ライブ音源配信サイトオープン! カーネーション インタビュー

圧倒的な音楽知識と抜群の演奏力を武器に、25年以上に渡り質の高いロックを鳴らし続けてきたカーネーションが、新たな音楽の在り方を提示するライブ音源配信サイト『LIVE CARNATION livecarnation.jp』をスタートさせた。加速度的にデジタル化が進み、音楽の在り方が変わりつつある今、カーネーションの試みは僕らのミュージック・ライフに、後進のミュージシャンたちにどんな影響を与えるのだろうか。唯一のオリジナル・メンバーとしてカーネーションを引っ張ってきた直枝氏に、配信サイト立ち上げまでの経緯や今後の展望について答えてもらった。

(インタビュー・テキスト:タナカヒロシ 撮影:柏井万作)

きっかけは誰かが作っていかないといけないわけだしね。

―新たにライブ音源の配信サイト『LIVE CARNATION livecarnation.jp』を立ち上げられるということで、まずは配信に至った経緯からお聞かせいただけますか?

直枝:うちのスタッフが、今回の配信を手掛けてくれる会社の人と、昔からの知り合いだったんですよ。アメリカではフィッシュやメタリカなんかが、そういう取り組みをしているのは知っていたんですけど、実際にやるとなると、すごく大変。どうしたらできるのかなって漠然とは考えていたところで。

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直枝政広

―ちょうどいいタイミングで配信会社と出会えたんですね。

直枝:そうですね。どうも僕らはなにかにつけ、プロジェクトの黎明期から動くことが多いんですけど、きっかけは誰かが作っていかないといけないわけだしね。とりあえず鉄砲玉的にやってみるのもいいんじゃないかなと思って。

―リスナーには、どういうものを提示していこうと?

直枝:まずはライヴ音源。なおかつ過去のライブ音源や秘蔵のデモ・テープ等も同時に展開できれば。配信する音源の数は多いほうがいいよね、っていう話はしていますね。

―直枝さんはレコード収集家としても知られてますけど、いちリスナーとしては、どういう音楽の楽しみ方をしたいと思いますか?

直枝:いろんなヴァージョンを聴いてみたいっていうのがひとつ。ライブ音源もそのひとつで、グレイトフル・デッド(※ライブの自由な録音とテープ交換許可したアメリカの伝説的バンド)とか、クセになりますよね。何年何月何日のライブはどうだったとか。この日は最高だったとか。そういうことは当たり前のようにやってきたし、ちょっと聴いて、知ってればいいやっていう程度で気が済むタイプではないですね。

―自分がリスナーとしてそういう聴き方をしているから、プレイヤーとしてもいろんなヴァージョンのものを出していきたい?

直枝:できればね、いい形でそこをたっぷり楽しんでもらいたい。ぼくたちの音楽がそういう対象になればいいなと思います。去年、コロムビア時代の音源が再発されたんですけど、2枚組のデラックス・エディションで、ホームデモの音源を入れたりとか、大変な内容なんですよ。日本でこういうデラックス・エディションをリリースしているアーティストは、ほとんどいないはずですよ。

2/4ページ:配信するためにどうするとか、そういうことではない。まずはどうすればいいライブにできるのか、ということだけを考えていきたい。

配信するためにどうするとか、そういうことではない。まずはどうすればいいライブにできるのか、ということだけを考えていきたい。

―そういう聴き方って、自分から積極的に掘るタイプの人じゃないと、なかなか難しいと思うんですけど、主にコアなリスナーに向けて配信するイメージでしょうか?

直枝:それもありますけど、どこかでカーネーションの名前を目にして、気になってる人にも気軽に試聴してもらったりできるし。間口を広げるためのものとしても有効でしょう。長くやってると、勝手にイメージを固められてしまうし、どうしても敷居が高く見られちゃうから。

―気軽な入口のひとつになるのが、今回の配信というわけですね。

直枝:そうですね。PCを介しての音楽との出会い、そのひとつの在り方だと思います。

―最初に配信されるのが、09年4月にキネマ倶楽部で行ったライブ音源ということですけど、なぜ最初にこのライブを?

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直枝:もともとファンクラブ限定で発売した2枚組のCDなんですけど、これが非常に臨場感のある録音なんですよ。もう奇跡的な音ですね。トリオ編成の2chミックスなんですが、素晴らしいバランス。(担当した宗元祐は)天才エンジニアですね。

―プレイ的な部分はいかがですか?

