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上間綾乃が歌わなければならない唄とは? 沖縄民謡の強さを語る

上間綾乃が歌わなければならない唄とは? 沖縄民謡の強さを語る

上間綾乃『タミノウタ〜伝えたい沖縄の唄』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:沼田学 編集:山元翔一、飯嶋藍子

民謡は「民の歌」であって、そんなに特別なものではないんです。

―メジャーデビュー以降、沖縄民謡を広く世に伝えるうえで、何か意識したりしたのですか?

上間:いや、沖縄の唄を、どう聴いてもらおうっていうことは、あまり考えてなくて……。私が吸収してきたものを、自分というフィルターを通して、どう表現したらいいのかは考えますけど、それは「沖縄民謡を届ける」っていうのとはちょっと違うんですよね。

それよりも前に、その唄に込めた普遍的な思いがあるというか。その思いって、全国共通、全世界共通なものだと私は思っているから、沖縄民謡をこねくりまわして、何かポップなものにしようとは、いっさい考えてないですね。

上間綾乃

―「民謡」というジャンルで考えると、それ自体をどう伝えるかということはかなり意識されるものだと思いました。

上間:私は型にはまるのが好きじゃなくて。もちろん、沖縄民謡が自分のルーツだと思ってやっていますけど、それ以前にひとりの人間、ひとりの歌手として生きているので、「民謡歌手の人」っていうふうに、あまり型にはめて見てもらいたくないなって。

それで、すごくもがいた時期もあったんですけど、今はもう、みんながそれでいいなら、いいんじゃない? っていう心の広さを、だんだんと持てるようになってきました(笑)。

―メジャーデビューから5年が経ち、上間さん自身のなかで、何か意識が変わったりしましたか?

上間:いえ、歌い始めのころから、思いを素直に乗せて歌うっていう意識やスタンスはずっと変わらないです。変わったのは、あちこち旅をして、いろんな人に出会って、いろんな経験をして……、まあ、大先輩からしたら、まだまだだよって言われるかもしれないけど、今の歳で、これだけ経験できたということは、本当に宝物だと思っています。

旅をしたからこそ、やっぱり離れた故郷がより愛おしくなりましたし、いいところも悪いところも見えてきて。だから、その思いの深さみたいなものは、変わってきていると思います。

上間綾乃

―なるほど。日本にはさまざまな民謡があるにもかかわらず、いわゆるポップミュージックのなかで存在感を放っているのは、唯一沖縄民謡という印象があります。それはなぜなんでしょう?

上間:何ででしょうね(笑)。沖縄民謡は新しい歌が常に生まれているので、それによるところはあると思います。流行歌のように、その時代に合った歌が作り続けられているんですよね。

さらに、バイオリンも、ギターも、キーボードも入れるし、いいものは何でも取り入れる懐の深さが沖縄民謡の特徴でもあって。それも含めて、新しい歌、新しい音楽が生まれ続けているっていうのが、やっぱりいちばんの理由じゃないですかね。

―いわゆる伝統芸能のような保存すべき文化ではなく、今も大衆に寄り添って更新され続けている文化であると。

上間:そうですね。楽しいときもつらいときも、常にそこには音楽がある。つらいときに音楽なんて、と思うかもしれないけど、つらいときこそ音楽の力って大きいんですよね。

それは戦後間もないころも、きっとそうで。三線を弾きながら、命のお別れをしましょうって練り歩いた人がいたり。つらいときこそ歌う、しかも明るい歌を歌うっていう。

―つらいときこそ、明るい歌の求心力が強まるのかもしれないですね。

上間:歌は息のようなものなんです。生きている人たちが呼吸するように、自然と歌い継いでいく。しかも、そこに自分が思ったことや感じたことを、どんどん入れていくことができる。今でも、みんなが集まったとき、そこに三線があれば、みんなで歌ったり踊ったりしますから。

もちろん、恥ずかしがり屋の人もいるし、踊りが下手な人もいますけど、そもそも民謡は、ショーとして披露するものではなく、庶民の歌――今回のアルバムタイトルではないけど、「民の歌」であって、そんなに特別なものではないんです。

「慰霊の日」のことを知らない方も本土にはいて、カルチャーショックを受けたりもするけど、“ひめゆりの唄”は歌っていきたい。

―さて、そのアルバム『タミノウタ』ですが、その大半は、既発曲も含めて、オーセンティックな沖縄民謡が収録された一枚になっています。この選曲については、いかがでしょう?

