6人のクリエイターと考える「世界を想像して、日々の選択をすること」

世界を想像して、日々の選択をする。MICO、かんたんなゆめ、ex. flowerと考える

環境負荷や生産背景といった、ものづくりの「質」に関心を向け、話題に上がる機会も増えてきた。さらに、コロナ禍によって身の回りを整え、慈愛する考えはより一層深まっている。

私たちは日々、選択を繰り返している。なかでも「買い物」というのは選択の連続で、私たちが選んだものによって遠くの誰かを守ることにつながるかもしれないし、傷つけてしまう可能性もある。選び方次第で環境問題に貢献できるかもしれないし、加担してしまうかもしれない。

日々の選択を見つめ直すことや身近な物事から、自分の暮らしと社会の関係に思いを巡らせる連載をスタート。さまざまなジャンルで活躍し、ギネスビールのプロジェクト『Chill in GUINNESS』(※)でコラボ商品を制作したクリエイターら、自分らしい生活の仕方を選択している人たちとともに、世界を想像して暮らしのなかで取り組めることを考えていく。

1記事目では、アーティストのMICO、和菓子作家のかんたんなゆめ、フラワーショップex. flower shop & laboratoryのみなさんとともに考えていきたい。

(※)ギネスビールが、さまざまなシーンで活躍するクリエイターらとタッグを組み、オリジナル作品を制作するプロジェクト。味覚・視覚・触覚・聴覚・嗅覚のカテゴリーから1組ずつ選出された参加クリエイターは、「ギネスビール」の味わいから感じたインスピレーションをもとに、「夜チル」というオケージョンを表現した作品を⾃由に制作。

MICOが提案する「睡眠の質を向上させるルームウェア」

─MICOさんはアパレルブランドのPAMMとルームウェアをプロデュースされています。ルームウェアに興味を持たれた理由は?

MICO:何を着て眠るかって、そこまでこだわらない人も多いと思うんですけど、私は眠るときも自分の好きなものを着ていたいと思っていて。あるとき、すごくかわいいルームウェアを見つけたので、けっこうな値段だったのですが、思い切って買ってみたんです。そのときは見た目重視だったんですけど、着て寝てみたら睡眠の質が驚くほど上がって、すごく感動しました。

それで、ルームウェアで眠る良さを伝えたいと思い、理想のルームウェアがなかなかないこともあって、自分のライブグッズとしてつくり始めたのが最初です。おしゃれで、カラフルで、手に届く値段のものを。

─何を着るかで、睡眠の質が変わるんですね。

MICO:科学的な根拠はわからないですけど、私の体感としてはガラッと変わりました。

あとルームウェアは、スイッチのオンオフをつくってくれるのも好きなところです。忙しい日でも、夜になってルームウェアに着替えると、時間が切り替わる感覚がある。ルームウェアを着たら、お仕事はもうおしまい! みたいな。それに、ルームウェアは誰かに見せるものではなく、自分が好きなものを着るので、ルームウェアを選んだり着ている時間は、自分と向き合うことができるんです。

─spoken words projectを主宰し、PAMMのデザイナーをつとめる飛田正浩さんも大きくうなずいていらっしゃいますね。

飛田:ぼくがファッションを始めた当初は、「見られること」を意識した洋服を提案していました。だけど、次第に自分だけの特別な、至極パーソナルな洋服というのは、個人個人の気持ちに訴えられるものなんじゃないかと思って。それで、ルームウェアの大切さを考えるようになりました。

ぼく自身昔は、前後逆に履いてもわからないくらいのスウェットで寝ていたんですけど(笑)、ルームウェアを着たら全然違った。睡眠の質もですけど、気分的な気持ち良さも感じました。「リラックス」と「だらしなさ」の違いというか。

─自分を癒して、大事にするために味方になってくれるアイテムかもしれないですね。PAMMさんは残布を使われたり、環境問題に対しても意識的に取り組まれています。環境問題を意識するようになった理由を、ブランドディレクターである岡田知緋乃さんに伺えますか?

