6人のクリエイターと考える「世界を想像して、日々の選択をすること」

YOSHIROTTENの根底にある、自然への羨望。「好きなことを選ぶ」ことはあきらめないでいたい

圧倒的に美しい景色の前にたたずむ経験は、いつぶりだろうか。地球の記憶の奥底にある、自然のエネルギーを共有してもらうような錯覚におちいった。それは、YOSHIROTTENの自然への羨望のまなざしが、そうした空間をつくりだすのだろう。

日々の選択を見つめ直すことや身近な物事から、自分の暮らしと社会の関係に思いを巡らせる本連載。最終回の今回は、ギネスビールのプロジェクト『Chill in GUINNESS』(※)とコラボレーションし、全身でひたれる体験型イベントの空間プロデュース / 演出を担ったYOSHIROTTENに話を聞いた。色彩あふれ、浮遊感漂う会場の様子とともに。

(※)ギネスビールが、さまざまなシーンで活躍するクリエイターらとタッグを組み、オリジナル作品を制作するプロジェクト。味覚・視覚・触覚・聴覚・嗅覚のカテゴリーから1組ずつ選出された参加クリエイターは、「ギネスビール」の味わいから感じたインスピレーションをもとに、「夜チル」というオケージョンを表現した作品を⾃由に制作。

「ぼくにとって自然環境はもっとも大きな存在です」

期待や想像をふくらませて身近なものに目を凝らすと、下弦の月や茜色の夕陽など見たことのない自然美にふと気づく。これまで本連載で生産背景やものづくりの質に目を向けてきたように、一度立ち止まって、自然の居住まいにも関心を向けたい。そうすることで、地球に対してやさしくできるかもしれないし、それが遠い国の誰かを助けるきっかけになるかもしれない。

YOSHIROTTENの作品に触れると、そんな想像力が掻き立てられる。

グラフィックデザインをはじめ、アートディレクターとしても活躍するYOSHIROTTEN。空間演出、映像、インスタレーション、CG、音楽などジャンルを横断したさまざまな表現方法で制作し、エルメスのイベント空間デザインや、スティービー・ワンダーのジャケットデザイン、G-SHOCKとのコラボレーションプロダクトを手がけるなど、第一線で活躍している。

近年「Future Nature」というテーマで発表しているアートワークは、現実と想像の狭間に広がるような、圧倒的な自然美をつくりだすことに集中している。その、ドリーミーな色合いと不思議な浮遊感のあるグラフィックは、想像を刺激する。

連載テーマである「世の中を意識して選択していること」についてYOSHIROTTENに投げかけると、自然への尊敬のまなざしがあった。

ぼくにとって自然環境はもっとも大きな存在です。自然へのリスペクトがあるものや人が好きだし、いろんな人に自然に関心を持ってもらいたいと思いながら表現活動をしているところはあります。

「Future Nature」という作品テーマは、架空の世界を描くものではなく、地球にある景色をベースに想像をふくらませてつくっています。自然をさまざまな角度から見ることで、その魅力やすごさを伝えたいと思っています。
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YOSHIROTTENが自然に対して惹かれるのは、幼少期の原体験がきっかけにある。

実家は山のふもとにありました。歩けば街にも海にも出られる、いいバランスの環境でいろいろな景色を見られたことが、自分の作品づくりに大きく影響していると思います。

人の多い街中から、山のなかを抜けて実家に帰っていく道中は、ものすごくコントラストがあったんです。記憶に残っているのは、夜の山道。電灯のない80メートルくらいの山道を歩いて帰るんですけど、最初は暗闇に吸い込まれるような感覚なんです。だんだんと目が慣れてきてからは、自然と一体になったような感覚で山のなかを進んでいく。その道中での感覚が、自然に対して幻想を覚えた場所だと思います。当時よりも、地元を離れてから、その感覚を思い出すようになりました。
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YOSHIROTTENがつくり上げた「究極のリビング」

今回のギネスビールとのプロジェクト『Chill in GUINNESS』のテーマは「チル」。ふだんからギネスビールを愛飲すると言うYOSHIROTTENは、今回依頼がきてすぐにイメージが思い浮かんだと言う。

「チル」という言葉は、ぼくのイメージするギネスビールとぴったりでした。ぼくが普段ギネスを飲むのは、みんなで騒ぎながらではなく、一人でしっぽり飲むタイミングに選ぶことが多い。そういった、ゆったりと過ごす時間をイメージするような空間をつくりたいと思いました。
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「チル」というテーマから導き出されたモチーフは、美しい空。どのようにして、その景色につながったのだろうか。

