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川内倫子×荻上直子が語り合う 生きること働くこと、住まうこと

川内倫子×荻上直子が語り合う 生きること働くこと、住まうこと

千の葉の芸術祭
インタビュー・テキスト
辻本力
撮影:玉村敬太 編集:辻本力、CINRA.NET編集部

2021年に千葉市で初開催される『千の葉の芸術祭』。プログラムのひとつである写真芸術展『CHIBA FOTO』の参加作家で、近年千葉は房総エリアに拠点を移した写真家・川内倫子と、千葉出身で、新作『川っぺりムコリッタ』の公開を11月に控える映画監督・荻上直子の対談が実現した。

12人の写真家たちが千葉で制作した作品などを、市内のさまざまな場所で同時に展示する『CHIBA FOTO』。川内が出品するのは、出産から3年間にわたり子どもの姿や自宅付近の風景を捉えた『as it is』と、ツバメの子育ての様子を撮影した『Des oiseaux』だ。

作品の舞台ともなった川内の自宅で行われた取材では、同世代のクリエイターとして、ともに子を持つ母として、創作と土地との関係性、子育てのリアル、変わり続ける自身の価値観について率直に語られた。

決め手は、地の利と「川」。自然を愛する写真家が千葉に越した理由

―本日の対談は、千葉県の房総エリアにある川内さんのご自宅にうかがって収録しています。緑がいっぱいで、大きな窓から川が見えて、素晴らしい環境ですね。

荻上:素敵すぎて……ちょっと言葉を失います。越してきてどのくらい経ちますか?

川内:もうすぐ丸4年くらいですね。子どもが1歳2か月のときに越してきました。

荻上:倫子さんとは、今年映画版が公開になる私の2冊目の小説『川っぺりムコリッタ』の表紙に写真を使わせていただいたのが縁で面識を得まして。そうそう、本当は1年くらい前にお家に遊びにうかがう約束をしていたんですけど、あの日は台風が直撃して、話が流れてしまったんですよね。

左から:荻上直子、川内倫子
左から:荻上直子、川内倫子

川内:電気が止まったり、とても人を呼べる状態じゃなくなってしまって。そして、今日もあいにくの悪天候ですが(苦笑)。そこを流れている川も、普段は水が澄んでいて、子どもが遊べるくらいの浅瀬なんですけど、今日は増水して濁流になってますね。今度はぜひ、晴れているときに双子のお子さんたちを連れて遊びにきてください。

荻上:楽しみにしてます。そもそも、こちらに引っ越されたのには何か理由があったんですか?

川内:長年東京で生活をしてきましたが、いずれは自然の多い田舎のほうに住みたいという気持ちがずっとあったんですよ。それで結婚を期に。

荻上:この土地を選ばれた決め手は何だったんですか。

川内:やはり、地の利と環境ですね。東京湾アクアラインがあるので、仕事で東京にも出やすい。また、羽田空港も成田空港もどちらも近いので、海外出張の多い身には便利だったというのもあります。それから川ですね。

荻上:川?

川内:ここに越してくる前は、二子玉川に10年間住んでいたのですが、その家は窓から多摩川がよく見えたんです。春は、川沿いの桜がキレイで。いつしか川のある景色が、自分にとって、その家に住む大きな理由になっていたことに気づいて。だから、部屋から川が見える、というのを条件に探しました。

ここは、もとは竹藪だったんです。だから、地図上で川が近いことは知っていましたが、ぱっと見はわからない。初めて見学にきたとき、藪を分け入って足を踏み入れると、さらさらと川のせせらぎが聞こえてきて、それまで曇ってたのに、突然雲が晴れて太陽の光が真ん中に差し込んできた。その瞬間、「あ、ここだな」って。普段なら迷ったはずですが、そのときは直感で決めてしまいました。きっと、当時妊娠6か月だった私のお腹のなかの娘も、「ここ!」と言っていたのかもしれないですね。

川内倫子(かわうち りんこ)<br>1972年、滋賀県生まれ。写真家。1997年に『うたたね』で第9回ひとつぼ展グランプリ(写真部門)受賞。繊細な色彩感覚と独自の眼差しで日常を表現し、一躍注目を集める。2002年、木村伊兵衛写真賞受賞。主な個展に、2005年『AILA + Cui Cui + the eyes, the ears,』(カルティエ財団美術館, パリ)、2012年『照度 あめつち 影を見る』(東京都写真美術館、東京)、2016年『川が私を受け入れてくれた』(熊本現代美術館、熊本)他、国際的に展覧会を多数開催。写真集に『Illuminance』『あめつち』『Halo』『as it is』他。2017年、千葉県に移住。
川内倫子(かわうち りんこ)
1972年、滋賀県生まれ。写真家。1997年に『うたたね』で第9回ひとつぼ展グランプリ(写真部門)受賞。繊細な色彩感覚と独自の眼差しで日常を表現し、一躍注目を集める。2002年、木村伊兵衛写真賞受賞。主な個展に、2005年『AILA + Cui Cui + the eyes, the ears,』(カルティエ財団美術館, パリ)、2012年『照度 あめつち 影を見る』(東京都写真美術館、東京)、2016年『川が私を受け入れてくれた』(熊本現代美術館、熊本)他、国際的に展覧会を多数開催。写真集に『Illuminance』『あめつち』『Halo』『as it is』他。2017年、千葉県に移住。
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イベント情報

『CHIBA FOTO』

2021年8月21日(土)~9月12日(日)

参加作家:
宇佐美雅浩
川内倫子
清水裕貴
新井卓
吉田志穂
蔵真墨
佐藤信太郎
本城直季
北井一夫
楢橋朝子
金川晋吾
横湯久美
ARCHIVES写真展示

プロフィール

川内倫子(かわうち りんこ)

1972年、滋賀県生まれ。写真家。1997年に『うたたね』で第9回ひとつぼ展グランプリ(写真部門)受賞。繊細な色彩感覚と独自の眼差しで日常を表現し、一躍注目を集める。2002年、木村伊兵衛写真賞受賞。主な個展に、2005年『AILA + Cui Cui + the eyes, the ears,』(カルティエ財団美術館, パリ)、2012年『照度 あめつち 影を見る』(東京都写真美術館、東京)、2016年『川が私を受け入れてくれた』(熊本現代美術館、熊本)他、国際的に展覧会を多数開催。写真集に『Illuminance』『あめつち』『Halo』『as it is』他。2017年、千葉県に移住。

荻上直子(おぎがみ なおこ)

1972年、千葉県生まれ。映画監督、脚本家。千葉大学工学部画像工学科卒業。1994年に渡米し、南カリフォルニア大学大学院映画学科で映画製作を学び、2000年に帰国。2004年に劇場デビュー作『バーバー吉野』でベルリン映画祭児童映画部門特別賞受賞。ほかにも、2007年の『めがね』でベルリン国際映画祭マンフレート・ザルツゲーバー賞、2017年の『彼らが本気で編むときは、』で日本初のベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞など、受賞多数。他の監督作に『かもめ食堂』『トイレット』、著書に『モリオ』などがある。今年(2021年)、自身の原作小説を映画化した『川っぺりムコリッタ』の公開が控えている。

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