直枝:とってもいいですよ。このキネマ倶楽部のライブと、12月のツアーの大阪は特によかった。大阪公演も配信する予定です。

―カーネーションは掘れば掘るほどおもしろいバンドだと思うんです。コロムビアのホームページに載ってる再発したCDのセルフライナーを読ませていただいたんですけど、読めば読むほど聴く楽しみが広がって。『LIVE CARNATION』も、「この曲はこういう部分が聴き所だよ」みたいな解説があると、何倍も楽しく聴けるんじゃないかなと。

直枝:こないだもね、そのミーティングをしたんですけど、どの程度そこで説明するべきなのかなって。写真とか、誰が演奏してるのかっていうデータとかはありだと思うんだけど、あんまり説明してもとっつきにくいだろうなぁとも思うし。

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―同じ曲でも、このライブのこのテイクと、あのライブのあのテイクの違いが、とか。

直枝:なんらかのエッセイ的なものが載ってたほうがいいんですかね。ちょっと考えておきます。

―今後やっていくライブも配信前提で?

直枝:そうですね。なるたけマルチで録音したりね。いろんな方法で録音して。何がベストか考えていきたいです。

―ゲストを入れてみたり、楽器を増やしてみたり、ライブのやり方も変えていかれるんですか?

直枝:実際、今もそういう感じでやってますよ。4人編成になったり、3人編成になったり、それはツアーの組み方とか、ライブの在り方で変わってくると思います。配信するためにどうするとか、そういうことではないですね。まずはどうすればいいライブにできるのか、ということだけを考えていきたいと思ってます。

3/4ページ:集団でものを作っていく楽しさや力強さと、内省していく厳しさと。そういうものが極端に混ざり合って出来上がったのが今回のアルバムかな。

集団でものを作っていく楽しさや力強さと、内省していく厳しさと。そういうものが極端に混ざり合って出来上がったのが今回のアルバムかな。

―例えば10年前のライブと、今のライブとで、変化している部分もあると思うんですけど、ご自身で変わったと感じられる部分はどういうところですか?

直枝:人数が多かった頃は、レコードを再現していくっていう形にしていかないとまとまらないんだよね。ジャムの要素がとても入れにくかった。今も基本そういうところはあるんですけど、よりそれぞれの発想に任せてできるようになったかな。昔よりも自由度が高くておおらかな演奏になっているというか。なおかつ切れ味が全然違う。

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―ライナーノーツとか見ると、昔はかなり緻密に作られていたと思うんです。それがだんだん抑えていたものが外れたというか。

直枝:そうですね。音楽で自分の感情を表現していくことって、やっぱり経験の積み重ねの上に成り立つものだと思いますね。今さら緻密にやってもね。

―昔に比べれば、細かい説明をしなくても、より描きたい景色が描けるようになってるということですか?

直枝:っていうかね、そういうふうにできるっていう確信があったら逆におかしいんですよ。何が起こるかわからないから面白いわけです。とにかく、まずはリラックスして挑めるかどうかだと思う。”Velvet Velvet”や”遠い空 響く声”(共に最新アルバム『Velvet Velvet』収録)なんかもそうなんですけど、ひらめいちゃったものはしかたがないから、メンバーには色とか形のイメージで伝えてるだけで。いつもなんとなく曲ができる。でも、それだけじゃ作品にならないから、そこに僕が思いや言葉を乗せて、ちゃんと曲に命を吹き込まなきゃいけない。それはもう、大変な作業になっちゃうんですよ。だからね、集団でものを作っていく楽しさや力強さと、内省していく厳しさと。そういうものが極端に混ざり合って出来上がったのが今回のアルバムかな。作り方としては厳しいけれども、スリルがあっておもしろい。もうやめらんない感じっていうか(笑)。

―自分を追い込んでいくような?

直枝:解放させてあげながらね。その絶妙ともいえるやり取りがおもしろい。

―そういう部分は昔とは変わってきてるんですか?

直枝:うん、徐々に。過去にもそういう部分があったと思うんだけど、最近はメンバーが俺と大田しかいないから、そういった意味でも作り方は確実に違ってきてる。今はどんな作り方もありだから、自由度は高くなってるよね。だからこの先のライブだって、いろんなことが起こるんじゃないですか。

4/4ページ:みんなも早くやればいいと思うんですよ。むしろ僕もそれを見て学びたいよ、「こういうアプローチはおいしいな」とか、冷静に考えたいから(笑)。

みんなも早くやればいいと思うんですよ。むしろ僕もそれを見て学びたいよ、「こういうアプローチはおいしいな」とか、冷静に考えたいから(笑)。

―直枝さんがCDやレコードを買うときの基準って何ですか?

