伊賀大介×篠崎恵美×森永邦彦 「花と服」から得られる自己肯定感

2012年に公開された映画『おおかみこどもの雨と雪』以来、細田守作品で欠かせない存在になっているのがスタイリストの伊賀大介。キャラクターに着せる衣装を実際に製作し、それをアニメーションに落とし込むことで作品のリアリティーを高めている。

そして、2021年7月16日より公開中の最新作『竜とそばかすの姫』では、インターネット上の仮想世界「U(ユー)」に存在する歌姫ベルの衣装をフラワークリエイターの篠崎恵美、ファッションデザイナーの森永邦彦とともに製作。圧倒的な歌唱力を誇るベルの存在をイマジネーションあふれるドレスによって際立たせている。

この三人の共通点は、仕事やプライベートにおいて「花と服」が身近にあること。今回は三人を招いて、実生活を彩る「花と服」の魅力について語り合ってもらった。コロナ禍で日常の大切さについて語られることが多くなっているが、あらためて「花と服」は彼らにとって、さらには人々にとって、どのような価値があるのだろうか。映画の衣装製作の秘話も合わせて、話をうかがった。

普段から交流がある三人。出会いのきっかけは?

―みなさんはもともとお知り合いだったんですか?

伊賀:ぼくと森永くんは10年くらいの付き合い?

森永:もう少し前ですね。出会ったのは、たしか2006年だったかと。

伊賀:え、もう15年も前なのか。当時、小泉今日子さんが雑誌『SWITCH』で「原宿百景」というエッセイを連載していて、文章に添える写真を撮影する際に小泉さんのスタイリングをぼくが担当していたんです。そのときにANREALAGEのドレスを使用したのがきっかけかな。

森永:当時はまだANREALAGEの店舗もないような時期だったので、そのお話をいただいたときにすごく嬉しかったのを覚えています。

伊賀:ボタンが5,000個ついているドレスジャケットを借りたんです。それからたまにお酒を飲むようになって、いまに至ります。

伊賀大介(いが だいすけ)
スタイリスト。1977年生まれ、東京都出身。1996年、19歳のときに熊谷隆志氏に師事。1999年、22歳で独立してスタイリストとして活動開始。映画『ジョゼと虎と魚たち』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』、テレビドラマ『まほろ駅前番外地』『大豆田とわ子と三人の元夫』ほか、さまざまな映画とテレビドラマの衣装を手がける。広告や俳優・音楽家のスタイリングのほか、演劇、アニメなどの劇中衣装も手がけている。2021年7月に公開した映画『竜とそばかすの姫』で衣装を担当。
森永邦彦(もりなが くにひこ)
ファッションデザイナー。1980年、東京都生まれ。早稲田大学在学中にバンタンデザイン研究所に通い服づくりを始める。2003年「ANREALAGE(アンリアレイジ)」として活動を開始。2005年、ニューヨークの新人デザイナーコンテスト『GEN ART 2005』でアバンギャルド大賞を受賞。2011年、第29回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。2015年春夏よりパリコレクションデビュー。2019年、フランスの「LVMH PRIZE」のファイナリストに選出。同年に第37回毎日ファッション大賞を受賞。2020年、伊・FENDIとの協業をミラノコレクションにて発表。2021年、ドバイ万博に本館の公式ユニフォームを担当。同年3月より、花をコンセプトにした新ブランド「ANEVER(アンエバー)」もスタート。2021年7月に公開した映画『竜とそばかすの姫』で衣装を担当。

―伊賀さんと篠崎さんは、どこで知り合ったんですか?

篠崎:伊賀さんとは仕事でご一緒させていただいて。

伊賀:あれは3、4年前?

