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スプツニ子!×宇川直宏 2010年代のアートってどんなもの?

スプツニ子!×宇川直宏 2010年代のアートってどんなもの?

テキスト・展示撮影
佐々木鋼平

技術的には、避妊用ピルを飲み続けることで生理をなくすこともできたのに、わざわざできないようにデザインされている。テクノロジーの進歩は平等じゃないんですよ。(スプツニ子!)

宇川:それからスプちゃんの作品には1つのレイヤーとして、「サイバーフェミニズム」という世界観がありますね。

スプ子:ありますね。もともと理系で、研究室に女性が少なかったからこそ思う部分もいっぱいあって。それが自然に作品に出るところはあります。『生理マシーン、タカシの場合。』も、避妊用ピルが発明されたとき、じつは飲み続けることで生理をなくす効果があったそうなんです。でもそれじゃ宗教的な反発も起きるかもしれないし、女性が不安がってピルを飲み続けてくれないってことになって、わざわざ3週間ピルを飲んで、1週間休んで、毎月来なくてもいい生理を来させる、みたいなデザインにされていて。

宇川:興味深いですね。

スプツニ子!『生理マシーン、タカシの場合。』 ©Sputniko!
スプツニ子!『生理マシーン、タカシの場合。』 ©Sputniko!

スプ子:そこから50年以上も経って、月面着陸とか、遺伝子組換えとか、インターネットとか、いろんなテクノロジーが出ているのに、いまだにほとんどの女性が、毎月血が出て、お腹が痛い思いをしている。テクノロジーは平等に、みんなの為に進歩するイメージがある一方で、その時代の文化や宗教、社会的な要素に影響にされている事実を、生理1つだけでも感じられるんですよ。そういうことをテーマに扱いたいなぁ、と思いながら学校で作品を作っていましたね。

宇川:それとは逆に、リベラルなフェミニズムの視点からの男性性への言及もありますね。たとえば“ちんこの歌”だったり、『チンボーグ』だったり。

スプ子:ありますね、『チンボーグ』。私の心拍数に合わせてガシャーンと勃起するマシーンを作ったんですよ、23歳のときにコツコツと(笑)。このときのテーマが、「ちんこエンビー(penis envy)」ってあるじゃないですか、精神分析学者のジークムント・フロイトが提唱していた。

宇川:なるほど、「ファルス論」ですか? 男根羨望!

スプ子:そう、男根羨望。ペニスの欠如からくるペニス羨望によって女性の人格が形成される、みたいな説があるんですけど、実際はどうなのかなあ? と思って。じゃあ、もし女の子が「ちんこ」を身に付ければ、毎日の活動は変わるのか? と。ついでに、ちんこを付けて生活した後にちんこを取れば、腕や足を切断した人が、腕がないのに腕があるような錯覚をするファントムリム現象みたいなことが、『チンボーグ』でも起こらないのか? と思って。

スプツニ子!『チンボーグ』 ©Sputniko!
スプツニ子!『チンボーグ』 ©Sputniko!

宇川:『チンボーグ』は着脱式だから、どちらかというと物理的に衣服を脱いだときに生じる現象に近そうだけど?(笑)

スプ子:いや、一応心拍数にリンクしているので……(笑)。さっきからずっと下ネタで申し訳ないんですけど、「ちんこ」は男性にとって、自分の気持ちと通じ合ったある種の友人のような存在じゃないんですか? それがわかんないからやっているんですけど、単純に「友だちがいていいな」と思ってて。

宇川:素晴らしい! まさに『おぼっちゃまくん』に出てくるギャグ「ともだちんこ」ですね。おぼっちゃまくん原理主義!(笑)

『寿司ボーグ☆ユカリ』は、ラブドール批評的な作品だったんですよ。「美少女サイボーグ」みたいな日本のセンスを、少しおちょくって見ているっていうか。(スプツニ子!)

宇川:それで、スプちゃんに聞きたかったんですが、現在の日本のラブドールの進化についてはどう考えていますか? オリエント工業のラブドールが超リアルで、ヤバすぎます。人間超えしている機能美ですよ(笑)。

スプ子:ほんとにヤバいですよね。じつは以前にラブドール批評的な作品を作っていたんですよ、『寿司ボーグ☆ユカリ』(2010年)っていう。

宇川:たしかに『寿司ボーグ☆ユカリ』はラブドール批評だ。だって、女体盛りと回転寿司をモデルにしていますからね。

スプ子:「美少女サイボーグ」みたいな日本独自のセンスを、少しおちょくって見ているっていうか。

『寿司ボーグ☆ユカリ』 ©Sputniko!
『寿司ボーグ☆ユカリ』 ©Sputniko!

