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クリープハイプ×鈴木康広対談 ロックと現代アートの学び合い

クリープハイプ×鈴木康広対談 ロックと現代アートの学び合い

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:永峰拓也

幸福なコラボレーションは単に「1+1=2」ではなく、掛け合わされる相乗効果によって、作者ですら思いもよらなかった「気づき」や「発見」が、次々と作品の中からあふれだすことがある。真木よう子主演の映画『脳内ポイズンベリー』の主題歌にも抜擢された、クリープハイプの新曲“愛の点滅”。そのミュージックビデオで、クリープハイプと現代アーティストの鈴木康広のコラボレーションが実現した。鈴木康広といえば、表に開いた目、裏に閉じた目を描いた無数の紙を、パラパラと降らすことでまばたきを表現したインスタレーション『まばたきの葉』が代表作の1つ。そのモチーフを“愛の点滅”に取り入れることで、信号機のように移り変わる心を歌った歌詞世界を、視覚的なイメージとして浮かび上がらせることに成功している。鈴木にとっても、10年前の作品が音楽と結びつくことにより、新たな意味が引き出されたことは、非常に大きな意義があったようだ。

CINRAでは今回、クリープハイプのボーカル&ギターの尾崎世界観と鈴木の対談が実現。コラボレーションについてはもちろん、アイデアの生み出し方や、作品作りのモチベーション、自らの「居場所」についてなど、第一線で活躍するクリエイターならではのテーマが目白押し。鈴木がクリープハイプの新メンバーとして加入(?)など、話題は思わぬ方向へと転がり、大いに盛り上がった。

僕はハイテクなものに興味がなくて。それよりも、木が面白いなと思っていたんです。(鈴木)

―今回、クリープハイプの“愛の点滅”のミュージックビデオの中で、鈴木さんの作品『まばたきの葉』が使用されていますが、そもそも鈴木さんはこのインスタレーションをどのように思いついたのですか?

鈴木:2003年の12月くらいに、『デジタル・スタジアム』というNHKの番組のイベントで、「未来にこんなものがあったらいいな」をテーマに映像やインスタレーション作品を作ってプレゼンする企画があったんです。僕以外はハイテクなものに着目した発表が多かったんですけど、当時僕はハイテクなものにそれほど興味がなくて。それよりも、木が面白いなと思っていたんです。

―木、ですか?

鈴木:木は、人間よりも遥か昔に地球上に発生したわけじゃないですか。そこに人間はだいぶあとから参加してきた。人間と木の関係がこれからも長く続いていくとしたら、やがて木は毎日自分の前を通りすぎる人の顔を覚えるようになるんじゃないかと思ったんです。夏頃から、通りすがる人たちの目を葉に模様として浮かび上がらせて、秋になって落葉したときにその人と偶然目が合う。人間と植物・自然が出会う、未来の瞬間をプレゼンテーションするために、実際に紙で試作した葉っぱを作品として持って行きました。

『まばたきの葉』 撮影:青木遥香
『まばたきの葉』 撮影:青木遥香

―『まばたきの葉』では、葉っぱの表には目が、裏には瞼が描かれてあって、クルクル落ちていくときにまばたきしているように見えます。「まばたき」への興味はどういったところからですか?

鈴木:「まばたき」って、ほとんどは意識せずにしてますよね。自分が作品を作るときも、「無意識」の部分は切り離せないというか、「自分だけど自分じゃない」みたいな部分が作品に出てくるんですよ。そういう曖昧な部分を「まばたき」と捉えて、作品にすることでオブジェ化してみました。

―尾崎さんは、鈴木さんの作品とどこで出会ったのですか?

尾崎:もともとアートは好きで、高校生の頃はよく美術展へ行ってたんですよ。前はそういうところから刺激をもらって音楽を作ってたりしてたんですけど、だんだんバンドに費やす時間が多くなって、吐き出すばかりになってしまっていて。「刺激を取り入れる時間がないな」と思っていたときに、共通の知り合いから鈴木さんのことを教えてもらって、本(『まばたきとはばたき』)を読んだんです。それですごく興味をもって、実際にお会いしてみたら、鈴木さんの面白い人柄にも惹かれて。「この人と一緒にやりたいな」って第一印象で思いました。

鈴木:川内倫子さん(写真家)の作品も好きなんですよね? 僕は最初の作品を川内倫子さんに撮ってもらっていて、ずっとお姉さんのように親しくさせてもらっているんですよ。そうやって、尾崎さんと共通の好きな作品やアーティストの話ができたのは嬉しかったですね。

尾崎:鈴木さんとアートの話をしたり、実際作品に触れたりしてたら、「出すばっかりじゃなくて、もっと吸収しなきゃダメだな」って思いましたね。今年はわりと、本を読んだり映画を観たりとか意識的にしているんですけど。