篠崎:え、もっと前ですよ(笑)。

伊賀:さっきから、ぼくの記憶違いがやばいですね(笑)。たしか『週刊文春』の仕事でご一緒させていただいて以降、仕事はもちろん、誰かに花をプレゼントする際にも恵美ちゃんによくお願いするようになったんだよね。

篠崎恵美(しのざき めぐみ)
フラワークリエイター。「edenworks」 主宰。独自の感性で花の可能性を見つけ、植物とさまざまなアイテムを使って新しいクリエイションをする。ウィンドウディスプレイや店内装飾、雑誌、広告、CM、MVなどの大型セットから小道具まで、花にまつわるさまざまな創作を行っている。週末限定のフラワーショップ「edenworks bedroom」のほか、ドライフラワーショップ 「EW.Pharmacy」、紙の花のプロジェクト「PAPER EDEN」、コンセプトショップ「PLANT by edenworks」などを展開。また、2021年3月に花と人をつなぐフラワーショップ「ew.note」をNEWoMan新宿にオープン。2021年7月に公開した映画『竜とそばかすの姫』で衣装を担当。

―森永さんと篠崎さんは面識があったんですか?

篠崎:もともとは森永さんの奥様と知り合いで。はじめてお会いしたのは結婚式のときでしたよね。

森永:ウェディングのときに装花をお願いさせていただいたんです。それからのお付き合いになります。

『竜とそばかすの姫』の衣装製作の裏側。現実では不可能なアニメならではの演出

―映画『竜とそばかすの姫』では、主人公・内藤鈴(すず)の「As(アズ)」(アバター)である仮想世界「U」の歌姫・ベルの衣装を三人で担当されています。伊賀さんのアイデアをベースに、篠崎さんと森永さんがそれぞれデザインしていく手法が取られたそうですね。伊賀さんはなぜお二人に声をかけようと考えたのでしょうか?

伊賀:今回の作品は現実世界と仮想世界の2つが舞台になっていて、それぞれが作用し合っているんですね。ベルの衣装にしても、すずの親友のヒロちゃんがネットでいろいろ検索して「こういうのが良いよ」ってアドバイスをしていくんです。

それで、ヒロちゃんの立場になって考えると、花のドレスをつくろうと思ったら恵美ちゃんのサイトにある花を参考にするだろうし、ANREALAGEっぽい服を着せたいなと思ったらANREALAGEのサイトにたどり着くだろうなと。だから、二人に声をかけました。「日常」と「非日常」が本作のテーマでもあったので、原案となる衣装をデザインしてもらい、アニメーションに落とし込むのが良さそうだなと考えて。

2021年7月16日(金)に公開した映画『竜とそばかすの姫』©2021 スタジオ地図

―森永さんと篠崎さんは、伊賀さんのアイデアをどのように形にしていったのでしょうか?

森永:「日常」と「非日常」はANREALAGEのコンセプトとしてずっと取り組んできたことだったので、それをより拡張しようと考えました。

伊賀さんとの出会いのきっかけでもある、ボタンが5,000個ついているドレスジャケットや2019年春夏のパリコレで発表した透明なボタンがたくさんついた洋服から着想し、それらを何倍にもスケールアップさせて、大きな空間のようなドレスをデザインしました。

映画で描かれている巨大なドレスは、無数のボタンやクリスタルで覆われていて、一粒一粒が時間とともに固形から液体に変化します。最初は水でできたドレスに変化し、そこから光でできたパッチワークドレスに変身を遂げる。光のドレスは、1秒ごとに光の色がきらきらと変わるデザインにしました。

アニメーションだと、想像を最大限に膨らませれば水や光さえも身に纏うことができます。現実には不可能なデザインに挑戦できたので、アニメならではの演出の面白さを感じましたね。

原案の基盤のひとつとなった2019年春夏パリコレクションで発表した「CLEAR」のドレス ©ANREALAGE
森永のデザインをもとにアニメーション化されたドレス ©2021 スタジオ地図

篠崎:私は2つドレスをつくることになっていたので、それぞれに違いを出すためにひとつは小さな花がたくさん集まってできたドレス、もうひとつは一輪のバラに見立てたドレスをデザインしました。

素材には生花だけでなく紙の花も使っているのですが、そういう現実にはマッチしないものを今回は自由に考えられたのが楽しかったですね。

―イメージどおりのものになりましたか?

