均一なノリのライブにNOを。ロックバンドBenthamの意思表明

KEYTALKを擁する「KOGA RECORDS」所属の4人組ロックバンドBenthamが、通算4枚目のEP『ExP』をリリースした。「経験値」を意味するタイトルが付けられた本作には、「恋愛」や「別れ」「親子関係」など、誰しもが一度は「経験」するエピソードを元に書かれた7曲の「応援ソング」を収録。デビュー時の彼らのキャッチフレーズだった「4つ打ちロック系」という枠組みでは、もはや語れないほどバラエティーに富んだ一枚に仕上がった。

KEYTALKのツアーサポートに、無名の頃から抜擢されるなど恵まれた環境にあったぶん、気負いやプレッシャーに苦しまされることも多かったという彼ら。そんな中、「売れる」ということを何よりも渇望し、シーンの現状を見据え、トライ&エラーを繰り返しながら変化してきた彼らの目の前には今、どのような景色が広がっているのだろうか。ボーカル&ギターの小関竜矢と、ギターの須田原生に話を訊いた。

スタート時点の注目度が高かったことがプレッシャーになってしまい……。思うような結果が出せなかったことに対し、かなり葛藤がありました。(小関)

―これまで3枚のEPをリリースしてきたBenthamですが、今の自分たちを客観的にどう評価していますか?

小関(Gt,Vo):僕らはKOGA RECORDSからデビューしたんですけど、レーベルの先輩であるKEYTALKと一緒にツアーを回らせてもらうなど、他のバンドと比べても恵まれたスタートだったと思いますね。ただ、そのぶん葛藤も多かったです。しかも僕らデビューが遅くて、年齢的にも若いわけではないので、早く結果を出さなければという焦りもあります。

小関竜矢
小関竜矢

―「葛藤」というのは?

小関:僕らは「ライブ感」をすごく大事にしているので、KEYTALKのライブを間近で見て「真似したい」「吸収したい」と思って模索してきたんですけど……。

須田(Gt,Cho):最初のうちは全然ダメでしたね。まず自分たちが、千人規模のお客さんから一斉に見られる経験なんてなかったんで。せいぜい数十人規模のハコでしかやっていなかったわけですから。

須田原生
須田原生

小関:ただ闇雲に激しく動いているだけで、ステージングとしてちっとも綺麗じゃなくて。スタート時点の注目度が高かったことで、「しっかりやらなきゃ」というプレッシャーにもなってしまい……。思うような結果が出せなかったことに対し、かなり葛藤がありました。

―KEYTALKのライブを間近で見て、具体的にどんなことを学んだのですか?

小関:彼らは本当に肩の力が抜けてて、メンバー同士も仲が良くて……。これまで僕は、NUMBER GIRLとかTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか、シリアスなバンドを好んで聴いていたので、頭に思い浮かべていたバンドというもののイメージがガラッと変わりました。

KEYTALKの四人は楽しそうに見える裏で、ものすごい量のリハーサルや、個人練習を積み重ねているんです。その努力に裏打ちされた、「力の抜け方」なんですよ。だから今、僕らが同じことやったとしても、「何やっちゃってんだ?」ってなると思うんです。あとは、圧倒的なオリジナリティーと存在感。コードをジャーンと鳴らしただけでカッコいいのは、ちゃんと自分たちの理想像を描けているからじゃないかと。

須田:第三者の視点でバンドを客観的に見る力がKEYTALKにはあるんです。デビュー当時の僕らは、そういう力が全く足りてなかったんですよね。やりたいことを、ただライブハウスでやるだけで終わっていた。俯瞰で見て「もっとこうしたらよくなる」「こうすればお客さんを楽しませられる」って考えることの大切さをKEYTALKから学びました。

小関:それと、僕が学生の頃と今とでは、ライブハウスの年齢層もお客さんが求めているものも変わったんだなと思いました。そこも踏まえてステージ作りをしないと、上には行けない。もちろん、自分たちがやりたくないことをやったり、曲げたくないことまで曲げるつもりはないけどね。

「4つ打ちだけど一回聴いてみ?」ってファンの人が広めてくれるようなバンドになりたかった。(小関)

