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クリープハイプ×鈴木康広対談 ロックと現代アートの学び合い

クリープハイプ×鈴木康広対談 ロックと現代アートの学び合い

インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:永峰拓也

余裕がないときって、どんどん視野が狭くなってしまうけど、1つのことに対して色々な角度から見られるようになると、少し楽になれるんじゃないかと思うんですよね。(尾崎)

―クリープハイプと鈴木さんの共通点って、「分かる人にだけ分かればいい」という意識ではなく、「多くの人に届く作品を作る」という意識を強く持った上で作品を作っているところだと思うんです。

尾崎:そうですね。「人に評価されなくても、自分がいいと思うからいいんだ」とはやっぱり思えない。

鈴木:うん、思えない。こうやって自分の作品について話すときも、相手のリアクションがものすごく気になりますね。

尾崎:やっぱり、人に「いい」って言ってもらいたいから作ってるし、「いい」と言ってもらうべきものを作っていると思うから。「誰かに評価されたい」っていう欲があるし、自己満足じゃ成り立たないんですよね。

鈴木:でも、人が「いい」と言わなければ作らないのか、とか、人に「いい」って言ってもらうためだけに作っているのかというと、僕の場合はまたちょっと違っていて。自分が「いい」と思って、相手も「いい」と思えるものを見てみたいんですよね。「評価」とかじゃなくて、みんなの中にあるものをカタチにして分かち合いたい。作ったものを誰かに見せる瞬間は怖いしドキドキするけど、そこで「いいね」って言ってもらえたら、最高に嬉しい。

右:鈴木康広

―鈴木さんの作品にはどれもユーモアとか、普段見ているものを違う角度から見るきっかけを与えてくれる部分があって、それが鑑賞者と作品の距離を縮めるとっかかりにもなっているのかなと思います。

鈴木:確かに、入り口としてそういう部分は絶対に必要だと思っています。一瞬だけ不安を与えて、そのあと安心させるというか。「作品をわかるために、わからなくさせている」っていうところがあります。

尾崎:僕も、あまりストレートには表現せずに、クセというか、捻くれるところはありますね。鈴木さんの作品とはちょっと違うとは思うんですけど。

鈴木:そうですか、違いますか?

尾崎:僕の方が毒があるかも。鈴木さんの方が優しいですよね。「こういう見方もあるんだよ」っていう提示をするという意味では、一緒だと思うんですけど。僕の場合、例えばここにお茶と水があって、お茶を指すときには「お茶」って言えばいいところを、「水じゃない方」って言う捻くれた表現をするクセがあるんですよ。

尾崎世界観

―物事を多面的に見るという意味では一緒だけど、その方法や角度が違う。

尾崎:そうですね。どちらにせよ、そうやって1つのことに対して色々な角度から見られるようになると、少し楽になれるんじゃないかと思うんですよね。余裕がないときって、どんどん視野が狭くなってしまって、物事を「いいもの」と「悪いもの」でしか見れなくなってくると思うんですけど、それ以外のものもちゃんと見れるようになると心が楽になる。

鈴木:僕自身は「優しい」って言ってもらえると、嬉しい気持ちの反面、「全然そんなことない」とも思うんですよね。むしろ、「悪いことしてるな」って思います。自分がやってることは、意外と刺激が強いんじゃないかな。

尾崎:そうなんですか?

鈴木:よく人から言われてそう思っているのですが、例えば『まばたきの葉』は、1度作品を見たら忘れられないんですよ。落葉や桜の花が散る様子を見たら思い出しちゃう。それって、みんなの意識の中に入り込みすぎてるのかなっていう気もして。でも、僕がこうして活動できているのは、今、世の中に対してなにかやるべきことがあるからなのかなとは感じています。

活動を続けてると、よく「変わったな」とか言われるんですよ。でもそれは当たり前だし、いいことだとも思う。ずっと同じことをやろうとしたって、変わっていくんですよ。(尾崎)

―鈴木さんは、過去のCINRAのインタビューでも、「世の中からアイデアを授かって、それをカタチにすることで自分の居場所を作ることができる」とお話されてましたよね。今も「作品を作る=居場所を作る」という意識はありますか?

鈴木:そうですね。僕はよく、美大に「避難した」っていう言い方をするんですけど、そこに逃げ込む以外に道がなかったんです。それで20代の頃は狂ったように色々な作品を作り続けていくうちに、自分の居場所が広がっていった感じなんですよね。

―その一方で、尾崎さんは音楽活動を続けている中で、ずっと居場所を探している感じがします。今回のシングルのカップリングの“クリープ”でも、<散々迷って吐き出したら負けだよ>って歌詞を歌っていたり、<聴くに耐えないこんな声>と自分のことを卑下していたり。

尾崎:居場所がどこにもないのは確かに不安なんですけど、居場所ができてくると今度は「それがなくなったらどうしよう」っていう、新たな不安が生まれるんですよね。だからずっと不安があるというか……。居場所って、当たり前のようにずっといられるわけじゃないし、結果を出していかなければなくなってしまうものだし。メジャーだったら、契約が切れてしまうこともある。戦い続けるのは大変だなと思いますね。だからこそやり甲斐があるとも言えるけど。