上間:まあ、沖縄民謡をやる上で、本当に避けては通れない曲ばかりですよね。なので、選曲はかなり悩んだんですけど……私がいちばん最初に絶対に入れたいと思ったのは、“PW無情”と“ひめゆりの唄”でした。

どちらも戦後間もないころの結構重い歌なので、どちらか一曲っていう意見もあったんですけど、これは二曲一緒に入れないといけないと思ったんですよね。

上間綾乃

―なぜ避けては通れないという思いがあったのでしょう?

上間:“PW無情”はすでに結構音源になっているんですけど、“ひめゆりの唄”は、あまり音源化されていないんですよね。楽しい歌ではないから、民謡居酒屋とかでもあまり歌われない。

でも、そういう歌こそ歌わないといけないし、伝えないといけないと思ったんです。“PW無情”の「PW」は、「Prisoner of War(戦争捕虜)」の略なんですけど、こういう過去があったということを、やっぱり忘れてはいけないと思うんですよね。

―なるほど。

上間:“ひめゆりの唄”は、CDのみならず、ライブでも歌っていきたいと思っている曲です。宮沢和史さんが、「沖縄の唄を後世に残したい」という思いから、沖縄の唄者250人に、それぞれ1曲ずつ歌ってもらうというプロジェクトをやっているのですが、そこで私も歌わせてもらったのが始まりで。「綾乃、何歌う?」って言われたときに、「私、“ひめゆりの唄”がいいです」って、その歌を録音させてもらったんです。ライブでも、6月になると歌っていますね。

―6月23日は、沖縄「慰霊の日」ですね。

上間:そう、「慰霊の日」のことを知らない方も本土にはたくさんいて、それにカルチャーショックを受けたりもするんですけど、そういうことも含めて、この曲は歌っていきたいです。ひめゆり学徒隊を描いた、すごく悲しい歌ですけど、私はラブソングを歌うような気持ちで歌っているんですよね。

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リリース情報

上間綾乃『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』
上間綾乃
『タミノウタ~伝えたい沖縄の唄』(CD)

2017年6月21日(水)発売
価格:3,024円(税込)
COCP-39983

1. 島唄 南の四季
2. 月ぬ美しゃ
3. 童神
4. 悲しくてやりきれない
5. PW無情
6. ひめゆりの唄
7. さとうきび畑 ウチナーグチver.
8. 安里屋ユンタ
9. 道端三世相~創作舞踊「辻山」より
10. 夢しじく
11. 恋ぬ花
12. サーサー節
13. てぃんさぐぬ花
14. ヒヤミカチ節
15. デンサー節
16. えんどうの花

プロフィール

上間綾乃
上間綾乃(うえま あやの)

沖縄県生まれ。7歳から唄三線を習い始め、19歳で琉球國民謡協会の教師免許を取得。2017年、師範免許取得。沖縄民謡で培った声をベースに、聴く者の心を揺さぶってやまない深い表現力の圧倒的なステージで、東京、大阪をはじめとする全国各地でライブを行なう。2012年アルバム『唄者』でメジャーデビュー。翌2013年6月シングル『ソランジュ』を発売、同年『FUJI ROCK FESTIVAL'13』に初出場。同年9月に2ndアルバム『ニライカナイ』をリリース。2014年3rdアルバム『はじめての海』をリリースし、『情熱大陸SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'14』へ参加。2015年には、戦後70年という節目の年にCD『さとうきび畑~ウチナーグチ~』(緑の惑星プロジェクトより発売)に参加。ブルーノート・ビルボード系列のライブハウスでの東名阪ツアーも成功を収め、2016年、自身が作詞作曲を手がけた曲も収録したアルバム『魂うた』(まぶいうた)発売。海外アーティストとのコラボレーションも行うなど、活動の幅を広げている。

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