妄想力が大爆発 Heavenstampインタビュー

2008年、観客として訪れたFUJI ROCK FESTIVALで受けた衝撃から発進したバンドは、リーダーTomoya.Sのぶっ飛んだ妄想力に引っ張られ、瞬く間にメジャーデビューまでの階段を駆け上った。シューゲイザーやニューレイヴを通過し、2010年代を強く意識したフェス対応のサウンド、轟音を切り裂くように突き抜けるSally#Cinnamonの鮮烈な歌声は、ラッセル・リサック(Bloc Party)との共同プロデュースという形で、さらなるブラッシュアップに成功。「自分の魂をフジロックに飛ばして曲を作った」「イントロはサビより感動が大きい」など、独特の思考で練り上げられた楽曲は一聴して強いインパクトを残すはずだ。Tomoya.SとSally#Cinnamonの2人にこれまでの歩みを語ってもらった。

自分が生まれて初めて読んだ人の人生が、音楽に一生を捧げるもので、「人生とはこういうものなのか!?」って。

―お2人が音楽を始めたきっかけはなんだったんですか?

Sally:私は3歳からピアノをやってたり、合唱団で歌ったり、自然なことだったというか。中学生くらいからギターも弾くようになって、吹奏楽部ではサックスとホルンも吹いてました。バンドは高校2年から始めて、色んなバンドのコピーをしてましたね。

―いまの音楽性とはだいぶ離れてますけど、その後は?

Sally:しばらくは日本語の歌ものをやっていたんですけど、だんだん新しいものへの興味が出てきたというか。それで、いったん音楽活動をストップして、模索していた時期が何年かあって。それを経てHeavenstampに。

―Tomoyaさんは?

Tomoya:5~6歳のときに、親からベートーヴェンの伝記をもらったんですよ。自分が生まれて初めて読んだ人の人生が、音楽に一生を捧げるもので、「人生とはこういうものなのか!?」って。いま思えば、あのときに刷り込まれてたのかなと。その頃、親に与えられたクラシックのCDもよく聴いていて、作曲したりしてましたね。

―5~6歳で作曲ですか!?

Tomoya:はい。家にあったエレクトーンで。友達に「ベートーヴェンっぽい曲ができたんだけど、聴いてみて」って。ある意味、いまと同じようなことをやってたなと(笑)。その後は、父親がロック好きだったので、The BeatlesやDerek and the Dominosを聴かされたり、家にあったギターを弾いたりしてました。

―コピーバンドとかは?

Tomoya:高校に入ってから友達に誘われて、色々なバンドのコピーをやっていましたね。高校を卒業してから自分がボーカルのバンドを始めたんですけど、最初はバッキバキなスラップの上で叫びながら歌ってました(笑)。KornとかRage Against the Machineとかが大好きだったんですよ。とにかく悪そうで重そうなやつをやりたくて。当時は言葉の凶暴性にやたら惹かれてましたね。

―それがなんでいまの感じに?

Tomoya:10代の終わりくらいになると、青かった部分が熟してきまして。UKギターロックの繊細さに惹かれて、トム・ヨークを聴き込むようになったんですね。そういう人って多いと思うんですけど、そんな流れでUKギターロック直系なバンドをやるようになって。

―Heavenstampはいつから?

Tomoya:ちょうど2年くらい前ですね。最初はバンドの名前が違ったんですけど。2008年にフジロックで見たMy Bloody Valentineがきっかけだったんですよ。そのライブにすごい衝撃を受けて、男女混合のバンドで、新しくてかっこいいことをやりたいと思って。最初はマイブラっぽいシューゲイザーな曲ができちゃったんですけど、それじゃあつまらないってことに気付いて。それを排除して、ニューレイヴ以降のサウンドを感じさせたいっていう気持ちでやるようになったら、ディスコパンクな曲ができてきたんです。

―シューゲイザーやニューレイヴを通過した新しいバンドを目指して?