直枝:直感かな。なんか情報が入ってきたときにピンとくるとか、お店を歩いててビビッとくるとか、いろんな直感が。あと、僕は好きなものなら同じレコードを何枚も買うんです。内容が違うやつ。

―ヴァージョン違いですね。

直枝:そう。ミックスやマスタリングがちょっと違うから買ってみようとか、各国盤とか…。こんな話参考にならないよ。バカだから(笑)。

―いやいや(笑)。どういうシチュエーションで聴くことが多いんですか?

直枝:いやぁ、いろいろですよ。季節によっては車の中でガンガン鳴らしたりもするし。じっくりと家でモノラル録音のやつを聴くこともあるし。状態のいい盤で踊ることもあるし。

―このインタビューを読んでいる人に、こういう聴き方をしたら、もっと音楽が楽しめるんじゃないか、っていうのを提案していただけると。

直枝:ほんとはね、カセットテープとか、オープンリールとか、そういうのがおもしろいんですよ。でも、お金かかるから(笑)。

―音質の違いを楽しむということですか?

直枝:そう。まずはラジカセとかでもいいから、その辺のジャンク品を拾ってきて、いろんな聴き方をしてみるといいと思います。きっと意外なおもしろさが発見できると思うので。あとはやっぱりアナログ盤。これはなんとかして聴いてもらいたいです。それがあっての配信だと思うし。そうすれば高音質で配信する意味もわかるでしょ。

―なるほど。今回の配信は、MP3と、より音質劣化の少ないFLACの2パターンで行う予定なんですよね。

直枝:その幅をちゃんと持たせたくて。楽しみ方はいろいろあるから。入口は気軽なもので全然OKなんですけど、それが最高の音質で配信されてるんだったら、それはそれでもう言うことないはずですから。それをきっかけにこっちの庭に入ってきて、自由に遊んでよっていうね。

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―今回の『LIVE CARNATION livecarnation.jp』がどう進展していくかは、他のアーティストにとっても気になるところだと思うんですけど、ライブ音源の配信をすることによって、どんなことが生み出されたらいいと思いますか?

直枝:始めてみないとわかんないですよね。いろいろ考えることはありますけど、まずは最高のライブを届けたい。そこをきちんとやっていれば、嗅覚の鋭い人たちが「こんなこと始めたの!?」って気にしてくれると思うし。それはどんどん騒いで伝えてほしい。ただ、これをやってるから偉いとか、そういう気持ちはまったくないので、みんなも早くやればいいと思うんですよ。むしろ僕もそれを見て学びたいよ、「こういうアプローチはおいしいな」とか、冷静に考えたいから(笑)。

―それができることによって、アーティストの活動の仕方も変わるかもしれないですしね。

直枝:そうですね。まぁ、そういうビジネスにしていくことはこれから先ですから。とにかく僕は、本当にカーネーションを聴いてもらいたいし、だから何かやってかなきゃ話にならないんだよね。待ってても何も起こらないから。やみくもにやるわけではなくて、プライドを持って最高のライブを届けようと思っているので、期待して待っていてください。

リリース情報
カーネーション
『Velvet Velvet』

2009年11月25日発売
価格:2,800円(税込)
P-VINE PECF-3003

1. Velvet Velvet
2. さみだれ
3. 田園通信
4. Annie
5. この悲しみ
6. Willow in Space
7. ジェイソン
8. For Your Love
9. 砂丘にて
10. Songbook
11. Dream is Over
12. 遠い空 響く声

プロフィール
カーネーション

1983年12月 「耳鼻咽喉科」を前身に「カーネーション」結成。当時からのオリジナルメンバーは、直枝ひとり。 1984年 シングル『夜の煙突』(ナゴム)でレコードデビュー。以降、数度のメンバーチェンジを経ながら、時流に消費されることなく、数多くの傑作アルバムをリリース。練りに練られた楽曲、人生の哀楽を鋭く綴った歌詞、演奏力抜群のアンサンブル、圧倒的な歌唱、レコードジャンキーとしての博覧強記ぶりなど、その存在意義はあまりに大きい。2008年に結成25周年を迎え、2009年1月、ドラマー矢部浩志が脱退。メンバーは直枝政広(Vo.G)と大田譲(B)の2人となり、2009年4月にシングル『ジェイソン』、11月に3年ぶりのアルバムとなる『Velvet Velvet』をリリース。

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