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みんなが集まる、アートな「場」の作り方 中崎透インタビュー

みんなが集まる、アートな「場」の作り方 中崎透インタビュー

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:永峰拓也
2015/01/13
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ビッグターミナル池袋駅から東武東上本線で1駅の位置にある、北池袋。のんびりした雰囲気の街並を少し歩いた先に、今回の取材場所はある。一見すると、事前に聞いていた「築35年、風呂無し、共同トイレのアパート」そのもの。ただ、よく見れば地階の共有部には今風のウッドデッキがしつらえてあり、道路に面した部屋の表札には「としまアートステーションY」の文字がある。ドアをノックすると、アーティストの中崎透が6畳間に招き入れてくれた。作品作りを口実にして、見知らぬ者同士が協力する場を作り出す活動で知られるNadegata Instant Party(ナデガタインスタントパーティー)の一員としても知られる人物。この細い路地の奥にある古アパートを使って、彼は何を始めようとしているのか? そもそもアートステーションとは何ぞや? ちゃぶ台を囲んでお茶をいただきながら話を聞いた。

正直「今、何をやってるの?」とストレートに聞かれると答えにくいですね(笑)。

―今日は中崎さんがここ「としまアートステーションY」で何をやろうとしているのか、教えてもらいにきました。

中崎:正直「今、何をやってるの?」とストレートに聞かれると答えにくいですね(笑)。なので、経緯を簡単にお話します。ここ豊島区では、2011年から「としまアートステーション構想」というアートプロジェクトが行なわれています。これは区民を中心に、さまざまな人が地域資源を活かして「アート」につながる活動ができる場作りの試み。その一環で、区内各地に小さな拠点を作れないだろうか、というプロジェクトが進められているんです。

中崎透
中崎透

―それがアートステーション?

中崎:はい。それで2011年、最初の「としまアートステーションZ」が雑司が谷にできて、セルフカフェなどを開きながらこのプロジェクトの拠点となっています。これに続いて、今度はアーティストを地域に迎え入れ、人々と共にアートステーションを作っていく案が生まれました。今回、そこに僕が呼ばれたようなかたちなんです。

―「Z」は東京メトロ、雑司が谷駅直結の元カフェを利用したお洒落空間という印象ですが、この「Y」は住宅街にある古い木造アパートで、良い意味でいろいろと対照的ですね。

中崎:「Y」は長期的な運営が決まっているというより、まずは僕が、少なくとも数か月、豊島区のどこかに新しく借りる場所で活動していく、というイメージを、としまアートステーション構想事務局から最初に説明されました。それで、僕も区内の賃貸物件を事務局と一緒に探したんです。

―そしてこのアパート「山田荘」に?

中崎:はい。ここのオーナーの娘さん夫婦が「山本山田」というユニット名で活動していて、この木造アパートで暮らしつつ、実験的な活用の道も探っていたんですね。そのこと自体が面白いと思ったし、家賃もちょうど良かった(笑)。そこで、事務局と「山本山田」でここを「Y」として立ち上げて、僕がゲストアーティストとして入ることになりました。ただ初めて物件を見たとき、ここにお客さんを呼んで何かやる、というイメージではないのかな、とも思って。

中崎透

―中崎さんによるステートメントに「6畳2間の風呂なし木造アパートでした。とりあえずいろんなことをあきらめてみました」と書いてあり、面白かったです(笑)。でも、「既存の施設や隙間を使って、ここに住みながら手近でいかに文化的におもしろい生活ができるか、相談しながら試してみようと思いました」ともあり、決して後ろ向きではない感じでしたね。

中崎:最初、豊島区には100くらい商店街があると聞き、1階が店舗、2階が住居みたいな物件の活用を何となく想像していました。そこから、作家の滞在制作やその公開、成果展示などのイメージも連想して。でも今はそうしたことより、ここを拠点にした「遊び方」を考えられたらと思っています。

―そう考えるに至ったきっかけがあった?

中崎:こういうアパートでの暮らしって、銭湯が自分の家のお風呂、共用の水場がキッチン、コインランドリーが洗濯機というふうに、1つの家の機能が街中に分散しているという見方もできますよね。

―かつて無頼派の小説家、坂口安吾も「(僕には)食堂といふ台所があるんだよ」と書いてますね……。

中崎:まあつまり、自宅の外付け機能として街の各所を活用するイメージです。その考え方で、たとえば展示やワークショップの場として、公民館や学校、さらに街の隙間的な空間も使えるかなと思って。そういう経緯で「上池ホームズ計画」という今回のプロジェクト名を決めました。

―なるほど。

中崎:この一帯、「上池袋」の街全体を「大きな家の集合体=ホーム(ズ)」とみなすというのが1つ。あとは街を歩き回る中で、今まで見ていなかった、または気づかなかった何かを見つけられたらと思い、名探偵ホームズの名に引っ掛けてみたような……(笑)。

―中崎さんは個人での活動に加え、アートユニット「Nadegata Instant Party」(以下ナデガタ)の一員としても知られていますね。あのユニット名にも、パーティー(グループ)の意味と同時に、人々が集ってパーティーを開くような「口実」作りから創作を始める、というダブルミーニングがあるのを思い出しました。

中崎:はい、そこは今回のプロジェクトともつながっていますね(笑)。

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イベント情報

『としまアートステーション構想』

主催:東京都、豊島区、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、一般社団法人オノコロ

としまアートステーションZ
セルフカフェ営業時間:毎週金土日12:00~18:00(イベント時変更あり)

としまアートステーションY
『中崎透展覧会』

2015年2月21日(金)~3月8日(日)

シンポジウム
『都市のすき間-文化芸術が生まれる場所-』

2015年1月25日(日)15:00~17:30
会場:東京都 池袋 豊島区民センター(コア・いけぶくろ)5階音楽室
料金:無料(ウェブサイトから要申込)

東京文化発信プロジェクトとは

東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が、芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施している事業です。多くの人々が文化に主体的に関わる環境を整えるとともに、フェスティバルをはじめ多彩なプログラムを通じて、新たな東京文化を創造し、世界に発信していきます。

プロフィール

中崎透(なかざき とおる)

アーティスト。武蔵野美術大学大学院造形研究科博士後期課程満期単位取得退学。現在、茨城県水戸市を拠点に活動。言葉やイメージといった共通認識の中に生じるズレをテーマに自然体でゆるやかな手法を使って、看板をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インスタレーションなど、形式を特定せず制作を展開している。展覧会多数。2006年末より山城大督、野田智子と結成した本末転倒型オフビートユニット「Nadegata Instant Party」としても活動。2007年末より「遊戯室(中崎透+遠藤水城)」を設立し、運営に携わる。

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