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のん×能町みね子のトークショーと展示で振り返る『SNS展』

『SNS展』
テキスト
麦倉正樹
撮影:豊島望 編集:木村直大
のん×能町みね子のトークショーと展示で振り返る『SNS展』

2人が選んだ公募作品と能町みね子の意外な選出理由

続いては、一般公募の作品の中から2人がキュレーターとして選出した作品と選評を、それぞれ紹介。のんが選んだのは、KIWAERIの『face#17』という作品だった。

のんが選んだ作品 / KIWAERI『face#17』

悩んでいるような彷徨っているような、女の子なのか男の子なのかも分からないけれど、この人はなにを考えているんだろう?と惹きつけられました。

“もしもSNSがなかったら”というタイトルに対して、どういう状況に置かれている人なのか、なんだか気になりました。

繋がっていなかった人たちがいるかもしれないという事への、つまんないなぁ…という感じのぽっかりと穴が開いたような虚しさが伝わってきて、SNSのない日常を想像しやすかったです。(会場に設置されたのんによる選評)

のん:これは絵の作品ですけど、もしもSNSがなかったらいうテーマに沿って描かれたということを考えると、すごい悲観的でもなく、大きな感情が動いているわけでもない。ぽっかり穴が空いたような感じで、「なんかつまんないな」ぐらいの感情が見て取れるのがリアルで……すごい素敵な絵だなって思いました。

選出した作品へコメントするのん
選出した作品へコメントするのん

ちなみに、KIWAERIは今回の選出を受けて、次のようにコメントを寄せている。

この度は大好きなのんさんに選んでいただき光栄です。投稿の絵は、記憶の断片をつなぎ合わせて表面的に色や線を重ね、きっとどこかにいるだろう「あの子」をイメージして描いています。SNSを通して場所に限らず、より広く人の目に届く機会が増えた一方、溢れて流れていくことも多いと思います。けれども「あの子」に重なる誰かの心の片隅に、きゅっと届けられたと、その可能性を信じています。ありがとうございます。(KIWAERI)

一方、能町が選んだのは、やじゅの『毎週土曜日は母とランチ』という一連の写真作品だった。

やじゅ『毎週土曜日は母とランチ』

SNSは世界に開かれていて、なんてことのないつぶやきや日常の写真が、ふとしたきっかけで爆発的に人目に触れることがある。それこそがSNSのSNSらしさである。だから、逆説的だが、あまり作品として肩肘張って作られたものよりも、そもそも作品かどうか微妙なくらいの投稿を選びたくなってしまった。

選出作品は、あまりにごく日常的な食事の写真。写真作品としてなんらかの評価を求めたようなものではない、しかし、SNSユーザーはなぜこういった写真をSNSに上げたいと思うのだろうか。私はこの気持ちを考えると、共感できるような分からないような、不思議な感覚になる。作品として後世に残したいほどではない、しかしただ自分でこっそり保存しておきたいわけでもない。なんとなくふと「誰かの目に触れたらいい、触れなくてもいい」くらいの感覚で置いておく、返事はいらないコミュニケーション。SNSはこんな最小限の自己主張をさせてくれる場なのだ。

そして、その無意識的な自己主張が、時を経て多層的な意味を持ってくる。投稿主はお母様が介護生活に入る前にこの写真を撮っている。SNSがなければ撮ろうと思わない、こんな「日常」を絵に描いたような写真が、後から自分自身にいろいろな気持ちを思い起こさせることになる。そしてまたそれをSNSにストンと落としておくこともできる。SNSによって残った感情をまたSNSに残し、生活が紡がれる。SNSは、人の思いを少しだけ補い、支えることができる。

毎度あえてお母様を写していなかったこと、食事内容も決してきらびやかとはいえないごく平凡な、でもほんの少しカロリー高めで浮かれた感じのするものであること、そのあたりに作者の日常を想像する余白が大量にあった。このなんてことない写真群と少ない言葉に、彼女のSNSの前後まで追ってみたくなる不思議な魅力がある。こんなふうに選出されることはもしかしたら不本意かもしれないので、そこには少し申し訳ない気持ちもある。(会場に設置された能町の選評)

