
スカート×tofubeats 異なる機材でそれぞれが極める「ポップス」
スカート『トワイライト』- インタビュー・テキスト
- 黒田隆憲
- 撮影:西田香織 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)
澤部渡によるソロプロジェクト、スカートが2ndアルバム『トワイライト』を6月19日にリリースした。
前作『20/20』からおよそ1年8か月ぶりとなる本作は、映画『高崎グラフィティ。』の主題歌“遠い春”などの既発シングルに加え、Kaede(Negicco)への提供曲“あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)”や、書き下ろしの新曲など全11曲入り。極上のメロディーラインや、ヒネリの効いたコード進行など「澤部節」は相変わらず健在だ。以前、CINRA.NETでのインタビューで澤部は、「自分が聴いてきた音楽の解釈で、なんとか曲を作っている」と語っていたが、シンプルでオーガニックなアンサンブルのなかには、ポップ〜ロックミュージック史を彩ってきた名曲たちのエッセンスがふんだんに散りばめられている。
今作に収録された“高田馬場で乗り換えて”は、DJ MARUKOMEへの楽曲提供をセルフカバーしたもの。原曲のアレンジを手がけたのは、澤部と10年近い付き合いになるというtofubeats。彼もまた過去のポップミュージック、とりわけ1990年代のJ-POPをサンプリングしながら、オリジナリティーあふれる楽曲を生み出し続けているシンガーソングライターである。
ギターとPC、それぞれ使う楽器や方法論は違えどソロ名義で作品を作り続けながら、今日までずっと切磋琢磨してきた澤部とtofubeats。彼らはなぜ「ポップス」にこだわり続けているのだろうか。
メンバー募集をかけたら、澤部さんがドラマーで応募してきたんですよ。(tofubeats)
―おふたりは意外にも、付き合いが長いそうですね。
tofubeats:そうなんです。僕が高校生のときに打ち込みとして参加していたバンドがあったんですが、あるとき、そのメンバーが新しいバンドをはじめるためにメンバー募集をかけたら、澤部さんがドラマーで応募してきたんですよ。「デカイ人がくるぞ!」って思っていましたね。
澤部:あははは!
tofubeats:初めてお会いしたのは、それからしばらくしてライブをしたときだったと思います。その前から音源は聴いていて、『エス・オー・エス』(2010年)が最初だったかな。当時の澤部さんのイメージって「マルチプレイヤー」だったんですよね。すべての楽器を演奏して、宅録で音源を作っていく人。
―それは、どういう印象なのですか?
tofubeats:僕自身よく思うことなのですが、「上手い他人に弾いてもらうより、下手な自分が弾く演奏のよさ」ってあるじゃないですか。『エス・オー・エス』とか、全部が澤部さんのノリだけでできていて。以前のバンドではドラムを叩いていましたけど、澤部さんのドラムってめっちゃいいんですよ。そういうよさが『エス・オー・エス』には宿っていて大好きなんです。
澤部:嬉しいなあ。前作(『20/20』)も多重録音の曲があったけど、今回も“それぞれの悪路”という曲は、パーカッション以外自分でやっているんですよ。デモも作らず、頭のなかにあるアイデアを直接カタチにしていったんです。そうすると「イビツ」になるんですよね(笑)。
―澤部さんは、トーフさんの印象って覚えていますか?
澤部:僕が衝撃を受けたのは、トーフくんがトラックを作ったオノマトペ大臣の“S.U.B.urban.”を聴いたとき。大臣のラップももちろん最高なんですけど、音色の選び方とかが絶妙で。茶目っ気があるし、キャッチーだけど下品じゃない。僕は打ち込みの音楽って正直よくわからなかったんですけど、「別の視点」を持たせてもらったんですよね。「なるほど、こうやって楽しむのか」と思えた。いまだによく聴いています。
現代のシンガーソングライターの目の前にはPCがあったのだろうと思っています。(澤部)
―以前、スカートのイベントでおふたりが共演した際(『静かな夜がいい』)、澤部さんはトーフさんについて「シンガーソングライターとしてのシンパシーを感じる」とおっしゃっていましたよね。
澤部:「シンガーソングライター」というと、どうしてもピアノだったりアコギを抱えた人をイメージしがちですけど、それっておそらく「シンガーソングライター」という言葉が出てきたときに、たまたまそういう楽器が身近だったというだけであって、現代のシンガーソングライターの目の前にはPCがあったのだろうと思っています。その、かなり最初のころにいたのがトーフくんなのかなと。

