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THE NOVEMBERSの発想をがらりと変えた、土屋昌巳による学び

THE NOVEMBERSの発想をがらりと変えた、土屋昌巳による学び

インタビュー・テキスト
小野島大

ビジネスとかお金儲けに長けてる人はすごくいっぱい出てきたけど、ほんとに音楽を追求する気があるミュージシャンって、意外と少ないですから。(土屋)

―小林さんは土屋さんとのやりとりで何が印象に残ってますか?

小林:ほんとにたくさんありますけど……昌巳さんが楽器をスタジオに搬入してくる様子とか、楽器を扱う姿ひとつを見ているだけで、背筋の伸びる思いでした。歌詞にしても、ほんの短い間にその歌詞の本質を、核になる部分をずばりと指摘されて。どの曲においても「キーになるのはこの一行なんだよね」とか言ってくれるんです。面白いのが、その一行は歌詞を書くときに一番最初に思いついたところだったりするんですよね。たとえば“エメラルド”だったら、「水面の反射」という一節を指してくれて。歌詞が生まれた瞬間のきっかけになる言葉って、最後まで残ってることが多いんですけど、それを昌巳さんはわかってくれている。

土屋昌巳

―まさに、一般的には理解されづらいことも、土屋さんはわかってくれている。

小林:そう。あとは、なにより音作りですね。自分の中の価値観とか、これまで培ってきたセオリーやノウハウが根本から揺さぶられました。揺さぶられたどころか……ダルマ落としだったら一番下のところをポーンと飛ばされてかさが低くなっちゃった、みたいな(笑)。ここ2、3作は自分たちでも納得のいくものができていたし、この10年で自分たちなりの経験も積んできましたけど、昌巳さんは発想そのものが違う。ギターをアンプの前で鳴らしただけで感動しました。一音の説得力が、これまでの自分たちでは感じたことのないようなものなんですよね。それがまさに今作の「洗練とかデザイン性を重視して、余計なものを削ぎ落として少ない情報でしっかり聴かせたい」という構想にしっかり還元されていきました。

―なるほど。

小林:もちろんやる前から昌巳さんの作る音なら間違いないって確信はありましたけど、それをはるかに超えていたんですよ。いつもだったら録った音に「もっとこの音を重ねたらどうか」って言って、闇雲にどんどん肉付けしていって、一旦肉付けしたものは愛着が湧いてしまうから外せなくなるというのが僕の癖だったんですよ。でも今回はむしろ逆で、ふだんの感覚で付け足したフレーズなんて一切いらない気がして。昌巳さんが「音楽は彫刻と一緒だ」って話をされたんですよね。彫刻って、あらかじめあるものをちゃんと見据えた上で、固まりから削っていくものじゃないですか。

―仏像を彫るのは、木の中に見える仏様を取り出す感覚だって言いますね。

小林:そうそう。

土屋:見えてないとダメなんですよ。指一本間違えたら全部ダメになりますからね。作業に入る前にかなり長い時間話しました。何を見て美しいと思うか、何がかっこ悪いと思うか、そういう「美感」が根本的に違ってたら話にならないし。もっと大事なのは、ほんとに音楽を追求する気があるかどうか。意外とそういうミュージシャン少ないですから。ビジネスとかお金儲けに長けてる人はすごくいっぱい出てきたけど、「で、ほんとに音楽をやる気があるの?」という。そこは、彼らには「誠実」という言葉がぴったりだった。誠実であるかどうかって、人間にとってすべてだと思うんです。音楽のことだけじゃなくて、その人の存在そのものの価値。そう思って日々を過ごしていると、「この人と過ごす時間はきっと素晴らしいに違いない」っていうのがわかってくるんですよ。僕、そんなに残された時間はないですから(笑)、あんまり無駄にしたくないんです。


昌巳さんと関わることでどんどん素直になっていくような感覚があったんです。憑きものが落ちていくような感じでした。(小林)

―彼らの演奏からは、実際にレコーディグに入る前になにを感じられました?

土屋:あ、こりゃ大変だなと思いました。

小林:わはははは!(笑)

土屋:仕方ないんですよ。世の中にいろんな間違った情報が出回っていて、みんな勘違いしているから。だから僕たちはなにが本当に大切なのかを伝えていかなきゃいけないんです。僕らは自分たちで一から試行錯誤しながらやり方を覚えていったので、好き嫌いや美感は置いておくとしても、空気を振動させる「音」としてそれが正しい方向かどうかぐらいはわかる。「音響」として、人間の耳にいかに正しくアーティストの意図を伝えるか。結局レコーディングって、その場で鳴ってるものを記録するだけですからね。だからミュージシャンは、頭の中にある音を、その場で提示しなきゃいけない。ダメなアーティストに限って、ブースの中で音を鳴らした後に「頭の中ではこう鳴ってるんですよね」と言うんですよ。ミュージシャンの仕事は、頭で鳴ってるものを楽器で出すことなんですから。サウンドプロデューサーの重要な仕事は、それをスムーズに鳴らせる環境を整えることと、それを正確に記録して聴き手に伝えること。

―なるほど。

土屋:僕はほかに自慢できることはないけど、小林くんたちより何倍もレコーディングの現場でいい音を聴いてきた。それに、成功も失敗もしてきた。だから彼らにはもちろん失敗をさせたくないし、無駄もさせたくないと思う。ただ彼らはすごくいい感覚をもっていて、常に正しい方向を選ぶんですよ。

―経験値は足りないけど、常に正しい方向を選べるセンスを持って生まれている。

土屋:そうです。じゃなかったら、前作の『Rhapsody in Beauty』みたいな作品は絶対残せないですね。すごい感心しましたから。よく自分たちだけでやったなって。

―楽曲そのものに土屋さんのアドバイスはあったんですか?

