ゆずが語る、ゆずへの期待を背負ったことで解放できた新たな側面

「今、ゆずに求められていること」を真正面から引き受けたというアルバム『BIG YELL』によって、文字通り「大いなるエール」を世に放ったゆず。そのアルバムを引っ提げたアリーナツアーも大盛況のうちに終えた彼らはその後、さらなる変化のときを迎えているようだ。

NHKドラマ10『昭和元禄落語心中』の主題歌として書き下ろされた新曲“マボロシ”。この曲は、「これまでにないゆず」を意識して生み出された1曲であるという。そして、ドラマの原作となったマンガを読む中で見つけ出した「幻 / マボロシ」というテーマ。それは、実際の音源制作に影響を与えると同時に、この曲のビジュアル面にも大きな影響を与えたようだ。

旧知の映像作家である島田大介によるモノクロームのミュージックビデオ、そして今回が初タッグとなる新鋭写真家・北岡稔章との出会いとコラボレーション。それはやがて、写真展『ゆず マボロシ展』の開催という、これまでにない表現形態へと繋がっていった。音楽のみならず、そのビジュアルも含めて立体的に表現された“マボロシ”の世界。今、にわかに活性化しているようにも思えるゆずのクリエイティビティーの背後には、果たして彼らのどんな思いと意思があるのだろうか。同展覧会の会場で、北岡稔章撮影のもと、ゆずの2人に話を聞いた。

(ゆずに求められるものを)しっかりと引き受けたことによって、逆に気が楽になったんです。(北川)

―11月16日に配信リリースした新曲“マボロシ”は、これまでのゆずのイメージとは異なる、かなりシリアスな楽曲になりました。この曲は、どんな経緯で生まれた曲なのでしょう?

北川:これは『昭和元禄落語心中』(NHK)というドラマの主題歌のお話を、演出をされているタナダユキさんから直々にお手紙をいただいたところから始まりました。以前にも一緒にお仕事をしたことがあったのですが、そのお手紙に、「今までのゆずのイメージとは違う切り口の曲を書いてもらいたい」というようなことがあって、それからドラマの原作マンガを読ませていただいたんですけど、そしたらもうめちゃめちゃ面白くて。

北川悠仁。『ゆず マボロシ展』の会場にて
北川悠仁。『ゆず マボロシ展』の会場にて

―雲田はるこさんの『昭和元禄落語心中』、面白いですよね。

北川:すごく面白かったです。絵のタッチが爽やかだからスーッと読めるんですけど、中身は結構濃くて、時代を超えて人間の光と闇の部分を行き来するような話じゃないですか。

原作からヒントを得ながら、今までのゆずではあまりやっていないことを考えて、ある意味前向きではない、色で言うなら原色じゃない世界観を作れないかなと思ったんです。

ゆず“マボロシ”を聴く(Apple Musicはこちら

―旧知のタナダさんが、これまでとは違うゆずを求めてきたのは面白いですね。

北川:そうですね。前回お話したように(参考記事:ゆずが20周年を経て語る、ゆずに求められている事、今歌いたい事)、今年の春に出した『BIG YELL』というアルバムが、ゆずに求められているパブリックなものを背負った決意表明というか、強さのあるアルバムだったんですよね。その時は、そういうものを作り上げることで、さらにいろんなことを背負っちゃうのかもしれないという懸念もあったんです。

だけど、中途半端ではなくしっかりと引き受けたことによって、逆に気が楽になったんです。引き受けたときに、もう腹が決まっていたんですよね。

―大きなものを背負って気が楽になるなんて、そんなことがあるんですね。

北川:だから、そのあとに出した“公園通り”もそうですけど、作品作りが解放できた感覚があって。新しいことを「やらなきゃ」と思ってやるのではなく、自然と「やりたくなっちゃう」、ワクワクしながら作れるモードになっていったんです。だから今回、「これまでのゆずとは違う感じの曲を」と言われても、無理なく臨むことができました。「新しいゆずの切り口で、何かできるだろう?」と、素直にスーッと入っていけたんです。

岩沢:この1年というのは、昨年末にNHK『紅白歌合戦』の大トリをやらせてもらったことも含めて、いろんな方からいろんなチャンスをもらって、本当にいろんなことをやらせてもらいました。ときには、“マスカット”みたいに、全力でふざけてみたり、そうかと思えば今回のようにしっとり歌ってみたり(笑)。