澤部渡(さわべ わたる)
どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド、スカートを主宰。2017年10月に発表した最新アルバム『20/20』でメジャーデビュー。
tofubeats:そうですね。やっていることとしては「遠からず」というか。
―澤部さんの「一人のノリだけでできているよさ」みたいな部分が好きとおっしゃいましたが、トーフさんも基本ひとりで音楽を作っているわけじゃないですか。そうすると、打ち込みなのにちゃんとトーフさんのノリが出るというのもおもしろいですよね。
tofubeats:むしろ打ち込みこそ、「その人らしさ」が如実に出ると僕は思いますね。パソコンで作っているから個性が出ないみたいなこと、よく言われがちですけど、そんなこといったらギターだって弦が6本しかないじゃんっていう話だと思うんですよ。

tofubeats(とーふびーつ)
1990年生まれ、神戸在住。在学中からインターネット上で活動を行い、2013年にスマッシュヒットした“水星 feat.オノマトペ大臣”を収録したアルバム『lost decade』を自主制作で発売。同年『Dont
澤部:たしかに!
リリース情報

- スカート
『トワイライト』初回限定盤(2CD) -
2019年6月19日(水)発売
価格:3,456円(税込)
PCCA.04799[CD] 1. あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)
2.ずっとつづく
3. 君がいるなら
4. 沈黙
5. 遠い春
6. 高田馬場で乗り換えて
7. ハローと言いたい
8. それぞれの悪路
9. 花束にかえて
10. トワイライト
11. 四月のばらの歌のこと[CD2]
初回限定盤 弾き語り
『トワイライトひとりぼっち』
1. あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)
2. ずっとつづく
3. 君がいるなら
4. 沈黙
5. 遠い春
6. 高田馬場で乗り換えて
7. ハローと言いたい
8. それぞれの悪路
9. 花束にかえて
10. トワイライト
11. 四月のばらの歌のこと

- スカート
『トワイライト』通常盤(CD) -
2019年6月19日(水)発売
価格:2,808円(税込)
PCCA.048001. あの娘が暮らす街(まであとどれくらい?)
2.ずっとつづく
3. 君がいるなら
4. 沈黙
5. 遠い春
6. 高田馬場で乗り換えて
7. ハローと言いたい
8. それぞれの悪路
9. 花束にかえて
10. トワイライト
11. 四月のばらの歌のこと

- tofubeats
『Keep on Lovin’ You』 -
2019年5月24日(金)配信
プロフィール

- スカート
-
どこか影を持ちながらも清涼感のあるソングライティングとバンドアンサンブルで職業・性別・年齢を問わず評判を集める不健康ポップバンド。2017年10月に発表したアルバム『20/20』でメジャーデビュー。そのライティングセンスからこれまで多くの楽曲提供、劇伴制作に携わる。近年では藤井隆のアルバム『light showers』(2017年)に「踊りたい」、映画「PARKS パークス」(2017年)には挿入歌を提供。「山田孝之のカンヌ映画祭」(2017年)ではエンディング曲と劇伴を担当している。2018年に入っても映画「恋は雨上がりのように」の劇中音楽に参加。また、スピッツや鈴木慶一のレコーディングに参加するなどマルチに活動している。

- tofubeats(とーふびーつ)
-
1990年生まれ、神戸在住。在学中からインターネット上で活動を行い、2013年にスマッシュヒットした“水星 feat.オノマトペ大臣”を収録したアルバム『lost decade』を自主制作で発売。同年『Don't Stop The Music』でメジャーデビュー。森高千里、藤井隆、DreamAmi等をゲストに迎えて楽曲を制作し、以降、アルバム『First Album』(14年)、『POSITIVE』(15年)、『FANTASY CLUB』(17年)をリリース。2018年10月に4thアルバム『RUN』をリリースした。SMAP、平井堅、Crystal Kayのリミックスやゆずのサウンドプロデュースのほか、BGM制作、CM音楽等のクライアントワークや数誌でのコラム連載等、活動は多岐にわたる。