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鹿野淳に訊く、日本のフェスの課題、『VIVA LA ROCK』の理想

鹿野淳に訊く、日本のフェスの課題、『VIVA LA ROCK』の理想

『VIVA LA ROCK 2017』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:柏井万作

日本の音楽にも久しぶりに欧米の動きが反映されてきて、そういうバンドがちゃんと評価されるようになり始めている。

―ここまでの話を踏まえて、注目したいのは2日目のラインナップです。今年は例年以上に3日間の色分けがはっきりしているように感じますが、2日目はさきほどおっしゃられた「フェスロック」的ではない、新しい世代のアーティストが多数ブッキングされていますよね。

鹿野:時代は緩やかに変わっていると思っていて、それはリスナーもわかってると思うんです。例えば、2年前くらいから「シティポップブーム」という言葉が生まれて、そのなかから、フェスやライブハウスで盛り上がりやすい音楽とは違うものが東京を中心に出てきた。これはある意味、4つ打ちダンスロックと言われた均一的なロックへの反動だと思うし、世界の音楽シーンでは、竿を持ってる音楽自体(ギターやベースなどの楽器のこと)がホントになくなってきてますよね。

―その反映でもあると。

鹿野:よく日本のロックはガラパゴス化が極まっていると言われてたけど、日本の音楽にも久しぶりに欧米の動きが反映されてきて、そういう音楽を10年前からやっていたceroのようなバンドがちゃんと評価されるようになった。今はそういう時代で、なおかつ、そこがもう一歩二歩上に行くチャンスって、今年と来年にかかってるんじゃないかと思っていて。

cero(『VIVA LA ROCK 2017』5月4日出演)

―つまり、2日目のラインナップはそれを実際に形として提示したということですね。

鹿野:はい。そういうバンドが主役になる場所が、これだけのフェス王国のなかで、『フジロック』や『サマソニ』のような洋楽的フェス以外でも、ちゃんとあるべきだと思うんです。『GREENROOM FESTIVAL』とかもあるけど、今のところこの国のフェス事情で言うと、専門的な分野のフェスとして見られていると思うし。

さいたまスーパーアリーナという利便性の高い場所でやっている、若い人が1~2人でも来やすいフェスが、そういう音楽をプレゼンテーションすることによって、若い人たちがそういう音楽に触れて、ハマって、音楽の新しい遊び方を知る日になり得ればいいなって、ある意味非常に夢を見てるんです。

―cero、Suchmos、D.A.N.、yahyelなど、まさに今おっしゃったことが明確に反映されたラインナップですもんね。

鹿野:そのなかに、フェスシーンにもまたがりながら、バンドシーンの音楽の構造を抜本的に変えたサカナクションもいる。これくらい固めないとダメだと思ったんです。こうやってインタビューしていただけると、僕の考えていることを体系立ててお話しできるんですけど、実際に来るお客さんがみんな説明を聞いてくるわけじゃないし、当日渡すタイムテーブルに何千字も今話していることを書くべきではないと思うから、フェスのブッキングを見て、そして現場で実感してほしい。そのためには、これくらい明確に1日のなかに集まってもらわないと、わかってもらえないんじゃないかと思ったんですよね。

D.A.N.(『VIVA LA ROCK 2017』5月4日出演)

メディアの存続の仕方を模索しないといけないっていうのは、このフェスを立ち上げた頃からずっと考えていること。

―これは問題提起としてあえて訊いてみたいのですが、「フェスロック」的な流れと、2日目のラインナップに象徴される新しい世代のバンドに乖離が起きてしまったのは、既存のロックフェス文化の限界であり、日本のロックフェス文化を築いた大本が『ロッキング・オン』であることを考えれば、既存のロックジャーナリズムの限界であるようにも思います。

もちろん、鹿野さんは『MUSICA』で新たなトライをして、ロックジャーナリズムを更新してきたと思うのですが、もともと『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長であり、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の立ち上げに携わっていることを踏まえて、現状をどのように感じていらっしゃるのかお伺いしたいです。

鹿野:非常に繊細に話さなければいけないんですけど(笑)、まずひとつ言えるのは、マネジメント、レコード会社とトライアングルを作って、そこで相互利益を出すという体系を作ったのは、『ロッキング・オン』というメディアの功績だと思っています。それはロッキング・オンを卒業して、自分がやってきたことを体系立てたときに何となくわかったことで、今『MUSICA』でやっていることも、それに近いとは思います。

