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なぜ見た目重視ではないアイドルを探す?『ミスiD』小林司の発想

なぜ見た目重視ではないアイドルを探す?『ミスiD』小林司の発想

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インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子

日本のエンターテイメント業界の最前線で戦い続ける人物に話を聞く新連載『ギョーカイ列伝』。その記念すべき幕開けに、まったく新しい形の女の子オーディションとして2012年にスタートし、現在では男性・女性双方から熱い支持を受ける『ミスiD』の仕掛け人、小林司に登場していただいた。

講談社に入社後、いくつかの女性誌と男性誌の編集者を歴任し、2006年からは男性誌『KING』にて大ヒット企画「妄撮」をスタート。また、現代の新たな女性像を作り上げた水原希子や二階堂ふみのフォトブックをいち早く手がけるなど、モデルから女優、アイドルに至るまで、女性に対する独自の目線には定評がある。

これまで雑誌や単行本で数多くの実績を残してきたにも関わらず、小林はなぜあえて新たなオーディションを立ち上げたのか? 対話を通じて見えてきたのは、旧来の枠組みに捉われず、ジャンルを超えていく『ミスiD』のあり方は、エンターテイメント業界が向かうべき未来を指し示しているということだった。

水原希子と二階堂ふみは、自分で細かいことまでジャッジをする子たちだったんです。今の女の子はすごく進化してると思いました。

―『ミスiD』はルックスやスタイルで女の子を評価する従来のミスコンとは違い、女性のあらゆる価値を評価しようとする視点が新鮮で、男性のみならず、女性ファンが多いことも特徴だと思います。そもそもはどのような経緯で立ち上がった企画なのでしょうか?

小林:『ミスiD』の第1回目を開催した2012年まで、僕は基本的に雑誌の編集をやっていて、女性誌と男性誌をほぼ半々でやってきたんです。そのなかで、2006年に創刊されて2年間で華々しく散りました(笑)、『KING』という雑誌の副編集長だったんですけど、それが結構ターニングポイントで。今考えると『KING』は、「男性版ミスiD」的な感じだったんですよね。

小林司
小林司

―「男性版ミスiD」というのは?

小林:講談社の話でいうと、『Hot-Dog PRESS』(1979年創刊の男性誌)が100万部超えていたという、今では冗談のような時代があったんですけど、当然僕も知らなくて。で、長い不況とかもあって男の子があんまりお金を使えなくなり、自信もなくなっていくと、総合誌は売れなくなっていった。

ファッションからダイエット、恋愛、カルチャー、グルメ、旅、モノ、セックスまで、全方位で1冊が成り立つ体力が、男性誌にはなくなってしまったんだと思います。でも、女性誌はまだそれで成り立っている。ここ10年くらいで男性の総合誌はほとんど壊滅してしまって、今はほぼすべて「専門誌」なんですが、『KING』はその最後の悪あがきでした。そんななかで、『KING』のキャッチコピーは「なに系でもない男になろう」だったんですね。

―「草食系」や「マッチョ系」など、なにかひとつのジャンルに絞り込むのではなく、あらゆる価値観を総合的に扱おうとした。

小林:2006年頃って、ちょうど男性誌にとっての雑誌の細分化が加速してきた時期だったわけですけど、講談社は総合出版社だから、専門に落とし込まずにやってみようと思ったんです。結果的に『KING』は2年で休刊になってしまったんですけど、僕自身も当時からジャンルになにかを落とし込むのがあんまり好きではなくて。

CINRAさんも同じ考えだと思うんですけど、基本的にはすべてのジャンルはつながっていると思っているので、それを強引に切り離すのはおかしいんじゃないかと思っているんです。もちろん、今は消費者が使える時間もお金も限られているから、細かく分かれるのも仕方ないとは思うけど、「つながっていく面白さ」というのは雑誌の遺伝子として残したかった。結局、男性誌では失敗してしまったんですけど、それをいつか女の子でもやりたいと思っていたんです。「なに系でもない女の子になろう」ですね。

―それで始めたのが『ミスiD』だったと。

小林:そうですね。あと、『KING』の休刊後の2011年に東日本大震災が起きたことも自分にとっては大きかったです。雑誌に対する絶対的な信頼感が揺らいじゃったんですよね。震災のときのあの刻一刻と変わる状況に、雑誌はどうしたって対応できなかった。あのとき一番力を発揮したのがTwitterですからね。

それで、1回雑誌じゃないものをやりたいと思って。その頃まず単行本で作ったのが、ブレイク寸前だった水原希子と二階堂ふみの本で、その子たちがめちゃくちゃ面白かったんですよ。

『水原希子フォトブック KIKO』表紙
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『二階堂ふみフォトブック 進級できるかな。』表紙
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―どう面白かったのでしょう?