―Benthamは、結成当時から「売れたい」という強い野心があるようですね。

小関:以前、リハーサルスタジオで働いていたことがあって、そこにはカッコいい音楽をやっている上に、音楽に対する考え方も本当にストイックな人たちがたくさんいたんですよ。でも残念なことに、それほど売れてはいなかった。学生の頃は、「音楽さえカッコよければ必ず売れる」「いいものはいいんだ!」ってずっと思っていて、その考えを拠り所に音楽を続けてたんですけど、その頃一番仲が良かった先輩からは、「カッコいいだけじゃ売れないんだよ」と、お酒の席で涙ぐみながら言われるわけです。

―切ないですね。

小関:でも、やっぱり僕は、「いいものはいい」とバンドで訴えていきたい。今の音楽シーンに対して思うところもありますし、「何か自分が変えることが出来たら……」という気持ちもある。10代の頃に、自分がバンドを見て感じた強烈なインパクトを、また取り戻したいっていう野望があるんですよね。今、そういうインパクトを持った若いバンドはほとんどいないので。僕は自分がカッコいいと思う音楽を世の中に認めさせたいんです。

小関竜矢

―人の価値観を変えるくらいのことをするためには、やはり売れるしかないと。

小関:そうです、圧倒的に売れなければいけない。世間一般の人が思う「売れる」と、バンドマンの考える「売れる」っていうのはちょっと違うじゃないですか。バンドマンにとっては、好きなことを好きなようにできることが「売れる」ことで、世間一般の人にとってはテレビに出ることが「売れる」ことだったりする。僕らは両方の「売れる」を達成したい。そのために向き合うべきことも段々わかってきたので、今はメッチャ楽しくやっています。やりたいことを、思う存分やるためにも売れたいですね。

―では、「売れる」ために具体的にはどんなことをしてきましたか?

小関:音楽的には、「4つ打ち」を取り入れたことですね。あと、僕のハイトーンボイスも今っぽいなと思っています。それによって実際に「流行りに乗ってる」と揶揄されたこともありましたけど、全部戦略なんです。

2014年リリースの『Public EP』より

―でもその戦略は、見事ハマったわけですね。

小関:もろ「4つ打ちロックシーン」の枠組みに入っちゃいましたね。しかも「KEYTALKのレーベルメイト」っていうキャッチフレーズもあったから、それも利用しようと思っていました。ただ、自分たちの中では、そういう要素はあくまでも表面上のものであって、本当にやりたかったことはもっとヘヴィなサウンド。「骨太ロック」というキーワードを掲げていたのですけど、コアな音楽ファンにも「Benthamって実はカッコよくね?」って言ってもらえるような仕掛けも入れてきたつもりです。流行りを読んで4つ打ちを取り入れたんですけど、ファンになってくれた子たちが「4つ打ちだけど一回聴いてみ?」って広めてくれるようなバンドになりたかったんです。

2015年リリースの『OMG』より

僕らが10代の頃はお客さんが自由にリアクションをしていたんです。でもその頃と今とでは、空気感が全く違う。(須田)

―Benthamって、単に4つ打ちのダンサブルなロックをやっているだけでないですよね。聴き込むとヘヴィなギターリフが鳴っていたり、複雑な変拍子などにも挑戦していたり、より奥深いロックの世界が広がっていますよね。

小関:ありがとうございます。あとは、とにかくライブの本数をこなしてきました。「数をこなして経験を積みなさい」っていうのが古閑さん(KOGA RECORDS社長)の方針なんですけど、最初はものすごくキツくて……。お客さんが4、5人しかいないときもあったし(笑)、もちろん東京だけじゃなくて地方も行きましたし、機材を担いで移動することの大変さも痛感して。そんな中、お客さんがライブで何を求めているのかを探ったり、イマドキの邦楽ロックを動画サイトでチェックしました。

―そうやって、ひたすら「売れる」ことを念頭に置きつつ、お客さんの動向を見ていく中で気づいたことはどんなことでした?

須田:今の若い子たちは、こちらが煽らないとノッてこないんですよ。僕らが10代のころは、お客さんが自発的にノッていたというか、自由にリアクションをしていたんですよ。でもその頃と今とでは、空気感が全く違うので、最初はすごく戸惑いがありました。もちろん、僕たちの実力にも問題はあると思うけど、こちらが煽らなくても、自発的に、自由にリアクションしてくれるようなライブをしたいなと思っています。

須田原生

―なるほど。Benthamはファンのことを第一に考えた活動をしていると言えますよね。初ワンマンライブのDVD制作をクラウドファンディングでやっているのも、ファンを思ってのことなんですか?

