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人気漫画展が急増の理由とは?アートとしての漫画のポテンシャル

人気漫画展が急増の理由とは?アートとしての漫画のポテンシャル

『ルーヴル美術館特別展「ルーヴル No.9 ~漫画、9番目の芸術~」』
インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:越間有紀子 編集:佐々木鋼平

日本の漫画には、熾烈な競争を勝ち抜くことで獲得したクオリティーがあります。

―2003年から始まった「ルーヴル美術館BD(バンドデシネ)プロジェクト」は、世界中の漫画家・バンドデシネ作家に、ルーヴル美術館をテーマにした作品を委託しています。『ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~』展でも、10人のバンドデシネ作家とともに、荒木飛呂彦、松本大洋、谷口ジローなど、日本人の漫画家7人が紹介されていますが、このラインナップをどう見ていますか?

古永:文明が絶滅した遠い未来のルーヴル美術館を描く『氷河期』のニコラ・ド・クレシーから、オールカラーで描き切った谷口ジローの『千年の翼、百年の夢』まで、油の乗った選りすぐりの、個人的にも好きな作家ばかりです。ただ、本で読むのと展示されるのは、また別。『寄り目の犬 Le Chien qui louche』で参加したエティエンヌ・ダヴォドーのように、文学的なストーリーで悲喜こもごもの人間ドラマを見せるタイプの作家もいます。そんな作家の魅力がどのように展示されるのかは、とても興味がありますね。

『ルーヴル美術館特別展「ルーヴル No.9 ~漫画、9番目の芸術~」』チラシビジュアル
『ルーヴル美術館特別展「ルーヴル No.9 ~漫画、9番目の芸術~」』チラシビジュアル

「ルーヴル美術館BD(バンドデシネ)プロジェクト」で生まれた作品の書影
「ルーヴル美術館BD(バンドデシネ)プロジェクト」で生まれた作品の書影

―バンドデシネ作家と、日本の漫画家を並べると、それぞれに違った魅力があることがよくわかります。『文化庁メディア芸術祭』マンガ部門の審査委員も務める古永さんは、日本の漫画についてはどのように感じているのでしょうか?

古永:ルーヴル美術館が、バンドデシネ作家とともに、日本の漫画家を呼んでこういった展覧会をするということは、それだけ高い評価をされているということ。日本が持ち上げられることを、クールジャパン的に安易に喜びたいとは思いませんが、日本人として誇りを持っていいでしょう。どの漫画家も、バンドデシネ作家に引けをとらない画力を持っているし、話もおもしろい。総合的に日本の漫画は完成されていると思いますね。

―古永さんの言う「完成」とは?

古永:熾烈な競争を勝ち抜くことで獲得したクオリティーがあります。今年も『文化庁メディア芸術祭』の審査委員として、450冊あまりの漫画を読んだのですが、食品工場で働く話から、子どもの貧困、グルメ、野球まで、さまざまなテーマが描かれていることにあらためて驚きました。そんなたくさんの漫画が常に競争を繰り広げているわけですからね。

谷口ジロー『千年の翼、百年の夢』 ©TANIGUCHI Jiro – Futuropolis / musée du Louvre éditions(Shogakukan)
谷口ジロー『千年の翼、百年の夢』 ©TANIGUCHI Jiro – Futuropolis / musée du Louvre éditions(Shogakukan)

―逆に課題を感じる部分はありますか?

古永:基本はモノクロで描かれているので、絵柄が似てしまう傾向はあると思います。例えば、女性向け漫画には、似たような顔のイケメンが数多く登場するので「もうイケメンにお腹いっぱい」と言いながら審査していましたね(笑)。

―ジャンルとして完成されているからこそ、ある意味で飽和的な状況を迎えているのかもしれませんね。

古永:だから、バンドデシネのように多様で異質で描写の細かい作品や、逆にシンプルで素朴な絵柄で深い内容を表している作品が海外からやってきたりすると新鮮に感じて、高い評価を受けることもしばしばです。読者も、日本の漫画ばかりに閉じこもるのではなく、バンドデシネをはじめ海外漫画の魅力にも気づいてほしいと思います。

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イベント情報

『ルーヴル美術館特別展「ルーヴル No.9 ~漫画、9番目の芸術~」』

参加作家:
二コラ・ド・クレシー
マルク=アントワーヌ・マチュー
エリック・リベルジュ
ベルナール・イスレール(画) / ジャン=クロード・カリエール(作)
荒木飛呂彦
クリスティアン・デュリユー
ダヴィッド・プリュドム
エンキ・ビラル
エティエンヌ・ダヴォドー
フィリップ・デュピュイ(画) / ルー・ユイ・フォン(作)
谷口ジロー
松本大洋
五十嵐大介
坂本眞一
寺田克也
ヤマザキマリ

東京会場
2016年7月22日(金)~9月25日(日)
会場:東京都 六本木 森アーツセンターギャラリー
時間:10:00~20:00(入場は19:30まで)

大阪会場
2016年12月1日(木)~2017年1月29日(日)
会場:大阪府 グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル イベントラボ

プロフィール

古永真一(ふるなが しんいち)

1967年生まれ。パリ第七大学留学を経て早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。首都大学東京准教授(表象文化論)。著書に『ジョルジュ・バタイユ─供犠のヴィジョン』(早稲田大学出版部、2010)、『BD─第九の芸術』(未知谷、2010)、訳書にバタイユ『聖なる陰謀─アセファル資料集』(共訳、ちくま学芸文庫、2006)、ティエリ・グルンステン『線が顔になるとき─バンドデシネとグラフィックアート』(人文書院、2008)、フランソワ・スクイテン+ブノワ・ペータース『闇の国々』(共訳、小学館集英社プロダクション、2011)、セバスチャン・ロファ『アニメとプロパガンダ』(共訳、法政大学出版局、2011)、グルンステン=ペータース『テプフェール─マンガの発明』(共訳、法政大学出版局、2014)などがある。

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