小林:その2人は、細かい編集内容の最終的なチェックを、事務所さんが本人とさせてくれたんです。珍しいと思いますよ。もちろん、概ねのところは対事務所さんです。でも、最後は委ねてくれた。それは彼女たちが、自分で細かいことまでジャッジをする子たちだったからです。

それまで僕は十何年、雑誌とかに関わってきたわけですけど、タレントさんはどの写真とか発言が載るのか、実際に発売されるまでわかってないこともあった。でも2人とは「あの写真を使いたい」「これは嫌だ」「ここはすごくいい」とか、いろいろ最後まで話し合いができたんです。すごいなあと。本人もすごいし、信用する事務所もすごい。

自己プロデュースという面で、今の女の子はすごく進化してると思いました。だから、こういうインディペンデントな女の子の力を汲み取りたいなと。あともうひとつ大きかったのは、『ミスマガジン』がちょっとお休みになったことです。

小林司

―約30年続いた、講談社の代名詞的なミスコンですね。

小林:2011年からいったん休止しているんですけど、その要因としてはAKB48とかが出てきて、グラビアが飲み込まれたというのもあるんですね。新人を発掘しても、ブレイクするまでには時間がかかるから、その間に表紙に起用してもあまり世の中に響かない。

余裕がある頃はそれでもよかったけど、時代的に「今すぐ響く人を表紙にしなきゃいけない」という流れになってきて、それでほとんどのグラビアのオーディションコンテンツが立ちいかなくなった。そこで「代わりになにかやれない?」という話が回ってきて、『ミスiD』を始めることにしたんです。

―AKBのブレイク以降、「アイドル戦国時代」という言葉が使われるようになりましたが、その本質を考えてみると、「かわいい子がアイドルになる」という時代から、ある種アイドルが登竜門になり、そこから役者や歌手、モデルへと巣立っていくような状況になっていて、そういう時代感と『ミスiD』の登場もリンクしていたように思います。

小林:今って、AKBの成功が大きすぎて、「アイドル=お揃いの制服で歌って踊る」というイメージがあまりに固定されてしまって、あとは恋愛禁止とか、少し不自由なルールが多いですよね。希子ちゃんとかふみちゃんとかを見ていると、本来女の子は自由に進むべきなのに、古い男性的な枠組みで守られてるアイドルの在り方は不健康だなって思うんです。僕、マリー・サイラスとか、ああいうハリウッドセレブが大好きなんですよ。めちゃめちゃ楽しそうじゃないですか。でも全部責任は自分で取るって、すごくかっこいい。

話は飛びますけど、僕、今日の午前中に歯医者に行ってきて、そこにいる女性の先生が好きだったのに、「産休に入る」って言われて熊さんみたいな先生を紹介されて、めっちゃショックだったんです(笑)。いや、すごく上手なので全然問題ないんですが(笑)。「歯医者に行くのは嫌だけど、あの人がいるから」って思えた自分がいたように、「その子がいるから頑張れる」みたいな存在であれば、どんな子だって「アイドル」だと思うんですよね。歌って踊れなくても、そこらじゅうにいます。

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プロフィール

小林司(こばやし つかさ)

講談社第一事業局企画部所属。編集者。ミスiD実行委員長。別名「妄撮P」。入社後、『FRaU』『VoCE』の編集に携わる。2006年、男性誌『KING』にて「妄撮(モーサツ)」の連載を開始。夢眠ねむを被写体とした『アキバ妄撮』(角川グループパブリッシング、2011年)や、『吉木りさ×妄撮 リア充だけがハッピーじゃない』(講談社、2012年)など、ヒットを飛ばす。その他、水原希子や二階堂ふみなどにいち早く目をつけ、『水原希子フォトブック KIKO』(講談社、2010年)、『二階堂ふみフォトブック 進級できるかな。』(講談社、2012年)などの編集を手がける。2012年より、まったく新しいタイプの女の子を発掘し育てるオーディション『ミスiD』を開催。

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