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Homecomings福富が語る原点 寂しさを手放さず、優しさで戦う

Homecomings福富が語る原点 寂しさを手放さず、優しさで戦う

Homecomings『MOVING DAYS』
インタビュー・テキスト
村尾泰郎
編集:佐伯享介(CINRA.NET編集部)

京都で結成された4人組バンド、Homecomings。彼らの音楽は一冊のZINEのようだ。表紙のデザインはUSインディーやギターポップを思わせるが、ページをめくれば、文学、映画、コミックなどさまざまなカルチャーからの影響や引用に満ちていて、それらがHomecomingsの歌に豊かな奥行きを生み出している。

新作『MOVING DAYS』でメジャーデビューを果たして新しい一歩を踏み出したなか、バンドのギタリストであり作詞を担当する福富優樹(Gt)にソロインタビューを実施。彼が影響を受けたさまざまな物語作品を通じてHomecomingsの世界に迫った。そしてバンドが『MOVING DAYS』で描きたかったという「優しさ」や社会に向ける眼差しについても、じっくりと語ってもらった。

Homecomings(ホームカミングス)<br>左から:福田穂那美(Ba,Cho)、福富優樹(Gt)、石田成美(Dr,Cho)、畳野彩加(Vo,Gt)<br>これまで3枚のアルバムをリリースし、台湾やイギリスなどでの海外ツアーや、4度にわたる『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演など、2012年の結成から精力的に活動を展開。2017年からは、イラストレーター・サヌキナオヤと共同で、映画と音楽のイベント『New Neighbors」をスタート。2019年4月公開の映画『リズと青い鳥』の主題歌や、同年4月公開された、映画『愛がなんだ』の主題歌を担当。「IRORI Records」より2021年春メジャーデビュー。
Homecomings(ホームカミングス)
左から:福田穂那美(Ba,Cho)、福富優樹(Gt)、石田成美(Dr,Cho)、畳野彩加(Vo,Gt)
これまで3枚のアルバムをリリースし、台湾やイギリスなどでの海外ツアーや、4度にわたる『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演など、2012年の結成から精力的に活動を展開。2017年からは、イラストレーター・サヌキナオヤと共同で、映画と音楽のイベント『New Neighbors」をスタート。2019年4月公開の映画『リズと青い鳥』の主題歌や、同年4月公開された、映画『愛がなんだ』の主題歌を担当。「IRORI Records」より2021年春メジャーデビュー。

Homecomingsのストーリーテリングを担う福富優樹の原体験「怪獣がヒーローに倒される瞬間に切なさみたいなものを感じていた」

―福富さんが思春期を過ごしたのは石川県だとか。

福富:そうです。能美市っていう、松井秀喜と森喜朗が生まれた街です。

―あのあたりは何度か行ったことがありますが、日本海側の田舎町ですよね。いつも曇り空で、平野が広がっていて、遠くに山並みが見える。

福富:まあ、マンチェスターみたいな感じですね(笑)。海があるマンチェスター。

―そう言うとかっこいいですけど(笑)。その街で音楽に触れる前、子どもの頃に好きだったものはありますか?

福富:『ウルトラマン』シリーズの怪獣が大好きでした。戦隊モノの怪人とかも。親が言うにはウルトラマンの人形には全然興味を示さずに、怪獣ばかり集めてたみたいで。怪獣図鑑をずーっと読んでいたのを覚えてます。怪獣がヒーローに倒される瞬間に切なさみたいなものを感じてたんですよ。その感覚はいまも残ってますね。

―怪獣に切なさを感じてた?

福富:いま思うと変な目線ですよね。図書館で一人で本を読んでいたり、かと思うと運動場でめちゃくちゃ遊んでたり。暗いのか明るいのかわからない子どもでした。

―音楽の原体験についてはどうですか?

