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贅沢貧乏が「演劇」という媒体で表現する、社会=自分の生活

贅沢貧乏が「演劇」という媒体で表現する、社会=自分の生活

贅沢貧乏『ミクスチュア』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:川面健吾 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

由梨ちゃん、すごい量の本を読んで勉強してるよね。そして「知れば知るほど絶望する!」って言ってる。(田島)

―『ミクスチュア』はどんな作品になりそうですか?

山田:いまちょうど、ある社会に異物が入り込むというシーンを作っているところなんですけど、過剰に清潔に保たれている社会、そこに自分たちとは違うものが入ってきたときに起こる暴力や排除、人々の翻弄みたいなものが作品の主題になっています。

ほとんど言葉のないシーンがあるんですけど、ここは作品を象徴するものになっているんじゃないかな。ゲームのように異物が姿を現したり、逆に社会に混じって匿名的な存在になって見えなくなったり。

大竹:いままでにない作り方をしてるよね。役もどんどんスイッチするからめちゃくちゃ忙しい(笑)。

田島:こんちゃんは特に大変だよね。

山田:アンサンブル(群衆)のシーンではないんですけど、たくさんの身体が動くシーンを見たいんだよね。それぞれの役を演じているけれど、具体的な会話や言葉によってではなく、動き、構図、音なんかによって、突然匿名のアンサンブル的な存在になってしまう瞬間をたくさん作りたい。

―途中まで書かれた台本を読ませていただいたのですが、たしかにそんな印象を受けました。起きている事態は明確なのに、登場人物たちの会話は、向き合っている、というより、ただ通り過ぎていくだけ……みたいな。

そのあり方自体が時代の状況を反映していると思うのですが、ここ数年の贅沢貧乏の作品は、ちょっと社会派的な内容になっていますね。

山田:そうですね。『フィクション・シティー』(2017年)もだし、『わかろうとはおもっているけど』(2018年)もフェミニズムの話ですし。

ただ、劇団を立ち上げたときから社会的なことは作品の真ん中にいつもあったな、って思うんですよ。それが伝えたいことの中心ではないんですけど、自分が生きている社会への興味は無視できない。なぜなら、政治や社会で起きていることは、全部自分の生活の話だと思っているから。それらを理解するプロセス自体が、作品を作ることになっている。

左から:山田由梨、大竹このみ、田島ゆみか

田島:由梨ちゃん、すごい量の本を読んで勉強してるよね。そして「知れば知るほど絶望する!」って言ってる。

山田:「リテラシーは人を不幸にする!」ってね(苦笑)。こんな不幸な気持ちを味わいながら、なんで作品を作っているんだろうって思うよ。

田島:それで私たちが「生きるってそういうことだと思う!」って応えたり(笑)。

山田:こういう深い会話ができるようになったのも、この数年。中国や城崎での時間のなかで、お互いが気になってることや本を持ち寄ってディベートしたり。

大竹:作品と直接関係がないことでも「この記事を読んでショックを受けたんだ」みたいことをLINEで送ってくれたり。

田島:私たちは由梨ちゃんと違って本を読むのが遅いんだけどね。

山田:喋ってみて、話を聞いてくれる人がいるってことが大事なんだよ。『わかろうとはおもっているけど』のときも突然「お茶しよ?」って誘ったじゃん? あれは私が相談したくて仕方なかったからで(笑)。

田島:そうだ! そのときに「私は作品を作るたびに絶望して、本当に苦しい」って言ってたよね。知ること、情報をインプットすることが、作品を作るためには必要だけど、それがつらいって。

田島ゆみか
田島ゆみか

山田:作品がフェミニズム、ジェンダーの問題を扱っていたこともあってね。ちょうど自分たちも、例えば結婚なんかで生活スタイルが変わってくる年齢になりつつあったし。考えてみると、贅沢貧乏でなにかを作るときって、他の媒体でコラムや小説を書くのとはぜんぜん違うテンションにならざるをえないんだよね。なんというか……生活の一部。自分の生きることと直結してるから軽く書けない。他の仕事を軽く考えてるわけじゃないんだけど(苦笑)。

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イベント情報

贅沢貧乏『ミクスチュア』
贅沢貧乏
『ミクスチュア』

2019年9月20日(金)~9月29日(日)
会場:東京都 池袋 東京芸術劇場 シアターイースト

作・演出:山田由梨
音楽:金光佑実
出演:
大竹このみ
田島ゆみか
青山祥子
小日向星一
中藤奨
細井じゅん
松澤傑
武井琴
浜田亜衣
料金:
前売 一般4,000円 U-25券3,500円 高校生以下1,000円
当日 一般4,500円 U-25券4,000円 高校生以下1,500円

アフタートーク

『ミクスチュア』creator's talk(山本貴愛・小高真理・金光佑実)
日時:2019年9月21日(土)18:00

清水文太(アーティスト・クリエイター)
日時:2019年9月22日(日)18:00

長谷川愛(アーティスト)
日時:2019年9月23日(月祝)18:00

サエボーグ(アーティスト)
日時:2019年9月28日(土)18:00

プロフィール

贅沢貧乏(ぜいたくびんぼう)

2012年旗揚げ。山田由梨(劇作家・演出家・女優)主宰。舞台と客席、現実と異世界、正常と狂気の境界線をシームレスに行き来しながら、現代の日本社会が抱える問題をポップに、かろやかに浮かび上がらせる作風を特徴とする。2014年より一軒家やアパートを長期的に借りて創作・稽古・上演を実施する「家プロジェクト(uchi-project)」の活動を展開。一軒家を丸ごと使った観客移動型の群像劇『ヘイセイ・アパートメント』(第15回AAF戯曲賞ノミネート)や、アパートの一室で3ヶ月間に及ぶロングラン上演を実施するなど、既存の上演体制にこだわらない、柔軟で実験的な試みを行なう。2016年にはアトリエ春風舎にて、チェルノブイリや福島での出来事を題材にした『テンテン』を上演し話題となる。

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