
ROTH BART BARONという日本のバンドがいる。東京都目黒区生まれの三船雅也を中心としたこのバンドは、2020年10月に『極彩色の祝祭』というアルバムを発表した。日本語とメロディーがひとつの塊になった歌、繊細に震えながらも芯の強さが際立つしなやかな声、ギターや管弦楽器、ピアノ、打楽器類、シンセサイザーやエレクトロニックな音を重層的に聴かせるアンサンブル、心地よくズシンと身体に響くドラム……本作にある身体の奥底から湧き上がるようなプリミティブな音楽のエネルギーに触れて、「新しい日本の音楽の誕生に立ち会えて嬉しい」と無邪気ながらに思った。
ここでふと「日本の音楽」とは何だろうか? ということを考える。東京に生まれ育ち、「ふるさと」という郷愁を寄せる場所を最初から持たなかった三船自身にとって、自らがどこに立っているのか、どこから来たのかということは、音楽表現をする以前から自覚的にならざるをえない問題だった。歴史に触れ、海外を見渡し、考え続けた結果、三船はその答えを自らの中に見出そうと深く深く潜っていく。実際、12月に行われためぐろパーシモンホール公演も、このROTH BART BARONという名前も、三船の生きてきた記憶や物語と分かち難く結びついている。
三船は自ら音楽の立脚点に対して、最初から自覚的だった。その歩みの先で生まれたのが『極彩色の祝祭』であるとしたら、この音楽のエネルギーの背後にあるものは一体何なのだろうか? そんな疑問を抱えて、三船雅也と話をしてきた。

ROTH BART BARON(ロット バルト バロン)
シンガーソングライターの三船雅也が2008年に結成した日本のインディーフォークバンド。自主制作にて3枚のEPをリリースしたあと、5作のフルアルバムを発表。『FUJI ROCK FESTIVAL』や『SUMMER SONIC』など大型フェスにも出演。また、中国・台湾・モンゴルを回るアジア・ツアーや、NYやボストンなど北米7都市を回るUSツアーなど、海外でのツアーも精力的に展開。2020年10月、最新作『極彩色の祝祭』を発表した。
曼荼羅、カラフルな死後の世界、土着的な荒々しさ……ROTH BART BARONが「極彩色」という言葉に込めたもの
―アルバム『極彩色の祝祭』について、「極彩色」って言葉をこのタイミングで使ったのはどうしてですか?
三船:コロナで色をなくしていく東京の街を見ながら、ふとチベットの曼荼羅がなんとなく浮かんだんです。あの世には荘厳でカラフルな世界があるという考えとか、日本でも飢饉とか疫病が流行ったときに仏教に向かっていった歴史とか、そもそも「死んだら楽になれます、来世でがんばろう」みたいな仏教的な教えって何だろうって考えてて。
「あの世がカラフルなのはわかったけど、どうやったら僕らは色を取り戻せるだろう」ってことを思ったんです。もっと自分たちの心に直接訴える言葉や音、アイデアで、力強く世界を彩っていく感覚を共有するときにどんな言葉がいいだろうって考えたときに「極彩色」って言葉が出てきた。
ROTH BART BARON“極彩 | I G L (S)”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)
三船:上野の国立博物館にある土器を見るの好きなんですけど、縄文時代も色づかいとか、パターンもすごく派手で。そういう日本の荒々しい土着的な感覚、都市が形成される前の日本にあった感覚は、何かヒントになりそうだってバンドをはじめたときからすごく考えてたことで。
―その荒々しい土着的な感覚というのは?
三船:荒々しいところに日本があると感じることがあって。作品とのバランス感覚、その荒々しさに、歪められない日本像があるんじゃないかって思うんです。岡本太郎さんもその派手さに影響を受けてて本も書いてるんだけど(1956年に光文社より刊行の『日本の伝統』)。でもそういうことを、「縄文土器なんです」ってみんなに言っても絶対わかんないじゃん(笑)。
―たしかに(笑)。
三船:あと、ペストが流行ったときにニュートンが太陽の光をプリズムで7色に分解したってことも、すごく自分の中にアイデアとしてあって。それを現代風に、自分たちなりに再アプローチしようと考えて、Photoshopやデジタル機材を使ってグラフィックとか写真をコラージュして、色塗ったりってことを何かに取り憑かれたように家でずーっとやってたんです。今回のアルバムのアートワークや歌詞カードはその中から相応しいものを選んでいきました。
イベント情報
- 『ROTH BART BARON Tour 2020-2021「極彩色の祝祭」』
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2021年2月7日(日)
会場:富山県 高岡市生涯学習センター1F リトルウィング
※延期公演調整中2021年2月13日(土)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La2021年2月20日(土)
会場:北海道 札幌 モエレ沼公園 ガラスのピラミッド2021年2月21日(日)
会場:北海道 札幌 Sound Lab mole2021年2月23日(火)
会場:宮城県 仙台 Rensa2021年2月27日(土)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM2021年4月8日(木)
会場:福岡県 百年蔵2021年4月9日(金)
会場:福岡県 the Voodoo Lounge2021年4月10日(土)
会場:熊本県 早川倉庫2021年5月1日(土)
会場:石川県 金沢 ARTGUMMI2021年5月16日(日)
会場:愛知県 名古屋 The Bottom Line
リリース情報

- ROTH BART BARON
『極彩色の祝祭』(CD) -
2020年10月28日(水)発売
価格:3,300円(税込)
PECF-11821. Voice(s)
2. 極彩 | I G L (S)
3. dEsTroY
4. ひかりの螺旋
5. K i n g
6. 000Big Bird000
7. B U R N H O U S E
8. ヨVE
9. NEVER FORGET
10. CHEEZY MAN
プロフィール

- ROTH BART BARON(ロット バルト バロン)
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シンガーソングライターの三船雅也が2008年に結成した日本のインディーフォークバンド。自主制作にて3枚のEPをリリースしたあと、5作のフルアルバムを発表。『FUJI ROCK FESTIVAL』や『SUMMER SONIC』など大型フェスにも出演。また、中国・台湾・モンゴルを回るアジア・ツアーや、NYやボストンなど北米7都市を回るUSツアーなど、海外でのツアーも精力的に展開。2020年10月、最新作『極彩色の祝祭』を発表した。