―すごい振り幅です(笑)。

岩沢:そういういろんな経験の中でも、やっぱり自分たちとしてはツアー(『YUZU ARENA TOUR 2018 BIG YELL』)がうまくいったことが、結構大きかった。あのツアーを自分たちの中で消化しきれたからこそ、ちゃんとピリオドを打って、次のステップに行く準備ができたんです。だからもう、どんなオファーがきても大丈夫というか、何がきてもジタバタしなくなりましたよね。

岩沢厚治。『ゆず マボロシ展』の会場にて
岩沢厚治。『ゆず マボロシ展』の会場にて

1人の作家として、自分が納得のいくものができたという感覚があります。(北川)

―先ほど「原色ではない世界観」という話が出ましたけど、どのへんを手掛かりに、この“マボロシ”という曲を作っていったのでしょう?

北川:色の話で言ったら、水気を足していく感じというのかな。たとえば赤だったら、最初に赤を塗って、それにもっと薄い色を混ぜてみたり、どんどん水を足して滲ませていくような。僕はいつも、クリアでパキッと「こうだ」というふうに明確に提示しがちなんですけど、そこを敢えてぼやかしていく感じというか。

最初はもうちょっとはっきりとテーマがあったんですけど、それをどんどんぼやかしていく中で、この「マボロシ」というキーワードが浮かんできたんです。僕が原作マンガで一番共感した部分は、主人公が抱くトラウマのような幻や、登場人物がそれぞれの幻と向き合っているところだったんです。

岩沢:「ぼやかす」みたいなテーマが最初からあって、実際に楽器を演奏しながらレコーディングしていく中で、なぜかどれも主役じゃない感じがしました。僕らの場合は、歌が主役になることが多いんですけど、この曲の場合は、歌も主役ではないなあと思っていて。アコギも鳴っているけど主役じゃない、ピアノも聴こえるけどピアノの曲でもないみたいな、不思議な感じでしたね。

北川:ボーカルの割り振りもそういうところがあったかもしれないですね。いつもだったら、序盤からハモりを入れるんだけど、今回は敢えてそれをしないで、岩沢と僕の歌うパートをはっきり分けました。いつもは、どちらかがメインで歌っていても、それに寄り添うようにもう1人が存在している感じが多かったんですけど、今回はそこをはっきり分けて、最後にそれが集約されていくような感じを意識して作りました。

ゆず

『ゆず マボロシ展』の会場にて。
『ゆず マボロシ展』の会場にて。

―それだけに、<鮮やかに>からのサビ部分で2人の声が合わさったときの力強さが印象的で……このハーモニーは、やっぱりゆずならではですよね。

北川:ありがとうございます。そこは、作りながら僕の頭の中で鳴っていたんですよね。メロディーが鳴っているというよりも、ハーモニーとして鳴っていて。そういうことが、昔よりも多くなったような気がします。ちょっと俯瞰で見るようになったというか。

この曲は最初から岩沢にリードを取ってもらおうと思っていて、ちょっと変な言い方ですけど、ゆずに楽曲提供するような感覚で作ったんです。「ゆずの違う切り口をどうやって作るか」という作業だったので、作りながら頭の中でゆずの歌が鳴っていました。

―このサビの力強さに、単なる内省的なバラードではない、今のゆずの勢いを感じました。

北川:僕は、ゆずというのはJ-POPの中で鳴らすものだと思っているので、淡い世界観の中でも、このサビ感はとても大事だと思っていて。たとえ幻であろうとも、このサビの瞬間だけバッと現れて、また消えていくみたいな。そういうイメージかもしれないですね。

―今年ゆずがやってきた“うたエール”での大々的なプロジェクト(参考記事:2020人のゆずがゲリラライブ。話題CMを東畑幸多と山田智和が語る)や、全国ツアーなどの一連の流れの最後に、こういったバラードが生まれてきたことは、ちょっと驚きました。

北川:そうですよね。“マスカット”の次に、これですから(笑)。“マスカット”を歌いながら、もうこの曲のことを考えていた自分、どうかしていたと思います(笑)。

でも、この曲を書けたことは僕個人としてもすごく嬉しいことでした。いつも、ゆずに求められているものを、自分なりに責任を持って表現してはいるんだけど、今回は1人の作家として、自分が納得のいくものができたという感覚があるので、とても満足しています。