小関:無料招待で初ワンマンを開催したときに応募が殺到したんですけど、当日の模様を映像化して、来れなかったファンの人たちに届けたいと思ったんです。クラウドファンディングに対する理解力はあったし、やってみたかったというのが大きいです。

―クラウドファンディングは自分でメニューを選べるから、お客さんに選択肢を与えられるという側面がありますよね。

小関:そうですね。クラウドファンディングに対して、勘違いしたイメージを持っている人もたくさんいるんですけど、お互いがWin-Winな関係になれる。ユニークなリターンとかもいいですし。

須田:それにお客さんそれぞれの価値観に合った参加の仕方ができるんです。たとえば、DVDを売るときに、それに対する金額を一方的に設定しても、それはお金と物の「交換」でしかない。クラウドファンディングは、それぞれの価値観でプランを選択できるのが魅力ですね。

小関:直に応援する、サポートするっていうことは、一緒に制作しているようなものなので。お客さんも一緒に覚悟を決めるということなんです。

ライブハウス慣れしてない人たちが楽しめるようなステージングを考えると、「4つ打ち」や「オイオイ」というシンプルなノせ方が主流になるのはある程度は仕方ない。(須田)

―若いオーディエンスが、煽らないとノッてくれなくなってしまった現象をどう分析します?

小関:4つ打ちがものすごく盛り上がったときに、力のないバンドが何でもかんでも「オイオイ」や「シンガロング」で煽ってしまったのが原因だと思いますね。「こうすれば盛り上がる」という法則が、ものすごく単純になって、スタンダードが変わってしまった。「オイオイ」をやれば盛り上がってくれるけど、やらないと「どうノッたらいいのかわからない」という人が、すごく増えてしまったと思うんですよ。僕らとしては、そこは地道に「好きなように観ていいんだよ」っていうことを広めていきたい。「誰も手を挙げてなくても、自分が手を挙げたくなったら挙げてもいいんだよ」って。

左から:小関竜矢、須田原生

須田:SNSなどで情報発信しやすくなったからか、今って、昔よりもライブハウスのハードルが低くなっているんですよ。たとえば「音楽が死ぬほど好き!」っていう人じゃなくても、普通にライブハウスに来るわけです。昔のライブハウスとは、雰囲気が全然違いますよね。当然、ライブハウス慣れしてない人もたくさんいるわけなので、その人たちが楽しめるようなステージングを考えていかなきゃならない。となると「4つ打ち」とか「オイオイ」とか、シンプルなノせ方が主流になるのは、ある程度は仕方ないのかもしれないですね。

―昔は、クラスのはみ出し者みたいな人たちがライブハウスに行き、思い思いに音楽に熱狂していたけど、今はお客さんによって温度差もあり、みんなを均一に楽しませるためには単純なノリやリフレイン、シンガロングしやすいフレーズ、が増えていったと。

小関:そうですね。もちろん、幅広い層の人がライブハウスまで足を運んでくれてること自体は、すごくありがたいことなのですが。

自分の音楽をちゃんと理解して「このマジでカッコいい曲どうだ!」っていう気持ちでバチーンと鳴らしたときに、初めて人を感動させられるんじゃないかと。(小関)

―さて、通算4枚目のEP『ExP』がリリースされます。タイトルは「経験」を表す「experience」の略とのことですが。

Bentham『ExP』ジャケット
Bentham『ExP』ジャケット(Amazonで見る

小関:タイトルは最後に決めました。7曲を並べてみたとき、「これは7つの『経験』が詰まったEPだね」とスタッフに言われて、それでこのタイトルにしたんです。基本的に全て実体験をもとにした歌詞なのですが、なるべく多くの人たちに共有してほしくて間口が広くなるような書き方にしています。

―それで抽象的な表現が多いんですね。本人たちの実体験が、そのまま言葉にはなっていないというか。

小関:そうですね。抽象的な表現や遠回しな比喩を用いて、聴いている人に真相をわからなくさせるのが好きで。表層的には「こういうことなのかな?」と思わせておいて、実は全く違う意味が隠されている……みたいな。そうすることで、より多くの人にハマりやすい歌詞になって時代に流されないタイムレスな楽曲になるんじゃないかと思っています。「この曲は、こういうテーマについて、こういうふうに思って書いた曲です」っていうように、こちらで正解を作ってしまうと、そうとしか聴けなくなってしまうじゃないですか?