宇川:オリエント工業のラブドールに回転するベルトコンベアー付けたら「ラブドール☆ユカリ」になりそうだもんね。

スプ子:それが最近出たんですよ! 『寿司ボーグ☆ユカリ』にそっくりなドールを、オリエント工業が!

宇川:(絶句)……嘘やん!? 笑うしかないやん!

スプ子:どうしよう!?(笑) 「パーティードール」っていう商品なんですけど、ちょっと見てもらっていいですか? どれくらい『寿司ボーグ☆ユカリ』に似ているのかっていうのを……(と、ネットで検索する)。

スプ子:あ、これこれ! パーティードール! 見えますか?

宇川:あれー!? 『寿司ボーグ☆ユカリ』! ヤバい! 完璧にユカリってる!(爆笑)

スプ子:ヤバいでしょ!? 日本社会を批評するとか言って作品を作ったのに、もうその類似品が出現してる!(爆笑) 私、これを作ったオリエント工業の人と対談したいんです!

宇川:って言うか、スプちゃんとオリエント工業の対談を「ポストインダストリアルの美術」っていう文脈でやろうよ! 美術として考えるならば、アレン・ジョーンズ(イギリスのポップアーティスト)の女体家具シリーズとかのコンテクストとも接続できる。しかし『寿司ボーグ☆ユカリ』も「パーティードール」も、完璧にポスト・ポストインダストリアルの次元に突入してるよね(笑) 対談どころか、共同開発プロジェクトを立ち上げたほうがいいと思うよ!

スプ子:やったらどうなるんでしょうね(笑)。せっかくだから、金沢21世紀美術館でやりたい。石川県ってじつはアダルト産業がすごいらしいんですよ。DMM.comも創業は石川県で、アダルトビデオのモザイク処理をするスタジオが一番多いのも石川県なんだそうです。大事な産業ですからね。日本のクリエイティブですし、いつも感心してます。

宇川:じつは僕も20歳の頃、KUKIというメーカーでアダルトビデオの助監督をやっていたんですよ(笑)。こういったアダルト・インダストリーな領域も、スプちゃんの作品に通底しているコンセプトの1つでもあるよね。

スプ子:そうですね、さっきの『チンボーグ』もそうですけど、やっぱり素直にセクシャリティーの問題に突っ込んでいくっていうのはありますね。

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イベント情報

『ザ・コンテンポラリー1 われらの時代:ポスト工業化社会の美術』展

2015年4月25日(土)~8月30日(日)
会場:石川県 金沢21世紀美術館 展示室7-14、長期インスタレーションルーム、デザインギャラリー、プロジェクト工房、ほか
時間:10:00~18:00(金、土曜は20:00まで)
出品作家:
大久保あり
金氏徹平
宇川直宏
小金沢健人
泉太郎
三瀬夏之介
束芋
スプツニ子!
八木良太
アルマ望遠鏡プロジェクト
休場日:月曜(7月20日、8月17日は開場)、7月21日
料金:一般1,000円 大学生800円 小中高生400円 65歳以上800円
※長期インスタレーションルームでの展示は5月26日~9月6日、デザインギャラリーでの展示は5月26日~11月15日

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世界で話題の理系ガール、初期映像作品が復刻

プロフィール

宇川直宏(うかわ なおひろ)

1968年香川県生まれ。映像作家 / グラフィックデザイナー / VJ / 文筆家 / 京都造形芸術大学教授 / そして「現在美術家」……幅広く極めて多岐に渡る活動を行う全方位的アーティスト。既成のファインアートと大衆文化の枠組みを抹消し、現在の日本にあって最も自由な表現活動を行っている自称「MEDIA THERAPIST」。2010年3月に突如個人で立ち上げたライブストリーミングスタジオ兼チャンネル「DOMMUNE」は、開局と同時に記録的なビューアー数をたたき出し、国内外で話題を呼び続ける「文化庁メディア芸術祭推薦作品」。今年は『アルスエレクトロニカ』サウンドアート部門の審査委員も担当。

スプツニ子!(すぷつにこ)

1985年東京生まれ。2007年よりカラスと交信するロボットや女性の生理を疑似体験するマシン、ハイヒール付き月面ローバーなど、テクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を批評する映像、音楽、写真、パフォーマンス作品を発表している。2013年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教。近著に『はみだす力』。主な展覧会に『Talk to Me』(ニューヨーク近代美術館、2011年)、『東京 アートミーティング うさぎスマッシュ』(東京都現代美術館、2013年)など。

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