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椿昇×松倉早星 反逆のアートフェアが描こうとする京都の未来図

椿昇×松倉早星 反逆のアートフェアが描こうとする京都の未来図

『ARTISTS' FAIR KYOTO 2020』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:伊藤信 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

不安なのは、このペースでやっていくと、どこかで面白いアーティストが枯渇するんじゃないかってことです。(松倉)

―そういった風に、既存の状況に対して「それで正しいのか?」とつねに疑問を投げかけることが、椿さんのディレクションと作品の特徴という印象があります。

椿:言語化できない塩梅や感性を大事にしたい。アートってそれで成り立ってるんだからね。アートは、最高の非言語のコミュニケーションツールだから。全部を言葉で説明できないからこそ、コレクターは作品を買っちゃうんですよ。でも、今のアートシーンって「こういうのが見れますよー。こういうことを言ってるんですよー」っていうタイプの展覧会ばっかりじゃないですか。

椿昇

―入場料に見合った満足を提供するような、品質保証感のある展覧会は増えていますね。それらはけっしてレベルが低いわけではないですし、お金がかかっているだけあって満足度も高い。でも、あらかじめ与えられるものがわかっていて観に行くのであればエンターテイメント作品で十分というか……。

椿:それは世界中で起こっている現象で、知っているもの、記号化されたものだけが好まれて売れていく。でも、記号化できない、言語化できない、説明できない、写真に撮っても「映え」もしない。そういう隙間にあるようなものこそが本当は人の心を動かすってことを知らなければいけないですよ。

だからコレクターには「他の人が買っている流行のものを俺は買わない」とか「誰も買わないものを俺は買う」とか、そういうマインドを持ってアートに向き合ってほしいね。

松倉:やっぱり反逆(笑)。

『ARTISTS' FAIR KYOTO 2019』会場風景 撮影:前端紗季
『ARTISTS' FAIR KYOTO 2019』会場風景 撮影:前端紗季

椿:『AFK』が大事にしてることがまさにそれだから。リベラルアーツの教養を基盤にして、どのように作品を見るか、知るかってことをセットにしてコレクターや観客に説得工作でアタックしている感じ。

言ってみれば、現代の牢獄からの「人質救出作戦」! みんなが草間(彌生)さんや奈良(美智)さんの作品を欲しがる状況から、富裕層を楽器ケースに入れて逃亡させるわけ!

―タイムリーなネタ(苦笑)。

松倉:広告の世界もどんどんそうなってますよ。僕はもともとそこにいたからなおさら思うんですけど、「消費すること」自体を商品にして売っているのは好きじゃないんです。

それに対して、『AFK』は毎年必ず「こいつすごいな! でもアートがなかったら、この人どうなっちゃうんだろう」みたいな若い作家が現れるのでワクワクするし、自分の好奇心も更新されていく感じがあります。ただ不安なのは、このペースでやっていくと、どこかで面白いアーティストが枯渇するんじゃないかってことです。

松倉早星

椿:同じ心配をしてるよ。ただ、今年の『AFK』の動向を見ていると新しい動きを感じるね。昨年から始めた公募枠の倍率が前年比で2倍くらいになっていて、中堅のメジャーな作家もエントリーするようになっている。

しかも海外……中東のアーティストからも問い合わせが来ている。この動きを見ていると来年以降は、もっと公募の枠を広げてよりコンペ的な性格のものにしていってもいいなと思っています。

―そこも『AFK』の独自性かもしれないです。会期中はアーティスト自身が購入者と直接話し合うシステムになっているから、アーティストが自主性を持ちやすい環境だと言えます。ふつうのアートフェアはギャラリーやキュレーターが主導するかたちですから。

椿:つまり、上からではなく基盤であるアーティストからの国際化。ボトムアップの国際化だね。3回目の開催を控えているこの時期に未来のことを言っちゃうんだけど、将来的には資金を獲得してウェブでの販売システムを作りたい。

松倉:それは最初から話し合っていましたよね。本当に作りたい。

椿:ネットで作品を購入するシステムはすでにあるけれど、便利さに与しないものを実現したいね。例えば、ペルセウス流星群が出ている3時間だけオープンしてゲットできるとか。そういうイベント性を持たせるとマーケット的にもめっちゃ盛り上がるだろうし、買う側にしても次の開催時期を知るためには天体観測表で調べる必要がある(笑)。

松倉:アートとはまた別の知識も持たないと買えない(笑)。でも、そういう風に誰もが自分で知恵と技術を持って生きていく時代になっていくべきだ、っていう感覚は強くありますね。

『ARTISTS' FAIR KYOTO 2019』会場風景 撮影:前端紗季
『ARTISTS' FAIR KYOTO 2019』会場風景 撮影:前端紗季

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イベント情報

『ARTISTS' FAIR KYOTO 2020』
『ARTISTS' FAIR KYOTO 2020』

2020年2月29日(土)、3月1日(日)
会場:京都府 烏丸御池 京都府京都文化博物館 別館、丸太町 京都新聞ビル 地下1階
時間:11:00~18:00

プロフィール

椿昇(つばき のぼる)

京都造形芸術大学芸術学部美術工芸学科教授。アメリカ同時多発テロ事件をきっかけとした「UN APPLICATION PROJECT」、東日本大震災復興のための「VITAL FOOT PROJECT」など、時勢を受け、様々なプロジェクトを展開してきた。長年にわたってアート教育にも携わり、京都造形芸術大学美術工芸学科の卒展をアートフェア化、内需マーケット育成のためにアルトテックを創設。アートを持続可能社会実現のイノベーションツールと位置づけている。

松倉早星(まつくら すばる)

1983年北海道富良野生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。東京・京都の制作プロダクションを経て、2011年末ovaqe inc.を設立。2017年7月より、プランニング、リサーチ、クリエイティブに特化したNue inc設立。代表取締役就任。これまで領域を問わないコミュニケーション設計、プランニング、戦略設計を展開し、国内外のデザイン・広告賞受賞多数。

前田紗希(まえだ さき)

1993年福井県生まれ。2015年京都造形芸術大学美術工芸学科油画コース卒業。個展に2017年『DUAL BLUE』(GALLERY TOMO ITALY,MAG / イタリア)、2019年(GALLERY TOMO / 京都)、2018年『アートフェア東京』(MISA SHIN GALLERY)等出展多数。作家が日常の中で感じ取る、物事の相対性や対比がトライアングルのフォルムとして画面に現れる。トライアングルは「隣り合うものによって答えが変わり、決して交わりはしない」という万物とその関係性の根本を主張する。

黒川岳(くろかわ がく)

1994年島根県生まれ。2016年東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業、2018年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程彫刻専攻修了。自身が出会った様々なものの音や形、動きを注視し、それらを自らの身体で捉えようとする行為を繰り返す中で生まれる形や音、動きなどをパフォーマンスや立体、映像、プロジェクトなど様々な形式で発表している。近年は音楽家やダンサー、パフォーマーとのコラボレーションによる作品制作も行う。

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