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日常にひそむ「美」と出会う 土岐麻子ら出演『S/PARK FES』レポ

S/PARK
テキスト
飯嶋藍子
撮影:戸室健介 編集:石澤萌、宮原朋之(CINRA.NET編集部)
日常にひそむ「美」と出会う 土岐麻子ら出演『S/PARK FES』レポ

資生堂「S/PARK」で開催された「美」の祭典。マイク・ミルズの最新短編作からスタート

最先端の技術を融合させながら美のひらめきを追求していく、資生堂の研究所「資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)」で、8月11日に開催された、『S/PARK SUMMER FES 2019』。

幅広い領域で「美」を考え続けてきた資生堂とCINRAがコラボレーションし、「美のひらめき」をテーマに、ライブ、映画上映、パフォーマンス、トークなど多彩なプログラムが行われ、多種多様な「美」のヒントがいくつも投げかけられた。これまで「美」とは一体なんなのか考えていた人も、「美」について考えることのなかった人も、きらりと光る「美のひらめき」の片鱗を見るイベントとなった。その片鱗について記していきたい。

 

最初のプログラムはマイク・ミルズの短編映画『I Am Easy To Find』(2019年)の上映。The Nationalの同名アルバムにインスパイアされた作品で、ひとりの女性の一生を淡々と描き出す。日常的でありふれた時間の経過から浮かび上がってくるのは、自分が持たないなにかを求めることへの願い、孤独感、自分の愚かさ、覚えたての嘘のつき方……なにも特別なことは起こらないのに、ライフステージを追うごとになにかに気づき、そのたびに自分の弱さに崩れ、少しずつ強さを得ていくさまから、人が生まれてから死ぬまでの、美しいとしか形容できない生命の流れを垣間見ることができる。

『I Am Easy To Find』上映中の様子
『I Am Easy To Find』上映中の様子

色とりどりの花や宇宙を思わせる、中山晃子のライブペインティング

続いては、画家・中山晃子による、液体から固体までさまざまな材料を相互に反応させて絵を描くパフォーマンス「Alive Painting」。その場で中山がインクやグリッターを使用して描いていく、絵画と映像の間にあるような視覚作品だ。

その瞬間の偶然性も多いに影響した予想だにしない世界のはずなのに、どこかで見たことのあるような、届きそうで届かない記憶を掻き立てられる。次の瞬間には、中山が操る筆がビジョンにぬっと現れ、突然現実に引き戻される。宇宙空間のように見えるけれど、中山の手元だけで完結した世界であるというコントラストにも、心が揺り動かされる。断片的に現れる人の顔や馬、水彩の花びらを持っている手の写真……その上に塗られていくここにしか存在し得ない色彩、弾けるインクの気泡、揺れる液体がじんわりと広がっていくさまは、鼓動を具現化したような力強さがあった。

中山晃子(なかやま あきこ)<br>画家。色彩と流動の持つエネルギーを用い、様々な素材を反応させることで生きている絵を出現させる。絶えず変容していく「Alive Painting」シリーズや、その排液を濾過させるプロセスを可視化し定着させる「Still Life」シリーズなど、パフォーマティブな要素の強い絵画は常に生成され続ける。様々なメディウムや色彩が渾然となり、生き生きと変化していく作品は、即興的な詩のようでもある。鑑賞者はこの詩的な風景に、自己や生物、自然などを投影させながら導かれ入り込んでいく。ソロでは音を「透明な絵の具」として扱い、絵を描くことによって空間や感情に触れる。
中山晃子(なかやま あきこ)
画家。色彩と流動の持つエネルギーを用い、様々な素材を反応させることで生きている絵を出現させる。絶えず変容していく「Alive Painting」シリーズや、その排液を濾過させるプロセスを可視化し定着させる「Still Life」シリーズなど、パフォーマティブな要素の強い絵画は常に生成され続ける。様々なメディウムや色彩が渾然となり、生き生きと変化していく作品は、即興的な詩のようでもある。鑑賞者はこの詩的な風景に、自己や生物、自然などを投影させながら導かれ入り込んでいく。ソロでは音を「透明な絵の具」として扱い、絵を描くことによって空間や感情に触れる。

それは無軌道でありながらも意思があるように、あるいはなにかに導かれているようにも見える。中山が与えたエネルギーをそのままに受けるインクの素直さに美しさが宿っているのだろうか? インクの雫が流れていき、異なる色にそっと接触し、2色が混ざり合い、新しい色の小惑星のように円形にとどまるシーンがあった。風に波打つ1色のインクの動きに影響されるように、それまで止まっていた周りの色がじんわりと動いていくシーンがあった。美しさはきっと波及する。大きな1色に飲み込まれてしまうように見えても、それは決して個が消えたわけではない。

複雑で偶然で、意思を持ちながらも、抗えない道のりを巡ってきたさまざまな色が、混ざり合ったからこその美しさを、中山の「Alive Painting」は映し出していた。

 
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イベント情報

『S/PARK SUMMER FES 2019』

2019年8月11日(日・祝)
会場:神奈川県 横浜 資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)

