broken hazeインタビュー

音の追求から音楽の追求へ

―まずはbroken hazeの経歴からお話をお伺いしたいのですが、いつ頃からどんな音楽を作り始めていたんですか?

broken haze:2000年頃からヒップホップのDJをやり始めたのがきっかけでした。その頃は、ターンテーブリズムにのめりこんでいて、世界的に有名なターンテーブリスト集団のINVISIBL SKRATCH PIKLZやBeat Junkiesたちのプレイを見て研究してました。その後にDJが自分の中で一段落ついた時、macを手に入れてトラックを作りだしたんです。その時はDJ KRUSHさんの影響が大きかったので、かなりアブストラクトな方向性でしたね。さらに、そこからオリジナリティをだそうとして、よくも悪くも実験的なサウンドを求めていたと思います。

―broken hazeは恐らく「エレクトロニカ meets ヒップホップ」とカテゴライズされると思いますが、そういう音楽は実験的で難解な音楽が多いように思います。broken hazeの旧作にもやはり「難解さ」があったと思いますが、今作『raid system』はとても聴きやすくなりましたよね。何か心境の変化などがあったのでしょうか?

broken hazeインタビュー

broken haze:音楽に対する考え方が変わってきたんだと思います。ご指摘のとおり、実験的で難解なものがエレクトロニカといわれるものには多いと思います。ぼくも前作のEPなどでは、「音的」な追求に集中していて、よい意味でも悪い意味でも実験的だったと思いますし、そのときはそれが自分にとっての正解でした。

今回のアルバムが出来上がる前にも、そうした「実験的」な音で構成されたアルバムをほぼ完成させていたんですよ。でもその作品は、アルバムとしてのコンセプトや伝えたいことをしっかり言えていなかったし、前作の延長線上のような気がして、リリースする気になりませんでした。その後に今作の『raid system』を作ったわけですが、まずはコンセプトやストーリーを先に考えて作り始めたんです。その結果、実験的な要素は薄まったかもしれないですが、コセンプトやストーリーを表現するためにわかりやすいメロディーを使うことにはまったく抵抗がないですし、むしろそれを出していきたいとさえ考えていました。

―アルバムひとつボツにしてたんですか!(笑) 「わかりやすさ」を敢えて避けてしまうアーティストも多いと思いますが、音楽で何かを伝えようとした時に、コンセプトを表現する為の「わかりやすさ」というのはリスナーに親切で嬉しいです。

broken haze:そうですよね。個人的には、音の追求から曲としての追求になっていったんだと思います。だから今となっては、音がいいとか悪いとかは以前と比べて変なこだわりはなくなりました。ぼくは、音のピースを作ってるのではなくて、音楽を作っているのだと。そう思えたのは、自分にとってとてもプラスになったと思います。ちなみに、ぼくはメジャーでミーハーな音楽も好きです。「意外!」といわれますが…。

―ミーハーとマニアックって、二分されているように思われがちですもんね(笑)。『raid system』は、クラブはもちろん家でも聴ける幅の広さがあると思いますが、 そういう部分にも「マニアックなだけじゃない」というbroken hazeらしさが出ているのかもしれませんね。

broken haze:ありがとうございます。今回はメロディーをできるだけ前に出したし、音楽を聴く環境にできるだけ左右されない曲を作りたいと思っていたので、そういっていただけるととてもうれしいです!クラブじゃないと体感できないような、かなり低い位置で鳴っている音もあるんですが、基本的にはふつうのスピーカーでも聴けるようには努めたつもりです。

―わかりやすいメロディーが入ったものの、やはり「ビート」というのが常にbroken hazeの音楽の根っこにあるように思います。これまでどんな「ビート」に刺激を受けてきたんでしょうか?

broken haze:ビートという面でぼくを構築してきたのはやっぱりヒップホップだと思います。90年前後、ニュースクール期のヒップホップはリアルタイムで聴いていましたし。

―特に好きだったビートメーカーはいますか?

broken haze:GANGSTARRのDJ PREMIERの存在はぼくにとってとても大きいですね。太いキックと後頭部を叩かれるようなスネアが気持ちいいんです。あとはさっきも言ったDJ KRUSHですね。でもヒップホップだけではなくて、エレクトロニカとかバンドものとかも常に聴いていました。バンドのライブなども観に行くし、今回もジャムバンド「旅団」のギターリストtoshitaka mukaiyama氏にも参加してもらってますしね。

コマーシャルなものとは一線を引いて音楽を追求をしてきた
アーティストたちの葛藤や挑戦を表現した

―今作はmachinedrumなど有名な海外アーティストが参加していますが、旅団のギターさんやROMZのCOM.Aさんなど国内勢の参加アーティストも豪華ですよね。

broken haze:今回はアルバムのコンセプトが先にあって、他方面で活躍している人に参加していただくことは必須だったんです。そのコンセプトは題名でもある「raid system」に集約されていて、このコンセプトおよび名前で新しいレーベルも立ち上げます。

―どんなコンセプトなのか、簡単に説明していただけますか?

broken haze:CDや音楽ファイルって元をたどれば0と1のデジタルデータですが、それを面白くするのは個性的で斬新なアイデアを持っているアーティストたちですよね。そんな世界の面白いアーティストがデジタル化で一つのシステム(シーン)を構築しているようなものだと思います。そのシステムが出来上がるまでのプロセス、そしていい意味でコマーシャルなものとは一線を引いて音楽を追求をしてきたアーティストたちの葛藤や挑戦を表現したのが今回のアルバム『raid system』(raid はradical artists innovate digitalizationの略)です。このコンセプトに賛同してくれ、快く参加してくれたアーティストたちには感謝してます。

