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BLUE ENCOUNT×住野よる 今の自分が痛い過去の意味を変える

BLUE ENCOUNT×住野よる 今の自分が痛い過去の意味を変える

BLUE ENCOUNT『ユメミグサ』
インタビュー・テキスト
矢島大地
撮影:新保勇樹 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

いろんな雑念を抱えて、いろんな現実も知りながら自分を形成していく過程にこそ人間の美しさがあると思う。(住野)

住野:エンディング自体は突き放したような感覚があるけど、田端楓も含めた誰しもが持っている若さとか青さを突き放さないで終われる曲なんですよね。見る人を孤独にしないでくれる曲で本当によかったなって。しかも、小説原作の映画に提供してくれる曲に<五線譜や言葉じゃ決して伝えられぬほどの>っていう歌詞を乗っけてくれるところ……そこにグッときたんですよ。

田邊:ああ、そこは今回新しく書いた歌詞なんですよ。それも、理屈をつけて目を伏せていた自分の存在に気づかせてもらったことが表れてる気がしていて。……それこそ高校時代の話になるけど、目の前の現実に対する言い訳をしたり、自分を強く見せるための虚勢を張ったりしてるばかりだったからこそ、本当の自分をさらけ出せる音楽と歌があってよかったなって改めて思えたんですよ。音楽と歌がなかったらって思うと、あのまま俺はどうなってたんだって震えがくるくらい(笑)。

音楽の中では、言い訳じゃなくて本当の自分と向き合うしかなかったから。音楽があったからこうして嬉しい出会いを経験できたわけだし、今の自分を誇らしいと思えるようになった。それによって、あの時はあの時で必死に生きようとしてたんだなって思えるようになったんですよ。この映画のエンディングがまさにそうであるように、この先をどうしていくかで過去の捉え方も変わっていくんだなって。

左から:田邊駿一、江口雄也

住野:ああ……僕自身が『青くて痛くて脆い』で描きたかったこととも重なるなと思ったんですけど、人間に対して「ピュアなことだけが美しさではないよね」っていう意識があって。たとえば『君の膵臓をたべたい』の登場人物である「桜良」に対して、彼女の純粋さを美しいと言っていただくことが多いんですけど、僕個人としては、桜良も同様に、いろんな雑念を抱えて、いろんな現実も知りながら自分を形成していく過程にこそ人間の美しさがあると思うんです。それだけの必死さとか、泥臭さがそこにあるわけだから。

『青くて痛くて脆い』で言えば、理想を掲げるだけですべてが叶うと思っていた頃の秋好のことを、楓は「美しかった」って思い込むわけですけど……本当はやりたくないと思っていたことも引き受けていった秋好の姿こそが美しさだなって思うところがあるんですよ。

杉咲花演じる秋好 / 『青くて痛くて脆い』 ©2020「青くて痛くて脆い」製作委員会
杉咲花演じる秋好 / 『青くて痛くて脆い』 ©2020「青くて痛くて脆い」製作委員会

江口:人って、何も知らない無垢さを振り返って「あの頃は美しかった」っていう気持ちを抱えがちだと思うんですけど、だけど言うまでもなく、過去を見つめた上でこの先をどう生きていくのかに向き合わないと、どこにも行けないから。さっきの「変わらないところと変わったところ」っていう話にも通ずるけど、自分の希望や理想を変えないために、いろんなことを知って変わっていくものですよね。

―『SICK(S)』(2019年)以降、プロデューサーの方を迎えながら音楽を刷新してきたブルエンの歩みとも通ずる話だと感じます。江口くんのギターは弾き倒すだけじゃなくどっしりとした響きを軸にしているし、田邊くんの歌も、大きなメロディをゆったりと歌い上げている。変わらないものだけを認識することでむしろ自由に変化していけるんだっていうことが、音楽として表現されていると感じます。

BLUE ENCOUNT『SICK(S)』を聴く(Apple Musicはこちら

田邊:本当にそうだね。たとえば『青くて痛くて脆い』の原作の主題歌にしていただいた“もっと光を”を作った時を思い返すと……メジャーデビュー直前の右も左も分からない感覚や必死さがそのまま<もっと光を>っていう言葉になって、メロディと一緒に出てきたのね。で、この後にどんな歌が出てくるかなと思って書いていったら、結局は<もっと光が君に届くように>っていう歌になって。当時は<届くように>っていう願いだけしか書けなかったし、光は誰もくれないから自分が進むしかないっていうことまでしか歌えなくて。「全然完結しねえ!」って自分で突っ込んじゃうくらいでさ(笑)。きっと「これからもっと大変なことがあるだろう」っていう気持ちが、あの曲を完結させなかったと思うんだけど……あそこで完結しなかったからこそ、その先をどう歩むのかっていうことを大事にしてこられたと思うんだよね。

