インタビュー

地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る

地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る

インタビュー・テキスト
小熊俊哉
撮影:垂水佳菜 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

前回のインタビューで、SMTKの松丸契は「世の中が平和で不満もなくて、何不自由なく人生をラクに生きていたら、こういう音は確実に出てこなかった気がします」と語っていた(註1)。あれから1年少々が経過したが、失政は続き世の中がマシになりそうな兆しは一向に見えず、日本は最悪のシナリオに突き進んでいる。

そんな時代とも呼応するように、SMTKの2ndアルバム『SIREN PROPAGANDA』はますます過激さが際立つ作品となった。死に物狂いの演奏はそのままに、作曲とサウンドメイクの精度が飛躍的に向上。驚異のシンクロ率を誇る盟友Dos Monosに加えて、ermhoiを通じて知り合ったという兄弟ヒップホップユニットRoss Moodyも交えながら、強烈極まりないアンサンブルを奏でている。

この作品を聴いたCINRA.NET編集部・山元は、Black Midiを筆頭とした新世代UKロックバンドを連想したという。SMTK側は意識してなかったようだが、ハードコアの熱量とプログレの構築性を両立し、アカデミックな素養も活かしつつステレオタイプな音楽性に抗っていたりと、無意識的なリンクが存在しているように感じなくもない。

かたや自分が思い出したのは、高校時代にBOREDOMSを初めて聴いたときの衝撃だった。ぼくが手に取ったのは『Chocolate Synthesizer』という1994年のアルバムで、あまりにも凶暴すぎるサウンドに「こんな音楽が存在するのか!」と腰を抜かしたものだ。このアルバムの収録曲がプレイリストに放り込まれていたら、ほとんどの人は嫌がらせのように感じるだろう。でも、あるひとりの人生を決定的に塗り替えるかもしれない。数の暴力ばかり目につく現代では失われつつある価値観だが、CDの売上やストリーミングの再生回数とは別に、大切なものがあることをBOREDOMSは教えてくれる。

そういえば、若林恵さんが以前こんなことを語っていた。

「いま、あらためて不思議に思うのは、自分が学生時代だった1990年代前半の頃を振り返ってみますと、当時まだインターネットなんてなかったのに、いまよりよほど海外との距離が近かった感覚があるんですよね。(中略)ジョン・ゾーンという前衛音楽家が高円寺に住んでいたこともあって、東京が世界のノイズシーンのひとつの重要なハブだったという感覚が、かなりリアルなものとしてあったように思うんです。(中略)そうした1990年代のグローバルなアンダーグラウンドネットワークが、ネットの普及とともになぜか途切れるんですよね」(註2)

ここでいうアンダーグラウンドネットワークの象徴が、まさしくBOREDOMSである。NirvanaやBeckにもリスペクトされ、海外でカルトな人気を集めた彼らは、ある世代までのリスナーにとって神みたいな存在だった。しかし、近年はその名前を聞く機会が減ってきたように思う。その流れと並行するように、BOREDOMSのような破天荒なサウンドは、国内の音楽シーン全体で鳴りを潜めてしまった。

そういった状況のなかでSMTKやDos Monosは、ある種のオルタナティブな思想を受け継ぎ、途切れてしまった回路をもう一度つなごうとしているように映る。このあとのインタビューで、渋さ知らズやROVOの名前が出てくるのも示唆的だ。

SMTKのリーダーである石若駿は、「(コンセプトを)言語化しながら音楽をつくってはいない」と述べている。しかし、星野源や米津玄師をはじめ、KIRINJIの新曲に携わるなど国内シーンのキーマンとなりつつある石若、オーストラリア屈指の音楽家でありながら、日本のジャズに魅了されて東京に移住したマーティ・ホロベック、ノイズやインプロ、ジャズなど日本のアンダーグラウンドな音楽文化を間近で見てきた細井徳太郎、3歳から高校卒業までパプアニューギニアで育ち、バークリー音大を経て日本で活動する今も「外の人」としてのアイデンティティと向き合い続ける松丸契という組み合わせから生まれる音楽には、それだけで何かしらの意味を持っているように感じる。