プログラム:
「S/PARK Studioオリジナルエクササイズ」
[前半]
短編映画『合唱 / Sing』『I Am Easy To Find』上映
中山晃子(パフォーマンス)
土岐麻子(ライブ)
牛久保雅美、エヒラナナエ(似顔絵ブース)
[後半]
『クルーレス』上映
BEAUTY CINEMA TALK(ゲスト:山崎まどか)
She is BEAUTY TALK(ゲスト:チョーヒカル)
牛久保雅美、エヒラナナエ(似顔絵ブース)※18:00まで
高木正勝(ライブ)
料金:前半・後半チケット500円(1ドリンク付) 終日1,000円(2ドリンク付)

施設情報

S/PARK

「S/PARK(エスパーク)」は、横浜・みなとみらいに2019年4月にオープンした、誰でも自由に訪れることができる美の複合体験施設です。最先端の研究施設である「資生堂グローバルイノベーションセンター」の1階と2階に開設され、“美のひらめきと出会う場所”をテーマとしています。

プロフィール

高木正勝(たかぎ まさかつ)

音楽家・映像作家。1979年生まれ、京都出身。長く親しんでいるピアノを用いた音楽、世界を旅しながら撮影した「動く絵画」のような映像、両方を手掛ける作家。『おおかみこどもの雨と雪』『夢と狂気の王国』『バケモノの子』『未来のミライ』の映画音楽をはじめ、CM音楽、執筆など幅広く活動している。最新作は、自然を招き入れたピアノ曲集『Marginalia』、6年間のエッセイをまとめた書籍『こといづ』。

土岐麻子(とき あさこ)

Cymbalsのリードボーカルとしてデビュー。2004年の解散後、ソロ始動。本人出演/歌唱が話題となったユニクロCMソング“How Beautiful”や、資生堂「エリクシール シュペリエル」CMソング、“Gift ~あなたはマドンナ~”などをリリース。CM音楽や、他作品へのゲスト参加、ナレーション、TV・ラジオ番組のナビゲーターを務めるなど「声のスペシャリスト」。また、さまざまなアーティストへの作詞提供も行っている。2019年6月には配信限定シングル『picture frame』と、約12年ぶりとなるリミックスアルバム『TOKI CHIC REMIX』をリリース。

中山晃子(なかやま あきこ)

画家。色彩と流動の持つエネルギーを用い、様々な素材を反応させることで生きている絵を出現させる。絶えず変容していく「Alive Painting」シリーズや、その排液を濾過させるプロセスを可視化し定着させる「Still Life」シリーズなど、パフォーマティブな要素の強い絵画は常に生成され続ける。様々なメディウムや色彩が渾然となり、生き生きと変化していく作品は、即興的な詩のようでもある。鑑賞者はこの詩的な風景に、自己や生物、自然などを投影させながら導かれ入り込んでいく。ソロでは音を「透明な絵の具」として扱い、絵を描くことによって空間や感情に触れる。近年ではTEDxHaneda、Solo performance at NEW ARS ELECTRONICA(オーストリア)、Biennale Nemo (パリ)、LAB30 Media Art Festival(アウグスブルグ)、MUTEK Montreal等に出演。

山崎まどか(やまさき まどか)

15歳の時に帰国子女としての経験を綴った『ビバ! 私はメキシコの転校生』で文筆家としてデビュー。女子文化全般 / アメリカのユースカルチャーをテーマにさまざまな分野についてのコラムを執筆。著書に『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)『女子とニューヨーク』(メディア総合研究所)『イノセント・ガールズ』(アスペクト)共著に『ヤングアダルトU.S.A.』(DUブックス)翻訳書にレナ・ダナム『ありがちな女じゃない』(河出書房新社)等。

牛久保雅美(うしくぼ まさみ)

桑沢デザイン研究所卒業。雑誌や装画など多方面で活動。日常をテーマにアンニュイな女性像を描く。

エヒラナナエ

イラストレーター・刺繍作家。顔のない似顔絵を描く

チョーヒカル

2016年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業。体や物にリアルなペイントをする作品で注目され日本国内だけでなく海外でも話題になる。いいともを含む多数のメディア出演に加え、Samsung、Amnesty International、資生堂、TOYOBOなど企業とのコラボレーションや、国内外での個展など多岐にわたって活動している。ペイントの他にも衣服やCDジャケットのデザイン、イラスト、立体、映像作品などを制作。先日初の漫画となる『ストレンジ・ファニー・ラブ』を発売した。

きゅんくん

ロボティクスファッションクリエイター / メカエンジニア。1994年東京都出身。機械工学を学びながらファッションとして着用するロボットを制作している。高校生の頃より「メカを着ること」を目標にロボティクスファッションの制作を続け、2014年よりウェアラブルロボットの開発を進めている。2015年テキサス『SXSW2015』にてウェアラブルアームロボット「METCALF」発表。同年オーストリア『Ars Electronica Gala』招待出演。2016年ウェアラブルロボット「METCALF clione」を発表。同年AKB単独公演にて「METCALF stage」を3台稼働。DMM.make AKIBAスカラシップ生。

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