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Homecomings福富が語る原点 寂しさを手放さず、優しさで戦う

Homecomings福富が語る原点 寂しさを手放さず、優しさで戦う

Homecomings『MOVING DAYS』
インタビュー・テキスト
村尾泰郎
編集:佐伯享介(CINRA.NET編集部)

グラフィックノベルや『ちびまる子ちゃん』に対する愛情について

―『MOVING DAYS』収録曲“Summer Reading”はティリー・ウォルデンのグラフィックノベル『スピン』(2017年発表。日本語版は2018年に河出書房新社から刊行)から影響を受けているそうですね。『スピン』はLGBTの少女の物語で、『ハーフ・オブ・イット』に通じる世界がありますが、福富さんはグラフィックノベルもよく読まれていますね。

福富:大学の頃、『ゴーストワールド』っていう映画の原作を読んだのがきっかけで好きになったんです。新しい世界を発見した! っていう感じでしたね。USインディーを聴き始めたときみたいな感覚というか。『タンタンの冒険』に通じるものもあると思ったんです。カラフルな色彩とか線の太さとか。

Homecomings“Summer Reading”を聴く(Apple Musicはこちら

『ゴーストワールド』予告編。2001年公開。テリー・ツワイゴフ監督、ジョン・マルコヴィッチ製作による作品。原作はダニエル・クロウズ。日本語版は山田祐史・PRESSPOP LAB訳により、2011年にPRESSPOPより刊行

―日本の漫画とは違った世界ですよね。The Sea and Cakeのアーチャー・プレヴィットがコミックを描いていたりして、アメリカのグラフィックノベルやコミックはUSインディーシーンと実際につながりもありますし。

福富:Eelsのジャケットをエイドリアン・トミネが手掛けてたりね。

エイドリアン・トミネがアートワークを手掛けたEelsのアルバム『Electro-Shock Blues』より

福富:トミネには『キリング・アンド・ダイング』っていう作品集があるんですけど、そのなかに吃音の女の子の話があって、彼女はコメディアンになろうとするんです。その話を読んだとき、自分の過去と自分の好きなものがつながった気がしました。だからすごく好きな作品なんですよね。

エイドリアン・トミネ『キリング・アンド・ダイング』表紙(長澤あかね訳、国書刊行会刊行)
エイドリアン・トミネ『キリング・アンド・ダイング』表紙(長澤あかね訳、国書刊行会刊行 / サイトで見る

―漫画でいうと、“Continue”という曲はさくらももこさんが亡くなった知らせを聞いて描いた曲だとか。

福富:テレビアニメの『ちびまる子ちゃん』は昔からずっと見てたんです。さくらさんは2018年に亡くなったんですけど、その年の春くらいにAmazon Prime VideoやNetflixで『ちびまる子ちゃん』が見られるようになったんですよね。それを当時の恋人と見てて、最高やったんですよ。それで昔読んでたエッセイとかを実家から送ってもらって読み直したりもしてたんです。

Homecomings“Continue”を聴く(Apple Musicはこちら

―『ちびまる子ちゃん』のどんなところが好きだったんですか?

福富:まず、暮らしを描いていたことですね。そのうえで感情の機微みたいなものが物語になっている。『ちびまる子ちゃん』に『わたしの好きな歌』っていう映画用に書き下ろした話(1992年公開の『さくらももこワールド ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』)があるんですけど、それもすごい好きでしたね。温かさがあって。

『MOVING DAYS』が描く日常の風景。「自分が見た世界をちゃんと描きたいっていう想いがすごくあった」

―そういえば、最近のアニメやドラマで日常の機微を描くような物語はあまり見かけなくなりましたね。

福富:たしかにそうかも。普通の生活を描こうとしても「普通」の基準がわからなくなってきたというか。どんな家庭を描いても、そこに何かテーマが生まれてしまう気がする。

―そんななかで、『MOVING DAYS』は日常の風景を大切にしている気がします。

福富:今回は自分が見た世界をちゃんと描きたいっていう想いがすごくあったんです。2ndアルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』では架空のアメリカの街を想像して、そこにいる人たちのことを歌っていて、3rdアルバム『WHALE LIVING』では長編小説みたいな物語を考えてそのシーンや登場人物を曲にしたんですけど、今回は実際に窓から見える景色とか街を散歩してみつけたもの、ニュースのなかの出来事とそれを見ている自分がアルバムになっている。

