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原田祐馬×服部滋樹のデザイン流儀 「公共性」と「工共性」

原田祐馬×服部滋樹のデザイン流儀 「公共性」と「工共性」

『UMA / design farm展 Tomorrow is Today: Farming the Possible Fields』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:片岡杏子 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

フィロソフィー(哲学)をたくさんの人が真似できる社会になってほしいんです。(原田)

―展覧会のためのステートメントで、原田さんは「たんぽぽの家」理事長の播磨靖夫さんからいわれた言葉が「UMA / design farm の道しるべ」になったと書いてますね。

原田:もともとグラフィックの仕事を依頼されていたんですが、Good Job! Projectの立ち上げのときに播磨さんが呼んでくれたんですよ。「いろいろ凝り固まってるから、横串で刺して、ガラガラポンしてほしい!」と、播磨さんからいわれたことをステートメントに書きましたが、行政と近いところがあって、自分の仕事で手一杯になって福祉の世界も横の連結が薄い。そして物事が進行するほど、その縦割りが深くなっていっちゃう。

奈良県の福祉施設「たんぽぽの家」と共同で企画した、障害のある人たちの仕事づくりを実践する「Good Job! Project」(2012年~)の様子 Photo Yoshiro Masuda
奈良県の福祉施設「たんぽぽの家」と共同で企画した、障害のある人たちの仕事づくりを実践する「Good Job! Project」(2012年~)の様子 Photo Yoshiro Masuda

原田:学生時代、椿昇さんやヤノベケンジさんといった現代美術のアーティストのサポートやアシストを僕はやっていたんですけど、そこで学んだ最も大きなことは「世界を丁寧に見るための目」なんです。社会からこぼれ落ちて見えなくなっているものがたくさんあって、それをちゃんと見ることや、さらにそれを視覚化するのがこれからのデザイナーの仕事なのだと、先輩たちとの関わりから強く感じたんですね。いまの社会って、ついつい速く走りすぎてしまうでしょう? そうすると、人は見えなくなったり忘れちゃったりしがちだから。「そうではない世界のほうが大事かもしれないぞ」と思ってずっと仕事してきたし、URと進めている色彩計画や、公共性の高い仕事が増えてきたのもその流れにあるかもしれないです。

だから、さっき服部さんがいっていた「流行らせたい」って発言が意味するところもすごくわかります。つまりフィロソフィー(哲学)をたくさんの人がコピーできる社会になってほしい、ってことなんですよね。「こういうやり方があるんだ」「真似していいんだ」と感じて、たくさんの人に共有されて広がっていくスキーム。それがデザインの面白さかも、って最近の僕は思っています。

大阪にある、UMA / design farm社内
大阪にある、UMA / design farm社内

服部:そういう年齢に、祐馬がなってきたってことでもあるんじゃない? 昔は、「公共性には断固アンチだ!」みたいな雰囲気があったじゃない。とくに政治とかさ。でも歳をとって、社会もどんどん変化してきて、公共について考えることが僕らに求められる環境にもなってきて、さらにそれを後輩たちやこれからデザインを志す若い人たちにどうやって残すかみたいなことも考えるようになってきた。そうすると、僕らが固執してきた「かたち」が第1ではなくなるんだよね。フィロソフィーとか魂みたいなものに関心が寄っていく。

原田:そうですね。もうちょっといえば、公共といっても政治とか行政の話じゃなくて「人がふといられる場所」っていうのかな? 路上とか電車の中とか。そういう、誰もが自由に出会えるところに存在するデザインについて考えています。そういう環境を開くこと、そしてきちんと閉じるってことの両方を考えて最近はデザインしてますね。

服部:10年前はあんなに尖っていた祐馬が大人になって(笑)。

原田:「デザインの関係者、全員ぶっ潰す……!」な感じでしたね。

服部:それはわかるよ。僕らって結局、バブル景気の尻拭いを仕事にしてるようなもので、先輩たちを一切信用してなかったんです。

原田:デザイン誌に載ってる生意気そうな服部さんの写真見てイライラして(笑)。なので、出会う前は服部さんのことも「クソグラフ」って呼んで仮想敵にしてました。口が悪いですね。きっと若い人たちに僕もいわれてるかもしれません……。

『Good Job! Project』(2012年~)ワークショップの様子 Photo Michio Hayase
『Good Job! Project』(2012年~)ワークショップの様子 Photo Michio Hayase

―その怒りの理由ってなんですか?

