コラム

2016年に一番愛された作品は? カルチャーランキングを発表

2016年に一番愛された作品は? カルチャーランキングを発表

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CINRA.NET編集部

【書籍編】音楽ジャーナリズムや、日常の機微を繊細に捉えたエッセイに注目が集まる

10位 宇野維正『くるりのこと』

宇野維正『くるりのこと』表紙(新潮社)
宇野維正『くるりのこと』表紙(新潮社)(Amazonで見る

2016年にバンド結成20周年を迎えたくるり。ジャーナリストの宇野維正が、オリジナルメンバーの岸田繁と佐藤征史にロングインタビューを実施し、知られざる苦悩や歴史を解き明かした一冊です。

9位 東村アキコ『東京タラレバ娘』

東村アキコ『東京タラレバ娘(6)』表紙(講談社)
東村アキコ『東京タラレバ娘(6)』表紙(講談社)(Amazonで見る

33歳独身の脚本家・鎌田倫子が、親友の香、小雪と共に「タラレバ」ばかりを言って女子会を繰り返していたところ金髪の若い男と出会い、それをきっかけに、もがきながらも現実と向き合っていくというあらすじ。2017年1月から、吉高由里子主演、Perfume主題歌でドラマ化が決定しています。

8位 海野つなみ『逃げるは恥だが役に立つ』

海のつなみ『逃げるは恥だが役に立つ(8)』表紙(講談社)
海のつなみ『逃げるは恥だが役に立つ(8)』表紙(講談社)(Amazonで見る

派遣切りにあった主人公の森山みくりが、会社員・津崎平匡の家事代行として働き始め、やがて「就職先」として津崎と契約結婚するというストーリー。2016年10月から実写ドラマが放映され、みくり役を新垣結衣、津崎役を星野源が好演。星野源による主題歌 “恋”を登場人物たちで踊る「恋ダンス」も大きな話題を呼び、多数の「踊ってみた」動画が生まれるなど、社会現象となりました。

7位 川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』

川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』表紙(講談社)
川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』表紙(講談社)(Amazonで見る

『センセイの鞄』『蛇を踏む』などの作品によって数々の受賞歴を持つ川上弘美が、人類が滅亡の危機に瀕した、遠く遙かな未来を舞台に織りなす壮大な神話的世界。詩的で幻想的な空気感をたたえながらも、アクチュアルなテーマが問われている本作は、その完成度と同時代性において今年を代表する重要作品と言えるのではないでしょうか。

6位 スティーヴン・ウィット『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』

スティーヴン・ウィット『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』
スティーヴン・ウィット『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』表紙(早川書房)(Amazonで見る

「海賊版の世代」である著者が、5年の歳月をかけて「音楽をタダにしたのは誰か?」を取材したノンフィクション。田舎の工場で発売前のCDを盗んでいた労働者、mp3を発明したオタク技術者、業界を牛耳る大手レコード会社のCEOなど、「CDが売れない時代を作った張本人たち」の奮闘記は、極上のフィクションさながらに惹き込まれます。

5位 柴那典『ヒットの崩壊』

柴那典『ヒットの崩壊』表紙(講談社)
柴那典『ヒットの崩壊』表紙(講談社)(Amazonで見る

CDの売り上げが落ちる一方でライブやコンサートの市場が拡大し、音楽ストリーミングの普及も進むなど、激動の時代を迎えている現在の音楽シーン。音楽ジャーナリスト・柴那典が、小室哲哉や水野良樹(いきものがかり)、音楽業界のキーパーソンらへ取材を通して、精緻な裏付けを積み重ねて「新しいヒットの方程式」を探り、未来への指針を紐解いたルポタージュ。

4位 羽海野チカ『3月のライオン』

羽海野チカ『3月のライオン(12)』表紙(白泉社)
羽海野チカ『3月のライオン(12)』表紙(白泉社)(Amazonで見る

幼い頃に家族を失い、孤独を抱えて生きてきた17歳のプロ棋士・桐山零が、同じ下町に住む川本あかり、ひなた、モモの3姉妹との出会いをきっかけに再生していく成長物語。2017年3月には主演に神木隆之介を迎え、2部作での実写映画化が決定しています。

3位 村田沙耶香『コンンビニ人間』

村田沙耶香『コンンビニ人間』表紙(文藝春秋)
村田沙耶香『コンンビニ人間』表紙(文藝春秋)(Amazonで見る

36歳未婚、これまで彼氏なし。18年間コンビニでバイトを続ける女性の生き方を通して、「普通とは何か?」を問うさまは、既存のあり方を独創的かつ真摯に疑う村田文学の真骨頂。作者が現役コンビニ店員であるという話題性や、作家仲間から「クレイジー沙耶香」と呼ばれるキャラクター性(本人は否定しているとのこと)も相俟って、一躍時の人に。『第155回芥川賞』受賞作。

2位 植本一子『かなわない』

植本一子『かなわない』表紙(タバブックス)
植本一子『かなわない』表紙(タバブックス)(Amazonで見る

写真家・植本一子が、夫であるラッパー・ECDと2人の娘と過ごす日々を綴った『働けECD~わたしの育児混沌記』から5年。震災後の不安を抱きながらの生活、育児への葛藤、生きづらさ、そして新しい恋愛などを日記と散文で綴った本作は、2014年に著者が自費出版した同名冊子を中心に構成されたもの。淡々と、読み手の感情と記憶に揺さぶりをかける筆致が圧倒的な一作。

1位 近藤聡乃『A子さんの恋人(3)』

近藤聡乃『A子さんの恋人(3)』表紙(KADOKAWA)
近藤聡乃『A子さんの恋人(3)』表紙(KADOKAWA)(Amazonで見る

29歳のA子を中心に、半人前の大人たちが繰り広げる「難あり」な恋愛を描く『A子さんの恋人』。東京とニューヨークの男子を両天秤にかける三角関係の行方はもちろん、ああでもない、こうでもないと悩む登場人物たちのリアリティーが大きな共感を呼びました。『ガロ』に影響を受け、現代アーティストとしても活躍する作家の絵力も大きな魅力です。


総括
書籍に関しては、大きく3つの傾向が見える結果に。まずは、『ヒットの崩壊』や『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』など、変革の時を迎えている音楽シーンをテーマにした作品群。『逃げるは恥だが役に立つ』『東京タラレバ娘』などは、映像化による原作の注目度がランキング結果に影響した例。そして上位には、『A子さんの恋人』『かなわない』のように、人のダメな部分を怖じけずリアルに描くことで、これまで主役として語られることの少なかった、ある種の生きづらさを抱える人々の心を捉えた作品がランクインしました。

ベストセラー作品と比較すると、ジャーナリズムや、生き方そのものに対して新たな視点や心地よさを与えてくれるような作品が好まれていたことから、情報が行き交うこの時代を生きる術として、本によすがを求めている部分があるのかもしれません。

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