篠崎:そうですね。原案のドレスは、実際に人に着ていただいて、動いたときに花びらがどう揺れるのかみたいなことも考慮して、アニメーションに落とし込んでもらっています。それだけでなく、生命力があふれるような演出が施されていてすごく良い感じに仕上がっていると思います。

原案として実際に篠崎が手がけた、一輪のバラに見立てたドレス ©2021 スタジオ地図
篠崎の原案をもとにアニメーション化されたドレス ©2021 スタジオ地図

伊賀:映画の内容が、現実世界やインターネット上での人とのつながりを描いた作品でもあるので、衣装担当もぼく一人じゃなくて、何人かで協力しながらつくることになるのは必然的だったと思います。そのなかでも、恵美ちゃんと森永くんだったからこそでき上がった世界観がある。映画の内容も面白いですが、ぜひ衣装にも注目していただきたいですね。

「偶然性や変化を楽しめる点が、花と服にも共通している気がします」(伊賀)

―さて、今回の鼎談では、三人にとって仕事やプライベートで身近な存在である「服と花」の魅力についてもうかがえればと思っています。

スタイリストの伊賀さんは普段からお花を買う機会が多いそうですし、フラワークリエイターの篠崎さんは服飾の専門学校に通ったのちにアパレル会社に勤務していた経歴があります。そして、ファッションデザイナーの森永さんは花をコンセプトにした新ブランド「ANEVER」を2021年3月に立ち上げました。それぞれ花と服に縁が深いわけですが、どうして魅了されているのでしょうか。

伊賀:どちらも、一筋縄ではいかないのが良いんじゃないですかね。たとえば、普段は自分が選ばないような花をもらっても、成長の変化を見ていると次第に愛着が沸いたり、服も最初は微妙かなと感じても着ているうちに「意外と良いな」と思えたりして。

ぼく、勝新太郎さんが大好きなんですが、勝さんがつくった造語「偶然完全」の感覚に近いかもしれません。偶然から予期せぬ良い出会いや関係性が生まれるという意味で、勝さんは芝居をするときもはじめから決められたセリフだけでなく、その場の相手との掛け合いのなかで交わされる自然なやりとりを好んでいたらしいんですよ。そういう偶然性や変化を楽しめる点が、花と服にも共通している気がします。

篠崎:私も、伊賀さんと同じことを思います。もう17年ほど仕事で花に携わっているんですけど、いまだに毎日気づきがあるんですよ。自分が想定していたかたちにならないことばかりで。だからこそ、花のことをもっと知りたいという気持ちになります。

森永:ぼくもかつて、食物からできるでんぷんの糸で服をつくり、土に1か月ほど埋めて微生物によって生分解させたことがあるのですが、仕上がりをコントロールできないのが面白くて。なにが生まれるのかわからない。

ただ、どのような柄の服が生まれてくるのかなと楽しみに待つ時間は、まるで種を埋めて花が咲くのを待つ時間に似ていたんです。そうして生まれたものには、デザインの意図を越えた力が宿っている。服も花も、そういう部分に魅了されるのかもしれません。

―ほかにも服と花に共通項を見出すとしたら、どんなことがあると思いますか?

