特集 PR

山縣良和×松下徹 異なる価値観が共存し交わる理想の共同体を描く

山縣良和×松下徹 異なる価値観が共存し交わる理想の共同体を描く

GAKU
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

先生は明快に物事の答えを言ったり教えることにがんばらなくていい。むしろたまにはナメられるくらいが丁度いい。(山縣)

松下:ファッションもグラフィティも一つの文脈を入り口にしていますが、いろんな背景の人が集まるとどこかでおかしなことが起きて、みんなが変化していきますよね。その変化のあり方は文脈に基づいてる必要はないし、ぶっちゃけて言えば、そこで誰がどう成長するかなんてどうでもいい感覚があります。

個々人が、それぞれの自己実現のなかで変化してさえいればいい。それを教育の名の下にこっちがあらかじめ設定しておくことなんてできるわけないんですよ。

山縣:ファッションにも世界的な潮流ってものが常にありますけど、その視点ばかりになって行動しているうちに排他的になってしまうところがあります。それをどう避けるか、ですよね。

山縣良和

山縣:「ここのがっこう」に来る人たちのなかには、普通にファッションのなかで生きてるだけだと会えない人がざらにいるんですよ。例えば84歳の旅好きのおばあちゃんだとか、40歳をすぎてファッションとは別の仕事をしてるおじさんだとか、小学校の先生をしてる人がやって来るんです。

そして、その先生がチームを組むことになった高校生から怒られたりしてる。それって普通に考えたらおかしい、ずれたことかもしないけど、そういう状況が成立してること自体が面白いし楽しい。

なかには、普通の会社だったら敬遠されるだろうなっていうような、変わった人もいるんです。でも、視点を変えてみることで、その人がめちゃくちゃクリエイティブにチャーミングになったりする。そこで生まれる新しい視点は、周囲の人たちにとっても発見だし、本人にとっても知らなかった自分を発見する機会になるんです。

ここのがっこうの様子 / courtesy of coconogacco
ここのがっこうの様子 / courtesy of coconogacco

松下:僕が深く関わる人たちも似てますね。道に悩んでいる人たち。ストリートカルチャーの表現者だけれど、そのままでいいか迷っている人たち。

山縣:なんでそういう人が集まるんでしょうね。

松下:「中間」にいる人って単純に面白いですよ。定まってないから。僕の場合だと、逆に自分が生きていくためのビジョンが確立されている人とはコラボレーションが発展しないことが多いです。

あとこれは僕自身の迷いでもあるんですけど、教育的な役割を期待される仕事としてワークショップの授業があるじゃないですか。で、一週間とか一か月単位で課題をこちらから出して、それに対する学生からの反応や作品が面白かったりすると、むこうもこっちもエキサイティングになる。

打てば響くというか。そういう授業って、すごい求められますよね。それで、実際面白い先生として人気者になっちゃったりする。

山縣:わかるわかる。

松下:でも、自分の学生時代を卒業してから振り返ってみると、そういう面白かった授業の記憶が一切残ってないんですよ。

山縣:(笑)。

ここのがっこうの様子 / courtesy of coconogacco
ここのがっこうの様子 / courtesy of coconogacco

松下:で、わけわからないわりに教室の前のほうで頑張って聞いてた授業の記憶のほうが、あとになって蘇ってきたりする。教育ってそういうところがあるじゃないですか。

山縣:僕の感覚でいうと、瞬間的、短期的な高揚感も、あとになってしみてくる記憶のどちらも大事にしたいなってところはあるかも。でも実際のところ、学生だった人に再会して話を聞くと、記憶に残っているのは後者みたいですね。覚えてもいない僕のある種どうでもよい言動とか身振りについて「すごい印象に残ってます!」とか「それで山縣さんが考えてることがわかりました!」とか言われると……。

松下:それやばいっすね。緊張しますね(笑)。

山縣:それもあって最近意識してるのは、先生は明快に物事の答えを言ったり教えることにがんばらなくていいかな、ってことです。親方的にリスペクトされなくてもよくて、むしろたまにナメられるくらいが丁度いいのかもと。大事なのは個々人を尊重しあうこと、それに尽きるのかもしれません。

松下:忌野清志郎(RCサクセション)の“ぼくの好きな先生”って曲ありますよね。あの「先生らしくない」おじさんが、オルタナティブな教育の理想だと思うんですよ。

いまみたいなガチガチの教育制度のなかで、学生とふわふわした関係性を築ける先生っていうのは、相当に特殊な才能を持っている人ですよ。

RCサクセション“ぼくの好きな先生”を聴く(Apple Musicはこちら

山縣:僕も本当にそう思う。さらに言えば、一緒に空間にいて、いつのまにかみんな、僕の存在を忘れてる、みたいなのが理想なのかもと。まあたまに寂しくなりますけど(苦笑)。

松下:それは寂しくなりますよね!