―あまり具体性を持たせないことで、普遍性を持たせるような感じ?

小関:そうですね。楽しい気分のときに聴いても刺さるし、悲しい気分のときに聴いても刺さるのが理想です。ただ、リード曲の“サテライト”に関しては伝えたいことが明確にありました。歌詞の中にある、<走れ自分の足で 大切なことわかるだろう>っていうメッセージを伝えたいがために、サビでずっと<届け>って歌っているんですよ。Bentham流の「応援ソング」というか、何かを届かせることの難しさを歌っている曲です。僕らの曲を聴いてくれている人にも、「仕事がどうも上手くいかないな」とか、「恋人に気持ちが届かず辛い」とか、色々あるはずで、そういうモヤモヤを全部キレイに昇華できたら……という思いで書いた曲です。

―ちなみに、タイトルの「サテライト=衛星」に意味はありますか?

小関:いや、どうだろう。特に意味はないですね(笑)。

―衛星って惑星の周りを常に回っていて、距離感が縮まらないじゃないですか。そのもどかしさのメタファーなのかなと個人的には思ったんですよね。あるいは、Benthamはファンに寄り添うサテライトのような存在で、「どうしたらいいかわからない」という子たちに対して、「自分の足で走れば、大切なことわかるよ」と背中を押しているというか……。そうすると、さっきのライブハウスの話にもつながりますよね。「自分で好きなようにノッてもいいんだよ?」って。

小関:ああ。確かにそうですね。そういうことにします!(笑)

―(笑)。今後の展望についてはどのように考えていますか?

小関:自分たちが伝えたいことに対する説得力と、お客さんが求めていることに対する理解力を高めていきつつ、ちゃんと折り合いをつけていきたいです。あとは……演奏力とかそういう技術的なことももちろんなんですけど、たとえばTHE HIGH-LOWSで(甲本)ヒロトがステージに出てきたときの、それだけで泣けちゃうような感じとか、エレファントカシマシが出てきて、まだ歌ってないのに圧倒される感じとか……要は、圧倒的なカリスマ性ですね。まあ、それをどうやって出したらいいのかという話なんですが(笑)。

―どうすれば出ると思います?(笑)

小関:うーん……。自分の音楽を、ちゃんと理解するっていうことじゃないですかね。それさえできていれば、1コードでも泣かせることができるはずです。自分の音楽がわからないまま、ただ演奏していても伝わらないし、説得力も生まれない。「俺のこの、マジでカッコいい曲どうだ!」っていう気持ちでバチーンと鳴らしたときに、初めて「おお!」ってなるんじゃないかと。

―今回、こうやってお話を訊いて思ったのは、Benthamにとって音楽は「自己表現の手段」ではなく、徹底してお客さんを喜ばせ、満足させるための「エンターテイメント」なのですね。

小関:そうですね。「娯楽」であることには間違いないかな、と。僕はよくMCで、「あなたの生活に晴れ間を」って言っていて、歌っているときは、いつも光が差し込んでくるようなイメージがあるんです。土砂降りの雨に打たれてズーンと沈むような歌は、まだ作ったことがないのでそういう曲も、いつかは作ってみたいですが、今は心が晴れやかになるような楽曲を届けていきたいと思っていますね。

Bentham
Bentham

リリース情報
Bentham
『ExP』(CD)

2016年7月6日(水)発売
価格:1,944円(税込)
KOCA-91

1. サテライト
2. 恋は白黒
3. 僕から君へ
4. KIDS
5. AROUND
6. カーニバル
7. fine.

プロフィール
Bentham
Bentham (べんさむ)

2010年結成。2014年春のKEYTALKツアーのゲストアクトに抜擢され注目を集める。TGMX(FRONTIER BACKYARD)をプロデューサーに迎え、これまでに3枚のEPをリリース。2016年7月6日、4枚目のEP『ExP』をリリース。今後さらなる活躍が期待されるハイブリッドロックバンド。

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