岡田:洋服というのは、とびっきりの宝物となる瞬間もあれば、着なくなったらゴミとなることもある。際どいものです。大切に着てもらうためには素敵なデザインのものをつくりたい思いはありつつ、やっぱりアパレル業界にいると環境問題を考えずにはいられない状況です。洋服に対して敬意があるからこそ、私たち自身が環境のことを考えるべきだと思って、無理をしない範囲で取り組んでいます。

大きな特徴は、残布をなるべく出さないようにしていること。服をつくると余り布がどうしても出てしまうのですが、PAMMの生地(柄)はどこで裁断してもバランスが良くなるようデザインしています。そうすることによって同じ物が二つとない一点物のルームウェアが出来上がるのです。環境に配慮しつつも、ユーモアを忘れずに取り組んでいます。

飛田:あとは、リプロダクトデザインにも取り組んでいます。たとえば病院でよく見かける、典型的な日本のスリッパ。以前は多くの工場でつくられていましたが、需要が減り、生産存続が困難だそうです。国産のたしかな品質を途絶えさせないよう、それらにテキスタイルを組み合わせてリプロダクトする。そうして、新たな価値をつけられたらと思っています。

MICOが世の中を意識して選択していること。「自分だけのファッションルールをつくる」

─今回のテーマである、世の中を意識して選択されていること、質を追求されていることについてMICOさんはどんなことを思い浮かべますか?

MICO:私はいろんな系統のファッションが好きなので、かわいいと思ったものは際限なく買ってしまっていました。だけどそれは、着ない洋服が増えていきゴミにつながるかもしれないし、経済的な余裕もなくなってしまう。なので、洋服に対する「自分なりのルール」を決めてみようと試している最中です。

まず、身長や体格など自分の持って生まれた容姿を観察して似合うものを探す。そして、自分が色や形など好きなテイストを絞っていきます。私なら、ガーリーでアクセントが入っているものが好きなので、そのルールに沿ったものしか買わないことにしました。そうやってルールを決めたことで、「買えないもの」が増えて、長く着られるものが集まってきたと感じます。見極めるのはすごく難しいけれど、ルールを見つけて、そのなかでファッションを楽しむのは面白いですよ。

─洋服が厳選されると、気持ち的にも、環境のことを考えても、気分がよくなれそうですね。

MICO:最近の目標は、クローゼットの中身をなるべく移動させないこと。ゴミを増やしたくないし、手放すようなものは買いたくないと思っています。ただ、好みが変わっていくのは仕方のないことなので、たまに友人と服の交換会をしています。

いらなくなった服を写メで送りあって、欲しいものがあれば交換する。フリマなどで売る方法もあるんですけど、自分の知っている人に洋服を大切にしてもらえるのは、また違った嬉しさがあると思います。

かんたんなゆめが提案する「自分と向き合う時間を提供する和菓子」

─「練り切り」を中心に、美しくて美味しい和菓子をつくられている「かんたんなゆめ」の寿里さん。日本橋にお店を構えられています。和菓子に興味を持たれたきっかけは?

寿里:もともと菓子づくりが好きで、高校でパティシエの専門コースに進みました。そのときに、洋菓子と和菓子をひと通り勉強したんですね。初めての実習で「練り切り」をつくったとき、こんなに季節を感じられる素敵なお菓子があるんだ、と感動しました。

その後、ものすごく忙しくて、しんどい思いをしていたあるとき、先輩の家に仕事のことで相談に行ったんです。そうしたら「座ってて」と言って、抹茶と紅葉を表現した練り切りを出してくれて。

相談したいことが山ほどあったのに、その時間があまりに心地よくて、それだけで気持ちが整理されました。忙しない日常と区切りをつけて、静かに自分と向き合えた時間にとても感動して。その経験から、和菓子を通じて自分のことを考える時間を提供できたらという思いで「かんたんなゆめ」をはじめました。

─練り切りの季節感と特別感というのは、日常に区切りをつけるきっかけになるんですね。

寿里:洋菓子のショートケーキやシュークリームはいつも同じクオリティの味と見た目で通年店頭に並んでいますが、練り切りは同じ味でもその季節にしか出会えないデザインがある。春は桜、夏は花火や向日葵、秋になれば菊、そしてサザンカや椿。変わるものと変わらないものが共存しているのが練り切りだと思うので、日常のなかでも非日常を感じやすいお菓子だと思います。

私は月と桜が大好きで。月は、夜になれば日本中どこにいても同じ月を見られる。変わらずにいてくれる存在です。桜は、1年に一度だけ力強く咲く。自分自身がどんな人生を歩み、世の中がどんな状況であっても変わらず咲いてくれることで、1年の区切りにもなっている気がします。そういう部分は、和菓子を好きな理由と少しリンクするのかもしれません。

─寿里さんがつくられる練り切りは、季節を感じられると同時に、和菓子以外の食材も取り入れているところがユニークですよね。

寿里:和菓子の中でも練り切りは身近に買えるお店が減っているように感じていて。だから、日常的に手に取りたくなるようなもので和菓子の間口を広げたいと思い、お酒やコーヒーとも楽しめる練り切りをつくっています。和と洋をシームレスに行き来するようなものですね。