山縣:自分の人生を振り返ると、ずっと僕はコンプレックスの塊だったんですよ。馬鹿にされながら人生を歩んできたので、とにかく「馬鹿にされたくない」ってモチベーションでこれまでやってきた。

いや、いまももちろんあるんですけど(笑)。ただ、そのシールドが最近はゆるんできて「やや馬鹿にされるくらいでもいいかな」と最近は思ってます。

というのも人は年齢を重ねながら、知らずしらずのうちに立場が上になってしまうもの。自分がそんなつもりでなくても他人から威圧的に感じられたりします。だからできる限り関係性はフラットな場所が理想です。

以前からやっている「ここのがっこう」のスタンスはそれですし、渋谷でやってる「GAKU」もそうありたい。学校からはみ出ちゃった子、不登校の子が「自分はこれでいいんだ」と発見できる場所でありたいと、ますます思ってます。

松下:SIDE COREもそんな感じですよ。大学や美大を出てなくて、権威とは無縁でもいい。「どこから来たかわからない伝説を作る」っていうのが重要な仕事だと思ってます。

最後に聞きたいんですけど、山縣さん的に最高だった先生って誰ですか? 僕はバリー・マッギーなんですけど。

山縣:真っ先に思い出すのは僕が通っていたセント・マーチンズのハワード・タンゲ先生ですね。名物おじいちゃんなんですが、特段、難しいことは何も言わないんですよ。例えば「ビューティフル!」とかシンプルな言葉だけで、あとは佇んでるだけ。でも、その佇まいかたがすごい好きで、今まで出会った先生の誰よりも影響受けましたね。

松下:やっぱり「ぼくの好きな先生」タイプだ。そういう面白い人を探して出会うのが僕的なSIDE COREの戦いですね。でも、そういう人は簡単には学ばさせてくれないんですよー(笑)。てごわいっす。

Page 3
前へ

施設情報

GAKU
GAKU

10代の若者たちが、クリエイティブの原点に出会うことができる「学び」の集積地。アート、映像、音楽、建築、料理など、幅広い領域で、社会の第一線で活躍するアーティストやデザイナー、先進的な教育機関が、10代の若者に対して、本質的なクリエイティブ教育を実施する。10代の若者が、本物のクリエイターと実際に出会い、時間を過ごし、ともに考え、試行錯誤をしながらクリエイションに向き合うことで、まだ見ぬ新しい自分や世界、すなわち、原点のカオスに出会うことを目指す。ディレクターには、writtenafterwards(リトゥンアフターワーズ)のデザイナー山縣良和を迎え、世界的評価を受けるファッション・スクール「ここのがっこう」、カルチャーWEBメディアCINRAによるオンラインラーニングコミュニティ「Inspire High(インスパイア・ハイ)」などが集まり、感性、本質的な知識、自己と他者の原点を理解する精神を育むプログラムを構成する。

ここのがっこう
ここのがっこう

2008年にwrittenafterwardsのデザイナーである山縣良和が立ち上げた学校です。 「ここ」とは場所を表す「ここ」であると同時に、多数の中の1人1人を表す「個々」を意味しています。ここのがっこうでは「ファッションの本質を伝え、教育・社会・文化・環境的視点を持ったコミュニケーションツールとしてファッションの役割を提案していく環境や交流の場を構築しています。
GAKUで開講するcoconogacco foundationでは、山縣良和をはじめとしたcoconogaccoの講師と現役の生徒を交え、展開していきます。

プロフィール

松下徹(まつした とおる)

1984年神奈川県生まれ、東京藝術大学先端芸術専攻修了。身近な化学実験や工業生産の技術によって絵画作品を制作。高電圧の電流によるドローイング、塗料の科学変化を用いたペインティングなど、システムがオートマチックにつくり出す図柄を観測・操作・編集するプロセスにより絵画作品を制作。またグラフィティ等のストリートカルチャーに関する企画を行うアートチームSIDE COREのディレクターの一人でもあり、国内外のストリートカルチャーに関する執筆をおこなっている。個人の活動としては2019年SNOW CONTEMPORARYにて個展『CUTTER』を開催。SIDE COREとしては2013年のTerratoriaでの『SIDECORE 身体/媒体/グラフィティ』を始めとし、2018年市原湖畔美術館にて『そとのあそび展』を同館と共同企画。2017年と2019年には宮城県石巻市で開催されている『Reborn-Art Festival』に参加している。

山縣良和(やまがた よしかず)

2005年セントラル・セント・マーチンズ美術大学を卒業。在学中にジョン・ガリアーノのデザインアシスタントを務める。2007年にリトゥンアフターワーズを設立。2008年より東京コレクションに参加。2014年に毎日ファッション大賞特別賞を受賞。2015年には日本人として初めてLVMHプライズのセミファイナリストにも選出された。またファッション表現の研究、学びの場として、2008年より「ここのがっこう」を主宰。「GAKU」のディレクター。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別 1

    映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別

  2. 横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇 2

    横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇

  3. ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの 3

    ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの

  4. 木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら 4

    木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら

  5. King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開 5

    King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開

  6. 高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送 6

    高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送

  7. カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用 7

    カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用

  8. 大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース 8

    大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース

  9. YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用 9

    YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用

  10. スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催 10

    スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催