ゆず

北岡さんの熱意が伝わってきて、一緒にいいものを作りたいっていう協力体制に、自然になることができたんです。(岩沢)

―MVとアートワークからも、これまでにないゆずを感じます。

北川:今回は、まずMVを撮ろうという話になり、島田(大介)さんにお願いしました。結構長い付き合いの方で、僕らもすごく信頼しているし大好きな監督なので、あんまりどうこう言わずに、まず曲を聴いてもらって。それで出していただいたアイデアが、MVにも出てくる、傘を持って立っている男の写真だったんです。歌詞の中には、雨も傘も出てこないんだけど、その写真を見て「これだ!」って、この曲のイメージをちゃんとキャッチしてくれているのがわかって。

―ゆずのMVで、なかなか見ないトーンです。

北川:僕らのMVって、リップシンクのシーンがあるものがほとんどなんです。僕らが出演していてリップシンクのないMVって、多分今回が初めてなんじゃないかな? まったくギターを弾かないっていうのも、なかなかないことだし。

―ほとんど「役者」としての出演じゃないですか。

北川:ただ歩くとか、ただ立っていることしかやってないですけど(笑)。この曲で僕らがやりたかった、余計なものを削ぎ落としたシンプルな世界観がMVで表現できたのはすごく嬉しかったです。

その撮影時に、アーティスト写真も撮ったんですよね。それはそれでよかったんですけど、“マボロシ”という曲のテーマを考えたときに、僕がもっと他の表現の仕方があるんじゃないかって思ったんです。例えば、MVの中で僕ら2人は別々のところにいて、1回も会わないんですよ。だけど、アーティスト写真では2人が同じ場所にいることに違和感を感じたんです。

この曲をたくさんの人に届ける上で、そこはもっと深く考えたほうがいいんじゃないかって思って。それをプロデューサーやスタッフに投げ掛けたら、そこからみんながいろいろ考え始めてくれて。それで、北岡稔章さんという、すごく面白い写真を撮る方と出会ったんです。北岡さんに“マボロシ”のコンセプトで写真を撮ってもらって、それを展覧会のように見せることで、ゆずの新たな世界観を表現できるんじゃないかっていう話が出てきたんですよね。

ゆず

『ゆず マボロシ展』の会場にて。(12月7日~12日12:00~20:00、東京都 CLASKA 8F The 8thGalleryにて開催中)
『ゆず マボロシ展』の会場にて。(12月7日~12日12:00~20:00、東京都 CLASKA 8F The 8thGalleryにて開催中)

―展覧会まで、地続きの企画だったんですね。

北川:そうなんです。アートワークって、CDだったらジャケットやブックレットで表現できるんですけど、配信曲の場合、パソコンやスマホの画面で見る小さい写真がひとつあるだけじゃないですか。それだけでこの曲を表現するのは、とても難しい。もう少し、立体的に世界観を膨らませていきたいと思ったんです。そこから少しずつ、こういう形になっていった感じですね。

ゆず“マボロシ”ジャケット
ゆず“マボロシ”ジャケット(Apple Musicで聴く

―“マボロシ”の特設ページも、水の揺らぎのように動く、凝ったものになっていて(ゆず『マボロシ』特設サイトを見る)。

北川:そういうところのビジュアルから全部ちゃんと考えたいし、そこでさらに実験的なことをやりたいと思って。もちろん、J-POPっていうのは、商業音楽の中にあるものだけど、そこでどれだけアートができるか。それは曲に関してもそうだし、そこから派生したビジュアルに関しても同じで、絶対妥協したくないんですよね。

ゆず

―北岡さんとの共同作業は、どんな感じだったんですか?