Tomoya:そうですね。ブリットポップとかも好きだったので、過去にもさかのぼって、いろんな要素をかき集めて、2010年以降じゃなきゃできないことをやりたいなと。

2/4ページ:“Stamp your feet”を作ったときは、自分の魂をフジロックに飛ばしました。

“Stamp your feet”を作ったときは、自分の魂をフジロックに飛ばしました。

―曲はどんな風に作っているんですか?

Tomoya:バンドが生演奏している様子をイメージして、お客さん側からそれを見たときに、どう映っているか想像するんです。“Stamp your feet”を作ったときは、自分の魂をフジロックに飛ばしました。グリーンステージからホワイトステージに向かって歩いて行って、「ところ天国」の橋を渡って、視界が開けて遠くにホワイトステージが出てきて。

―随分と具体的ですね(笑)

Tomoya:そこに着いた瞬間は、バンドはまだチューニングをしてて、音が鳴ってないんです。後ろのグリーンステージからはドコドコ低音が響いてきつつ、「このホワイトステージのバンドはどんな感じなんだろうな?」って思ったら、おもむろにバーン! と演奏が始まる。それで「おぉ!」ってなって、その後にハイトーンのボーカルがガツーンと突き抜けて、また「おぉ!」ってなって、シューゲイズギターがズバァァァー! ってくるみたいな。そういうものをイメージして作りました。

―そこまでイメージしてるんですね!

Tomoya:イメージのなかのバンドが鳴らしているものを具現化するというか。この曲が1番顕著ですけど、他の曲でも例えば“Stand by you”の出だしのスラップは、1曲目をバーンって終わらせたバンドが、2曲目の頭で何をやったら一番引き込まれるだろうかって。そういう客観的な目で見たときに生まれることが多い気がします。

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Heavenstamp

地球にまだ生物がいない状態で、そこから大自然のなかに躍動と鼓動が生まれる瞬間。

―CDでは“Stamp your feet”の前に短いインスト曲がありますけど、あれはグリーンステージからホワイトステージへ歩いているときのBGMみたいな感じなんですか?

Tomoya:これはちょっと違うんです。このCDを作るにあたって、“Stamp your feet”っていう曲ありきの状態をイメージして、もっともその曲が映えるようなインタールードを考えました。地球にまだ生物がいない状態で、そこから大自然のなかに躍動と鼓動が生まれる瞬間みたいな。それで“Cambrian.(カンブリアンピリオド)”っていうタイトルになったんですけど。

―すごい想像力! Sallyさんはそういう話を聞かされるんですか?

Sally:曲にもよりますけど、“Stamp your feet”はバシッとこういうイメージだと聞いて。だから歌詞もこうなったのかなって。

―出だしが「その先にワンダーランド」ですもんね。歌詞の位置づけは、どのように考えてますか?

Sally:言葉の意味を伝えたいというメッセージ性よりは、メロディーや音楽ありきだと思うので、より音楽が爆発力を増すための歌詞を乗せるという意識ですね。歌詞がよければ曲がよくなるのは当たり前だし、歌詞に引っかかりがあれば、よりいろんな人に聴いてもらえる曲になるかなということで、意味うんぬんではなくて。もちろん、メッセージ性がゼロではつまらないので、決して記号扱いしているわけではないんですけど。

―個人的には夜中っぽい匂いがします。

Sally:特に意識しているわけではないですけど、夜っぽいですか?

Tomoya:俺もそう思う。

―普段のSallyさんと、バンドでのSallyさんっていうのは、ギャップがある感じですか?

Tomoya:ライブのときだけは別人のようになります。

Sally:ライブになったら前を向いて音楽を伝えることに集中しているから、ここでスイッチを切り替えるとか、そういうわけではないですね。外から見たら変わってるのかもしれないですけど。

―歌から感じるイメージよりも、いま実際にお会いして話してる感じのほうが、全然穏やかですよね。歌だけ聴いてると、もうちょっと凶暴そうな感じがするじゃないですか(笑)

Sally:よく言われます(笑)

3/4ページ:ラッセル・リサック(Bloc Party)との共同作業

ラッセル・リサック(Bloc Party)との共同作業

―“Pops”はラッセル・リサックとの共作ですよね。どういうふうに作ったんですか?