福富:小4で風邪をひいて学校を休んだとき、お母さんがカセットプレイヤーにスピッツのカセットテープを入れて聴かせてくれたんです。それがきっかけになってスピッツを聴くようになったんですけど、それ以前の記憶ってあまりないんですよね。スピッツを聴いたことで脳が起動したというか。そこからの記憶は色がついているんです。

小6のときにお母さんがレミオロメンとかASIAN KUNG-FU GENERATIONとか聴きだして僕に教えてくれて、中学に入って洋楽を聴くようになりました。アジカンとかBEAT CRUSADERSのラジオでWeezerとか海外バンドの曲もかかっていたので。

―その頃、映画は見ていました?

福富:両親が『金曜ロードショー』とかで録画してた『ゴーストバスターズ』とか『ターミネーター』とか、1980年代の映画をビデオで見ていたのを覚えてます。

『ゴーストバスターズ』予告編。1984年公開のSFコメディ。日本でも大ヒットを記録

『ターミネーター』予告編。1984年公開の映画。監督はジェームズ・キャメロン

―入り口は洋画だったんですね。

福富:そうですね。中学の頃に近所にでかいTSUTAYAができた影響も大きかったですね。それをきっかけにしてもっと深く映画を見るようになりました。『ヴァージン・スーサイズ』とか『パルプ・フィクション』とか。そこから徐々に「アメリカ最高!」みたいな感じになっていったんです。映画の深堀りと同時進行でどんどん洋楽を聴くようになっていって。CSが映る家だったので、『リンダ リンダ リンダ』とか『百万円と苦虫女』とかそういう邦画は観てましたね。そっちは日本の音楽と並行してる感じで。

あと、映画を深く見るようになる前にYA(ヤングアダルト)小説を読みだしたんですよ。YA小説は自分のルーツの一つだと思います。そこで描かれているアメリカのティーン感は好きでしたね。

『ヴァージン・スーサイズ』予告編。2000年公開の映画。監督はソフィア・コッポラ

『パルプ・フィクション』予告編。1994年公開の映画。監督はクエンティン・タランティーノ

―地方だとそういう本は手に入りにくいのでは?

福富:家の近所に大きな図書館があったんです。中高生の頃、図書館の本を片っ端から借りて読みました。「あ行」から始めて、本のジャケットが良くてタイトルが曲名っぽいやつを選んで読んでいったんです。

―ジャケ買いならぬジャケ読み(笑)。

福富:その図書館に『タンタンの冒険』が置いてあって。YA小説と『タンタンの冒険』は自分にとって海外の原風景ですね。

1929年にベルギーで誕生したバンド・デシネ『タンタンの冒険旅行』シリーズの『タンタンとピカロたち(タンタンの冒険)』表紙(エルジェ作、川口恵子訳、福音館書店刊行)
1929年にベルギーで誕生したバンド・デシネ『タンタンの冒険旅行』シリーズの『タンタンとピカロたち(タンタンの冒険)』表紙(エルジェ作、川口恵子訳、福音館書店刊行 / サイトで見る

―新作『MOVING DAYS』には『タンタンの冒険』の作家の名前、エルジェをタイトルにした“Herge”という曲が収録されていますね。

福富:『タンタンの冒険』は絵が可愛くて好きだったんですけど、大人になって読み返すと冷戦とか人種差別とか当時の社会問題が物語のなかで触れられているんですよ。そこに作者の想いが込められていて、そのスタンスや表現の仕方にはすごい憧れるし、いま自分がやりたいこととリンクしているのが嬉しくて、曲のタイトルにしたんです。

Homecomings“Herge”を聴く(Apple Musicはこちら

吃音に悩んだ子ども時代を救ってくれた「言葉」との出会い

―バンドのオフィシャルサイトに掲載された福富さんの『MOVING DAYS』セルフライナーノーツによると、新作に収録された“BLANCKET TOWN BLUES”は「眠れなかった子供時代の自分に捧げる歌」だそうですね。

福富:“BLANCKET TOWN BLUES”に<うまく話せないあの子はまだ起きていて>っていう歌詞が出てくるんですけど、それは自分の子ども時代の体験をもとにしているんです。僕は昔、吃音で言葉がうまく出てこなかったんですよね。

例えば「おはよう」って言いたいときに「お」がめっちゃ出ちゃう。そのことに気づいたのは小学高学年くらいでした。友達にふと言われたんですよね。気づいてからは意識してしまって。意識すると吃音を避けようとして言葉が出なくなるんですよ。それで「おはよう」さえ言えなくなった時期があったんです。小学校のときはそれですごい悩みました。