左から:尾崎世界観、鈴木康広
左から:尾崎世界観、鈴木康広

鈴木:僕もインプットってほとんどしなくなりましたね。大学生の頃は、アートの歴史に自分がどう関っていけるのか、自分はどこに立っているのか、まずはそれを知りたくて色々な作品を夢中で見てたんですけど。一旦アウトプットのリズムを体得すると、あとはもうやることばっかりで忙しくて……。

尾崎:そうですよね、一旦作品作りが始まっちゃったら止まれないですよね。手を止めて、なにかを入れてる間に、進んでるものが壊れちゃうような気がして……。それでも、やっぱり自分が知らない世界に触れるというのは嬉しいし、久しぶりにこういう刺激を味わいましたね。バンドとしても、今まではもっと音楽に近い人と一緒にやっていたけど、こういうカタチは初めてだったから。

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リリース情報

クリープハイプ『愛の点滅』青盤 / 初回限定盤(CD)
クリープハイプ
『愛の点滅』青盤 / 初回限定盤(CD)

2015年5月5日(火・祝)発売
価格:1,296円(税込)
UMCK-9734

1. 愛の点滅
2. クリープ
3. すぐに
4. 空色申告

クリープハイプ
『愛の点滅』黄盤 / ユニバーサルミュージックストア限定盤(CD)
クリープハイプ
『愛の点滅』黄盤 / ユニバーサルミュージックストア限定盤(CD)

2015年5月5日(火・祝)発売
価格:1,296円(税込)
PDCS-5916

1. 愛の点滅
2. 喋る(2015年3月21日市川市文化会館)
3. ヒッカキキズ(2015年3月21日市川市文化会館)
4. 目覚まし時計(2015年3月21日市川市文化会館)

クリープハイプ
『愛の点滅』赤盤 / 通常盤(CD)
クリープハイプ
『愛の点滅』赤盤 / 通常盤(CD)

2015年5月5日(火・祝)発売
価格:1,296円(税込)
UMCK-5568

1. 愛の点滅
2. クリープ
3. すぐに
4. 赤の前

イベント情報

クリープハイプ
『全国ホールツアー「一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう」』

2015年5月7日(木)
会場:東京都 渋谷 NHKホール

2015年5月8日(金)
会場:東京都 渋谷 NHKホール

2015年5月10日(日)
会場:長野県 ホクト文化ホール・中ホール

クリープハイプ
『「一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう」総集編~東京の中心で○○○を叫ぶ~』

2015年5月16日(土)
会場:東京都 日比谷野外大音楽堂

鈴木康広
『鈴木康広展 「近所の地球 宇宙の黒板」』

2015年4月25日(土)~5月17日(日)
会場:福岡県 天神 三菱地所アルティアム(イムズ8F)
時間:10:00~20:00
料金:一般 前売300円 当日400円 学生 前売200円 当日300円

プロフィール

クリープハイプ

2001年、クリープハイプを結成。3ピースバンドとして活動を開始する。2005年、下北沢を中心にライブ活動を活発化。ライブを観たいろんな人から「世界観がいいね」と言われることに疑問を感じ自ら尾崎世界観と名乗るようになる。2008年9月、メンバーが脱退し尾崎世界観(Vo/Gt)の一人ユニットとなる。2009年11月、小川幸慈(Gt)、長谷川カオナシ(Ba)、小泉拓(Dr)を正式メンバーに迎え、本格的に活動をスタート。2012年4月にメジャーデビュー。2014年4月、日本武道館2Days公演を開催。5月5日に、ニューシングル『愛の点滅』をリリース。

鈴木康広(すずき やすひろ)

1979年静岡県浜松市生まれ。2001年東京造形大学デザイン学科卒業。日常のふとした発見をモチーフに記憶を呼び起こし共感を生み出す作品を制作。国内外の展覧会をはじめ、パブリックスペースでのコミッションワーク、大学の研究機関や企業とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる。著書は作品集『まばたきとはばたき』『近所の地球』(青幻舎)、『Digital Public Art in Haneda Airport空気の港テクノロジー×空気で感じる新しい世界』(共著 / 美術出版社)。2014年水戸芸術館にて『鈴木康広展「近所の地球」』、金沢21世紀美術館にて『鈴木康広「見立て」の実験室』を開催。「『感じ』をデザイン」と評され、2014毎日デザイン賞を受賞。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科准教授、東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室客員研究員。

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cero“ロープウェー”

「この曲を最初に聞いた時になぜか、じっと佇む飴屋法水さんとメンバーの姿が浮かび上がってきて離れなかった」と語るのは監督を務めた仲原達彦。モノクロの8mmフィルムで撮られた何気ない風景やロープウェーの映像のはずが、なぜか現実離れした幻想的な感覚へと連れていく。昨年末にリリースされ、すでに耳に馴染んだはずの楽曲の世界がさらに広がり深まるような映像世界。(宮原)