インタビュー

多様化するK-POPコンテンツとファンコミュニティ、その魅力と課題を考察

多様化するK-POPコンテンツとファンコミュニティ、その魅力と課題を考察

インタビュー・テキスト
後藤美波(CINRA.NET編集部)

女性トレーナーの存在など、選考過程の見せ方に変化も

―『Nizi Project』の選考過程では、人柄だけではなく体重管理についても指摘がありましたね。

菅原:参加者に対し、アーティストとして日々行なう自己管理の大切さを説いていた場面ですよね。「自己管理」という言葉は実際に練習生やアイドルの口からよく聞かれますが、要はダイエットを指して用いられている以上、権力ある指導者からのメッセージにはもっと繊細な配慮が必要ですし、改善の余地があるように思います。所属事務所にしろ、ファンにしろ、アイドルに「あるべき姿」を要求する立場にいる側は、本当に慎重にならなくてはいけない、大きな責任の伴う事柄であるように感じました。

松本:ビジュアルやパフォーマンススキルは男女問わずアイドル文化の肝ですし、一概に否定できるものではありません。とはいえ、それが心身の健康とのトレードオフになってしまうのなら、ファンとしても明確にノーと言う必要があると思います。

現状、演者の健康を守るかどうかの選択を行なえるのは現実的には事務所だけですし、その選択を迫りやすい立場にいるのはファンですよね。ファンでない人たちよりもずっとアイドルの外見・体型・練習量をよく見ていて、そこに高い要求を持っているからこそ、それ以上にアイドルの健康や権利を望むという姿勢を事務所に見せるべきだと思います。消費者が求めた分だけ業界が提供するという構図を、ビジネスやエンターテインメントだからと開き直ったときに、犠牲になるのは常に「商品」である演者なわけですから。

『Nizi Project』で結成されたNiziU
『Nizi Project』で結成されたNiziU

―『Nizi Project』の演出や仕組みで、ここが良かったというところはありましたか?

松本:女性トレーナーの方々の存在感が大きかったのが良かったです。男性プロデューサーのJ.Y. Parkの一存ですべてが決まるわけではなく、実際に練習生と長い時間を過ごしているトレーナーの意見もしっかり審査に反映されるというのは良いメッセージですし、指導風景もスポ根的だったり高圧的だったりすることがなく、メンバーへの愛情やリスペクトが伝わってきましたね。

菅原:そこは『SIXTEEN』では明確に示されていなかった姿勢ですよね。選考過程の見せ方にアップデートがあったように、アイドルの置かれる立場そのものにも変化が現れていってほしいという思いはあります。

私は連載の一番最初の記事でもTWICEの“Feel Special”にある美しい側面について書きましたし、いちファンとしてもそう受け取っていますが、曲を楽しむと同時に彼女たちがなぜ痛みを背負ってしまったかという部分についても意識を持っていかなければいけない部分はあるんじゃないかなとは思っています(参考:笑顔だけではないTWICEの物語。“Feel Special”が歌う痛みと愛)。

―『Nizi Project』で結成されたNiziUのプレデビュー作『Make you happy』についてはいかがでしたか?

松本:タイトル曲の韓国語バージョンと日本語バージョンでの歌詞の印象の違いに少し驚きました。日本語版は言葉のチョイスもチャーミングな感じでしたが、韓国語版はメッセージをストレートに伝える力強さがあって。意図的なものなのかはわかりませんが、でもこのチャーミングさはあえて日本人だけでグループをつくった意味にも繋がるのかなと思うので、ステレオタイプな「カワイイ」に留まらない表現が11月のデビュー曲で見れるのを楽しみにしています。

6月にリリースされたNiziU“Make you happy“MV。7月には韓国語バージョンも公開された

菅原:個人的には、TWICEの日本語曲とNiziUの曲の棲み分けがどうなるかというところが気になっています。グループとしてのカラーは今後確立されていくと思いますが、それが作品にどう反映されていくのかも注目したいですし、「NiziUにしか歌えないね」「これぞ彼女たち」というような楽曲が生まれていくことを期待しています。

松本:K-POPファンではなかった層にも広く受容されているところも面白いですよね。『Nizi Project』は韓国合宿編に入ったあたりから、日本のアイドルやアイドルファンも続々見始めていた印象があります。『Nizi Project』を見てアイドルを目指す世代が出てきたら、日本のシーンにも変化がありそうだなと期待しています。

Page 2
前へ 次へ

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

BIM“Wink”

BIMの新作『NOT BUSY』より“Wink”の映像が公開。ゆるめに結んだネクタイは軽妙洒脱でも、背伸びはしない。どこか冴えない繰り返しのなかで<だって俺らの本番はきっとこれから>と、吹っ切れなさもそのままラップして次へ。BIMの現在進行形のかっこよさと人懐っこさがトレースされたようなGIFアニメが最高にチャーミング。(山元)

  1. Ken Yokoyama、個の力強さが問われる時代に示す音楽家の矜持 1

    Ken Yokoyama、個の力強さが問われる時代に示す音楽家の矜持

  2. 三浦春馬が日本の未来を切り開いた五代友厚役 映画『天外者』12月公開 2

    三浦春馬が日本の未来を切り開いた五代友厚役 映画『天外者』12月公開

  3. 相葉雅紀と松本潤が新聞の見開き広告で向かい合う オリジナル壁紙も 3

    相葉雅紀と松本潤が新聞の見開き広告で向かい合う オリジナル壁紙も

  4. 『保健教師アン・ウニョン』Netflixで配信。キャストや見どころ紹介 4

    『保健教師アン・ウニョン』Netflixで配信。キャストや見どころ紹介

  5. STUTSがマイクをとる 数々の音楽家から受けた刺激と経験を武器に 5

    STUTSがマイクをとる 数々の音楽家から受けた刺激と経験を武器に

  6. 機材で聴くヒップホップ。90年代の音を支えたSP-1200 6

    機材で聴くヒップホップ。90年代の音を支えたSP-1200

  7. 伊藤万理華が主演、青春SF映画『サマーフィルムにのって』2021年公開 7

    伊藤万理華が主演、青春SF映画『サマーフィルムにのって』2021年公開

  8. MONOEYES、新アルバム『Between the Black and Gray』本日リリース&PV公開 8

    MONOEYES、新アルバム『Between the Black and Gray』本日リリース&PV公開

  9. 安斉かれんというアーティスト。『M』で注目された21歳の真の顔 9

    安斉かれんというアーティスト。『M』で注目された21歳の真の顔

  10. Dos Monosからの挑戦状に、自由な発想で表現。リミックス座談会 10

    Dos Monosからの挑戦状に、自由な発想で表現。リミックス座談会