スタジオジブリが日本テレビの子会社に。「宮﨑という名前の元でジブリを支配するのは違う」後継者問題への思い

宮﨑駿監督の新作『君たちはどう生きるか』を公開したスタジオジブリが9月21日、東京・小金井にある第1スタジオで記者会見を開いた。会見には、スタジオジブリの社長・鈴木敏夫氏、代表取締役の中島清文氏、日本テレビ代表取締役社長の杉山美邦氏、取締役専務執行役員の福田博之氏が登壇。日本テレビがスタジオジブリの株式を取得し、子会社化することが発表された。

子会社後は、宮﨑駿監督は同社の取締役名誉会長に、鈴木氏は代表取締役議長に就任。スタジオジブリの代表取締役社長には、日本テレビの福田氏が就任するという。

会見に登壇した鈴木氏は、子会社化の経緯について、「宮﨑も含めて、僕は創業者の一人。やっていくうちに誰かがやってくれるだろうと思っていたんですが、そうではないことがわかってきました。創業者というものは、どうもその会社がなくなるまでその会社に携わらなければならない。そのことに気付かされました」と説明。

スタジオが長らく抱えていた後継者問題について、宮﨑監督の長男で映画監督の宮崎吾朗氏と相談していたが、吾朗氏本人の意向もふまえて、「ジブリは一人の人間が背負うには大きな存在になりすぎた。個人ではなくて大きな会社の力を借りないとうまくいかないんじゃないか」という結論に至ったという。

宮﨑監督は今回の子会社化について、「宮﨑という名前のもとでジブリを支配するのは違うんじゃないか」と話していたとも明かした。

今後のジブリのアニメ制作はどうなるのか? 後継者問題について明かす

子会社化した後、日本テレビは経営面で事業を支え、制作については現場に委ねる方針という。杉山氏は、「我々はテレビが中心でアニメは素人。ジブリのアニメ制作体制を最大限尊重していきたい」と語った。

およそ7年をかけて制作された新作『君たちはどう生きるか』が公開されたばかりだが、80歳を超えてなお創作意欲の尽きぬ宮﨑監督の次回作を期待する声も高い。しかし、宮﨑監督は現在82歳だ。

会見で鈴木氏は、ジブリの後継者問題について、「僕も現場で色々やってみたが、ことごとく失敗に終わり、宮﨑に続く有望な監督を育成するということの困難さを知りました」と明かす。

「僕の考えなんですが、作品というのは、こういうことが言えると思います。一つは、宮﨑や高畑のような作家を尊重して、それを中心に映画をつくるというやり方。もう一つは企画、枠を決めることだと思います。僕も多少勉強をしたんですが、ディズニーがウォルト・ディズニー亡き後、やっぱりうまくいかなかったんですよ。あるとき、ある人が責任者となって、その人が優秀で、企画力があった」

「1つ目は古典、クラシックをやること。ただしクラシックには必ず差別があるから、それをどうやってオブラートに包むかということが大きい。2つ目は、主人公は女性であること。3つ目は、主題歌を大事にする。この3つを決めてやり始めた結果、ディズニーは再生しました。僕はこの人のことがすごく好きだったので勉強したんですが、大変残念ながら事故に遭って亡くなってしまい、その才能が途切れてしまいました」

「先ほど言った、企画でやるのか、作家の才能に頼るのか。ジブリはそれをやってきたつもりなんです。要するに宮﨑と高畑の場合は作家主義でいく。しかし、他の若い人たちに関しては企画主義でいく。基本的には今はまだこれだと思っています」

「若い人材の育成に必要なのはテレビシリーズじゃないか」

会見では、新作のアニメーション制作を示唆したスタジオジブリの今後に関する質問が多く上がった。

鈴木氏は、「(宮﨑と自分は)好き放題なことをやって、人材の育成やそのほかに関してはサボってきてしまった」とも述べ、以下のように語った。

「ジブリは世界でも珍しい、映画しか作らない会社です。その考え方をどこかで変える。若い人材を育成するに本当に必要なのは、テレビシリーズだと思ったんです。テレビシリーズで若い人たちにいろんな機会を与えて、ある種の習作をつくってもらう。その中から出てきたのが高畑であり宮﨑だったんですよ」

「そういうことでいうと、本物の経営者が必要。それをやっていくと違うんじゃないかなという気がしてます。経営者の健全な野心があれば、そういうこともできるんだと。諦めるんじゃなく、可能だと思います。実際、世界のアニメーション会社はそういうことをやっています」

スタジオジブリの新社長となる福田氏は最後に、「間違ってもジブリファンの皆様、アニメファンの皆様をがっかりさせることは致しません。そこはお約束しておきたいと思います」と締め括った。



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