鹿野淳

鹿野:ただ、『JAPAN』でやっていたときは、音楽よりも音楽家の人生や人柄にフォーカスを当てて、音楽自体が見えなくなるジャーナリズムを僕自身が軸になって作ってしまったと思ったので、その自己反省を踏まえ、『MUSICA』では音楽家よりも音楽自体を語れるメディアを作りたいと思って、10年前に始めたんです。「ちょっとぶれたかな」とか「行き過ぎたかな」っていうことはありつつ、その根本は今も変わっていないつもりです。

―なるほど。

鹿野:その上で、難しい時代になったと思うのは、もうレコード会社からお金(広告)をもらう時代ではなくなってきたんだなってことで、その限界は音楽サイトとかを見ていても感じるんですよね。収益性をレコード会社以外からも取って来ないと、メディアで収益をあげるのは難しい。紙メディアの世界も、ある意味そうなんです。まあ根本的なメディア活動という意味でいくと、とても健全な現状なんですけどね。

鹿野淳

鹿野:でも『MUSICA』は、例えばKANA-BOONやSHISHAMOをいち早く輩出したメディアでありつつ、Suchmosやyahyelを紙メディアのなかではいち早く紹介して、メンタリティーではなくあくまでも優れた音楽を批評しながら応援する意識も綴っていくメディアであり続けたい。この両方を同じように扱うのはわかりにくいと言われようとも、そこには意義もマーケットもあると思ってるし、どちらか片方をやるんだったら、それはただでさえ音楽メディア自体が専門分野なのに、もっと間口の狭いメディアになってしまう。

yahyel(『VIVA LA ROCK 2017』5月4日出演)

―そこに対しては、ベットし続けたいと。

鹿野:はい。レコード会社からのお金に頼り切って、そこからお金が出てこなくなるのを嘆いているのはあまりにも体質が古いし、そもそも自殺行為ですからね。そこ以外の収益性の作り方、メディアの存続の仕方を模索しないといけないっていうのは、このフェスを立ち上げた頃からずっと考えていることです。

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イベント情報

『VIVA LA ROCK 2017』
『VIVA LA ROCK 2017』

2017年5月3日(水・祝)~5月5日(金・祝)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
5月3日出演:
アルカラ
THE ORAL CIGARETTES
KANA-BOON
KEYTALK
クリープハイプ
Getting Better(片平実、神啓文、斎藤雄)
go!go!vanillas
SHISHAMO
SiM
SUPER BEAVER
パノラマパナマタウン
04 Limited Sazabys
BRADIO
BLUE ENCOUNT
フレデリック
Base Ball Bear
PELICAN FANCLUB
ポルカドットスティングレイ
yonige
LAMP IN TERREN
LEGO BIG MORL
Lenny code fiction
and more
5月4日出演:
雨のパレード
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)
Gotch & The Good New Times
サカナクション
Suchmos
シンリズム
水曜日のカンパネラ
SKY-HI
菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)
SPECIAL OTHERS
cero
DADARAY
D.A.N.
DJピエール中野(凛として時雨)
DJやついいちろう(エレキコミック)
DENIMS
東京スカパラダイスオーケストラ
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
フレンズ
THE BAWDIES
ぼくのりりっくのぼうよみ
yahyel
UNISON SQUARE GARDEN
lovefilm
and more
5月5日出演:
Ivy to Fraudulent Game
ACIDMAN
175R
UVERworld
打首獄門同好会
Age Factory
ENTH
Ken Yokoyama
G-FREAK FACTORY
DJダイノジ
10-FEET
Dragon Ash
NUBO
爆弾ジョニー
the band apart
BIGMAMA
HEY-SMITH
Bentham
My Hair is Bad
MONOEYES
MOROHA
ヤバイTシャツ屋さん
ROTTENGRAFFTY
LONGMAN
and more
料金:1日券10,000円 2日券18,000円 3日券(5月3日~5月5日)24,000円 4日券(5月3日~5月6日)30,000円

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

1964年、東京都生まれ。2007年に音楽専門誌『MUSICA』を創刊。これまでに『ROCKIN'ON JAPAN』』、『BUZZ』、サッカー誌『STAR SOCCER』の編集長を歴任。各メディアで自由に音楽を語り注目を集め、音楽メディア人養成学校「音小屋」を開講。2010年には東京初のロックフェス『ROCKS TOKYO』、2014年にはさいたま初の大規模ロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げるなど、イベントプロデュースも手がける。

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ぼくのりりっくのぼうよみ、小山薫堂らからも注目される19歳のハンドパン奏者・久保田リョウヘイの“RISING”のPV。自然に溶け込むような佇まいから生み出される、まるみのある幽玄的なサウンドと情熱的なビートに身をもたげたくなる。演奏はYouTubeを見て独学で学んだらしい。圧巻です。(飯嶋)