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「フジワラノリ化」論 第7回 辻希美 「モー娘。」を剥いだママさんの強度 其の五 まとめ:「辻ちゃん」が「辻さん」になる日

「フジワラノリ化」論 第7回 辻希美 「モー娘。」を剥いだママさんの強度 其の五 まとめ:「辻ちゃん」が「辻さん」になる日

武田砂鉄
イラスト:樅田裕美(momi)
2009/07/24

其の五 まとめ:「辻ちゃん」が「辻さん」になる日

安達祐実に出来ずに辻希美に出来たこと、それは自身に向かう先入観の羽化ではなかろうか。辻希美が子供を産むまでの過程は激動だった。まず相棒・加護亜依の喫煙騒動があった。そして、体調不良による舞台の降板、即席ユニット・ギャルルを妊娠によって脱退。まさかの出来ちゃった婚に、記者は「避妊はしなかったのですか」というデリカシーに欠ける質問を投げかけた。まさかママになるんて、というのは、ただ単に先入観が居残っているだけである。落ち着いて考えれば、そりゃあママになるのである。まさかママになるなんて、を浴びた近い例として、安達祐実の存在は忘れられない。役とはいえ、あの家なき子が家庭と子供を持つ、という構図が珍奇だった。本来ハッピーなことであっても不幸感が滲んでしまう安達祐実の悲しさが見え隠れした。結果、彼女は離婚し、子供の親権を得て、子育てに励んでいる。結婚して子供を産んで離婚する、これだけの経緯を経ても、なんとなく漂う不幸感の質が、家なき子時代と変わらない気がするのだ。

辻希美は、過去を振り払っている。元モーニング娘。の皆が「元」にすがる中で、彼女一人がかつての経歴を、適切に歴史化しているように思う。要するに、終わったこととして片付けている。元モーニング娘。のOGが集う番組があったと以前の回で記したが、例えばこのことを、辻希美はブログで積極的に告知しないのである。中澤裕子や保田圭が自身のブログで、放映前も放映後もこの番組について書き連ねていたのとは大違いである。中澤や保田は、待ってました、という態度だった。一方、辻は淡々としていた。モーニング娘。だった自分を、距離を持って捉えているのだ。それが出来ている元メンバーって、引退者を除けば辻希美くらいである。

これから辻希美はどう歩むのだろう。ママさんタレントって期間限定の色合いが強い。子供が小さなうちだけだろう。ギャル系の雑誌では、若いママさん用に別冊を作ったりしているようで、それこそ益若つばさを筆頭に、子供を産んでもまだ「アタシ」の創出に励んでいる。子連れの強度は増すばかりである。辻希美は、たくさん子供が欲しいと公言している。それこそ当連載の前回分で論じた土田晃之や中山秀征のように子だくさん路線を目指すのは一つの手である。子だくさんになれば、その都度の注目、或いは人数が増えていくことで働くママさんとしての羨望は手厚くなる。できちゃった婚に拒否反応がある親御さんは多い。その個人的な反応が辻希美の評価をぐらつかせている可能性は捨て切れない。言い方は悪いのだが、人数さえ増えれば、その反応は溶けていく。それによって中高生の憧れるお母さん像ではいられなくなるかもしれないが、ママさんとしての育みは今以上に保てるだろう。

そのうちに、モーニング娘。の誰かはヌードになるだろう。遠くない将来とも読める。皆、ヌードになると、ああ仕事が無くなって致し方なくヌードになったなと知った顔をするのだが、それは間違っている。仕事がなくなったからではなく、仕事がなくなりそうな時にヌードになるのだ。そう考えると元モーニング娘。の誰かは脱ぎ時である。実際、オファーならいくらでも来ていることだろう。辻希美にその必要性は無い。ひとまずは安泰である。所作に安定感が漂っている。そうはいっても、夫の知名度の低さ、ハロープロジェクト全体の勢いの鈍化もある。彼女は安泰でも、周辺まで安全な環境にあるわけではない。わざと物騒に表現すれば、忍び寄る影はある。

「フジワラノリ化」論 第7回 辻希美

「辻ちゃん」と手放しで可愛がられてきた日々も、そのうちに終わる。「辻ちゃん」は「辻さん」になる。来年2010年は、彼女のデビュー10周年でもあるのだ。これから辻さんは何をすべきなのだろうか。歌か芝居か、バラエティアイドルか。どれももう、似合わない。家庭にいて、その玄関から出かけてくる人なのだ。辻さんの情報はいつも家庭から持ち出されてくる。それでいいのだ。下手に外から情報を仕入れないで良いのだ。松居一代という先輩ママさんがいる。掃除道具「マツイ棒」を開発し、大量に売りまくっている。成功した主婦タレントの代表格である。そのくせ自分ん家にはお手伝いさんを雇ったりしてるらしく何だか商売っ気たっぷりなオバサマ様ではあるが、辻さんも、彼女を見習わない手は無い。洋服の開発・コラボレーションなんて、誰でもやってるし、実際、あんなものは殆ど名前貸しだってことくらい、賢い消費者は知っている。辻さんには、洋服以外、そして、松居が荒らした「お掃除」市場以外での開発商品を望みたい。

トイレ商品なんてどうだろう、と勝手に思うのである。おむつでもイイ。トイレ周りの商品って、「臭い」がつくからってわけじゃなかろうが、芸能人が上手く活用されていない気がしているのだ。しかし、トイレを清潔にするというミッションは全ての家庭に課されていること。ここに市場は無いだろうか。便座くらいなら可愛いものもあるだろう。しかし、便座からドアノブからおむつからトイレットペーパーまで、可愛くしてしまうのはどうだろう。IKEAがトータルコーディネートで売りつけてくるように、ニトリ辺りが辻希美とコラボレートしてトイレのインテリアを改新させたら面白いんじゃないかと思っている。そういう、「家庭の中の新しい所へ手を出す」事がこれからの辻希美の前進に繋がるだろう。

辻希美のみならずモーニング娘。に対する考察は山のように文献があるだろう。今回、それらを一切読んでいない。それらの多くは、彼女らをよく知りすぎているのである。辻希美の現在は、その熟知からこぼれ落ちている皆が褒めるからこそ、ここまで認可されているように思えたのだ。中高生が目指すお嫁さん第一位としての辻希美を、その熟知にかき混ぜてしまってはならないと思ったのである。そして、辻希美も、混ざらない態度を持ちながら芸能活動を続けている。これからも、混ざらない、ってことを徹底しなければならない。モーニング娘ってさぁ…………アイドル扱いされてきた期間が長ければ長いほど、そういう印象論を振り払うのには時間がかかる。辻希美は、今、その期間を順調に乗り越えようとしている。そう、これでいいのだ。期間をこなした後、誰それが脱いじゃってるかもしれないその時に、辻希美がどういう素材を持ち出してくるか、しばし、その動向を静観しようではないか。

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