異なるバックグラウンドを持つ4人は、どのようなことを考えて『SIREN PROPAGANDA』という作品を完成させたのだろうか。

SMTK(エスエムティーケー)<br>左から:石若駿、細井徳太郎、マーティ・ホロベック、松丸契<br>ドラマーの石若駿が自身の同世代のミュージシャンたちを集め結成したバンド。2018年8月に初ライブを行う。最初のライブはドラムの石若駿、ギターの細井徳太郎、ベースのマーティ・ホロベックの3人で行われる。同年10月、新宿ピットインでのライブにてサックスの松丸契が参加、以後現在の編成となる。2021年7月、2ndアルバム『SIREN PROPAGANDA』をリリースした。
SMTK(エスエムティーケー)
左から:石若駿、細井徳太郎、マーティ・ホロベック、松丸契
ドラマーの石若駿が自身の同世代のミュージシャンたちを集め結成したバンド。2018年8月に初ライブを行う。最初のライブはドラムの石若駿、ギターの細井徳太郎、ベースのマーティ・ホロベックの3人で行われる。同年10月、新宿ピットインでのライブにてサックスの松丸契が参加、以後現在の編成となる。2021年7月、2ndアルバム『SIREN PROPAGANDA』をリリースした。
SMTK『SIREN PROPAGANDA』を聴く(Apple Musicはこちら

日本の音楽シーンをリズム面で牽引する、リーダー石若駿のドラムの変化

―『SIREN PROPAGANDA』、大変びっくりしました。前作もすごかったけど、今回のはもう一段階振り切ってるというか。楽器の音から明らかに違う。

石若(Dr):4人ともこの1年、それぞれ自分の作品もつくったりしながらレコーディングを経験してきたのが大きかったと思います。録音物に対する意識が飛躍的にレベルアップした気がしますね。

―石若さんのドラムも変わったんじゃないですか。くるりのライブを観た柳樂光隆さんが「ロックを叩くのが上手くなった」と言ってましたよ。

石若:嬉しいー! SMTKでもアイデアが降りてきやすくなりましたね。自分が何をすべきか、どんな音を叩くか、どんなフィールで演奏するかっていうボキャブラリーが自然に増えてきて、そこから「今回はこのモードだな」って瞬時に選べるようになったというか。

自分のイメージと体のつながりがいままでより上手になったかなと思いました。それはもちろん、くるりとかさまざまな現場で、いろんな曲を演奏しながら経験したことも大きいと思います。

石若駿 / 本文中の写真は“Headhunters feat.Dos Monos”のミュージックビデオ撮影時に行われたもの
石若駿 / 本文中の写真は“Headhunters feat.Dos Monos”のミュージックビデオ撮影時に行われたもの

―すっかり各方面に引っ張りだこだし、そこからいろいろなものを吸収している。

石若:そうですね。この1~2年はレコーディングが多かったので、ドラムの音づくりもいろんな現場で学ぶことが多かった。そういうのをSMTKのレコーディングにも持ち込みました。シンバルのチョイスもいままでと全然違うし、バスドラも全曲26インチを使ったりとか。そういう経験値が今回の作品に反映されてるなって。

―キックの音が明らかに前作よりデカい(笑)。

石若:大正解の音ですよね。

SMTK“Genkai Mentaiko”を聴く(Apple Musicはこちら

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リリース情報

SMTK『SIREN PROPAGANDA』
SMTK
『SIREN PROPAGANDA』

2021年7月14日(水)発売
価格:2,200円(税抜)
APLS2107

1. Headhunters(feat. Dos Monos)
2. マルデシカク(feat. TaiTan)
3. Diablo(feat. 没 a.k.a NGS)
4. Genkai Mentaiko
5. Minna No Uta
6. Ambitious pt.1(feat. Ross Moody)
7. Ambitious pt.2(feat. Ross Moody)
8. Love Has No Sound

プロフィール

SMTK
SMTK(エスエムティーケー)

ドラマーの石若駿が自身の同世代のミュージシャン達を集め結成したバンド。2018年8月に初ライブを行う。最初のライブはドラムの石若駿、ギターの細井徳太郎、ベースのマーティ・ホロベックの3人で行われる。同年10月、新宿ピットインでのライブにてサックスの松丸契が参加、以後現在の編成となる。2019年には『東京ジャズ』や『TOKYO LAB』といったイベントにも出演。2021年7月、2ndアルバム『SIREN PROPAGANDA』をリリースした。

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