コラム

CINRA MAIL MAGAZINE連載コラム『全裸』2009年4月配信分(vol.221~224)

CINRA MAIL MAGAZINE連載コラム『全裸』2009年4月配信分(vol.221~224)

武田砂鉄
2009/05/26

vol.224 要確認「草なぎが悪いのだ」(2009/04/27)

全裸

したり顔で、マリファナはオランダでは合法なんだよ、と話を持ち出して、日本は厳しすぎるんだよねやれやれ、と戯言を漏らす連中を未だに見かける。全く、やれやれである。どうしてあちらでは合法なのにこちらでは違法なんだよ、強いお酒とかタバコの方がよっぽど体に害があるんじゃんか、と続いていく。ため息を少々。次元が底打ちされたそんな話に付き合っている時間を、残念ながら持ち得ない。ダメだからダメなのだ。時間があるなら、オランダに行って、日本では違法なんだよと、言ってきてくれないか。

草なぎメンバーをやたらと擁護する流れが心地悪い。「かわいそう」から始まって「逆に親しみが涌いた」と、肯定的に膨らんでいく総論にうなだれる(とあるアンケートでは90%が草なぎに同情すると出ていた)。情報統制に長けた事務所である、事後反応の出し方も心得ている。ご存知この事務所は芸能界において強大な権限を持っている。朝のニュースでこの一報が舞い込んだ時、詳しい情報が分からないからなんとも……と、口うるさい司会陣が一斉に口ごもった。アナウンサーは猿のように、現状を繰り返した。SMAPがもたらす利益を、この事後対応で失ってはならないという緊張状態にあった。コメンテーターから緩いコメントを出させて、局の方針としては既知事実を伝えるのみに専念する。意見のバリエーションが欲しければ街へ出て、「そんなことする人には見えなかった」を最大限の批判レベルとし、あとは「やりすぎでは」「彼にも悩みがあったのでしょう」と同情・共感ラインを垂れ流す。不況にあえぐテレビ局は、ジャニーズに逆らえる状態にはない。事実、事務所は、謝罪会見の映像・画像の使用を(蜜月関係にある)地上波に限り、(どう編集されるか分からない)ウェブやCS放送での使用を禁止した。同時に、地上波放送に関しても生中継を禁止している。民放のどこかが抜け駆けして生中継すれば、金曜の夜だ、さぞかし視聴率は上がっただろう。しかし、メディアは横に並んで整列した。芸能記者は「お酒に酔って失敗することは誰にもありますが…」と同情を促すような前置きをして設問を投げかけた。この記者には仕事が増えるかもしれない。

留置された警察署には「どうして逮捕したんだ」と非難の電話が殺到した、と報じる。しかし、殺到、という用い方はあまりにも曖昧である。この手の曖昧が掛け算のように擁護論を増幅させ、知らぬ間に自分の中で草なぎくんはかわいそう、という持論が育成されてしまう。誰に迷惑をかけたわけでもないし、と、議論は珍妙な安定感を持っていく。公園で下半身を露出した。公然わいせつ罪に「不特定多数の人が認識できる状態の場所などで、わいせつな行為をした罪」とある以上、逮捕されるのは当然である。そしてそれが大きく報道されるのも立場からして当然である。渋谷を歩けば「渋谷を歩いた!」とニュースになる存在が、下半身を出したら「下半身を出した!」と騒がれるのは当然である。それくらいで、とは言えないのだ。

当然のことしか起きていない。「ダメだからダメ」から生じた当然のことなのだ。電車の中でのAV撮影を許可しないのは、ダメだからだろう。同じだ。そんなことで逮捕されるのはかわいそう、と真剣に思ってしまえる9割の方々の神経が分からない。下請け・孫請けの制作会社は今ごろ徹夜作業で収録済みの番組を草なぎメンバー抜きの映像に再編集しているだろう。地デジのポスターの変更を余儀なくされた担当者は、後任探しと再貼付のスケジュール確保に追われているだろう。その人達は、ようやくとれそうだった長期連休が危うくなっているかもしれない。僕は幸いにして「当然の思考回路を持っている」から、こういう事に考えが及ぶのである。単純な事しか起きていない。逮捕されるべき事をしたから逮捕されて、それによって多々が被害を被った。だから、彼は悪いのである。以上でございます、で終われないのは、異常でございます。

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