Tomoya:やっぱり自分のイメージに満足できないときがあるんですけど、“Pops”を作ったときは特にそれがありまして。漠然と「イギリスのミニシアター系のちょっとB級な映画の最後に流れる曲」みたいにしたいと思って、メンバーにそういうふうに言ったんですよ。でも、誰もピンと来なくて。

―それはなかなか理解が難しいですね(笑)

Tomoya:自分でもピンと来てなかったくらいだったので、みんなもクエスチョンマークになっちゃって。コードとかメロディーの流れはいいんですけど、曲として仕上がらないまま何ヶ月も経っちゃったんですよね。そんなときに、ラッセルと共作できるんだったら、力を借りようかなと思いまして。それで原曲を投げたら、ラッセルがアレンジして戻してくれて、それに対してまた自分たちはこうしたいみたいなことを何回かやり取りしてレコーディングを。

―ラッセル・リサックと一緒にやることになった経緯は?

Tomoya:ラッセルがMySpaceでHeavenstampを聴いて、気に入ってくれてるという話をスタッフから教えてもらったんです。自分もたまたまBloc Partyを聴き直してる時期だったので、「すごい!! 一緒にやれたらおもしろいな」とか言ってたら、本当に一緒にやれることになって。

―今作はラッセルと共同プロデュースなんですよね。レコーディングは日本で?

Tomoya:はい、都内のスタジオで。ラッセルにギターとエフェクターを持って来てもらって。音源のなかでもラッセルに弾いてもらったところが、けっこういっぱいあるんですよ。

―共同プロデューサーとしてラッセルはどんなことを?

Tomoya:どういう風にするか一緒に考えながら、レコーディングを進めてましたね。例えば自分から「もっとキラキラさせたい」っていうアイディアが生まれたときに、自分でキラキラするイメージでギターを弾くことはせずに、あえてラッセルに「ギターでキラキラさせてみて」と言ってみたりとか。

―歌に関しては?

Sally:「楽しみにしてるよ」みたいな(笑)

Tomoya:歌は日本語なので、それはこっちでやったほうがいいかなって。ラッセルも安心した感じで見ててくれましたね。とにかく「声がいいね」って言ってくれてたし。

―インタールードを入れたり、リミックスを入れたりもしてますけど、作品トータルとしてはどう見せたかった?

Tomoya:デビューシングルという重要な作品なので、1曲目のキャッチーさで掴んで、2曲目のポップさで掴んで、インタールードから“Stamp your feet”のシューゲイザー的な部分だったり、シンフォニックな部分を見せられたらいいなって。幅広く自分たちの魅力を詰めることができた気がします。

4/4ページ:音楽を聴いて、感動して、鳥肌が立ったりする。そういうものをよりたくさんの人に感じてもらいたい。

音楽を聴いて、感動して、鳥肌が立ったりする。そういうものをよりたくさんの人に感じてもらいたい。

―Heavenstampの今後のビジョンは?

Tomoya:フジロックのグリーンステージの感動から始まったバンドなので、そこに立ちたいという目標はありますね。それと、「音楽の素晴らしさを世に広めていく」という大きなテーマをSallyがいつも言ってるんですけど、それは自分もすごく考えてますね。洋楽とか邦楽とか、そういう垣根もなく、普段あんまり自分から進んで音楽を聴かない人にも聴いてもらえるようになりたいなと。

―Sallyさんが考える音楽の素晴らしさっていうのは?

