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イラストレーターのつくる音楽 中村佑介インタビュー

イラストレーターのつくる音楽 中村佑介インタビュー

インタビュー・テキスト
久保正樹
2011/06/08

イラストレーター・中村佑介。その名前だけではピンとこない方も、乙女&浪漫チックなユートピアが色とりどりに広がる彼のイラストを見ればすぐに「はは~ん」と唸るはずである。森見登美彦や赤川次郎などの著作のブックカバーイラストを手掛け、さらに表紙を担当した東川篤哉・著『謎解きはディナーのあとで』が2010年度『本屋大賞』を受賞。いまや書店の平置きコーナーに行くと、必ず彼の作品を目にすることができる、現在もっとも注目のイラストレーターである。

また、ASIAN KUNG-FU GENERATION、スピッツ、ゲントウキらのジャケットデザインを手掛けるなど音楽への造詣と愛情も深い中村だが、この度、彼が率いるバンド、セイルズのデビューミニアルバムがリリースされることになった。中村いわく、「作者が見えず肉体的ではない」というイラストに対し、「動物の求愛行動に近い」という彼の綴る音楽は、いったいどんな衝動を抱え、どのような世界を描こうとしているのだろうか? 甘酸っぱいノスタルジーを宿した不思議なイラストとの微妙な関係、自身のルーツ、また彼の作品からは切っても切れない女の子観まで、現代のモダン・中村佑介に語ってもらった。

元々レコードやCDジャケットが好きで、よく架空のアーティストのジャケットなどを趣味で作っていたんです。

―イラストレーターとして大活躍の中村さんですが、大阪芸術大学の学生だった頃は主に何を勉強していたのですか? またその時代から現在に到るまでの経緯を教えていただけますか?

中村:子供の頃からテレビゲームが大好きで、ゲーム会社に就職する為に、大学ではCGを学ぶコースでパソコンやデザインの勉強をしていました。志望は『ストリートファイター2』に代表されるような筋肉ムキムキの男たちが戦う格闘ゲームのキャラクターデザインだったのですが、就職時期には筋肉とは正反対の『ときめきメモリアル』に代表される美少女恋愛シュミレーションゲームが流行していた為、少し疑問を覚えて就職活動を一旦中止し、『ときメモ』よりときめくことの出来るものを描くべく、女の子を描く練習をはじめました。しかし納得のいく1枚も描けないまま、何百枚もの絵を描き続け、気付いたらイラストレーターになっていた、という感じです。

イラストレーターのつくる音楽 中村佑介インタビュー
セイルズ イメージ画像

―女性の体に興味を持ち始めたことから絵を描き始めた、ということですが、その辺りの事情をもう少し詳しく教えていただけますか?

中村:いえいえ、そういう訳ではなく、子供の頃みんなと同じようにキン肉マンやロボットが好きで絵を描き始めましたよ(笑)。ただ、今の漫画は女の子が主役の1人として登場しても自然ですが、僕が子供の頃親しんでいたものは、女の子の役割はあくまで脇役のものが多く、少女漫画かエロ漫画くらいしか女性が全コマに登場するものはありませんでした。だから男が女を描くのは軟弱、もしくはイヤらしいことだと思っていたので、キン肉マンを描く自由帳とは別に、女の子を描くノートを隠れて作っていました。そちらが今の仕事になってしまったのは不思議なことですが。

―では、音楽の演奏を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

中村:元々レコードやCDジャケットが好きで、よく架空のアーティストのジャケットなどを趣味で作っていたんです。ただ、中身がないのはどうも寂しいので、大学1年生の時に友達からギターを教わって、MTRや他の楽器を買ってきて、見よう見まねで宅録で音楽を作り始めました。だから本来とは逆の「ジャケットの為にある音楽」だったので、当時はライブをすることはほとんどなく、シコシコとカセットテープを作って、友達だけにリリースしていました。もちろん帯には「待望のサードアルバム!」とか書いているのですが、僕以外誰も待望はしていなかったと思います。

イラストレーターのつくる音楽 中村佑介インタビュー
セイルズ イメージ画像

絵はおめかしした自分、音楽は普段着の自分というように、それぞれのアプローチで楽しんでいます。

―中村さんにとって絵を書くことと、音楽を作ることの共通する部分、また違うところを教えて下さい。

中村:共通して「人を楽しませたい」という意欲からどの表現も取り組んでいますが、絵はやはりどこまで行ってもひとりで自己完結したものをキャンバスを通してお見せするしか出来ないので、音楽にあるみんなで作る楽しさや、ライブでのお客さんとのリアルタイムなコミュニケーションはとても楽しいですね。また、シンガーソングライターでレーベルメイトの徳永憲さんに「中村くんの絵は、綿密に計算されたものなのに、音楽は初期衝動優先のノーガード戦法で、同じ人が作っているものだとは思えない!」なんて言われ、単純に技術不足というとそれまでなのですが、絵はおめかしした自分、音楽は普段着の自分というように、それぞれのアプローチで楽しんでいます。

―なるほど。では自分を表現する手段としてうまくバランスが取れているということですか?

中村:そうですね。おそらくどちらが欠けても精神面でのバランスを崩してしまうだろうし、やはりみんなで作って、人前に出るバンド活動というものは、僕の様なフリーランスで1人で仕事をしている人間にとっては必要不可欠の、唯一の社会との接点になっている気がします。「ひきこもり佑介ちゃん」のリハビリを、どうせなら音楽でお見せして楽しんでもらおうかと(笑)。

2/3ページ:例えば「エロス」と「スケベ」は同じことを指しますが、印象は大分変わってきますよね。

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リリース情報

セイルズ『Pink』
セイルズ
『Pink』

2011年5月25日発売
価格:1,500円(税込)
Waikiki Record / WAKRD-035

1. わたしの穴
2. ビューティフル
3. おしりのふとん
4. 絵筆は役に立たず
5. ほんとはね

プロフィール

セイルズ

数々のCDジャケットや書籍カバーを手掛けるイラストレーター中村佑介が2005年に結成したポップスバンド。歌謡曲、フォーク、アコースティックスィング、ボサノバを基調としたブルーなメロディの上にまたがるピンクな歌詞を特徴とする。編成は中村佑介(ボーカル・ギター)、長谷川梓沙 (アコーディオン、コーラス)、飼原正之(ベース、編曲)のドラムレストリオ。2011年6月、エレキベースや徳永憲の所属するワイキキレコードよりデビュー。

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