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なぜAlfred Beach Sandalは名義を変えた? 北里彰久が語る

なぜAlfred Beach Sandalは名義を変えた? 北里彰久が語る

北里彰久『Tones』
インタビュー・テキスト
松永良平
撮影:前田立 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

バンドみたいに作ってきたことと、STUTSと一緒にやったこと、その両方の経験があれば、自分ひとりでもできるんじゃないかなって思えた。

―まるで、Alfred Beach Sandalというキャラを演じているような?

北里:でも、俺はそういうタイプじゃないから。そのくらいから自分のなかの「何て呼んだらいいのか」問題が加速していったんです。友達は「ビーサン」でいいんですけど、こういう取材の場とかで名義のことを聞かれても「どういうことなんでしょうね?」としか言えない感じ(笑)。

なので、いったん考えるのをやめました。強いて言えば、自分のなかでAlfred Beach Sandalを名乗る意味があるのは、誰かと一緒にやるときだけですね。誰かとアイデアを持ち寄って「Alfred Beach Sandal」という場所で何か一緒に作ろう、ということ。

北里彰久

―そういう経緯もあって、今回は「北里彰久」でやると決めていた?

北里:それも、そんなに強い決意じゃなかったんです。でも、今回は最初からある程度ひとりで曲を完結させるということからはじめているから、あえてソロプロジェクトみたいな名義を設定する意味もないなと思って。もちろん人に参加はしてもらっていますけど、最初に自分がAlfred Beach Sandalを名乗ったときとはやり方も変わっているんで、これはもう自分ひとりを冠にした作品ということでいいんじゃないかと思ったんです。

―なるほど。そういう意味ではブレてはいないですね。バンドでやりたかったからAlfred Beach Sandalだったし、ひとりで作るという自覚がはっきりしたから北里彰久になった。そう考えると、4年前の『Unknown Moments』はすごく象徴的なアルバムで、バンドサウンドの曲もあったけど、ひとりで成立してるフォーキーな曲の意味合いもすごく増していたと思うんです。その間にSTUTSとのコラボが入っているから、そのつながりがちょっと見えにくくはなっているけど、実は続いていた。

Alfred Beach Sandal『Unknown Moments』を聴く(Apple Musicはこちら

北里:それはありますね。それにSTUTSは完全にひとりでコントロールできる人だから、彼の作業を間近で見てると「へえ」と思うところもあったんです。バンドみたいに作ってきたことと、STUTSと一緒にやったこと、その両方の経験があれば、自分ひとりでもできるんじゃないかなって思えた。

「俺に注目しないでくれ。あんまり見ないで」って気持ちがあるんです(笑)。

―そういう意味でも、『Tones』は自分ひとりでいちから取り組んだアルバムと言えるんですね。

北里:もともとひとりの宅録で音楽をはじめているんですけど、今回やってることは当時とは違いますね。歌うことに対する意識もまったく違うから。楽器に声を乗せるということ自体は自然だったけど、以前は「歌いたい」って欲求がそんなになかったんです。自分の話をされていると感じる歌が俺はあんまり好きじゃなくて。今でも俺は、「自分の話をする」って感覚で歌は作らない。

矛盾しているけど「俺に注目しないでくれ。あんまり見ないで」って気持ちがあるんです(笑)。「じゃあ、なぜ人前でやってんだよ」って話になるけど、そこは「人に向かって音を出したい」っていうところが一番大きくて。だからライブも好きだし。みんなが音だけ感じてくれていたら一番いいんですけどね。でも、俺が歌ってたらやっぱりみんな俺を見るじゃないですか。その視線が怖いというか(笑)。

―じゃあ、そういう葛藤を拒否して音としての声を出すだけだったら「わー」とか「あー」でもいいわけだし、日本語じゃなくてもいい。だけど、北里彰久としての音楽は日本語ポップスとしての骨格がしっかりしていますよね。

北里:そうじゃないと音楽として成立しにくいと思ったから、ということなんですけどね。自分はミュージシャンとして自分を楽器に託すタイプじゃないし、声とか言葉のグルーヴやリズムがサウンドに乗ることでようやく自分のしていることが形になるという感覚があったから。それぞれの要素が「ハモる」って感覚ですね。

同じ言葉でもそのときの音色とかメロディーによって全然意味が変わるじゃないですか。そういうものが最終的にどういうふうに音になるかってことにずっと興味がある。今まではっきりとは意識してなかったけど、そこが今回のアルバムで一番やれてるところかも。

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リリース情報

『Tones』
北里彰久
『Tones』(CD)

2019年7月10日(水)発売
価格:2,700円(税込)
PECF-1175

1. 子午線
2. Easy Tempo
3. チークタイム
4. Flowers for a Stranger
5. エンドオブヴァケイション
6. 夜光のスケッチ
7. 出発
8. 夏のさなか
9. Fortune

イベント情報

『北里彰久“Tones”release tour』

2019年7月28日(日)
会場:長崎県 崇福寺 Coffee & clayworks 笠
Live:北里彰久(Acoustic Band Set)
料金:前売2,800円 当日3,300円(共にドリンク別)

2019年7月30日(火)
会場:福岡県 正屋 本店
ライブ:
北里彰久(Acoustic Band Set)
Cobalt boy
料金:前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

2019年9月1日(日)
会場:兵庫県 神戸 旧グッゲンハイム邸
ライブ:北里彰久(Band Set)
前売:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

2019年9月14日(土)
会場:東京都 青山 CAY
ライブ:北里彰久(Band Set)
DJ:nutsman
料金:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

2019年10月5日(土)
会場:愛知県 名古屋Live&Lounge Vio
ライブ:北里彰久(Band Set)/ odd eyes
DJ:nutsman
料金:前売3,300円 当日3,800円(共にドリンク別)

プロフィール

北里彰久
北里彰久(きたざと あきひさ)

2009年よりフリーフォームなソロユニットAlfred Beach Sandalとして活動開始。3枚ほどアルバムを作る。ロックからMPB、ブラックミュージックまでを三次元的にイビツに迷走していく手腕には一定の評価をいただく。「DJ的発想で曲を作っている」と言われ、いい気になって「そうですね」と答えたことがある。最近はよりひとりぼっち方面の活動が増え、歌にフォーカスしていく傾向がみられる。ギターもちょっと弾ける。

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