鈴木:改めて考えてみると、バンドで活動していくって大変ですね。

尾崎:活動を続けてると、よく「変わったな」とか言われるんですよ。でもそれは当たり前だし、いいことだとも思う。ずっと同じことをやろうとしたって変わっていくんですよ。自分も変わるし、周りも変わってくわけだから。作品を出さなければ、評価が下がることもないけど、やっぱりそれはダメですよね。評価が下がってもいいから、勝負し続けることが大事なんじゃないかなって思います。作品を作って、それを発信していくことで、結果的に居場所ができていくというのが理想ですね。

鈴木:居場所っていうと、居心地のいい場所のように聞こえるけど……。

尾崎:全然そんなことないんですよね。

鈴木:そうそう。

左から:尾崎世界観、鈴木康広

―居場所とは、牙城を作って引きこもるっていうことじゃなくて。そこから周りにコミットし続けることが大切なんでしょうね。

鈴木:そうですね、そのための場所という感じです。

尾崎:今回、鈴木さんと一緒にやって、バンドとしてもいい経験だったんですけど、聴いてくれる人にも気づきがあるんじゃないかなと思います。表現の可能性はこれからも試していきたい。クリープハイプを聴いていると、音楽だけじゃなくて写真や映画、アートなどに繋がっていくっていうふうになったらいいなと。自分がそういうのが好きだから、好きなものは教えたいし広めたいっていう気持ちがあるんです。

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リリース情報

クリープハイプ『愛の点滅』青盤 / 初回限定盤(CD)
クリープハイプ
『愛の点滅』青盤 / 初回限定盤(CD)

2015年5月5日(火・祝)発売
価格:1,296円(税込)
UMCK-9734

1. 愛の点滅
2. クリープ
3. すぐに
4. 空色申告

クリープハイプ
『愛の点滅』黄盤 / ユニバーサルミュージックストア限定盤(CD)
クリープハイプ
『愛の点滅』黄盤 / ユニバーサルミュージックストア限定盤(CD)

2015年5月5日(火・祝)発売
価格:1,296円(税込)
PDCS-5916

1. 愛の点滅
2. 喋る(2015年3月21日市川市文化会館)
3. ヒッカキキズ(2015年3月21日市川市文化会館)
4. 目覚まし時計(2015年3月21日市川市文化会館)

クリープハイプ
『愛の点滅』赤盤 / 通常盤(CD)
クリープハイプ
『愛の点滅』赤盤 / 通常盤(CD)

2015年5月5日(火・祝)発売
価格:1,296円(税込)
UMCK-5568

1. 愛の点滅
2. クリープ
3. すぐに
4. 赤の前

イベント情報

クリープハイプ
『全国ホールツアー「一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう」』

2015年5月7日(木)
会場:東京都 渋谷 NHKホール

2015年5月8日(金)
会場:東京都 渋谷 NHKホール

2015年5月10日(日)
会場:長野県 ホクト文化ホール・中ホール

クリープハイプ
『「一つじゃつまらないから、せめて二つくらいやろう」総集編~東京の中心で○○○を叫ぶ~』

2015年5月16日(土)
会場:東京都 日比谷野外大音楽堂

鈴木康広
『鈴木康広展 「近所の地球 宇宙の黒板」』

2015年4月25日(土)~5月17日(日)
会場:福岡県 天神 三菱地所アルティアム(イムズ8F)
時間:10:00~20:00
料金:一般 前売300円 当日400円 学生 前売200円 当日300円

プロフィール

クリープハイプ

2001年、クリープハイプを結成。3ピースバンドとして活動を開始する。2005年、下北沢を中心にライブ活動を活発化。ライブを観たいろんな人から「世界観がいいね」と言われることに疑問を感じ自ら尾崎世界観と名乗るようになる。2008年9月、メンバーが脱退し尾崎世界観(Vo/Gt)の一人ユニットとなる。2009年11月、小川幸慈(Gt)、長谷川カオナシ(Ba)、小泉拓(Dr)を正式メンバーに迎え、本格的に活動をスタート。2012年4月にメジャーデビュー。2014年4月、日本武道館2Days公演を開催。5月5日に、ニューシングル『愛の点滅』をリリース。

鈴木康広(すずき やすひろ)

1979年静岡県浜松市生まれ。2001年東京造形大学デザイン学科卒業。日常のふとした発見をモチーフに記憶を呼び起こし共感を生み出す作品を制作。国内外の展覧会をはじめ、パブリックスペースでのコミッションワーク、大学の研究機関や企業とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる。著書は作品集『まばたきとはばたき』『近所の地球』(青幻舎)、『Digital Public Art in Haneda Airport空気の港テクノロジー×空気で感じる新しい世界』(共著 / 美術出版社)。2014年水戸芸術館にて『鈴木康広展「近所の地球」』、金沢21世紀美術館にて『鈴木康広「見立て」の実験室』を開催。「『感じ』をデザイン」と評され、2014毎日デザイン賞を受賞。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科准教授、東京大学先端科学技術研究センター中邑研究室客員研究員。

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