能町:選評が長くなってしまったんですけど、この方が写真とセットで書いていた文章も含めて選出させていただきました。要は、この写真を撮っていたのは、普通のなんてことのない日々だったんですけど、その2か月後ぐらいに、お母さんが入院されてしまい、いまは介護の生活を送っているんですね。

こういう普通の食事の写真って、SNSが無かったら撮らないじゃないですか。だけど、そのなにげない写真が、あとからすごく意味を持ってくるというのが、SNSらしいなと思って。

選出した作品へコメントする能町
選出した作品へコメントする能町

能町:あとSNSって、本人がなんとも思わずあげた文章が、誰かがすごいっていってバズったりすることもあるので、作品として作ったっぽくないやつを選びたくなってしまって、この作品を選びました。

選出を受けたやじゅのコメントは以下の通りだ。

母が元気だった頃、毎週土曜日の午前中は一緒に1週間の食材をスーパーに買いに行き、帰りにお昼を近所の仕出し屋さんやカレー屋さんで食べたり、子供の頃から私が好きなナポリタンを母が作ってくれ一緒に食べていました。SNSに上げていた数年分の写真を見返して、元気な頃の母との思い出がそのまま保存されているんだなと、思い返すことができます。(やじゅ)

その後、2人は本展の来場者に配布されたものと同様、自らスタンプを押してカスタマイズしたエコバックを互いに披露し合った。

展覧会会場に用意されたスタンプで、カスタムしたエコバッグを披露したのんと能町
展覧会会場に用意されたスタンプで、カスタムしたエコバッグを披露したのんと能町

エコバッグをハートのスタンプで埋め尽くした能町
エコバッグをハートのスタンプで埋め尽くした能町

トークが一区切りしたところで、能町は観客を背景とした2ショットを自ら撮影。『SNS展』らしく、能町は早速その場でInstagramにアップした。

観客をいれつつ、のんとの2ショットを自撮りする能町
観客をいれつつ、のんとの2ショットを自撮りする能町

撮影したばかりの自撮り写真はその場でアップされた

最後には、来場者のためのフォトセッションの時間も特別に設置。

来場者とのん、能町のフォトセッション
来場者とのん、能町のフォトセッション

その写真をそれぞれのSNSにアップすることを促しながら、約30分のトークショーは幕を閉じたのだった。

来場者とのん、能町のフォトセッション

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イベント情報

『SNS展 #もしもSNSがなかったら』

2018年5月19日(土)~5月27日(日)

会場:東京都 秋葉原 3331 Arts Chiyoda メインギャラリー
時間11:00~20:00
参加アーティスト・キュレーター:
のん
菅本裕子
小山健
能町みね子
燃え殻
濱田英明
たなかみさき
最果タヒ
塩谷舞
UMMMI.
藤原麻里菜
東佳苗

プロフィール

のん

女優、創作あーちすと。 1993年兵庫県生まれ。アニメ映画『この世界の片隅に』で主役すずの声を担当。写真集『のん、呉へ。 2泊3日の旅』、ムック『創作あーちすとNON』、刊行。音楽レーベル『KAIWA(RE)CORD』発足。のん公式ファンクラブ『NON KNOCK』開設。4月には渋谷GALLERY Xにて、のんひとり展「女の子は牙をむく。」開催。

能町みね子(のうまち みねこ)

北海道出身。近著「雑誌の人格」「雑誌の人格2冊目」(共に文化出版局)、「ほじくりストリートビュー」(交通新聞社)、「逃北」「言葉尻とらえ隊」(文春文庫)、「ときめかない日記」(幻冬舎文庫)など。ほか雑誌連載多数、テレビ・ラジオにも出演。

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