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映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る

映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る

『SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2019』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:伊藤惇 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

「暗い闇に、光を灯していく」存在こそ尊い。

—対立構造に関しては、“Lemon”も“マリーゴールド”も光と闇の対比が描かれていますが、山田さんにとっては重要なテーマですか?

山田:光には「日常を肯定する力」があると思っています。僕の作品のなかでは、陽の光や街明かりなどを象徴的に使っていることが多いですね。それも、単に明るいもの、綺麗なものにはあまり意味を感じていなくて。

—街明かりといえば、堀込泰行さんの“WHAT A BEAUTIFUL NIGHT”も、のんさんの表情をひたすら追いながら、彼女の顔に反射する街明かりも山田さんは見せたいのだろうなと思いました。

山田:具体的なシーンを見せなくても、彼女の心情と、街明かりが呼応してひとつの表情になるというのを捉えたくて。それだけで十分ストーリーになるなと思ったんです。ある種、物語的なものとは違う表現でストーリーを描き出せるんじゃないかって。

—光と闇というのは、日常と非日常、生と死、意識と無意識といった対立項の象徴でもあるような気がしていて。“今夜このまま”のミュージックビデオで、あいみょんがランプを持って闇のなかを移動していくシーンは、水曜日のカンパネラの“メデューサ”(2015年)で、コムアイさんがシャンデリアを持って闇へ入っていくシーンと呼応しているように思いました。

山田:そこに気づいてくださるのはとても嬉しいですね。いつの時代も「暗い闇に、光を灯していく」存在、つまりこの時代を牽引していくことって、とても勇気がいるし、尊いと思う。そういう人の表現は、みんなが心のなかに抱きながらも、吐き出せないでいる思いを受け止め肯定してくれる。“今夜このまま”はそのことを表現した映像ですね。あいみょんの歌が愛情を持って日常を照らすことで、一つひとつの景色や、歴史を鮮やかにしていく映像になればなと。このMVも自分で撮影監督をしています。

—それでいうと、米津さんの“Flamingo”は「闇」の部分を描き切った作品なのではないかと感じました。

山田:そうですね。本当は目にしたくないものや、醜さをテーマに制作しました。日常生活のなかで誰しも、生きている限り理不尽な目に遭うじゃないですか。意図せぬ悪意に見舞われることもある、それは決して地下の駐車場で起きることばかりじゃなく、普通に明るい場所、たとえば会社のオフィスの片隅からドス黒い怨念が襲いかかってくることだって、充分あり得ると思っていて。それでも、生きている限りは前に進んでいくしかない。

暗いところから見る光というか、「闇」と向き合っている人が放つ光は「美しい」とずっと思っていて。ただ、その「闇」に向き合うのは相当つらいことだと思うし、それも勇気がいる。米津さんは、「闇」からも目をそらさない真摯で純粋な人。だからこそ、一緒に仕事をしていて楽しいのだと思います。

山田智和

カウンターであること自体に囚われてしまうと本質からズレてしまう。

—2018年は、質の面でも量の面でも凄まじい活躍ぶりでしたが、改めて振り返って、どんなふうに作品作りに向き合った1年でしたか?

山田:2018年は、「自分は自分でしかない」という当たり前のことを受け入れた年でもありました。自分のテーマ性や作家性というのは、自然と浮かんでくるもので、無理に変えようとして自分に嘘をつくのではなく、メディア、ジャンルが変わっても同じ自分のテーマを作り続けるほうが美しいし、そうやって積み重なっていくことで増す説得力もあるんじゃないかって考えるようになったんです。それが最終的に総体として見たときに、「作家性なるもの」になればいいくらいで、そこ自体は全く重要じゃない。あくまで大事なのは「自分のストーリーを撮る」ということです。

具体的には、2018年は「水」がテーマだったんですけど、“マリーゴールド”にも雨のシーンがあったし、“今夜このまま”でも揺れる水面を撮っていたし。光もそうですが、水の「揺らぎ」みたいなものがストーリー以上に「ストーリー性」を持つ瞬間があって。そういうものをずっと追いかけていた気がします。KID FRESINOの“Retarded”も水辺を延々と歩く映像でした。水って、角度によっては危ういし、美しいところが好きですね。

—向き合うテーマ性は同じでも、スタンスはこの5年間で変化しましたか?

山田:ものすごく変わりました。数年前、水曜日のカンパネラの“メデューサ”を撮っていた時期は「アンチ体制」だったし、カウンターとしての表現をしていたと思うんです。「こんな映像が作れる俺を見ろ!」という「find me」のメッセージ。でも、カウンター的な表現って実は簡単なことだなと気づいたんですよね(参考記事:水カン・コムアイが語る、世間からの「消費」に抗うイメージ戦略)。

それって実は表現でもなんでもなくて、むしろマーケティングの発想に近いし、カウンターであること自体に囚われてしまうと本質からズレてしまう。“マリーゴールド”やNulbarichの”VOICE”(2018年)を撮っていたときは、もはやアンチとかカウンターとかどうでもよくなっていて。「find me」ではなく「follow me」というスタンスなんですよね。こっちについてきたら、面白いかもよ? くらいのスタンスです。

—カウンターを「される」側の覚悟ができた、ということなんでしょうか。“Lemon”も“マリーゴールド”もものすごく攻めた作品ですけど、それをメインストリームでやるっていう。

山田:そうですね。体制であることも否定しないというか。そこでの役割もきっとあると思う。ゆずさんの話でも言いましたが、大衆と向き合う覚悟のある作品、わかりやすい / わかりにくいの問題じゃなくて、伝えることを諦めない作品こそがアートだと思うので。

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番組情報

『SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2019 BEST VIDEO DIRECTOR作品集 -山田智和-』

2019年3月15日(金)25:00~26:00にスペースシャワーTVで放送
※3月25日(月)24:00~25:00にリピート放送

プロフィール

山田智和(やまだ ともかず)

映画監督、映像作家。東京都出身。クリエイティブチームTokyo Filmを主宰、2015年よりCAVIARに所属。2013年、WIRED Creative Huck Awardにてグランプリ受賞、2014年、ニューヨークフェスティバルにて銀賞受賞。水曜日のカンパネラやサカナクションらの人気アーティストの映像作品を監督し、映画やTVCM、ドラマと多岐にわたって演出を手がける。シネマティックな演出と現代都市論をモチーフとした映像表現が特色。

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