たとえばチーズケーキのような味わいの練り切りをつくったりして、コーヒーと楽しんでいただいたり。喫茶のお店をオープンしたのも、カフェでお茶するような感覚で、練り切りを楽しんでもらいたいと思ったからです。ひとりでいらっしゃる方もいれば、親子連れも多くて。ご両親を連れてきてくださる方もいて、すごく嬉しいです。

─和菓子を介して、ゆっくりと自分や友人と過ごせる時間というのは贅沢ですね。

寿里:コンビニで24時間いつでも気軽にお団子や羊羹などを買えるのは嬉しい時代だなと思います。一方で、練り切りは手軽には買えないからこそ、美しい見た目をゆっくり眺めて味わうことで特別な時間を過ごせたり、自分と向き合うきっかけが生まれたり。それもまた和菓子を通して出会える魅力だと思います。

かんたんなゆめ・寿里が世の中を意識して選択していること。「先人の道具を受け継ぐ」

─寿里さんが思う、ご自身が世の中のことを考えて選択されていること、生活を考え直すためにやっていることを伺えますか?

寿里:生活の小さなことですが、食材を無駄にしないようにしています。一人暮らしだと、食べきれずに食材を腐らせてしまうことが多いですよね。なので、買ってきたその日に野菜はすべてカットして、小分けで冷凍保存。生ゴミも乾燥させてから捨てています。

─和菓子の世界で、サステナビリティーを感じることはありますか?

寿里:道具に感じますね。練り切りは木型を使って形を整えるのですが、職人さんがつくった木型はしっかりしているので、一生使うことができるんです。100年前のものも、当たり前に現存して使われていたりするんですよ。ただ、和菓子屋は年々減っているので、道具が不要になってしまうこともある。なので、そういったお店で使われなくなった中古の道具をネット販売で見つけて、購入することもあります。

─素敵ですね。昔の和菓子職人さんが使っていた道具が寿里さんのところにやってきて、新しい和菓子を生み出しているなんて。

寿里:100年も使えるものって、あまりないですもんね。木型の花や亀など、細かい手仕事の模様を見ると感動します。たまに海外製のコピー品も見かけますが、使いやすさが全然違っていて。やっぱり、いいものを買うと長く愛用できるんだなと思います。

─取り壊しの関係で、喫茶は来年の3月までの営業だと伺っています。今後の予定は?

寿里:また、好きな場所でお店を続けると思います。あとは私自身のテーマとして、和菓子と出会えないような場所に持っていく、というのがあるので、たとえばフェスやクラフトビールとのペアリングなど、今後も和菓子の可能性を模索していきたいと思っています。

ex. flower shop & laboratoryが提案する「花のある暮らしを、もっと身近に」

─ex. flower shop & laboratoryさんのお花は、生命力が強く、たたずまいそのものが美しい印象です。コロナ禍で「花のある生活」が、少しだけ普及したと感じます。代表の上甲友規さんは身の回りに花があることで、どのような喜びを感じられると思いますか?

上甲:自分と向き合う、ゆっくりとした時間をつくれるのが良いところだと思います。花は生活の必需品ではないけれど、あるだけで気持ちがパッと明るくなる。水換えや枯れた葉を取るなどの手入れの時間は、瞑想に近い、自分と対話する時間になるのかなと思います。気持ちが豊かになって、なおかつお部屋も華やぐ。ぼくらとしては、一本からでも気軽に買ってもらいたいと思っています。

─上甲さんは、ずっとお花業界に?

上甲:いえ、もともとは普通の会社員でした。少しずつ花に触れる機会が増えて、その魅力を実感して。老若男女問わず世界中の人を笑顔にできるアイテムってあまりないと思うので、花をもっと身近な存在にしたい。日本以外の国では、もっと気軽に花を買うんですよね。そういう世の中の方が豊かだと思うので、ぼくらはお花を生活に取り入れたことがない方に買っていただくことを目標にしています。

─コンセプトにある「花屋の新しいスタンダード」についても詳しく伺えますか。

上甲:花を魅力的に表現するために大事なことはいろいろありますが、本質的に大切にすべきなのは「花について正しい知識を持ち、価値を伝えていくこと」だと思っています。ぱっと見、お花の価値ってよくわからないですよね。

でも、たとえば輸入のバラと高品質な国産のバラは、一概には言えないものの、日持ちや美しさが全然違うことも多い。ぼくたち自身が花の魅力を深く理解して、お客さんに伝えることで、長く楽しく飾っていただければと思っています。