その上で、2020年のBLUE ENCOUNTとして『青くて痛くて脆い』の主題歌をやらせていただくことになった時は、“もっと光を”の続編を書くつもりは一切なくて。今の自分たちをそのまま表現することが、結果として「この先」を描き出すことになるんだと思ったんだよね。だからこそ、猪突猛進とはちょっと違う、いろんなことを知ってきた上での優しさを感じる曲にできたんだろうなって思う。そういう意味でもここまでの歩みを思い出させてくれる曲だし、ここまで自分たちの歩みを振り返らせてくれた『青くて痛くて脆い』に出会えて本当によかったと思いますね。

左から:江口雄也、田邊駿一

住野:こちらこそ、本当にありがとうございます。これは最初に質問されたことに戻っちゃうんですけど、僕はなぜブルエンのことが好きなんだろうって考えながら今日は話してて……“もっと光を”の話がまさにそうですけど、自分はいつまでも終わらない話を書こうとしてるし、いつまでも終わらないものが好きなんだなって思いました。だからブルエンが好きなんだろうなって。

いろんなものに立ち向かいながら、いつでも目線の先に進もうとしているところ。いつまで経っても終わらない、「自分」っていうものを見つめ続けている姿を見ると、自分もこの世界に希望を見出せる気がします。僕らに見えるのは物語に描かれている部分だけだけど、描かれていないところで登場人物の人生は続いていくんですよ。むしろ描かれていない部分に想いを馳せることが、その人の人生を大事にするっていうことで。「これで終わり」って思っちゃいけないし、それは自分の人生に対しても毎回思うんです。

田邊:ああ……それこそが、BLUE ENCOUNTの「変わらないところ」なのかもしれない。僕らって、「よく頑張ったな」っていう意味のエールを歌ったことは全然ないんですよ。むしろ、よく頑張ったなって思える1日があったとしても、この先まだまだ続いていくんだっていうことを歌ってきて。今日で終わってもいいと思うのは、今日を全力でやれれば明日がもっといい日になるって信じたいからで。だからこそ、生きてる限りは「ここで終わりじゃない」って歌い続けたいですね。

左から:江口雄也、田邊駿一
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リリース情報

BLUE ENCOUNT
『ユメミグサ』初回生産限定盤(CD+DVD)

2020年9月2日(水)発売
価格:1,950円(税込)
KSCL-3255~3256

[CD]
1. ユメミグサ
2. 1%

[DVD]
2019月11月21日にZepp Tokyoにて行われた<BLUE ENCOUNT TOUR2019「B.E. with YOU>のライブパフォーマンスとツアードキュメンタリーを収録
1. #YOLO
2. HALO
3. 声
4. ポラリス
5. HANDS
6. Making of TOUR2019「B.E. with YOU」

BLUE ENCOUNT
『ユメミグサ』通常盤(CD)

2020年9月2日(水)発売
価格:1,250円(税込)
KSCL-3257

作品情報

『青くて痛くて脆い』
『青くて痛くて脆い』

全国東宝系にて公開中

監督:狩山俊輔
脚本:杉原憲明
原作:住野よる『青くて痛くて脆い』(角川文庫 / KADOKAWA刊)
主題歌:BLUE ENCOUNT“ユメミグサ”
出演:
吉沢亮
杉咲花
岡山天音
松本穂香
清水尋也
森七菜
茅島みずき
光石研
柄本佑
配給:東宝

プロフィール

BLUE ENCOUNT(ぶるー えんかうんと)

田邊駿一(Vo,Gt)、辻村勇太(Ba)、高村佳秀(Dr)、江口雄也(Gt)よる4ピースロックバンド。2004年に活動開始。2014年9月にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。2015年7月に1stフルアルバム『≒』(ニアリーイコール)をリリースし、2016年10月には日本武道館公演を開催。2017年1月には2ndフルアルバム『THE END』を、2018年3月に3rdフルアルバム『VECTOR』をリリース。最新シングルは、2020年9月2日リリースの『ユメミグサ』。

住野よる(すみの よる)

高校時代より執筆活動を開始。小説投稿サイト「小説家になろう」にアップした『君の膵臓がたべたい』(初出時は『君の膵臓を食べたい』)が編集者の目にとまり、2015年6月に同作で作家デビュー。著書に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』『青くて痛くて脆い』『麦本三歩の好きなもの』がある。

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