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NOSIGNER×地元中小企業。ビジネスを変えるデザイン戦略って?

NOSIGNER×地元中小企業。ビジネスを変えるデザイン戦略って?

インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:豊島望

同じ言葉が通じる仲間同士だけで話し合えるのも心地いい。でも、違う世界の人たちと関わってお友達になることが、何かの局面で活きることもあるでしょうね。(大久保)

―逆に、それぞれ異領域の協働で戸惑った場面もありますか?

大久保:いつもは専門領域の数値などを基準に話をどんどん進めますが、今回は太刀川さんたちの「感性」に応えねばならない局面も多くありました。屏風が「立つ」といったときに、ただ自立すればいいかといえば、そうじゃない。その場での佇まいなども含めた相談になってきていますね。

太刀川:そこでは、完成品の立ち姿から、触れたときの感じまで含め、僕の「これでいける」基準と、ACMさん側の基準には違いが生じます。でも僕らはもともと、共にプロジェクトに関わる人々と領域を超えた「共通言語」をみつけていく仕事が多いんですよ。言葉を1つずつ合わせていく、というのかな。これはプロダクトデザインに限らず、ブランディングでも空間のリノベーションでも同じなんです。

『ヨコハマの家』の屏風の制作風景

―プロジェクトごとに異分野においてそれを行うのは、大変そうでもありますが……。

太刀川:でも、それが次につながるわけですから。今回も、僕はCFRPのド素人でした。そこでまず工場を見せていただき、何がどんな仕組みで生み出され、お金はいくらかかるのかなど、プロの大久保さんたちから学ばせてもらっています。これは自分の「新しい引き出し」になる。たとえるなら、ラーメン作りは素人だけど、最高のラーメン屋とその味は知っている状態。それが新しい何かを作る際、活きることは多いんです。特にNOSIGNERの仕事は、良い花粉を別のどこかに運んで受粉させるような面もあるから、なおさらです。それに、こういうことをたくさんやっていると運も上がる気がしますよ(笑)。

大久保:同じ言葉が通じる仲間同士だけで話し合えるのも心地いい。でも、違う世界の人たちと関わってお友達になることが、何かの局面で活きることもあるでしょうね。そして、それは狭い意味でのもの作りに限らない。

太刀川:『ヨコハマの家』は、そうした縁をつなぐプロジェクトという側面もあるのでは。それは僕ら参加者陣だけでなく、来場者がそこで気付きを得ることでも生まれ得る。僕は最初にCFRPについて教えてもらったときから、この素材はBtoCよりまずBtoBで広がっていくと感じました。だから今回、企業の方が見てくれることで何かが始まる可能性もゼロではないと思う。

大久保:我々も、いますぐCFRP製の屏風が広く売れるとは思いません(笑)。でも新しいものを生む際に、個人では用意できない開発費が、企業なら充分賄えるということもあり得るでしょう。その意味でも、多くの方に見ていただきたいですね。

左から:大久保茂、太刀川英輔

デザインにはまだまだ可能性があると言われる一方で、デザイナーはどうか? という問題意識は常にあります。(太刀川)

―展示が楽しみです。一期一会でなく、長期的視野でも異領域のコラボレーションが互いの可能性を広げ得るというお話はよく理解できました。他方で、こうした試みがどうすれば本当に発展するかを考えるとき何かモヤモヤするものがあるとすれば、それは双方に期待される役割がそれぞれ固定化された印象があるせいかもしれません。

太刀川:というと?

―いわば、クリエイターはとにかく「創造力」を、企業側はそれを実現する「技術」を持ち寄ればよしというか……。でもたとえば、企業であるACMさんも常に先進的な「クリエイション」に関わっているし、他方でNOSIGNERも企業体として活動しているわけですよね。そのあたりはどうお考えですか?

太刀川:関連しそうなことで言うと、デザインにはまだまだ可能性があると言われる一方で、デザイナーはどうか? という問題意識は常にあります。過去30年くらい、デザイナーは専門職として特化されて来た一方、発見や統合という役割からは遠ざかってきたようにも思う。でも、僕らの世代あたりから、そこに向き合おうとする人も増えています。そう考えると、企業の経営者とデザイナーってすごく似たところもあると思うんですね。

太刀川英輔

―太刀川さんはそのいずれでもある立場ですよね。

太刀川:デザイナー、あるいはクリエイターが何かの「形」を作る専門家だとして、そこには基準は様々でも「どんな形であるべきか」の総合的な思考があるはずですよね。それは、企業のトップが各部署の垣根を超えてその会社のあるべき形、進むべき形を決断するのとどこか似ている気もします。

―大久保さんは、いまの太刀川さんのお話をどんな風に感じますか?

大久保:ずっと昔には、私たちのような企業は、いわゆるデザイナーさんに対して悪口ばかり言っていたんですよ(苦笑)。「そんな形、作れるわけないだろう」とかね。それは、もの作りをする我々側が立場的にも強い時代だったこともあるし、実際とんでもないものを出してくるデザイナーさんも結構いましたからね。ただ最近は、太刀川さんのように私たちに「近づいてくれる」デザイナーも増えてきた、そんな実感はあります。

―表現者のエゴで無理難題をいうのではなく、実現への道を一緒に考えてくれるということ?

大久保:そうですね。話し合う中で「これは頑張ればできるかも」と思えてくると、こちらも意識が変わってくる。かつては「機能が出なけりゃモノじゃない」という感じで意匠を軽視する風潮もあったと思いますが、いまどきそれではビジネスにならないのも我々は理解していますから。

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イベント情報

『YOKOHAMA CREATIVE WEEK』

2015年11月4日(水)~11月8日(日)
会場:神奈川県 横浜 YCC ヨコハマ創造都市センター
時間:11:00~22:00(最終日は20:00まで)
料金:無料

プロフィール

太刀川英輔(たちかわ えいすけ)

NOSIGNER株式会社代表取締役。ソーシャルデザインイノベーションを生み出すことを理念に活動中。その手法は世界的にも評価され、Design for Asia Award大賞、PENTAWARDS PLATINUM、SDA 最優秀賞、DSA 空間デザイン優秀賞など国内外の主要なデザイン賞にて50以上の受賞を誇る。災害時に役立つデザインを共有する「OLIVE PROJECT」代表。内閣官房主催「クールジャパンムーブメント推進会議」コンセプトディレクターとして、クールジャパンミッション宣言「世界の課題をクリエイティブに解決する日本」の策定に貢献。

大久保茂(おおくぼ しげる)

株式会社ACM代表取締役社長。炭素繊維の優れた特性を生かし、設計から成形、機械加工、接合、組立までを一貫して行う。その用途はロケット衛星、自動車部品、半導体デバイスなど多岐に渡る。

さわだいっせい / ウエスギセイタ

YADOKARI株式会社 代表取締役。2012年「YADOKARI」始動。世界中の小さな家やミニマルライフ事例を紹介する「未来住まい方会議」を運営。2015年3月、250万円のスモールハウス「INSPIRATION」発表。全国の遊休不動産・空き家のリユース情報を扱う「休日不動産」、空き部屋の再活用シェアドミトリー「点と線」、北欧ヴィンテージ雑貨店「AURORA」を運営。また名建築の保全・再生の一環で黒川紀章設計「中銀カプセルタワー」の一室をサポーターとともにソーシャルリノベーションし、シェアオフィスとして運営。著書に「アイム・ミニマリスト(三栄書房 / 2015年11月末発売)」がある。

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