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テイラー・スウィフトと因縁のインディロック 田中宗一郎らが語る

テイラー・スウィフトと因縁のインディロック 田中宗一郎らが語る

テイラー・スウィフト『folklore』
インタビュー・リードテキスト
田中宗一郎
テキスト:小林祥晴 撮影:湯浅良介 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

もし10年後、2020年という年を振り返ったときに多くの人々が最初に思い出すアルバムは、テイラー・スウィフトの最新作『folklore』かもしれない。パンデミック以降、最初期の外出自粛期間を使ってレコーディングされた『folklore』は、7月後半にリリースされるやいなや、世界中のプレスが「テイラー・スウィフトの最高傑作」という太鼓判を押し、2020年のアメリカで最初のミリオンレコードになった。

ヴァイナルレコード2枚組全16曲60分を超える尺。ソングライティングやプロダクションにThe Nationalのアーロン・デスナーやBon Iverといったインディロック人脈を起用した21世紀のフォーク音楽とも言える静謐なサウンドは、まるで彼女のベッドルームからオーディエンスの一人ひとりのベッドルームへと届けることを意図したかのようだ。

比較的ポップマナーに則ったアルバム前半から中盤~後半へと進むに従って、サウンドもリリックの内容もまるで少しずつ深い森の奥に分け入っていくかのように親密さを増していく。自分自身のパーソナルなストーリーを「時代の物語」へと昇華させるというリリックスタイルによって、2010年代ポップ音楽のトレンドをいち早く決定づけた彼女は、ここではいくつものキャラクターを使って、全16曲60分という時間をかけ、じっくりとひとつの物語を紡ぎ出そうとしている。

では、かつて2012年のグローバルヒット“We Are Never Ever Getting Back Together”における<私のレコードなんかよりずっとクールなインディロックをこっそり聴いて、イライラした気持ちを慰めているんでしょ(And you would hide away and find your peace of mind / With some indie record that's much cooler than mine)>というパンチラインによって、図らずも時代の潮流がインディロックからポップへと移行しつつあることを宣言してしまったテイラー・スウィフトがそれから8年後に作り上げた今回のレコードを、同時代のUSインディロックを愛し続けたオーディエンスたちはどんなふうに聴いたのだろうか。

その一端を垣間見るために、やはり21世紀のUSインディロックに何かしらの愛着を持つだろう日本の音楽家たち三人を中心にした座談会を企画した。

ご登壇いただいた作家は以下の三人。本陣ASIAN KUNG-FU GENERATIONと並行してGotch名義の活動も活発化、10月第4週にはChance the Rapperやシカゴの「Save Money」クルー以降のゴスペル解釈を受け継いだ新曲“The Age”をリリースしたばかりの後藤正文。欧米のフォーク音楽とそれを再定義したUSインディの作家たちと歩調を合わせるように独自のインディフォークサウンドを進化させ続け、10月半ばにその集大成とも言える最高傑作『極彩色の祝祭』を上梓したばかりのROTH BART BARONの三船雅也。21世紀のUSインディ音楽に触発されることをひとつの契機に、森は生きている~ソロ活動を通じて20世紀音楽全般に対する興味を多角的に具現化、この2020年には大衆消費されるポップ音楽とたった一人の聴き手にしっかりと届けられることを意図したレフトフィールド音楽との間に存在するマージナルな場所を再定義し直すかのような二枚のアルバム――『Morning Sun』と『都市計画』(Okada Takuro+duenn名義にて)をリリースした岡田拓郎。

おそらくはこの10年の間、テイラー・スウィフトの作品や活動とは別の歴史を生きてきただろう三人に、今回の座談会を企画したザ・サイン・ファクトリーの田中宗一郎を司会に据えた形で行った、結果的に2時間以上に及んだ会話の抜粋をお届けすることにしたい。