北川:北岡さんには初めてお会いした時に、僕らがゆずであるとか、デビューから21年目であるとか、そういうことは全部忘れて欲しいと伝えました。“マボロシ”のアートワークを作る上でのひとつの素材として、僕らのことを考えて欲しいと。ただ、撮影時間は、あんまり長くなり過ぎないで欲しいと(笑)。

岩沢:実際の現場は、写真を見てわかるように、面白いことをたくさんやった撮影会でしたね。一つひとつ、ちゃんと狙いすませた撮影で、「こういうものが撮りたいんだ」っていう意思がすごく伝わってきました。だから、「ちょっと準備するのでお待ちください」って言われても、待っているのがあんまり苦じゃないというか、次はどんな撮影をするんだろうって、ワクワクする感じで。

あと、今回は北岡さんの意向もあって、デジタルではなく、フィルムで撮ったんですよね。だから、事前に何度もテストしたり、入念な準備をしていて……その熱意が僕らにも伝わってきて、僕らも頑張らなきゃとか、一緒にいいものを作り上げたいっていう協力体制に、自然になることができたんです。だから、すごく楽しかったですよね。

岩沢厚治

―このジャケット写真は、どんなふうに撮っているんですか?

北川:これは透明なアクリル板に水を張って、その下に僕らが寝そべって、それを上から撮ってもらいました。しかも、デジタルじゃないから、その場でチェックできない。そういう撮影は久しぶりだったんですけど、僕らもすごく楽しくて、美大生が集まって、いろいろ実験しながら、ひとつの作品を作り上げていくみたいな感じがありました(笑)。

ジャケット写真撮影中の様子

―その一連の作業の結果が、ここに展示されているわけですね。

北川:そうですね。僕らをモチーフとして撮ったものを、北岡さんのクリエイティブチームが、さらにいろいろ考えながら展示してくれて。

この、揺らいでいる感じの「マボロシ」のロゴも、そこからみんなで考えていったものなんですよね。僕らが作った曲から写真のイメージが生まれたり、その写真からさらにロゴのイメージが生まれたり……そうやって、だんだんと1つの世界ができあがっていくのは、すごくいいなと思いました。

“マボロシ”のロゴ
“マボロシ”のロゴ

僕らを素材として、いかようにもして欲しいっていうのが叶って、嬉しいです。(北川)

―では、ここからは、今日の撮影も担当していただいた北岡さんも交えて、お話を聞かせてください。北岡さんは、普段どんな写真を撮られているのですか?

北岡:普段は、人と光と花を中心に写真を撮っています。人の感情のあいだにあるもの、写真でしか表せない曖昧な部分を表現したいと思っていて。今回の撮影でもやらせてもらった多重露光やブレ、水を使った撮影などで、写真でしか見えない「現実と非現実のあいだ」を撮りたいと思っているんです。

北岡稔章
北岡稔章

―今回の展示は、どんなコンセプトのもと組み上げていったのでしょう?

北岡:まず、今回の楽曲“マボロシ”の複雑な心境を表すために、水を使用することに決めました。水の揺らぎで感情の揺れを表現し、現実と非現実のあいだで揺れ動く様子が出したいと思ったんです。さらに、刻一刻と変化していくものの象徴として、氷を使った作品も作ってみました。

北岡稔章による『ゆず マボロシ展』作品の一部

北岡稔章による『ゆず マボロシ展』作品の一部

北岡稔章による『ゆず マボロシ展』作品の一部
北岡稔章による『ゆず マボロシ展』作品の一部

―ゆずのお2人も、実際に展示を見るのは、今日が初めてということですが、いかがでしたか?

岩沢:エレベーターの扉が開いた瞬間から、異空間というか。自分たちが作った“マボロシ”にまつわる写真展ではあるんですけど、ちょっと異質な、入った瞬間にキュッと空気が締まるような感じがありましたね。

―それぞれの写真も印象的ですが、やはり氷を使った作品は、インパクトがありますよね。どうですか、氷の中に閉じ込められた気分は?

北川:(笑)。僕たちが写った写真ではあるんですけど、もう僕たちじゃないような感覚があります。この写真展は、“マボロシ”という曲が僕らの手を離れて、より立体的にアートになっていくことを楽しみにしていたんです。だから、自分たちを見ているような気がしなくて、ひとつの作品として見ることができました。

そういう意味では、最初に北岡さんに話したように、僕らを素材として、いかようにもして欲しいっていうのが叶った作品なのかなって。だから、すごく嬉しいですね。

岩沢:あと、こうやって自然光が入ってくる場所に保存のきかない氷を使った作品があったりして、1回たりとも同じものにならないっていうのが面白いですよね。日が暮れて暗くなったり、時間が経って氷が溶けていったりすることで、また違って見えるんだろうなって。