イメージを具現化するときは、対象のものを自分のなかにとり入れていって、想像をふくらませていきます。

今回は、ギネスビールを飲みながら考えることにしました。グラスに注いだら、シュワーっと出てきた泡が雲のようだったんです。ベランダから空を見上げると、雲がゆったりと流れていて、鮮やかな世界へとつながるような気分になりました。ギネスは黒ビールですけど、飲んだ瞬間は色鮮やかな感覚になるので、その感覚を空と雲で表現してみようと思いました。
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光をまとったような幻想的な色合いの16点のアートワークが生まれた。円形の会場には、YOSHIROTTENが制作したアートワークと、んoon(ふーん)による音楽がコラボレーションした映像が映し出され、まるで惑星に迷い込んだような気分になる。

ギネスのパッケージにはアイリッシュハープが描かれています。んoonもハープを用いたバンド構成なので、ぴったりだなと。それで、すぐに依頼をしました。

制作では、ぼくがイメージを投げて、んoonが音楽で返すということを繰り返しながらつくっていきました。アートワークと楽曲のキャッチボールをしながら、つくり上げていく。それらに何点かアートワークを加えて、完成したのが今回の作品です。空間は「究極のリビング」というイメージで、スピーカーにもこだわりました。「知名オーディオ」という、ぼくも自宅で愛用している沖縄製のスピーカーを使っています。
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んoon&YOSHIROTTEN“Dream'ん”を聴く
会場ではYOSHIROTTENによるインスタレーションに合わせて、んoonの新曲&新リミックスが演奏された
会場ではYOSHIROTTENによるインスタレーションに合わせて、んoonの新曲&新リミックスが演奏された
会場ではYOSHIROTTENによるインスタレーションに合わせて、んoonの新曲&新リミックスが演奏された

いい時間を過ごすことは、社会や環境にもいいサイクルをもたらす

一人でゆっくりチルする時間や自身の身体をリラックスさせる時間を持つことは、心や身体を豊かにしてくれる。YOSHIROTTENも、そうした時間をつくることを意識していると言う。

自分にとって、楽しいと思える時間を過ごすことがとても大事だと思います。それは人それぞれ価値観が違っていて、ぼくの場合は好きな友人や音楽に囲まれて過ごすことも楽しいけれど、自分だけの時間を持つことも大事で。

東京にいると仕事のことばかり考えてしまうので、空き時間ができると自然のある場所に足を運びます。以前は海外にもよく行っていましたが、最近は国内を巡っています。行き先はいつも直感で。

この間は、美味しい魚を食べたいという理由で富山に行きました。そこで、日本で唯一蜃気楼が見られる場所があると知って行ってみたんです。かすかに蜃気楼が見れました。近くに蜃気楼に関する資料館があったので入ってみると、詳細な解説があったり、水中に生える木を保存していたり、ふだん出会うことのないトピックに遭遇できて、いい刺激になりました。
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偶然の出会いを楽しみながら、好きなことを選んでいく。感覚的でありながら、自分の意思を介在させることで、物事や思考はいい方向に循環していくのかもしれない。

いい時間を過ごすことは自分の健康を守るだけじゃなくて、社会や環境にもいいサイクルをもたらすと思っています。単純なようで難しいけれど、「好きなことを選ぶ」ことはあきらめないでいたいです。
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自分自身を大切にすることは、自分のためだけではない。日々のあらゆる選択に目を向けてみると、自分のための選択や行動は、誰かを苦しめることにも、誰かを喜ばせることにもつながっている。これまで6人のクリエイターと考えてきた、日々の選択を見つめ直すことや身近な物事から、これからも自分の暮らしと社会の関係に思いを巡らせていきたい。

プロジェクト情報
『Chill in GUINNESS』

ギネスビールが、さまざまなシーンで活躍するクリエイターらとタッグを組み、オリジナル作品を制作するプロジェクト。味覚・視覚・触覚・聴覚・嗅覚のカテゴリーから1組ずつ選出された参加クリエイターは、「ギネスビール」の味わいから感じたインスピレーションをもとに、「夜チル」というオケージョンを表現した作品を⾃由に制作。
ギネスについて
1759年にアイルランドで誕生したブランドで、世界約150カ国で楽しまれている、独自の技術による極めてクリーミィな泡となめらかな喉ごしが特長の上面発酵のプレミアムスタウトビールです。ビターチョコのようなほのかな苦みと甘みのバランスで自分へのご褒美のような贅沢な時間をお楽しみいただけます。
プロフィール
YOSHIROTTEN (ヨシロットン)

東京をベースに活動するグラフィックアーティスト。グラフィック、映像、立体、インスタレーション、音楽など、ジャンルを超えたさまざまな表現方法での作品制作を行なう。また国内外問わずミュージシャンのアートワーク制作、ファッションブランドへのグラフィック提供、広告ビジュアル制作、店舗空間デザインなど、アートディレクター、デザイナーとしても活動している。



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