岡田拓郎(おかだ たくろう)<br>1991年生まれ。東京都福生市育ち。ソングライター / ギタリスト / プロデューサー。2012年にバンド「森は生きている」を結成。P-VINE RECORDSより『森は生きている』、『グッド・ナイト』をリリース。2015年に解散。2017年10月、ソロ名義「Okada Takuro」としてデビューアルバム『ノスタルジア』をリリース。2020年6月、約3年ぶりとなる待望の2ndアルバム『New Morning』をリリース。
岡田拓郎(おかだ たくろう)
1991年生まれ。東京都福生市育ち。ソングライター / ギタリスト / プロデューサー。2012年にバンド「森は生きている」を結成。P-VINE RECORDSより『森は生きている』、『グッド・ナイト』をリリース。2015年に解散。2017年10月、ソロ名義「Okada Takuro」としてデビューアルバム『ノスタルジア』をリリース。2020年6月、約3年ぶりとなる待望の2ndアルバム『New Morning』をリリース。
後藤正文(ごとう まさふみ)<br>1976年、静岡県生まれ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギター。新しい時代とこれからの社会を考える新聞『THE FUTURE TIMES』の編集長を務める。インディーズレーベル『only in dreams』主宰。2020年10月、Gotch名義にてシングル『The Age』を発表。
後藤正文(ごとう まさふみ)
1976年、静岡県生まれ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギター。新しい時代とこれからの社会を考える新聞『THE FUTURE TIMES』の編集長を務める。インディーズレーベル『only in dreams』主宰。2020年10月、Gotch名義にてシングル『The Age』を発表。
田中宗一郎(たなか そういちろう)<br>編集者、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『rockin’on』副編集長を務めたのち、1997年に音楽雑誌『snoozer』を創刊。同誌は2011年6月をもって終刊。2013年、小林祥晴らとともに『The Sign Magazine』を開設し、クリエイティブディレクターを務める。自らが主催するオールジャンルクラブイベント、『club snoozer』を全国各地で開催している。Spotifyプレイリスト『POP LIFE』の選曲、『POP LIFE: The Podcast』の制作出演。
田中宗一郎(たなか そういちろう)
編集者、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『rockin’on』副編集長を務めたのち、1997年に音楽雑誌『snoozer』を創刊。同誌は2011年6月をもって終刊。2013年、小林祥晴らとともに『The Sign Magazine』を開設し、クリエイティブディレクターを務める。自らが主催するオールジャンルクラブイベント、『club snoozer』を全国各地で開催している。Spotifyプレイリスト『POP LIFE』の選曲、『POP LIFE: The Podcast』の制作出演。
三船雅也(みふね まさや)<br>1987年、東京世田谷区生まれ。2009年にROTH BART BARONを結成。自主制作にて3枚のEPをリリースしたあと、felicityより5作のフルアルバムを発表。バンドは『FUJI ROCK FESTIVAL』や『SUMMER SONIC』など大型フェスにも出演。また、中国・台湾・モンゴルを回るアジア・ツアーや、NYやボストンなど北米7都市を回るUSツアーなど、海外でのツアーも精力的に展開。2020年10月、最新作『極彩色の祝祭』を発表した。音楽とヒグマをこよなく愛す。趣味は写真。
三船雅也(みふね まさや)
1987年、東京世田谷区生まれ。2009年にROTH BART BARONを結成。自主制作にて3枚のEPをリリースしたあと、felicityより5作のフルアルバムを発表。バンドは『FUJI ROCK FESTIVAL』や『SUMMER SONIC』など大型フェスにも出演。また、中国・台湾・モンゴルを回るアジア・ツアーや、NYやボストンなど北米7都市を回るUSツアーなど、海外でのツアーも精力的に展開。2020年10月、最新作『極彩色の祝祭』を発表した。音楽とヒグマをこよなく愛す。趣味は写真。
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リリース情報

『folklore』
テイラー・スウィフト
『folklore』

2020年7月24日(金)配信

1. the 1
2. cardigan
3. the last great american dynasty
4. exile (feat. bon iver)
5. my tears ricochet
6. mirrorball
7. seven
8. august
9. this is me trying
10. illicit affairs
11. invisible string
12. mad woman
13. epiphany
14. betty
15. peace
16. hoax
17. the lakes

プロフィール

岡田拓郎(おかだ たくろう)

1991年生まれ。東京都福生市育ち。ソングライター / ギタリスト / プロデューサー。2012年にバンド「森は生きている」を結成。P-VINE RECORDSより『森は生きている』、『グッド・ナイト』をリリース。2015年に解散。2017年10月、ソロ名義「Okada Takuro」としてデビューアルバム『ノスタルジア』をHostess Entertainmentからリリース。2018年には、1983年リリースされたスティーヴ・ハイエットの『渚にて』に収録されている“By The Pool”のカバー曲を含む4曲入り『The Beach EP』をリリース。2020年6月、約3年ぶりとなる待望の2ndアルバム『New Morning』をリリース。

後藤正文(ごとう まさふみ)

1976年、静岡県生まれ。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル&ギター。新しい時代とこれからの社会を考える新聞『THE FUTURE TIMES』の編集長を務める。インディーズレーベル『only in dreams』主宰。2020年10月、Gotch名義にてシングル『The Age』を発表。

田中宗一郎(たなか そういちろう)

編集者、音楽評論家、DJ。1963年、大阪府出身。雑誌『rockin’on』副編集長を務めたのち、1997年に音楽雑誌『snoozer』を創刊。同誌は2011年6月をもって終刊。2013年、小林祥晴らとともに『The Sign Magazine』を開設し、クリエイティブディレクターを務める。自らが主催するオールジャンルクラブイベント、『club snoozer』を全国各地で開催している。Spotifyプレイリスト『POP LIFE』の選曲、『POP LIFE: The Podcast』の制作出演。

三船雅也(みふね まさや)

1987年、東京世田谷区生まれ。2009年にROTH BART BARONを結成。自主制作にて3枚のEPをリリースしたあと、felicityより5作のフルアルバムを発表。バンドは『FUJI ROCK FESTIVAL』や『SUMMER SONIC』など大型フェスにも出演。また、中国・台湾・モンゴルを回るアジア・ツアーや、NYやボストンなど北米7都市を回るUSツアーなど、海外でのツアーも精力的に展開。2020年10月、最新作『極彩色の祝祭』を発表。音楽とヒグマをこよなく愛す。趣味は写真。

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