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映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る

映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る

『SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2019』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:伊藤惇 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
山田智和

もし全てを言葉で伝えることができたら、そもそも映像を作る意味なんてないと思う。

—もうひとつ、山田さんの映像のなかには「ダンス」のシーンがたくさん登場しますよね。「ストーリー性」と同じくらい、山田さんの作家性の重要な部分を占めているような気がして。今、この瞬間の連続が人生だとしたら、ダンスこそが「今、この瞬間」の象徴なのかなと思いました。

山田:振り付けが入って、バシっと決めるダンスも美しいと思うんですけど、僕が撮りたいのはもっと刹那的なものというか。その人の身体から湧き上がってくるようなダンスなんですよね。水曜日のカンパネラの“ユニコ”(2017年)というビデオを撮ったときに、そのことをコムアイさんから気づかせてもらってから、Nulbarich“VOICE”まで一貫していると思います。この両作品はいわゆるダンスビデオじゃないんですよね、僕のなかで。

山田:昨年は「水」がテーマと言いましたが、今は人の「顔」に興味があります。人にちゃんと向き合いたいというか。ただし、そこでもスタイルが邪魔しないように気をつけたい。

たとえばフィルムで撮影すると、一瞬でそこに「ノスタルジック」という情報が書き込まれてしまいますよね。そこに必然性や必要性があるのかどうか、わからないままやってしまうのは表層的でしかないと思うんです。もしかしたら、光すら邪魔になるかもしれない。

—「顔」といえば、2015年に公開されたサカナクション“years”の山口さんの表情も、素晴らしかったですよね。変わりゆく東京への複雑な思いみたいなものが映し出されていて。

山田:あのビデオを撮ったのは2015年で、東京が2020年に向けてどう変わっていくのかという議論の渦中で。都市開発が強制的にはじめられて、渋谷も豊洲も東京駅も、すべて工事中みたいな感じだった。東京が物理的に「壊れた状態」で、どっちに進むのだろう? いい未来なのか、それとも悪い未来なのか? というそのときの都市の感情を、ビジュアル化した作品だったんです。

山田:水曜日のカンパネラの“ツチノコ”(2016年)も同じで。コムアイさんが聖火ランナーとして、2020年までになくなってしまう東京の景色を回りながら弔っていくというテーマでした。

—実は、2015年の暮れに米津さんにインタビューしたとき、彼が今の山田さんと同じようなことをおっしゃっていたんです。

今住んでいるのは、とても不思議な街なんです。オリンピックのための再開発が進んでいて真新しい。でも建設途中のビルって、コンクリートが剥きだしで墓標のようにも見えるんですよ。オリンピックに向けて再開発を進めている、いわば希望に満ちた場所なのに、それが廃虚に見えるっていうのは、なんだかすごく不思議だなあと。(トレンドニュースより)

—そのときは面識なかったであろう2人が、こうして出会って作品を一緒に作っているのは、感慨深いものがあります。

山田:たしかにそうですね。僕が作品を作るとき、なぜそこで撮るのか? 東京で撮る必要はどこにあるのか? という「自分たちのストーリー」としての根拠が絶対に必要で。それがあるのとないのとでは、説得力が全然違うんです。「自分がどの位置から社会を見ているか?」というのは、必然的にロケ地などを選ぶ判断基準やテーマを作る基準になりやすいですから。作品作りは絶えず政治的なことにつながるんだと思います。

ただ、今はそのテーマで撮ろうとは思わないですね。2018年も東京を舞台にたくさん作品を撮りましたが、もう少し前を向いていきたいっていう姿勢になっています。今は、憂鬱な空気が街にも表現にも過剰に美化されてしまっていて、本当にそれでいいのかって自分は思う。向き合うっていうことは、「私、こんなに傷ついてます」ということじゃなくて、「それでも進んでいく」っていう姿勢なんじゃないかと。それは音楽っていうタイムラインとリンクしたときにとても相性がいいんだと思います。

—最後に、これからどんな映像を撮っていきたいかを聞かせてもらえますか?

山田:僕が映像をやる理由は、「言葉にしなくていい感情を表現できる」ということ。見えないものを見せたり、見ようとしたり、言葉にならない気持ちを表現したいと常に思っていて。もし全てを言葉で伝えることができたら、そもそも映像を作る意味なんてないと思う。

言葉で言うよりも映像で示したいというか、映像ならギリギリ伝わることもあるんじゃないかって信じているんです。それが、伝わるのであれば、メディアはなんでもいいと思っていて、「コマーシャルやMVはアートじゃない」とか言い訳せずに、できれば全てに愛を注ぎたい。その連続の先で出会う人々や表現を今から待ち望んでいます。

2019年3月15日(金)25:00~26:00、スペースシャワーTVにて山田智和監督の作品を紹介した特別番組が放映される
2019年3月15日(金)25:00~26:00、スペースシャワーTVにて山田智和監督の作品を紹介した特別番組が放映される(サイトを見る
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番組情報

『SPACE SHOWER MUSIC AWARDS 2019 BEST VIDEO DIRECTOR作品集 -山田智和-』

2019年3月15日(金)25:00~26:00にスペースシャワーTVで放送
※3月25日(月)24:00~25:00にリピート放送

プロフィール

山田智和(やまだ ともかず)

映画監督、映像作家。東京都出身。クリエイティブチームTokyo Filmを主宰、2015年よりCAVIARに所属。2013年、WIRED Creative Huck Awardにてグランプリ受賞、2014年、ニューヨークフェスティバルにて銀賞受賞。水曜日のカンパネラやサカナクションらの人気アーティストの映像作品を監督し、映画やTVCM、ドラマと多岐にわたって演出を手がける。シネマティックな演出と現代都市論をモチーフとした映像表現が特色。

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