
チャットモンチーに訊く「完結」の理由。そして今後の展望は?
チャットモンチー『誕生』- インタビュー・テキスト
- 矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
- 撮影:高橋一生(sui sui duck)
チャットモンチー、最後のインタビュー取材。その日は、日射しが眩しい、湿気のない晴れの日だった。そして取材自体も、しんみりすることなく、カラッとした雰囲気のなかで進んでいった。
思えば、チャットモンチーはいつだって、カラッとした表情で明るい日射しを差し込んでくれる存在だった。「恋すること、失恋することは怖くないよ」「ときに涙したっていいんだよ」「変化することは楽しいよ」ーーそんなことを、オルタナティブでポップな音楽に乗せて届け続けてくれた。そして最後は、「なにかを終わらせることは怖くないよ。たとえそれが自分の人生を注ぎ込んできたものであったとしても」ということを教えてくれたように思う。
6月27日にリリースされる最後のアルバム『誕生』、7月4日の武道館ライブ、そして7月21、22日の主催フェスをもって、チャットモンチーは「完結」する。デビューから13年、結成から18年、チャットモンチーが続いてきた理由、そして「完結」を決意した理由を訊いた。これまでの記事でも、チャットモンチーがいかにポジティブな生き様を示してくれる存在であるかを伝えてきたが、最後の記事でも、2人のポジティブさをお届けすることになる。これからも、チャットモンチーが生んだ曲と佇まいは、日射しのような存在として残り続ける。
自分たちのやりたいことを追っていくのだとすれば、もうチャットモンチーとは名乗れない、という想いもありました。(橋本)
—CINRA.NETでは、全国ツアー『チャットモンチーと機械仕掛けの秘密基地ツアー2017』が始まって、ライブを4本終えた頃にインタビューをさせてもらっていました(2017年4月、インタビュー記事)。そのときは、デビュー10周年を超えてもなお音楽の奥深さを探究して楽しんでいる2人の様子を捉えていたのですが、「完結」の発表コメントによると、そのツアー中に今回の決断を考え始めたそうですね(「完結」発表コメント)。
橋本(Gt,Vo,Synth):10周年の武道館ライブ(2015年11月に開催)と初めての『こなそんフェス』(『チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス 2016~みな、おいでなしてよ!~』、2016年2月に開催)が終わったあと、燃え尽き症候群みたいになって。次は2人体制でやりたいとは思っていたけど、どうしたらいいかわからない状況があったんです。で、打ち込みを導入した「チャットモンチー・メカ」としてやってみようとなって、あのツアーを回って。ちゃんと形にできてツアーを回れたことはよかったなと思っています。
福岡(Ba,Dr,Cho,Synth,Per,etc):うん、形に持っていけたのは嬉しかったです。
—アレンジも打ち込み作業も演奏も、なにもかもが新しい挑戦で、ツアーの前日までは「転覆しかけの船みたい(笑)」だったとおっしゃっていましたよね。思っていた形に持っていけたのに、それを続けていこうとならなかったのは、なぜでしょう?
福岡:やり切っちゃったんですよね。ツアーの3、4本目くらいのときに、「できた!」ってホッとしちゃって。バンドのルーティンとして、作品をリリースして、ツアー中に次の体制とかアルバムの方向性を決めてきたんですけど、そのときはメカバージョンの作品を出してないのにツアーでいきなりやってみるという、言ったらワガママにやりたいことをやらせてもらっていて、「もうこれで全部やったかな」という感じがしたんです。そこで、次の手はチャットモンチーという名前を終わらせるのがいいのかもしれないねとなりました。
—「男陣」「乙女団」をもう一度やることや、他にサポートメンバーを入れてバンド編成でやろうという気持ちにならなかったのは、なぜですか?
福岡:やっぱり、10周年の武道館が大きかったかな。いろいろ見えたんです。最大6人で演奏したんですけど、2ピースも、3ピースも、4ピースも、6ピースも全部やっちゃって。そのときに、夢というか、音楽的な願いが全部叶っちゃった。
福岡:でも、そのときはまだ2人でやりたくて。ただ、2人編成をやり始めたときみたいなゴリゴリの2ピースは、もう無理やなって。なにか2人でやりたい、まだやってないことないかな、と思っていき着いたのが「チャットモンチー・メカ」だったんです。
2人編成になったときのライブ映像(2013年)
—「まだやってないこと」を求め続けるのが、チャットモンチーらしいですよね。
福岡:ずっと同じことをやるのもできるけど、楽しくないというか。見たことのない景色が見たくなるんですよね。
—でも、その「チャットモンチーらしさ」があるからこそ、リスナーにとっては「もう、チャットモンチーはなにをしてもOK。どういう変化がきても受け入れるし、それこそを楽しみたい」という状態になっていたと思うんです。それでも、「チャットモンチー」という名前を脱いだほうが新しいところへいけると思ったのでしょうか?
橋本:これ以上自分たちのやりたいことを追っていくのだとすれば、名前がチャットモンチーではいけない、もうチャットモンチーとは名乗れない、という想いもありました。名乗っているからには、やっぱり、ずっとチャットモンチーを聴いてくれてる人たちのことが頭によぎるし。「もう一回別の感じで」というのはもうないなって、ツアーでわかったんです。それに、変身(編成を変える)するたびに自分たちの曲をアレンジし直してきて、「もう、曲も本望やろ」って。
—ツアー中、4月の札幌と帯広公演、6月の東京公演は、橋本さんの急性声帯炎および音声障害で延期になりましたよね。それは「完結」を選んだ要因のひとつにつながっていたりしますか?
橋本:自分では、つながっているかどうかわからなくて……でも、声のそういうことの8割は心からくるという話を聞いて。今思えば、そうとは言い切れないけど……どうなんだろうなあ。
リリース情報