フィクションのストーリーをもとにした曲もあるけど、社会問題や政治的なことを描こうとしたときには、自分が暮らしている街や日常生活が歌の舞台になりました。

Homecomings『MOVING DAYS』通常盤ジャケット
Homecomings『MOVING DAYS』通常盤ジャケット(サイトで見る

―だから『MOVING DAYS』は、ドキュメンタリーのようにも思えたんです。社会的なメッセージを伝えたい、という問題意識から曲が生まれたというより、いまの風景を切り取ったら自然と社会問題が写り込んだ、みたいな。

福富:そういう面もあるかもしれないですね。特にこの1、2年、今回取り上げたような社会問題をニュースやSNSで目にしない日はないですからね。

―そういう社会問題を声高に主張せずに、日常の風景のなかに滑り込ませるのがHomecomingsらしいですね。

福富:感情を描くときも風景から描きたくなっちゃうというか。こういう風景があって、こういう出来事があって……みたいに描きたくなっちゃうんです。それはグラフィックノベルや映画が好きやからっていうのもあるかもしれない。歌詞を一枚の絵みたいに見ているところがあるんですよね。絵や映像があって、それを歌詞にしていく。それが結果的に主義主張につながっているというか。声高に主張はしてはいないかもしれないけれど、そこに込めた思いはたしかなものなので。

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リリース情報

Homecomings『Moving Days』初回限定盤
Homecomings
『Moving Days』初回限定盤(CD+Blu-ray)

2021年5月12日(水)発売
価格:4,950円(税込)
PCCA-06031

[CD]
1. Here
2. Cakes(Album Version)
3. Pedal
4. Good Word For The Weekend
5. Moving Day Pt. 2
6. Continue
7. Summer Reading
8. Tiny Kitchen
9. Pet Milk
10. Blanket Town Blues
11. Herge

[Blu-ray]
『“BLANKET TOWN BLUES” December 25, 2020』
1. Corridor(to blue hour)
2. Blue Hour
3. Hull Down
4. Lighthouse Melodies
5. Smoke
6. ANOTHER NEW YEAR
7. LEMON SOUNDS
8. HURTS
9. Special Today
10. Moving Day Part1
11. Continue
12. PLAY YARD SYMPHONY
13. Cakes
14. Songbirds
15. Whale Living
16. I Want You Back

Homecomings『Moving Days』
Homecomings
『Moving Days』通常盤(CD)

2021年5月12日(水)発売
価格:2,970円(税込)
PCCA-06041

1. Here
2. Cakes(Album Version)
3. Pedal
4. Good Word For The Weekend
5. Moving Day Pt. 2
6. Continue
7. Summer Reading
8. Tiny Kitchen
9. Pet Milk
10. Blanket Town Blues
11. Herge

イベント情報

Homecomings
『Tour Moving Days』

2021年7月17日(土)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2021年7月18日(日)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO

2021年7月23日(金・祝)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO

料金:各公演 前売4,500円(ドリンク別)
※4歳以上要チケット

プロフィール

Homecomings
Homecomings(ほーむかみんぐす)

畳野彩加(Vo,Gt)、福田穂那美(Ba,Cho)、石田成美(Dr,Cho)、福富優樹(Gt)からなる4ピースバンド。これまで3枚のアルバムをリリースし、台湾やイギリスなどでの海外ツアーや、4度にわたる「FUJI ROCK FESTIVAL」への出演など、2012年の結成から精力的に活動を展開。心地よいメロディに、日常のなかにある細やかな描写を紡ぐような歌詞が色を添え、耽美でどこか懐かしさを感じさせる歌声が聞く人の耳に寄り添う音楽で支持を広げている。2017年からは、イラストレーター・サヌキナオヤ氏と共同で、映画と音楽のイベント「New Neighbors」をスタート。彼女たちがセレクトした映画の上映と映画にちなんだアコースティックライブの二本立てイベントを主催。2019年4月公開の映画『リズと青い鳥』の主題歌や、同年4月公開された、映画『愛がなんだ』の主題歌を担当。Vo畳野は、くるりやASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲にゲストボーカルで参加するなど、活動の幅を広げている。IRORI Recordsより2021年春メジャーデビュー。

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