吃音に悩んだことと本を読むことって、僕にとってはリンクしてるんです。言葉をいっぱい知ってたら吃音を回避できるんですよ。言いづらい言葉を言いやすい言葉に言い換えられるんで。だから今でも治ってるわけではなくて、言い換えのスピードとか精度がめちゃくちゃ洗練されてるだけっていう感じですね。メンバーとか親しい人といるとき以外はけっこう脳みそフル回転っていう感じですね。メンバーはもう付き合いも長いし、そもそも吃音が出てきづらいっていうのと、あともう色々わかってくれてるんで。

Homecomings“BLANCKET TOWN BLUES”を聴く(Apple Musicはこちら

―本は物語を楽しむだけではなく、いろんな言葉と出会える場所だったんですね。

福富:知らない言葉に出会うと嬉しかったですね。同時にお笑いもすごい好きで、『爆笑オンエアバトル』(1999年から2010年までNHK総合で放送されたお笑い番組)をめちゃくちゃ見ていました。お笑いと小説を通じて言葉の面白さを知った気がします。歌詞とかもそうですね。

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リリース情報

Homecomings『Moving Days』初回限定盤
Homecomings
『Moving Days』初回限定盤(CD+Blu-ray)

2021年5月12日(水)発売
価格:4,950円(税込)
PCCA-06031

[CD]
1. Here
2. Cakes(Album Version)
3. Pedal
4. Good Word For The Weekend
5. Moving Day Pt. 2
6. Continue
7. Summer Reading
8. Tiny Kitchen
9. Pet Milk
10. Blanket Town Blues
11. Herge

[Blu-ray]
『“BLANKET TOWN BLUES” December 25, 2020』
1. Corridor(to blue hour)
2. Blue Hour
3. Hull Down
4. Lighthouse Melodies
5. Smoke
6. ANOTHER NEW YEAR
7. LEMON SOUNDS
8. HURTS
9. Special Today
10. Moving Day Part1
11. Continue
12. PLAY YARD SYMPHONY
13. Cakes
14. Songbirds
15. Whale Living
16. I Want You Back

Homecomings『Moving Days』
Homecomings
『Moving Days』通常盤(CD)

2021年5月12日(水)発売
価格:2,970円(税込)
PCCA-06041

1. Here
2. Cakes(Album Version)
3. Pedal
4. Good Word For The Weekend
5. Moving Day Pt. 2
6. Continue
7. Summer Reading
8. Tiny Kitchen
9. Pet Milk
10. Blanket Town Blues
11. Herge

イベント情報

Homecomings
『Tour Moving Days』

2021年7月17日(土)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2021年7月18日(日)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO

2021年7月23日(金・祝)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO

料金:各公演 前売4,500円(ドリンク別)
※4歳以上要チケット

プロフィール

Homecomings
Homecomings(ほーむかみんぐす)

畳野彩加(Vo,Gt)、福田穂那美(Ba,Cho)、石田成美(Dr,Cho)、福富優樹(Gt)からなる4ピースバンド。これまで3枚のアルバムをリリースし、台湾やイギリスなどでの海外ツアーや、4度にわたる「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演など、2012年の結成から精力的に活動を展開。心地よいメロディに、日常のなかにある細やかな描写を紡ぐような歌詞が色を添え、耽美でどこか懐かしさを感じさせる歌声が聞く人の耳に寄り添う音楽で支持を広げている。2017年からは、イラストレーター・サヌキナオヤ氏と共同で、映画と音楽のイベント「New Neighbors」をスタート。彼女たちがセレクトした映画の上映と映画にちなんだアコースティックライブの二本立てイベントを主催。2019年4月公開の映画『リズと青い鳥』の主題歌や、同年4月公開された、映画『愛がなんだ』の主題歌を担当。Vo畳野は、くるりやASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲にゲストボーカルで参加するなど、活動の幅を広げている。IRORI Recordsより2021年春メジャーデビュー。

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