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アジカン後藤と関和亮が語り合う、ゆとりなき今の社会に思うこと

アジカン後藤と関和亮が語り合う、ゆとりなき今の社会に思うこと

ASIAN KUNG-FU GENERATION『ホームタウン』、KOE
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子

人に厳しくする世の中は、巡り巡って自分も生きづらくなるっていうことに気づいたほうがいいと思うんですよ。(後藤)

─関さんにとって、後藤さんと作った作品のなかで他に印象深いものを挙げるとするならば?

:さっきも話に出た後藤さんソロの“LOST”ですかね。曲をもらったときに、大袈裟じゃなくて涙が出ました。曲そのものに、すごく感動したし、考えさせられたんです。

後藤:嬉しいです。MIKIKOさんが振付と出演の両方をしてくれて、俺とMIKIKOさん、関さんの3人が着ぐるみで踊るっていう(笑)。なんていうか、手作り感溢れるインディーロック然としたビデオでしたね。

—東日本大震災後にリリースされた“LOST”は「喪失」をテーマにした曲で、売上はすべて、後藤さんが運営・発行している「The Future Times」の制作資金にあてられました。あれから7年経った今の日本を、同世代である2人はどう見ていますか?

後藤:なんか……どんどんカサカサしている感じがしますね。ヒアルロン酸のない膝みたい(笑)。要は「ゆとり」がないというか、「遊び」がないのかな。潤滑油がないと関節とかも軋むのにね。みんな、ガチガチに意味を求めるじゃないですか。予算も「ビタ一文オーバーするな!」みたいな感じだし。

:わかる。

後藤:「いや、この音楽にはこういう経済効果があって」みたいに割り切れないことを、僕らは担っているわけじゃないですか。世の中的には「無駄」な部分というかね。そこにも意味を求めてくるようになってきていますよね。楽しんでいるやつにまで「けしからん」って言う風潮もありますし。

後藤正文

─本当に、あらゆるところがギスギスしていて、不寛容が広がっている気がします。

後藤:みんな、もっと人のことを許せばいいのにって思う。コンビニで働く外国人とかに対しても厳しいじゃない? ちょっとくらいまごついたって、別にいいじゃんって思うけどな。俺なんて、ニューヨークのコンビニで働く自信ないよ?(笑)

人に厳しくする世の中は、巡り巡って自分も生きづらくなるっていうことに気づいたほうがいいと思うんですよ。自分が許されたいなら、人も許さなきゃ。

:本当、なんでしょうね……あら探しというか、間違い探しとか。

後藤:まあ、タクシーで新人ドライバーにあたっちゃったときとかは「あちゃー」って一瞬は思いますけどね(笑)。でも誰だって最初は新人だったわけだから。「いいですよ、今から僕が地図アプリでナビしますから」って言える人でありたいですね。

左から:後藤正文、関和亮

後藤:あと、生活保護の人にも厳しすぎる。困っている人がいるなら助けてやればいいじゃんって。明日は我が身なんだから。

憲法で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」ってなんだろうな、って思うんですよね。月に1枚アルバムを買えるくらいでもいいんじゃないの? と思う。もしくは、Spotifyのプレミアム会員になれるくらいの生活。

:本当にそうですね。そのくらいの余裕すらないから、犯罪事件などいろんな問題が起きているのかも知れないし。

後藤:本当、全員でもぐら叩きをしているというか、もぐら同士が叩きあっている状態。全員、地中から顔を出せない悲惨な状態だと思う。

おかげで音楽業界のなかにも、ブレイクスルーするやつを叩く傾向がある。成功しているやつは称賛すればいいだけの話なのに。そこから始まることもたくさんあると思うから。すぐに妬みや嫉みに変わってしまうでしょう。本当に閉塞感がある……なんでこんなことになっちゃったんだろうと思いますよ。