小林:ありました。コードの使い方とか、細かいアドバイスをもらったんです。実際その通りにしてみたら、そのたびに扉が開くような経験をして。コードを押さえる指をちょっとずらすだけで、こんなに風景が変わるなんて、という感動を僕と高松は何度も味わったんです。そういうちょっとしたアドバイスから、大々的な方向転換のアドバイスまで、いろんなものがありました。昌巳さんのアドバイスを取り入れることで、楽曲の間口が広くなったのに深みが増したし、自分たちに新鮮な風を感じさせてくれた。今までポップなものを作るのに自分の中である種のてらいがあったところを、昌巳さんと関わっているとどんどん素直に、正直になっていくような感覚があったんです。憑きものが落ちていくような感じでした。「ああ、なんでこうじゃなきゃいけないって思い込んでたんだろう」とか「こんな考え方があったんだな」とか、そういうことがたくさんありましたね。

―ことの経緯から言って、これは訊かないわけにいかないんですけど、ブランキーを最初にプロデュースしたときと比べてどうでした?

土屋:ああ、今回の方が全然やりやすいです(笑)。だってブランキーは最初に会ったとき挨拶もできませんでしたからね。こちらから挨拶しても、「うー」とかしか言わない(笑)。ベンジーなんて話してる間、ずっとギター弾いてましたから。でもだからこそ信用できるというか。そこで変に社交辞令が言えて調子のいい奴は、だいたいつまんないですから。

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リリース情報

THE NOVEMBERS『Elegance』(CD)
THE NOVEMBERS
『Elegance』(CD)

2015年10月7日(水)発売
価格:2,052円(税込)
MERZ / MERZ-0044

1. クララ
2. 心一つ持ちきれないまま
3. きれいな海へ
4. 裸のミンク
5. エメラルド
6. 出る傷を探す血

イベント情報

THE NOVEMBERS
『10th Anniversary TOUR - Honeymoon -』

2015年11月2日(月)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST

出演:THE NOVEMBERS
2015年11月5日(木)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 心斎橋 JANUS
出演:THE NOVEMBERS

2015年11月6日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:京都府 磔磔
出演:THE NOVEMBERS

2015年11月8日(日)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:香川県 高松DIME
出演:
THE NOVEMBERS
cinema staff

THE NOVEMBERS×松江AZTiC canova presents
2015年11月10日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:島根県 松江 AZTIC canova
出演:
THE NOVEMBERS
cinema staff
Bird In A Cage(オープニングアクト)

2015年11月11日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:広島県 広島 CAVE-BE
出演:
THE NOVEMBERS
cinema staff

2015年11月13日(金)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:福岡県 BEAT STATION
出演:THE NOVEMBERS

2015年11月15日(日)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知県 名古屋 池下UPSET
出演:THE NOVEMBERS

2015年11月19日(木)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
出演:
THE NOVEMBERS
cinema staff

2015年11月20日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:石川県 金沢 van van V4
出演:
THE NOVEMBERS
cinema staff

2015年11月23日(月・祝)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:宮城県 仙台 enn 2nd
出演:THE NOVEMBERS

2015年11月28日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:北海道 札幌 COLONY
出演:THE NOVEMBERS

リリース情報

KA.F.KA『Fantome Noir』(CD)
KA.F.KA
『Fantome Noir』(CD)

2015年5月9日(土)発売
価格:2,160円(税込)
Mazzy Bunny Records / MBRC-9901

1. Jack The Midnight
2. The Prisoner
3. 夜明け前~ Before the Dawn ~
4. Labiera Beladen
5. Silent Party
6. Coyote

プロフィール

THE NOVEMBERS(ざ のーべんばーず)

2005年結成のオルタナティブロックバンド。2007年にUK PROJECTより1st EP『THE NOVEMBERS』でデビュー。2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、2014年には『FUJI ROCK FESTIVAL』に出演。小林祐介(Vo,Gt)はソロプロジェクト「Pale im Pelz」や、CHARA,yukihiro(L‘Arc~en~Ciel),Die(DIR EN GREY)のサポート、浅井健一と有松益男(Back Drop Bomb)とのROMEO's bloodでも活動。ケンゴマツモト(Gt)は、園子温のポエトリーリーディングセッションや映画『ラブ&ピース』にも出演。高松浩史(Ba)はLillies and Remainsのサポート、吉木諒祐(Dr)はYEN TOWN BANDやトクマルシューゴ率いるGellersのサポートなども行う。2015年10月7日にEP『Elegance』をリリース。

プロフィール

土屋昌巳(つちや まさみ)

静岡県富士市出身。1970年代からスタジオミュージシャンとして活動を開始、りりィのバックバンド「バイバイ・セッション・バンド」、大橋純子のバックバンド「美乃家セントラル・ステイション」を経て1978年に一風堂を結成し、1984年まで活動。イギリスのバンドJAPANのワールドツアーにサポートメンバーとして参加。それがきっかけで1985年には同じイギリスのバンドであるARCADIAのレコーディングにも参加している。1990年代はTHE WILLARD、BLANKEY JET CITY、マルコシアス・バンプのプロデュースを手掛ける。2013年6月より、Issay(DER ZIBET)、ウエノコウジ(the HIATUS、ex.TMGE)、宮上元克(ex.THE MAD CAPSULE MARKETS)、森岡賢 - (minus(-)、ex.ソフトバレエ)と共に、KA.F.KA.を結成。

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