―各人とはもともとお知り合いだったのでしょうか?

broken hazeインタビュー

broken haze:COM.Aさんはぼくが音楽を作り始める前から大ファンでした。以前ぼくのEPのリリースパーティーがあったんですが、そこに遊びに来てくれていたときにはじめてお会いしました。そこから連絡をとるようになって、今回のお願いをしたときは快く引き受けてくれました。COM.Aさんの攻撃的なブレイクビーツサウンドは、今回のアルバムの1シーンを描くのに必要不可欠だったのでかなりテンションあがりましたよ。

旅団のとしくん(toshitaka mukaiyama)とは、イベントで何度か一緒になっていて、声をかけてくれたんです。ぼくの音を気に入ってくれていて、ぼくもとしくんのギターが大好きだったので一緒にやろうって話になっていました。今回は、切ないギターを弾いてもらいたくてお願いしたところ、期待以上のものを作ってきてくれて、それを再構築しながら曲を仕上げていきました。短い曲ですが、かなりぼくらの思いは詰まっていますよ。

―broken hazeはジャンルや音楽性に捉われない印象を受けますが、「バンド」に対する関心も強いようですね。

broken haze:そうですね。ぼくは、クラブミュージックというカテゴライズにいれられることが多いですけど、そこまで意識していないんです。実際に聴く音楽もバンドのものがかなり多いです。最近だとsleeping peopleとかをずっと聴いていましたね。今回はスケジュールなどの都合で実現できませんでしたが、toeのドラマー柏倉さんともお話してました。次回作ではぜひやりたいと、すでにお話も始めています。

―それは楽しみですね。broken hazeのライブはまだ見れていないんですが、映像と共にライブをしていると伺いました。今回のアルバムもDVDで映像作品も付いてきますよね。

broken haze:映像は、ぼくのようなノートPCでライブをする人間には必要不可欠なんです。なかなか音だけで伝わらないこともいっぱいありますし、音楽というアートフォームが正解だとも思わないんです。映像は視覚的に訴える力がありますし、オーディオビジュアルとしてライブをしていくのも重要だと思っているんです。どっちが主役というのは関係なくて、ひとつのショーとしてやっていきたいですね。

今回のDVDには、SuperDeluxeで実験的に行ったライブ(featuring reel & masato tsutsui)を収録しています。プロジェクターやシースルーの布を使って映像を立体的に見せているのですが、こちらを見ていただければ、何を言いたいかわかっていただけると思います。

―ちなみに普段は、どんなところでライブなどを行っているのでしょうか?

broken haze:ライブをやる場所は、いろいろですね。クラブのイベントでやることが今のところ一番多いです。ヒップホップ、エレクトロニカ、テクノのイベントなど、さまざまなものに出ていました。最近は制作に集中していたのでライブは控えていましたが、DJやライブも今後は積極的にやろうかなとは思っています。あとは、ぼくがやってる音楽レーベルInsector laboに加入した新人とmad smackというglitch hopユニットを始動したので、そちらにも力を入れて活動する予定です。

―それでは最後に、今後決まっている動きがあれば教えて下さい。>それでは最後に、今後決まっている動きがあれば教えて下さい。

broken haze:7月19日の夕方からgame shibuyaで『raid system』のリリース・パーティーをやる予定です。これは豪華なメンツになると思うし、VJも普通のイベントでは見れないものになると思いますので、ぜひチェックしてみてください!! あと、mad smackのミックスCDも企画しています。こちらはわざとメインストリームのヒップホップを使い、ビートをぼくらなりに崩していく新しい試みになると思います。

リリース情報
broken haze
『raid system』

2008年4月25日発売
価格:2,520円(税込)
ISLOCD-005

1.intro-login-
2.raid system feat.xlii
3.core program~in-sect raid slasher mix~
4.fusion process feat.ORGA
5.maintenance
6.rebulld
7.counter attack feat. joga
8.slasher attacks feat.Richard devine
9.rebuild~machinedrum remix~
10.protect progrem feat.COM.A
11.secured place feat.toshitaka mukaiyama(ryoden)
12.reboot the engine
13.beautiful destruction -conflict remix-
14.against the wall
15.beautiful destruction
[DVD]
・AUDIOVISUALライブ映像 + CD未収録音源PV

プロフィール
broken haze

鋭利で攻撃的なビートと叙情的なメロディーを融合した「Electronica meets hip hop」型アーティスト。2005年ソロEP『phase.01』を発表。その後は、Insector laboの盟友chaosのアルバムへの参加やryukeへの楽曲提供、2006年にはテクノレーベルAsianDynasty RecordsからリリースしiTunes StoreではElectronic Chart 5位を記録するなど、「エレクトロニカ要素を取り入れた新しいテクノスタイル」と賞賛を得た。ライブ活動では、AUDIO ACTIVEのギタリストCut sighや、schematicやmerckからのリリースで知られるkiyoとのコラボレーションライブを行い、新たな世界を模索し続けている。 音楽レーベルInsector laboとraid systemを主宰し、Insector laboのニューカマーjogaとのユニット「mad smack」では、ヒップホップ的要素を全面に押し出した新たな試みも行う。



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