうら あらた)

1974年、東京都生まれ。98年に映画『ワンダフルライフ』に初主演。以降、映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。そのほか『SAVE THE ENERGY PROJECT』のアンバサダー、そしてアパレルブランド『ELNEST CREATIVE ACTIVITY』のディレクターを務めるなどフィールドは多岐にわたる。映画『止められるか、俺たちを』『赤い雪 RED SNOW』『菊とギロチン』『こはく』『嵐電』など公開が控えるほか、カンテレ・フジテレビ系2018年7月期ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』の出演も決定している。

伊勢谷友介(いせや ゆうすけ)

1976年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部修士課程修了。大学在学中、ニューヨーク大学映画コースに短期留学し、映画制作を学ぶ。『ワンダフルライフ』(是枝裕和監督、1998年)で俳優デビュー。その他代表作品としては、『CASSHERN』(紀里谷和明監督、2004年)、『龍馬伝』(NHK大河ドラマ、2010年)、『るろうに剣心』(大友啓史監督、2014年)など。2002年、初監督作品『カクト』が公開。2008年、「人類が地球に生き残るためのプロジェクト」として「REBIRTH PROJECT」をスタートさせ、株式会社リバースプロジェクトの代表を務める。

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