─食品でも生産者の顔や名前がわかったり、自然農法などつくり方から選ぶことができたり、質の良いものを選べるようになっていますもんね。お花にも同じ方法が用いられてもいいと思いました。

上甲:食品と違って差を感じづらいものですが、一度比べていただくと「バラのなかでも、このバラがいい」というのを見つけていただけると思います。出会える機会を提供するためにも、ぼくたちは極力旬のお花をセレクトするようにしています。生産者さんとコミュニケーションをとりながら、最高の状態のお花をお渡しできるように心がけています。

ex. flower shop& laboratoryが世の中を意識して選択していること。「花が循環する取り組みでフラワーロス0に」

─上甲さんご自身が、世の中のことを考えて選択されていること、生活を考え直すためにやっていることを伺えますか?

上甲:やっぱり花があるだけで、生活の質と自分自身の気持ちが上がります。なので、花を飾る習慣がもっと多くの人に根づけば、世の中が明るくなると思います。

ぼく自身、もともとはお花を飾るような人間ではなかったんですけど、いまはお花を切らすと気持ちが落ち着かない。ある / ないで心持ちが違うことを実感して。お花は1週間ほどで枯れてしまうと思われている方も多いんですけど、モノによっては1か月くらい日持ちするものもあるので、良いものを選んで生活のなかに取り入れてもらいたいです。

上甲:業界としてはフラワーロスが問題視されていて、ぼくたちも会社として取り組んでいます。花屋の店内は、いろんなお花でいっぱいになっている方が華やかですけど、お店の在庫はなるべく少なくするようにしたり。

お花の定期便サービスも行なっているのですが、注文数がわかっている状態で仕入れることでロスが出ない仕組みも整えています。あとは、どうしても出てしまうゴミをコンポストや染料に活用したり、粉砕して固めたもので花瓶をつくるなど、循環するような取り組みを進めています。

─花のある生活と自分自身の生活シーンを重ねられない人も、いろんな楽しみ方があることを知ってもらいたいですね。

上甲:そうですね。初めての人でもわかりやすいように、ケアの方法を丁寧に伝えたいですし、あとは花瓶の選び方もお伝えするようにしています。飾り方もInstagramなどSNSで積極的に発信することで、接点が増えていくといいなと思っています。

プロジェクト情報
『Chill in GUINNESS』

ギネスビールが、さまざまなシーンで活躍するクリエイターらとタッグを組み、オリジナル作品を制作するプロジェクト。味覚・視覚・触覚・聴覚・嗅覚のカテゴリーから1組ずつ選出された参加クリエイターは、「ギネスビール」の味わいから感じたインスピレーションをもとに、「夜チル」というオケージョンを表現した作品を⾃由に制作。
ギネスについて
1759年にアイルランドで誕生したブランドで、世界約150カ国で楽しまれている、独自の技術による極めてクリーミィな泡となめらかな喉ごしが特長の上面発酵のプレミアムスタウトビールです。ビターチョコのようなほのかな苦みと甘みのバランスで自分へのご褒美のような贅沢な時間をお楽しみいただけます。
プロフィール
MICO (ミコ)

エレクトロポップユニット「ふぇのたす」のボーカルとしてメジャーデビュー。2016年4月ソロプロジェクト「SHE IS SUMMER」として始動し、2021年4月に終了。リアルなガールズマインドと独特の世界観が支持され、高感度な音楽ファンから熱い視線を浴びている。また、ファッションアイコンとしても注目を集め、ユニクロ WEB CMを筆頭に数々のファッションブランドとコラボレーションを行う。

かんたんなゆめ

和菓子屋バー「かんたんなゆめ」として、日本橋に店舗を構える。日常に和菓子を取り入れるきっかけになるため、練り切りを中心に和菓子を広げる活動を展開。店名は、人生の栄枯盛衰は儚いという意味を持つ中国の故事「邯鄲(かんたん)の枕」になぞらえて付けた。

ex. flower shop & laboratory (イクス フラワーショップ アンド ラボラトリー)

花と緑の専門店ex. flower shop & laboratory。花屋として、花について正しい知識を持ち、その魅力を誰よりも深く理解すること。一輪一輪の色や形、香り、一本一本の佇まいと状態、生産者のこだわりと想いに目を向けること。すべての花を主役にできるよう、技術を磨くこと。そんな花屋としてのあたりまえを見つめ直し、極めることで、花屋の新しいスタンダードをつくります。



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