コラム

2018年に一番愛された作品は? カルチャーランキングを発表

2018年に一番愛された作品は? カルチャーランキングを発表

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CINRA.NET編集部

社会情勢は一層混迷し、個人レベルでの「分断」も目立ってきた2018年も、もう間もなく終わろうとしています。CINRA.NETでは今年も読者のみなさんの力をお借りして、音楽、映画・ドラマ、アート、ステージ、書籍の5ジャンルの年間ランキングを発表します。

今年はアンケート形式だけではなく、「2018年に出会った、あなたの心を動かした作品」をテーマに、読者のみなさんが出会った2018年発表のカルチャー作品のうち、特に「#わたしの心を動かした作品2018」の投稿を募集しました(募集期間は2018年11月29日〜12月19日)。気になる結果は、巷の売上ランキングでも、専門メディアのランキングとも異なる、また昨年までのCINRA.NETのランキングともまた違う、カルチャーの受け手の視点が垣間見えるものとなりました。是非このランキングを見ながら、みなさんの2018年を振り返っていただけたら幸いです。

【音楽編】10作品中、バンドは2作のみ。国内外ともにソロアーティストへの支持が集まる

文:山元翔一

【国内】5位 折坂悠太『平成』

折坂悠太『平成』ジャケット
折坂悠太『平成』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

平成元年生まれのシンガーソングライター、折坂悠太の2作目となるアルバム。一聴して耳に残る独特な歌声と歌唱法、世界各地のルーツミュージックを吸収した豊かな楽曲で幅広い支持を集めました。古今東西の歌に接続しながら、同時代性も打ち出した作品性で、『ミュージック・マガジン』誌など国内メディアの年間ランキングでも高い評価を獲得しています。

特集:折坂悠太という異能の歌い人、終わりゆく平成へのたむけを歌う

4位 椎名林檎と宮本浩次“獣ゆく細道”

椎名林檎と宮本浩次“獣ゆく細道”ジャケット
椎名林檎と宮本浩次“獣ゆく細道”ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

唯一単曲でのランクインを果たした、椎名林檎と宮本浩次(エレファントカシマシ)によるコラボ曲。改めて、プロデューサー・椎名林檎の慧眼ぶりには恐れ入るばかりですが、あの宮本浩次を「楽器としてすごい」と評する肝の据わり方に痺れた人も多いのではないでしょうか。『ミュージックステーション』でのエキセントリックなパフォーマンスも大きな話題となりました。

3位 cero『POLY LIFE MULTI SOUL』

cero『POLY LIFE MULTI SOUL』ジャケット
cero『POLY LIFE MULTI SOUL』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

各所で絶賛された前作から約3年ぶりとなる、ceroの4thアルバム。小田朋美(CRCK/LCKS)らアカデミックな素養を身につけたサポートメンバーの手を借り、創作性は前作を遥かに凌ぐ域へ。リズムの多様化、和声の洗練をはじめ、ソングライティング面の飛躍的な進化に心から興奮させられました。世界の先鋭的な作品と並べても一切見劣りしない紛れもない傑作です。

特集:ceroの傑作『POLY LIFE MULTI SOUL』を、5人のライターが語る

読者からのコメント

2位 宇多田ヒカル『初恋』

宇多田ヒカル『初恋』ジャケット
宇多田ヒカル『初恋』ジャケット(Amazonで購入する)

今年、デビュー20周年を迎えた宇多田ヒカルの7枚目のオリジナルアルバム。ゴスペル風のコーラスを配した生命力ほとばしる“Play A Love Song”で幕を開け、“あなた”“初恋”“誓い”“Forevermore”とド級の名曲が続く序盤の流れが圧倒的。世界屈指のドラマー、クリス・デイヴらを迎えた生演奏を主体とした作風でこれまでとの変化も印象付けました。

特集:宇多田ヒカルは本当に時代と関係なく生きてきた?『初恋』を考察

1位 カネコアヤノ『祝祭』

カネコアヤノ『祝祭』ジャケット
カネコアヤノ『祝祭』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

宇多田ヒカルを抑えて栄えある1位に輝いたのは、カネコアヤノのフルアルバム『祝祭』。音楽的に真新しいところがあるわけではないのだけれど、胸に響くものがある――そういった聴き手の日々を彩り、心の拠り所となるような作品をこういった形で評価できるのは、このランキング企画ならではかと思います。時代を超えて多くの人の心に寄り添い続けるであろう作品です。

特集:カネコアヤノが語る、怒涛の2年の全て 本当のはじまりはここから

読者からのコメント

【海外】5位 The 1975『ネット上の人間関係についての簡単な調査』

The 1975『ネット上の人間関係についての簡単な調査』ジャケット
The 1975『ネット上の人間関係についての簡単な調査』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