篠崎:どちらも個性を形成するものですよね。花も服も、生きるうえでは必要なものではないかもしれない。でも、自分らしく生活するうえでは、なくてはならないものだと思う。花が好き、服が好きということがそれぞれのオリジナルを形成している気がします。

伊賀:そういう意味でいうと、微妙に生活の外側にあるものなんだなと思います。でも、好きな花や服があると気分が変わる。映画や音楽と同じで、文化的な側面があるんじゃないですかね。

「洋服によって自分の気分が変化すると、花のアレンジも変わってくるんです」(篠崎)

森永:ぼくもお二人の意見に同意しつつ、つけ加えるとしたら自分と他者をつなぐ架け橋になるものなんじゃないかと思います。たとえば、誰かにこの服を着てみてほしいとか、家にこの花を並べたら妻が喜んでくれるかなって考えるときがあって、その瞬間って相手のことを想っているんですよね。

最近、花をコンセプトの軸にした「ANEVER」という新しいブランドを立ち上げたのですが、他者を想う気持ちはブランドの方向性やアイテムづくりにおいてすごく意識しました。

2021年3月にローンチしたANEVER。ブランドのミューズには平手友梨奈を起用

篠崎:誰かにプレゼントすることで自分も豊かな気持ちになりますよね。もしかしたら自己満足なのかもしれないですけど。

伊賀:でも、それで良いんじゃないかなって思います。最近よく使われている言葉でいうと、「自己肯定感」につながるというか。他人からしたらどうでも良いようなことでも、自分自身の気持ちが満たされるのであれば、それで良くて。

たとえば、黒い服が大好きで、ほかの人から見ると昨日と今日でほとんど同じ格好をしていても、自分だけにわかる黒へのこだわりがあったらそれで十分なんですよね。

いろんな色の服を毎日着回しているから「服好き」というわけでもなく、「服好き」にもいろんなパターンがあるし、自分が心地良い格好をしていればそれで良いじゃないですか。

花も同じで、毎回違う花を買って飾る人もいれば、毎回同じ花を楽しむ人もいるだけの話。どっちの楽しみ方もありだし、優劣はないんですよね。

篠崎:たしかに。そのこだわりを、あえて変えてみるのもありですしね。私自身、もともとは落ち着いた色味の服を着ることが多かったんです。モノトーンの服が好きということもあるし、花がカラフルだから邪魔になるかなと思っていたからでもあるんですけど。

でも、最近はあまり気にせず、オレンジとか明るい色の服も着るようになって。そうすると、やっぱり気分が上がるんですよね。しかも、洋服によって自分の気分が変化すると、花のアレンジも変わってくるんです。いままでならやらなかったチャレンジをしてみようと思えたりとか。

伊賀:へえ、それは面白いね。ちなみに、花のアレンジにもロジックとかメソッドみたいなものってあるの?

篠崎:結婚式のときに菊を選ばないみたいな風習的な決まりはあるので、そういう常識的なルールを踏まえていれば、基本は自由で良いと思っています。私自身、花の専門学校にかよっていたわけではないし、師匠もいないので、わりと好きなようにやっていますね。

「コンセプトをガチガチに固めて、その縛りのなかでものづくりをするのが好き」(森永)

―伊賀さんも、ロジックやメソッドより自分の感覚を大切にしたいタイプですか?

伊賀:どちらかといえば、そうですね。たとえば花屋に行くと、花の長さをある程度揃えられるじゃないですか。ぼくは、あれがあんまり好きじゃなくて。バラバラなものを自分で考えて組み合わせたいというか。それはファッションも同じですね。

―スタイリングするときも、メソッドより感覚を大切にされているんですか?

伊賀:スタイリストって仕事によってアプローチが全然違うので、そもそもメソッドみたいなものはないかもしれないですね。だから、アシスタントに仕事を教えるのも、難しいなっていつも思っていて(笑)。

映画のスタイリングも、台本のたった1行の言葉だけでスタイリングの方向性が変わったりしますから。たとえば「代々木上原に住んでいるレコード会社勤務の30代」っていう設定があるとしますよね。そこに「ロックを担当しているけど、本当はジャズが好き」みたいな情報が加わると、それだけでその人に対するイメージが変わってくるし、スタイリングにも影響します。

だから、普段からいろんな人を観察していますね。アシスタントにも、山手線に乗って1周すると良いよってよく言っています。そうすると、持ち物や服から人々の日常が見えてくるので。