Sally:私はフェスがとても好きなので、フェスに行ったときに得られる音楽の圧倒的な力、音楽を聴いて、感動して、鳥肌が立ったりするじゃないですか、本能的なものとして。そういうものをよりたくさんの人に感じてもらえたら素晴らしいんじゃないかなと思って。

妄想力が大爆発 Heavenstampインタビュー

―たくさんの人たちと一緒に、ひとつの音楽を共有できる喜びとかありますもんね。

Sally:はい。大きなテーマだとは思うんですけど、そういうことができるバンドになれたらなと思います。

―音楽性的にはどうですか? フィジカルで聴いてかっこいい音楽っていうのも意識されているのかなと思いますし、Heavenstampが目指すその最新形っていうのは?

Tomoya:フィジカルっていうのはすごい大切だと思うし、さらに歌えるっていうことも大切だと思ってます。踊れる感動もあるし、一緒に歌える感動もあるし、轟音に身を委ねるだけの感動もあるし、すごい静かな、繊細なものもありだと思うし。どんどんミックスしていきたいなと。

―ポップさについてはいかがですか? 個人的にはキャッチーなリフとか、イントロにそういった要素を意識して入れてると思うんです。

Tomoya:イントロは曲のなかですごく重要だと思ってます。例えば好きなバンドのCDをいっぱい聴いて、曲を知ってる状態でライブに行って、聴きたいなと思っていた曲のイントロが鳴った瞬間の感動って、その曲のサビよりも感動が大きいと思うんですよ。サビはイントロが鳴った時点でもう約束されてるけど、イントロが鳴る瞬間までその曲を聴けるかどうかわからないという期待感から鳴らされるものなので、すごく重要だし、他の曲に似てちゃいけないと思うんです。サビまで行かないと何をやってるかわからないというのは1番やっちゃいけないパターンだと思うので。

―イントロでいかに高められるか。

Tomoya:そうですね。鳴った瞬間に感動できるようなイントロになったらいいなと思いながら作ってるところはありますね。

―Heavenstampとしての理想というか、さっきのマイブラの話とかもあると思うんですけど、こういうシチュエーションで輝く曲を作りたいとかは?

Tomoya:やっぱりロックフェスとか、大きい会場で鳴らされたときに、一番活きるような曲を作っていきたいな思いますね。

Sally:大きくいうと、『グラストンベリー・フェスティバル』に出たい野望があるんです。大きい会場で、みんなが大盛り上がりして、踊っているのって、すごく素敵じゃないですか。

Tomoya:そこで日本の国旗を振らせたら勝ちだろうと(笑)

Sally:そういう国も言語も違うところで、音楽で感動が共有できるっていうのが一番素晴らしいと思います。

リリース情報
Heavenstamp
『Stand by you-E.P.+REMIXES』

2011年5月11日発売
価格:1,500円(税込)
WPCL-10934

1. Stand by you
2. Pops
3. Cambrian.
4. Stamp your feet
5. Stand by you(80KIDZ remix)
6. Pops(Bloc Party vs CoPilots Drunk In Charge remix)
7. Stamp your feet(Pepe California remix)

イベント情報
『ぴあデビューレビュー VOL.150』

2011年5月30日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 duo MUSIC EXCHANGE
チケット:無料招待制 5/23(月)まで受付(※完全招待制)

プロフィール
Heavenstamp

それぞれ別のバンドで活動していたSally#Cinnamon(Vo,Gt)、Tomoya.S(Gt)、Shikichin(Ba)、Mika(Dr)が集まり2009年結成。ライブベースに活動してきたが、2010年『Hype - E.P.+REMIXES』をGoldtone Redords からリリースし注目を集め、2011年ワーナーミュージックと契約。5月11 日に初のメジャー音源、『Stand by you - E.P.+REMIXES』をリリースする。エッジーかつキャッチーなサウンド、シンフォニックなシューゲイザーサウンドを日本的「ポップ感覚」で消化し、轟音ギターの美しいアンサンブルを響かせる。初期衝動を体言するバンドである。

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