岩沢厚治

氷の中に、ゆずの2人や植物などを撮影した写真が入っている。(12月7日~12日12:00~20:00、東京都 CLASKA 8F The 8thGalleryにて開催中)
氷の中に、ゆずの2人や植物などを撮影した写真が入っている。(12月7日~12日12:00~20:00、東京都 CLASKA 8F The 8thGalleryにて開催中)

北岡:そうですね。いつきても作品の見え方が違うので、そういう変化も楽しんでもらえたら嬉しいです。

―そういった「移ろい」や「変化」みたいなものって、“マボロシ”の曲自体のテーマでもありますよね。

北川:そうですね。デジタルではなく、フィルムで撮ったというのも、二度と同じ写真が撮れないっていうことが関係しているんですよね?

北岡:はい。こうしてゆずさんに声を掛けていただいたのも偶然と言えば偶然だし、“マボロシ”という曲自体、偶然の出会いとか突然の別れとか、自分ではコントロールできないものについて歌った曲のようにも思えたので。だから、写真もアナログで撮って偶然起こることのほうが、魅力的だと思ったんですよね。

今はスピードが速いし、簡単に音楽が聴ける時代だからこそ、一個一個の作品にもっと責任をもって届けたい。(北川)

北川:今回“マボロシ”で表現したかったのは、「奥行き」だと思うんですよね。答えをはっきり示さないことで、考える余白ができる。それぞれに答えを委ねたり、それぞれの想像力を働かせることができる。

例えばMVでは、僕らが歌っているシーンはないけど、そのときの心情はどんなものなんだろうと想像したり、ジャケットも僕らの顔がぼやけているけど、その向こう側では、どんな顔をしているんだろうと考えたり。だから、楽曲から派生していったものによって、そういう楽しみ方ができる、立体的に表現ができたなと思いました。

北川悠仁

―何かと解像度の高い世の中になってきていますけど、少しぼやけていたりするほうが、逆に想像力を掻き立てられたり、手を伸ばしたくなるところがありますよね。

北川:ゆずの音楽の基本コンセプトって、リスナーに寄り添うとか、そばにいることだと思うんですよね。そういうものを、僕らの音楽に求めている人も多いと思うんですけど、“マボロシ”は、そこに敢えて隔たりを作っている、そばにいたものがパッと消えてしまうような歌だと思うんです。だから、この曲がこれまでのゆずと一番違うのは、そういったリスナーとの向き合い方なんじゃないかなと思います。

―今回の展示を、ゆずのファンのみなさんには、どんなふうに楽しんでもらいたいですか?

北川:最近よく思っているのは、一つひとつの作品を、ちゃんと大切に考えていくっていうことなんです。今は本当にスピードが速いし、簡単に音楽が聴ける時代だからこそ、一個一個の作品にもっと責任をもって、その世界観も含めて、届けていきたいんです。

だから、今回やった取り組みは、そのスタート地点なのかもしれないですよね。曲を作って配信リリースして、「はい、この曲終わり。次の曲……」っていうことではなく、この曲の世界に、たっぷり浸って楽しんでもらえたら嬉しいですね。写真展を見ながら、自分自身も幻になっていくような感覚を味わってもらえたらなって思います。

ゆず

リリース情報
ゆず
『マボロシ』

2018年11月16日(金)配信

イベント情報
『ゆず マボロシ展』

2018年12月7日(金)~12日(水)
会場:東京都 学芸大学 CLASKA 8F The 8thGallery
時間:12:00~20:00
(受付は19:40まで、最終日は17:00閉廊)
料金:無料

プロフィール
ゆず
ゆず

北川悠仁、岩沢厚治により1996年3月結成。横浜・伊勢佐木町での路上ライブで話題を呼び、1997年10月、1st Mini Album『ゆずの素』でCDデビュー。翌98年6月にリリースした1st Single『夏色』で脚光を浴びると、その後『栄光の架橋』『虹』『雨のち晴レルヤ』などヒット曲を多数世に送り出す。NHKドラマ10『昭和元禄落語心中』の主題歌として、これまでのゆずを手放した『マボロシ』を配信リリースした。

北岡稔章 (きたおか としあき)

1986年高知県生まれ。大阪で建築を学んだ後、ビジュアルアーツ大阪写真専門学校入学。卒業後スタジオエビス入社。退社後、フリーランス。



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