―逆に森永さんは、ご自身でコンセプトを固めて服をつくりますよね。

森永:そうですね。ぼくはコンセプトをガチガチに固めて、その縛りのなかでものづくりをするのが好きなんだと思います。そのほうが、自分がまったく想定しなかったものをつくり出せたりするので。制約があるほうが自由になれる、みたいな。

伊賀:森永くんのやり方って、コレクションで発表する服を通じて自分の考えを示していくわけじゃん。でも、世に放たれた瞬間、自分のものではなくなるし、街に出たら自分が思いもしなかった組み合わせでANREALAGEの服を着ている瞬間を目撃することもあるでしょ?

森永:ありますね。ぼくの頭で考えつく範囲を超えて広がっていくのは、すごく面白いなと感じます。「そういう合わせ方をするんだ」という発見は、いろんな気づきにつながりますから。それにどんな組み合わせであっても、自分のブランドを着てくれている人を見たらやっぱり嬉しくなります。

伊賀:なかには10年前のANREALAGEと7年前のANREALAGEと、去年のANREALAGEを組み合わせてコーディネートする人もいるわけでしょ。

コレクションのテーマを毎回変えてチャレンジングな服を発信しているから、つくり手からすると全然違うものなのに、日常ではそれが混ざることもある。ファッションデザイナーからすると興味深いよね。

森永:そうですね。コレクション発表時よりも、年月が経過することで世に魅力が伝わることもあったりしますからね。それこそ、2006年につくった5,000個のボタンつきドレスがきっかけで、細田監督の作品に携わるとは思わなかったですから(笑)。

2006年にANREALAGEが発表した5,000個のボタンつきドレス「祈りジャケット」©ANREALAGE

「『どうでも良いこと』に時間を使うのってすごく大切だと思う」(伊賀)

―服にも花にも、ハレとケ(※ハレはお祭りや年中行事を行う特別な日、非日常。ケは普段の生活、日常)があるのも、明確な共通点ですよね。

森永:たしかに。ある人にとってのケの洋服が、ある人にとってはハレの服にもなりますよね。ぼく自身、服をデザインするときはどちらも意識します。

ファッションショーで披露する服は基本的にハレの舞台を想定してつくっているんですけど、アイテムによってはゆくゆく販売するから、日常的に着てほしい気持ちもある。そのあたりのバランスが難しくもあり、面白くもありますね。

伊賀:ファッションショーが1年で2日間あるとして、残りの363日は日常なわけだもんね。だからこそ、むしろ日常をいかにこだわれるかが人生を楽しむうえでも大事な気がする。

個人的にも、ハレのときだけ気合を入れて張り切る人よりも、普段から花と服を楽しんでいる人のほうが、自分が心地良いものをわかっている分、ハレのときもほかの人にはない、その人らしい個性が出る気がして。

花と服におけるハレとケは、シチュエーションが変わるだけで「自分がしっくりくるものを選ぶ」という本質は変わらないので、日常を楽しみつつハレのときに炸裂するスタンスが良いなと思います。

篠崎:私もハレのときだけ花を楽しむのではなく、日常に花があることで多くの人の暮らしや気持ちが豊かになれば良いなって思っています。だから、コロナ禍に新宿駅で花屋を開いたんですよね。日常的に花を添えるようになったら、少しでも気持ちが晴れるかなって。

というのも、じつは以前は自分の家に花を飾ることがあんまりなかったんです。職業柄、なんか花に気を遣いながら生活しちゃうというか。どちらかというと、自分のためというより、人を喜ばせるためのものだったんですよ。

でも、緊急事態宣言とかで店を開けられなくなった際に、余った花を家に持って帰る機会が増えたことですごく気分が上がって。そうやって人の気持ちを豊かにするのが花なんだなってあらためて思うことができました。

