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「フジワラノリ化」論 第7回 辻希美 「モー娘。」を剥いだママさんの強度 其の三 少ない「ママさんタレント枠」を奪い取った辻希美

「フジワラノリ化」論 第7回 辻希美 「モー娘。」を剥いだママさんの強度 其の三 少ない「ママさんタレント枠」を奪い取った辻希美

武田砂鉄
イラスト:樅田裕美(momi)
2009/07/24

其の三 少ない「ママさんタレント枠」を奪い取った辻希美

モーニング娘。の卒業生がいくらか集って全盛期を振り返る番組を観ていた。勿論、芸能界を去ったメンバーや加護亜依のようなワケありのメンバーは除かれていた。中澤裕子はまだこの場に及んでも仕切りたがり、安倍なつみはこの場に及んでも一番可愛がられる存在でいようとした。そうそう、この感じ、と思い出すには最適だったものの、自分たちをまだ同じチャンネルで持ち出そうとしていたのには、やや閉口してしまった。保田圭はそのチャンネルが効かないことを理解しているように見えたし、飯田圭織は静観することを覚えていた。中でも辻希美は、他のメンバーと距離を作って、過去の歴史と向き合っているように見えた。まるでその時に戻ったかのように「人気者」としての言質を繰り返す元メンバーの振る舞いとは一定の距離を保っていた。

辻希美の現在はママさんタレントである。元メンバー達が、しがみつくように「モーニング娘。」を活用するのに比べて、辻希美は、その「元」を使わずにいられる余裕をみせつけていた。中澤が「こうなったら、辻ちゃんについていこうと思う」と笑いをとっていたが、全くもってジョークにはならない。事実なのだ。辻希美は、女子中高生が選ぶ「理想の母親をタレントに例えるなら誰か」のアンケートで一位に選ばれた。現在のモーニング娘。や派生するアイドルが女子中高生から放っておかれている現状から考えると、この、辻への羨望は特筆すべきこと。この結果を前に、モーニング娘。だった云々の話を、むしろ遠ざけたほうが良いと判断に違いない。

出生率が微増しているとのデータを見た。要因としては、女性が子育てをする環境作りがいよいよ進んできたとする見方が大半である。しかし、侮れないのがママさんタレントの影響力である。むしろ、「ママさんタレント」と銘打つのではなく、タレントが妊娠して子供を産んで、普通にタレントとして活動する、その普通に、淡々と、という好例が、子供を産むプレッシャーを多少なりとも解消していると考えられる。母一人で子供を育てる土屋アンナ、埼玉でメンズモデルとの夫と子供の三人暮らしをする益若つばさ、そしてこの辻希美。少年時代がそのまま保たれたような童顔・杉浦太陽との結婚生活は、中高生にとって分かりやすい「幸せ」の現れなのだろう。杉浦太陽と言えば、2002年に恐喝容疑で逮捕されているし(誤認逮捕と言われている)、辻希美も周辺に波瀾の人生が散らばっている事を考えれば決して分かりやすい「幸せ」ではないはずなのだが、ともかく、今現在、幸せオーラを放射している最たる存在が辻希美なのである。

「フジワラノリ化」論 第7回 辻希美

結婚して出産したタレントは、ママさんタレントとして芸能界に舞い戻るのが通例である。子供がどうしたという話をしておいて、子供さんがいるのにこうやって働いてるなんて、と同世代主婦の共感をおさえておく必要を問われる。企業とコラボして赤ちゃんグッズを作るなどして、戻った、という事実と共に新規の事業を携えておくと強い。辻希美は赤ちゃん服飾ブランドとのコラボを「怠らなかった」。

芸能界に戻ってきた彼女らのポジションは戦場と化している。あの手この手を使ってくる。ともさかりえは、何故だか歌手活動を再開させているし(さかともえり、のようなオチャソングではなく椎名林檎風アダルト路線)、hitomiはマタニティヌードを用意して復活した。女性の一番神秘的な姿を残しておきたかったという、いかにもな発言を繰り返した効果は大きかったようで、同世代のママの鏡という触れ込みを使い分けていきそうな気配がある。新山千春は夫が巨人軍を戦力外通告されて以降、突然ブラウン管に頻出するようになったようで、その経緯が透けては悲しさが漂うが、同じように結婚して子供を産んだ坂下千里子と比べると、ポイントを突いた芸能活動をしている。とにかく、子供を産んで芸能界に戻る、そして、その場に居座るってことはそんなに容易じゃないのだ。そこにある席は5席も無いと読むべきだろう。

北斗晶が辻希美と対談していた。同じくプロレスラーの佐々木健介と結婚した北斗晶のママさんとしての評判はすこぶる高い。ママであることを売り物にせず、実直に、子供を育てるってこと、子供を持ちながら働くってことを、大切に見つめている。「子供が言葉を覚えるじゃない。その時に、『ママ』よりも『パパ』って言葉を覚える子供が多いのね。自分より『パパ』を覚えた子供を前にして、あぁこの子は自分への愛着が無いんじゃないかなんて悩むお母さんがいるけど、全く違うのよ。いっつも夫が外出してる時に、『パパはまだかなー』『パパ、早く帰ってくると良いねえ』って優しく話しかけてあげているママの存在があるからこそ、子供は『パパ』って言うのよ」。ほう、なかなか良いことを言う。夫の杉浦太陽が憧れる女性芸能人として挙げる北斗晶の話を、目を潤ませんばかりに聞き入る辻希美。北斗晶は話しかける、「辻ちゃんはお母さんしてるよ」と。『アイドルが沢山出ている番組に辻ちゃんも出ていた。皆キラキラした格好をして、辻ちゃんもそれに混ざっていた。でも一つだけ違っていたことがあった。辻ちゃんの爪だけ、ガサガサだった。その時、私は思ったの。この子はちゃんとお母さんしているなって。』北斗晶の話に聞き入る辻希美は、教祖と信者のようだった。事実、辻希美のママさん活動に対する批判の声は強い(逆に北斗晶の肯定感は強い)。しかし、的を射ていない。何だかいい加減そうだから、ちゃらんぽらんだから、という、見た目の印象に過ぎない。今更、見た目の印象で物事を決めることを恥じる気配はない。

親世代はそうかもしれない。しかし、女子中高生は辻希美に憧れている。夫がいる、子供がいる、その典型的なモデルケースを辻希美に置こうとしている。そして、辻希美は、何をやればそれが途切れないかを知っている。やはり適材適所で必要な反応を即座に求められ続けてきたトップアイドルとしての素養なのだろうか。今、辻希美がその「素養」を最大限に発揮する場所、それが、ブログ「のんピース」である。次回は、「読ませるブログ文章術を辻希美に学ぶ」と題して、辻希美のブログを通して、人に読まれるブログの文章術を探っていきたい。

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