─誰かが得をすると自分が損する、みたいな考えが蔓延ってるというか。

後藤:それもありますよね。あと、人を叩くことにより優越感に浸りたいとか、なんらかのはけ口を求めているのかも知れない。

後藤正文

作り手も受け手も、「エラー」を楽しめるゆとりがあるかどうかが重要なんだと思いますね。(関)

:ビジネス的なことでいうと……僕は音楽畑の人間ではないので詳しいことはわからないけど、なんか急いでいるところはありますよね。リリースのスパンも短くなったし。

関和亮

後藤:「はい、(投資したお金を)すぐ回収!」って感じだよね(笑)。僕はインディーレーベルをやっているから、そういう考えとは真逆というか。もちろん、素晴らしい作品だと思って紹介しているんだけど、急に100万枚売れるとは思ってないから、自分が「いいな」と思ったアーティストが10年でも20年でも、胸を張って音楽を続けられるような環境を作ってあげたいと思っているんです。一般的な考え方とは順序が逆なのかも知れないけど、俺はそういうやり方にしか興味がなくて。

別に1年に1枚出さなきゃいけないというのもないし、アーティスト本人からなにも言ってこないんだったら出せないし、みたいな。作りたくないやつは作れないからって、うちのアーティストたちにも言ってるんだけど(笑)。でも本当に、どうやって続けさせてあげられるかがテーマです。

─40歳、50歳になって、すごいアルバムを作る人たちだっているんですからね。

後藤:そう。音楽なんて、辞める必要がないですからね。やる場所もどこだっていい。だって、動員10人でもすごく幸せな空間を作ることもできるし、1万人集めたから偉いわけでもないから。「3万人集める地獄」みたいな世界だって、おそらくあると思うんですよね。売れてるのに、1つも幸せじゃない環境とかね。

後藤正文

─本当に、なにが正解かわからないし、幸せの基準も人それぞれです。

後藤:数字とかで考えるのではなく、「満足度」というか。それぞれがそれぞれの「物差し」で幸せか幸せじゃないかを考えるほうが、大事だなと思います。

俺たちだって、新しいアルバム『ホームタウン』が100万枚売れなくたって、傷ついたりしないし。今回、作れただけで達成感があって、それはミュージシャンとしてものすごく幸せなことだと思うんですよ。そういう充実感を、自分のレーベルのバンドにも味合わせてあげたいし、「よく頑張った、あとはこっちで一生懸命売るからさ!」っていう関係でありたいんですよね。

ASIAN KUNG-FU GENERATION 『ホームタウン』ジャケット
ASIAN KUNG-FU GENERATION 『ホームタウン』ジャケット(Amazonで見る

:昔よりもデータや数字がはっきりと出てくるようになったのも、世の中がギスギスとしてきた要因の1つだったりするんですかね。今、動画でも配信でもなんでも、全部データで可視化されるし。

後藤:再生回数とか登録者数とか出されると、競わされちゃいますし、自分でも他人と比べてしまいがちですよね。カウントしないと分配できないし、仕方のないことなのかも知れないけど。

でも、そこだけじゃないからな、音楽は。「めちゃくちゃ最高なのに、数字は出てない」みたいなこともあるし。まあ、もうちょっといろんなゆとりがあったらいいなと。関さんのビデオとか、昔からゆるかったよね?

:あははは!(笑)

左から:後藤正文、関和亮

:まあ、そうだね。隙のない映像というより、むしろ「隙を楽しむ」っていうかね。映像はガチガチに撮るより、ちょっとエラーが出たくらいのほうが面白かったりすることは確かにあるかな。「うわ、こんなことになった!」っていう驚きにもなるし。

後藤:そうそう、「そこがいい!」みたいな。サカナクションの“アルクアラウンド”も、アナログで撮っているから、時々ピントがボケたり、ゆるいユーモアがあって、それが楽しいんだよね。

後藤:音楽もそうで。ピッチとかガチガチに直しちゃうより、どこか声がひっくり返ったり、音が不安定だったりするところにグッときたりするわけじゃない? リズムだって、グリットにピッタリ合わせるより、ちょっと揺れてるほうがグルーヴを感じることだってあるし。ノイズとか再現性のないものを有効活用していくと面白くなることもある。