原田:ちょっと前に後輩から教わったんですけど、僕らの世代っていわゆる「ロスジェネ」らしいんですよ。バブルが弾けて行く末がないかわりに、逆に自由で自立性が高い。そういった時代の中で、自分たちを守るためには強くないといけないって気持ちもあったかもしれません。それで1人で尾崎豊をやってたのかも(笑)。

―服部さんは原田さんの10歳年上ですね。若いときはどんな風に時代を見ていましたか?

服部:grafを立ち上げたのが1998年で、世紀末のいろんなことを腹立たしく思ってましたね。僕も尾崎やんけ(笑)。

政治もデザインも、あらゆることに不満を抱いていたから、自分たちでつくることから始めないと戦えないと思ってました。「B to B(企業同士の商売)」と「B to C(企業と顧客のあいだでの商売)」を両方やるっていうのも最初から考えてましたし。後者をやったのは、社会の中に「よい生活者」がもっと増えればいいなと思ったからだし、前者の企業に対しては「こんな世の中間違ってるぜ!」と伝えたかったから。だから創業したばかりの頃は人のツテを頼って大きい企業の役員に直談判に行って「こういうアイデアがあるからやらせろ!」って迫ってました。

たとえば、不動産業が管理してる駐車場を週末に貸し出して日曜はマルシェをやりましょう、とか。そうすることで都市のボイド(空白)に機能を持たせることができるし、住宅区画の中での生活にも変化が現れるんじゃないか、と提案して。もちろんうまくいくことばかりじゃなかったけど、正論だけで組み立てられるデザインが、必ずしもよくないってことを知れたりもした。それは現在の活動の土台になっています。

『UMA / design farm展 Tomorrow is Today: Farming the Possible Fields』ポスタービジュアル
『UMA / design farm展 Tomorrow is Today: Farming the Possible Fields』ポスタービジュアル(サイトを見る
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リリース情報

『UMA / design farm展 Tomorrow is Today: Farming the Possible Fields』
『UMA / design farm展 Tomorrow is Today: Farming the Possible Fields』

日程:2020年2月25日(火)~3月28日(土)日曜・祝日休館
会場:東京都 銀座 クリエイションギャラリーG8
料金:無料

プロフィール

原田祐馬(はらだ ゆうま)

1979年大阪生まれ。UMA / design farm代表。大阪を拠点に文化や福祉、地域に関わるプロジェクトを中心に、グラフィック、空間、展覧会や企画開発などを通して、理念を可視化し新しい体験をつくりだすことを目指している。「ともに考え、ともにつくる」を大切に、対話と実験を繰り返すデザインを実践。主なプロジェクトに、香川県・小豆島町のアートプロジェクト「醤の郷+坂手港プロジェクト ー観光から関係へ」、奈良県・奈良市のたんぽぽの家と障害のある人たちの仕事づくりを実践する「Good Job! project」、福岡県・福智町での町立図書館と歴史資料館建設プロジェクト「ふくちのち」、福井県・福井市での未来につなぐ ふくい魅える化プロジェクト「make.fukui」などがある。グッドデザイン賞審査委員、京都造形芸術大学空間演出デザイン学科客員教授。

服部滋樹(はっとり しげき)

1970年生まれ、大阪府出身。graf 代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。美大で彫刻を学んだ後、インテリアショップ、デザイン会社勤務を経て、1998年にインテリアショップで出会った友人たちとgraf を立ち上げる。建築、インテリアなどに関わるデザインや、ブランディングディレクションなどを手掛け、近年では地域再生などの社会活動にもその能力を発揮している。京都造形芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授。

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