- チャットモンチー
『誕生』初回生産限定盤(CD) -
2018年6月27日(水)発売
価格:3,240円(税込)
KSCL-30062/3
※三方背ケース、ハードカバーブック仕様1. CHATMONCHY MECHA
2. たったさっきから3000年までの話
3. the key
4. クッキング・ララ feat. DJみそしるとMCごはん
5. 裸足の街のスター
6. 砂鉄
7. びろうど

- チャットモンチー
『誕生』通常盤(CD) -
2018年6月27日(水)発売
価格:2,592円(税込)
KSCL-300641. CHATMONCHY MECHA
2. たったさっきから3000年までの話
3. the key
4. クッキング・ララ feat. DJみそしるとMCごはん
5. 裸足の街のスター
6. 砂鉄
7. びろうど

- チャットモンチー
『たったさっきから3000年までの話』(7インチアナログ) -
2018年6月6日(水)発売
価格:1,512円(税込)
KSKL-8534
イベント情報
- 『チャットモンチー完結展』
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2018年6月27日(水)~7月10日(火)
会場:東京都 渋谷 GALLERY X BY PARCO
時間:11:00~20:00(最終日は18:00まで)
料金:500円
プロフィール

- チャットモンチー
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橋本絵莉子(Guitar, Vocals, Synthesizer)・福岡晃子(Bass, Drums, Chorus, Synthesizer, Percussion etc.)。2000年徳島で結成。2005年メジャーデビュー。2006年リリースのSG『シャングリラ』がヒット。2007年リリースの2nd AL『生命力』に続き、2009年リリースの3rd AL『告白』は、オリコン初登場2位を記録。2008年には、初の日本武道館公演を開催。メジャーデビューから2年4か月での日本武道館2days公演は、女性ロックバンドとしては史上最短(※当時)で、現在のロックシーンを代表するバンドへと成長を遂げる。2011年にDr.高橋久美子の脱退により、橋本、福岡の2ピース体制となる。2014年には、サポートメンバーを迎えた体制での活動を発表し、6th AL『共鳴』を15年にリリース。そしてデビュー10周年の日本武道館公演を行い、2016年には郷里徳島で主催フェスを2daysで初開催。大成功を収めた。デュオ「橋本絵莉子波多野裕文」(橋本)やユニット「くもゆき」(福岡)での活動、CM歌唱(橋本)や徳島での多目的スペースOLUYOの運営(福岡)など、それぞれ多彩な活動を行っている。2017年11月23日、2018年7月をもって活動を「完結」させることを発表した。2018年6月27日に、ラストアルバム『誕生』をリリースする。