─確かにそうですね。そこが聴きたくて、何度も再生してしまうこともあります(笑)。

:だから、作り手も受け手も、そういう「エラー」を楽しめるゆとりがあるかどうかが重要なんだと思いますね。

後藤:社会で起きた「エラー」だって、捉え方や受け取り方によっては、次の展開につながるかも知れないんですよ。そう思える「ゆとり」は大事だし、そういう世の中のほうが楽しいですよね。

:もちろん「それはちょっと」っていうエラーもあるかも知れないけど、単純に整頓するよりは、そこからアイデアを出し合ってプラスのものに考えていくほうがいいと思う。

後藤:うん。つまり今は、「ゆとり」がないのが問題なんだよ。

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リリース情報

ASIAN KUNG-FU GENERATION『ホームタウン』初回生産限定盤
ASIAN KUNG-FU GENERATION
『ホームタウン』初回生産限定盤(2CD+DVD)

2018年12月5日(水)発売
価格:4,968円(税込)
KSCL-3121~3123

[CD1]
1. クロックワーク
2. ホームタウン
3. レインボーフラッグ
4. サーカス
5. 荒野を歩け
6. UCLA
7. モータープール
8. ダンシングガール
9. さようならソルジャー
10. ボーイズ&ガールズ
[CD2]
『Can't Sleep EP』
1. スリープ
2. 廃墟の記憶
3. イエロー
4. はじまりの季節
5. 生者のマーチ
[DVD]
『ASIAN KUNG-FU GENERATION America Tour Documentary Pt.2 (Latin America)』
※CD2、DVDは初回生産限定盤に付属

ASIAN KUNG-FU GENERATION『ホームタウン』通常盤
ASIAN KUNG-FU GENERATION
『ホームタウン』通常盤(CD)

2018年12月5日(水)発売
価格:3,146円(税込)
KSCL-3124

1. クロックワーク
2. ホームタウン
3. レインボーフラッグ
4. サーカス
5. 荒野を歩け
6. UCLA
7. モータープール
8. ダンシングガール
9. さようならソルジャー
10. ボーイズ&ガールズ

プロフィール

ASIAN KUNG-FU GENERATION
ASIAN KUNG-FU GENERATION(あじあん かんふー じぇねれーしょん)

1996年、大学の音楽サークルにて結成。2002年、インディーズレーベルより『崩壊アンプリファー』をリリース。2003年4月、同作がキューンミュージックより異例の再リリースとなり、メジャーデビュー。同年より新宿LOFTにて『NANO-MUGEN FES.』を立ち上げ、2004年からは洋楽アーティストも加わり、会場も日本武道館、横浜アリーナと年々規模を拡大し、2012年の夏には横浜アリーナ2DAYSにて10回目となるフェスを開催した。これまでに8枚のオリジナルフルアルバムをリリースし、2018年12月5日には、最新アルバム『ホームタウン』をリリースする。後藤が描くリアルな焦燥感、絶望さえ推進力に昇華する圧倒的なエモーション、勢いだけにとどまらない「日本語で鳴らすロック」でミュージックシーンを牽引し続け、世代を超えた絶大な支持を得ている。

関和亮(せき かずあき)

1976年生まれ、長野県小布施町出身。音楽CDなどのアートディレクション、ミュージックビデオ、TVCM、TVドラマのディレクションを数多く手がける一方でフォトグラファーとしても活動。サカナクション『アルクアラウンド』、OK Go『I Won't Let You Down』、星野源やPerfumeのミュージックビデオなどを手がける。『第14回文化庁メディア芸術祭』エンターテインメント部門優秀賞、『2015 55th ACC CM FESTIVAL』総務大臣賞/ACCグランプリ、『MTV VMAJ』や『SPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDS』等、受賞多数。

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