マンチェスター出身の4人組、The 1975の3作目。多様な音楽をジャンル横断的に内包したサウンドに、ソーシャルメディア時代の憂鬱を描いた現代社会に接続したテーマ、また本人らの発言もあって、批評家筋ではRadiohead『OK Computer』を引き合いに出して語られることも多い本作。2018年現在、世界でもっとも支持を集める若手ロックバンドが5位にランクインしました。

4位 ジャネール・モネイ『Dirty Computer』

ジャネール・モネイ『Dirty Computer』ジャケット
ジャネール・モネイ『Dirty Computer』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

映画『ムーンライト』『ドリーム』に出演するなど俳優としても活動する才媛、ジャネール・モネイの約5年ぶりのアルバム。ファレル・ウィリアムス、グライムスの参加も目を引きますが、ブライアン・ウィルソン(The Beach Boys)の参加には驚かされました。ポップかつ先鋭的なフューチャーソウルの傑作です。

3位 Mitski『Be the Cowboy』

Mitski『Be the Cowboy』ジャケット
Mitski『Be the Cowboy』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

アメリカ人の父と日本人の母を持つミツキ・ミヤワキの5枚目のアルバム。日本で生まれ、コンゴ民主共和国、マレーシアなど様々な国を行き来する環境で育ち、現在はニューヨークを拠点に活動している彼女の歌の多くは孤独がテーマ。その生々しい歌に今、世界が魅了されています。米音楽メディア『Pitchfork』の年間ベスト1位に輝いた一作。

2位 カニエ・ウェスト『ye』

カニエ・ウェスト『ye』ジャケット
カニエ・ウェスト『ye』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

8作連続となる全米アルバムチャート1位を獲得した、カニエ・ウェストの2年ぶりとなるソロアルバム。世を騒がせたエピソードも目立ったが、この音楽はとにかく美しかった。また、7曲入り約24分というタイトな構成も話題に。これが、作品ごとにポップミュージックを次のレベルに推し進めてきた、天才の最新モードです。

1位 Snail Mail『Lush』

Snail Mail『Lush』ジャケット
Snail Mail『Lush』ジャケット(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く)

名門インディーレーベル「Matador Records」からデビューを果たした18歳、Snail Mailのデビューアルバム。瑞々しいローファイサウンドと物憂げな歌声で、多くのリスナーの心を掴みました。『ニューヨーク・タイムズ』も称賛を送る若きシンガーソングライターが、並み居る傑作を抑えて見事1位に。

音楽編総括
昨年の総括文には、「SpotifyやApple Musicといったサブスクリプションサービスを通じて音楽に接することが当たり前になってきた」と書きましたが、2018年は椎名林檎、Mr.Childrenといった国内のトップアーティストがサブスクリプションサービスを解禁したことで、ストリーミングで音楽を聴く文化がより一般層にまで浸透した1年だったと位置付けることができるでしょう。

そういった背景がありながら、あいみょんが瞬く間に国民的認知を獲得し、BAD HOPが日本武道館の舞台に立ち、CHAIの『PINK』が米音楽メディア『Pitchfork』の「The Best Rock Albums of 2018」に取り上げられ、そして米津玄師が『NHK紅白歌合戦』に出演するという、数年前には想像もしなかったことが起こったのは、今、日本のポップミュージックの世界が劇的に面白くなっている証拠かと思います。

そんな2018年、このランキングの結果から特筆すべきなのは、バンド名義による作品がceroとThe 1975のみであったこと、旧来の「ロック」という枠組みに収まるものが影を潜めたこと、そして、並み居る傑作を抑えて1位に輝いたのが、カネコアヤノとSnail Mailという若手女性アーティストの作品であったこと。これらを、現時点で、日本のリスナーの傾向やポップミュージックの世界の変化に結びつけて語ることは難しいですが、「2018年が転機であった」というふうに数年後に振り返って語られる日が来るような、そんな予感がみなさんのなかにもあるのではないでしょうか。

毎週膨大な数の作品が世に放たれては消費されるというサイクルは加速する一方ですが、少し大げさな言い方をすると、音楽を愛でるという営みが失われることはないはずです。実際にこの企画には、万人からは愛されなくとも、音楽的な革新性がなくとも、聴き手の心に触れた作品が数多く寄せられました。ここでそのすべてを紹介することはできませんが、その事実は書き留めておきたく思います。読者のみなさんの心を動かした作品を集めたこのランキングが、より豊かな生活の一助となれば幸いです。

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