2021年3月、NEWoMan新宿2Fにオープンしたフラワーショップ「ew.note」

森永:コロナ禍であらゆる場所からハレの舞台がなくなりましたよね。セレモニーとかファッションショーとかライブとか。

そんな悲惨な状況のなかで、ぼく自身も部屋に花を飾る機会が増えたのですが、日常に彩りがあることで、気分が晴れていく感覚はありました。それと同じように家にいるときの服も、誰にも会わないから適当に選ぶのではなく、楽しむことで自分の気分を変化させられると良いですよね。

伊賀:たしかに。服とか花とかに限らず、「どうでも良いこと」に時間を使うのってすごく大切だと思う。普段だったら惣菜で済ませていたところを30分かけてカレーをつくってみるとか、朝はだらだらスマホを見て過ごしていたけど、コーヒーを飲みながら1時間くらい本を読んで過ごしてみるとか。

適当にやり過ごすよりも、そのほうが生きている実感があるし、新しい発見もあるかもしれない。コロナ禍でまいっている人も多いと思うけど、本当に少しの変化で気持ちは豊かになるから、普段なら「どうでも良い」と感じることにも目を向けてみて、あえてこだわってみるのも良いと思いますよ。

作品情報
『竜とそばかすの姫』

2021年7月16日(金)から全国東宝系で公開中

原作・脚本・監督:細田守
メインテーマ:millennium parade × Belle“U”
出演:
中村佳穂
成田凌
染谷将太
玉城ティナ
幾田りら
役所広司
佐藤健
ほか
衣装:
伊賀大介
森永邦彦
篠崎恵美

プロフィール
伊賀大介 (いが だいすけ)

スタイリスト。1977年生まれ、東京都出身。1996年、19歳のときに熊谷隆志氏に師事。1999年、22歳で独立してスタイリストとして活動開始。映画『ジョゼと虎と魚たち』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』、テレビドラマ『まほろ駅前番外地』『大豆田とわ子と三人の元夫』ほか、さまざまな映画とテレビドラマの衣装を手がける。広告や俳優・音楽家のスタイリングのほか、演劇、アニメなどの劇中衣装も手がけている。2021年7月に公開した映画『竜とそばかすの姫』で衣装を担当。

篠崎恵美 (しのざき めぐみ)

フラワークリエイター。「edenworks」 主宰。独自の感性で花の可能性を見つけ、植物とさまざまなアイテムを使って新しいクリエイションをする。ウィンドウディスプレイや店内装飾、雑誌、広告、CM、MVなどの大型セットから小道具まで、花にまつわるさまざまな創作を行っている。週末限定のフラワーショップ「edenworks bedroom」のほか、ドライフラワーショップ 「EW.Pharmacy」、紙の花のプロジェクト「PAPER EDEN」、コンセプトショップ「PLANT by edenworks」などを展開。また、2021年3月に花と人をつなぐフラワーショップ「ew.note」をNEWoMan新宿にオープン。2021年7月に公開した映画『竜とそばかすの姫』で衣装を担当。

森永邦彦 (もりなが くにひこ)

ファッションデザイナー。1980年、東京都生まれ。早稲田大学在学中にバンタンデザイン研究所に通い服づくりを始める。2003年「ANREALAGE(アンリアレイジ)」として活動を開始。2005年、ニューヨークの新人デザイナーコンテスト『GEN ART 2005』でアバンギャルド大賞を受賞。2011年、第29回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。2015年春夏よりパリコレクションデビュー。2019年、フランスの「LVMH PRIZE」のファイナリストに選出。同年に第37回毎日ファッション大賞を受賞。2020年、伊・FENDIとの協業をミラノコレクションにて発表。2021年、ドバイ万博に本館の公式ユニフォームを担当。同年3月より、花をコンセプトにした新ブランド新ブランド「ANEVER(アンエバー)」もスタート。2021年7月に公開した映画『竜とそばかすの姫』で衣装を担当。



フィードバック 8

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Movie,Drama
  • 伊賀大介×篠崎恵美×森永邦彦 「花と服」から得られる自己肯定感

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて