特集 PR

ブックコーディネーター内沼晋太郎と考える面白さを形にする方法

ブックコーディネーター内沼晋太郎と考える面白さを形にする方法

インタビュー・テキスト
梅田カズヒコ
撮影:寺島由里佳
2013/10/22
  • 0

unico、ディスクユニオンなど数々のショップにおいて書棚スペースの選書を手がけ、自身も本屋「B&B」を共同経営するブックコーディネーター内沼晋太郎。一般の書店で本を販売するという既存の手法を飛び出し、本と読者の新しい出会い方をプロデュースする「本とアイデア」のレーベル「numabooks」を主宰する彼が、次に手がけたのは、国内大手のスポーツウェアブランド・デサント(DESCENTE)の旗艦店となる「DESCENTE SHOP TOKYO」の書棚とイベントスペースのプロデュース。スポーツウェアが並ぶ空間に合わせて選ばれた本は、原宿の文化を求めて集う人々に新鮮な驚きをもたらし、これまで数多の選書を行ってきた彼ならではの審美眼が光っている。同空間では毎週末イベントが開催されるが、本とイベントという組み合わせは、かねてより彼が「本の未来」のコミュニケーションを探る中で実践してきた手法である。その蓄積を活かした今回のプロジェクトで、彼はどんな新しいことを仕掛けようとしているのか。また、次々と企業を巻き込み、クリエイティブな取り組みを行うことができるのはなぜなのか。その秘密を聞いた。

バラバラになっている本を1つの文脈のもとに集めてくるのが僕の仕事です。

―今回、内沼さんが「DESCENTE SHOP TOKYO」の書棚を選書することになったきっかけは何だったのでしょう?

内沼:実は僕、スポーツはほとんどやらないんです。スポーツカルチャーに関してもほとんど素人で。でも、今回デサントの意向としては、僕みたいにこれまでスポーツにあまり接点がなかった人に知ってもらいたいということだったので、そういうことであればお手伝いできると思いました。

内沼晋太郎
内沼晋太郎

―最近は、登山やアウトドアを趣味にする人が増えたり、スポーツが文化的なものとして再び注目を集めていますが、書棚を選書する際にそういった接点も意識されましたか?

内沼:そうですね。ただ、スポーツとカルチャーが結びついたのはおそらく今に始まったことではなくて、ストリートファッションにスポーツウェアが入っていったあたりから歴史があるんだと思うんです。でも、今はさらに、音楽でも本でも好きなものが細分化していますよね。その流れでスポーツの選択肢も多様化して、自分の好きなカルチャーとの接点を見つけていくようになったんじゃないかと思います。それで「このスポーツが好き」と主張する人が増えてきて、ブームが表面化したんじゃないかと。

「DESCENTE SHOP TOKYO」B1Fの様子
「DESCENTE SHOP TOKYO」B1Fの様子

―スポーツをテーマに選書されていますが、直球のセレクトではなくて、写真集や小説も置いていますよね。

内沼:スポーツの実用書を探したい人は大型書店に行きますから、専門書店のような選書は行っていません。棚の大きさも限られているので、網羅することは不可能ですしね。原宿という立地もありますし、スポーツやカラダのことに興味を持つ入り口となるように心がけました。例えばデートの途中で彼氏に連れてこられた彼女が、書棚を見てちょっと気になるような本をイメージしてセレクトしました。でも、もちろんスポーツが好きな人が集まる場所でもあるので、スポーツの奥深さをさらに感じられるような本も選んでいます。

―具体的には、どういったバランスで選書しているのでしょう?

内沼:例えば「歩く」をテーマにした棚だったら、ウォーキングについて解説した本もあれば、四国のお遍路についての本もあるし、『夜のピクニック』のような小説もセレクトしています。ターミナル駅にあるような大きな書店に行けば、これらの本はすべて取り扱っているとは思いますが、このような本の並びにはなってないわけですね。スポーツの専門書は専門書の棚にあるし、小説は小説の棚にある。そういうふうに、バラバラになっている本を1つの文脈のもとに集めてくるのが僕の仕事です。

「走る」をテーマにした書棚
「走る」をテーマにした書棚

―内沼さんは、これまでもさまざまなショップで選書を行っていますが、デサントならではの工夫にはどういうものがありますか?

内沼:一つひとつの棚別に様々なテーマで選書していますが、全体のテーマは、「スポーツ&クラフトマンシップ」です。デサントは、アスリート向けにこだわったもの作りを行っているところが魅力なので、商品開発のこだわりをうまく伝えることができれば、一般の人にも面白がってもらえると思って選びました。

―選書やスペース作りを通して、ブランドのイメージ作りまで携わっているような感じでしょうか。

内沼:デサントの方からいただいた課題は、アスリートの方には有名なのですが、一般的にはまだそれほどイメージを持たれていない、ということでした。「デサントって聞いたことはあるけど、どんなブランドだっけ」とまっさらな気持ちでお店に来てくれる方も多いと思うので、そういう人たちに「とがったことをやるブランドだな」と思ってもらうことが第一目標です。

デサントのキーメッセージ「感動のいちばん近くに」に基づいて選書された書棚
デサントのキーメッセージ「感動のいちばん近くに」に基づいて選書された書棚も

―書棚を作るのもスポーツウェアショップとしては特異な試みですが、さらに毎週末にイベントを開催するそうで、そのプロデュースも内沼さんが行っているそうですね。

内沼:例えば、アップルストアをイメージしていただくのがわかりやすいかと思います。あそこはアップル製品を取り扱っている直営店ですが、一見製品とは無関係な音楽ライブやトークイベントを行っていたりしますよね。でも、そのイベントを通して、「アップルってカッコいいな」と思ったり、イベント目的でストアに来た人が「アップル製品買って帰ろうかな」って思える。イベントに来なかった人に対しても「アップルストアで何かイベントをやっているらしい」ということを知らせるだけで宣伝にもなりますし、イベントをやることで様々な効果を上げているという意味で、近いことをやろうとしています。

Page 1
次へ

プロフィール

内沼晋太郎(うちぬま しんたろう)

1980年生まれインターネット育ち。一橋大学商学部商学科卒。卒業後、某外資系国際見本市主催会社に入社し、2ヶ月で退社。その後千駄木・往来堂書店のスタッフとして勤務し、その他フリーターとして複数のアルバイトを掛け持つ傍ら、2003年、本と人との出会いを提供するブックユニット「book pick orchestra」を設立。「文庫本葉書」「新世紀書店」「WRITE ON BOOKS」「book room[encounter.]」など数々のプロジェクトを手がけ、2006年末まで代表をつとめる(現代表:川上洋平)。平行して自身の「本とアイデア」のレーベル「numabooks」を設立し、現在に至る。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

AFRO PARKER“After Five Rapper -SHACHIKU REQUIEM-”

AFRO PARKERが、すべての社畜a.k.a.企業戦士たちに捧げるレクイエム“After Five Rapper -SHACHIKU REQUIEM-”のPVを公開。メンバー全員が社会人の7人組。「えっもう定時?でもまだ仕事残ってっし」など、ラップに乗せて叫ばれる心の声は、実に生々しい。今週22日(土)には、六本木VARITにて、所属レーベル「para de casa」のイベントに出演。(矢島)